空気を振動させる蝉の鳴き声。
人の気配のない第三新東京市。
それらを全て掻き消すかのように、
それが二度と元に戻らないかのように。
閃光。
都市が赤い光に包まれる。
抉られる大地。
遅れて、轟音と衝撃波。
24層の特殊装甲を一瞬で消しとばす。
ジオフロントに落下していく瓦礫。
空が見えるようになったジオフロント。
大量のミサイルが、ジオフロント底面に突き刺さる。
間髪入れず、大量の重戦闘機が山蔭から飛び出し、ジオフロントへ飛んでいく。
NERV発令所に響く轟音。
「…ッッ…何が起こったの⁉︎」
頭を押さえながら冷静に状況の確認を試みるミサト。
「…N²航空爆雷です!全装甲板消滅!」
「…来たわね…」
冬月が静かに指令を出す。
「総員…第1種戦闘配置。」
「戦闘配置⁉︎…相手は使徒じゃ無いのに……同じ人間なのに…」
『大観山第8から17までのレーダーサイト沈黙!』
『特科大隊強羅防衛線より侵攻してきます!』
『御殿場方面からも2個大隊が接近中!』
「…向こうはそう思っちゃくれないさ…」
…
突然、シンジ達の部屋に轟音が響く。
「…⁉︎…なに⁉︎」
すると、警報。
『総員、第1種戦闘配置。繰り返す…総員、第1種戦闘配置。』
「…戦闘配置⁉︎」
「戦自だ…!」
大急ぎでタオルケットから飛び出て、プラグスーツを着る。
「初号機は第七ケイジ…弐号機は第8ケイジだから…途中まで一緒に行けるわね。」
部屋を飛び出す。遠くから銃声と爆発音。
「もう上階に浸入されてる…急がないと!」
迷路のような廊下を走る。
「ここからだと第124番エレベータが近いわ!」
「でもそこはダメだ、多分止まってる!」
「なんで…?」
「上階のエレベータに繋がってるエレベータだからね……」
「そっか!…止まってないとエレベータから戦自が攻めれちゃうってことね!」
「そーゆーこと!」
ということで、第七、八ケイジに直接行ける非常用エレベータへ急ぐ。
ここからだとかなり距離があるが。
暫く走っていると、十メートルほど先の天井が膨らみ、爆発。
「まずい!戦自だ…!」
壁の裏に隠れるシンジとアスカ。
破壊された天井の穴から、戦自の隊員が3人現れる。
「…どうしよう…このままじゃ動けない…」
道は一本道。ここを通らないとこの階からはケイジに行けない。
(…前なら…ミサトさんがどうにかしてくれたんだけど…)
…
NERV第一発令所。
「シンジ君とアスカの捕捉急いで!奴らの目標がエヴァの占拠なら、パイロットが狙われるわ!第1層にベークライト注入、時間を稼いで!非戦闘員は第87経路にて第2発令所まで退避!グループ4を除く戦闘員は第7と第8ケイジ、第1発令所の防衛に集中!正面衝突は避け、止むを得ず戦闘をする場合はゲリラ戦で対応するのよ!」
冷静に正確な指示を出すミサト。
「グループ4はレイを零号機まで護送し、零号機に乗せた後、第8ケイジの防衛に回して!」
「しかし…操縦できる状態じゃありません!」
「構わないわ、匿うにはエバーの中が最適なのよ。レイの収容後は地底湖に隠して!すぐに見つかるけどケイジよりマシだわ!」
「…了解!パイロットの投薬中止、零号機発進準備!」
「52番のリニアレール、爆破されました!」
「…たち悪いな、使徒の方がよっぽどいいよ…」
(…無理も無いわ…みんな人を殺す事に慣れてないものね…)
…
330号病室。
プラグスーツを着せられたレイがストレッチャーに乗せられ、NERVの戦闘員に運ばれ病室を出る。
「第5ケイジだ!急ぐぞ!」
「了解!」
駆け足でケイジに向かう。
通路を曲がった所で、大柄な男に出くわす。
「碇司令…⁉︎こんな所で何を…ぐわぁ⁉︎」
銃声。先程まで生きていたものたちが赤く染まる。
「…行くぞ、レイ。」
「………」
ゲンドウがレイの手を掴む。
レイは抵抗せず、そのままゲンドウに引きずられていく。
…
「いたぞ、エヴァパイロットだ!」
「まずっ!見つかった⁉︎」
戦自に見つかる。
遮蔽物を利用して逃げるが、徐々に追い詰められていく。
「ッこんちくしょぉ!」
「くそ!」
アサルトライフルの銃弾が壁に刺さる。
「…まずい…もう逃げ込める所がないよ!」
「シンジ…っ…」
遮蔽物のない廊下。
あるものといえば死んだNERV職員と血溜まりだけ。
「もう…駄目なの…⁉︎」
戦自隊員がこちらに銃を向ける。
絶望。そして諦め。
終わりは意外とあっさりしているものだ…
ここまでやって、結局これで終わり。
それは…嫌だ。
「うおぉぁぁぁぁ!!!!」
「シンジ⁉︎」
突撃。
勝算なんてない。
ただ、感情だけの突撃。
戦自隊員が銃の引き金を引こうとしている。
せめて…アスカの逃げる時間だけでも稼ぐ…!
瞬間、戦自隊員の顔がひしゃげる。
パンッ…と乾いた銃声が響き、戦自隊員が倒れる。
壁に飛び散る脳髄と血潮。
「うわぁ⁉︎なんだこぃ…っ…」
銃声と共に全滅する戦自隊員。
「⁉︎」
「…よう、無事だったか?シンジ君。」
目の前に現れたのは、無精髭の男。
「「…加持さん…⁉︎」」
「…どうやら 酷いことになってるな、大丈夫か?」
…
「初号機、弐号機パイロットの所在位置を捕捉しました!」
モニタに映るのは、走っているシンジとアスカ、加持の3人。
「…加持⁉︎」
「所在位置はルート512です!」
「…なんで加持があんな所に…⁉︎」
どうやら2人を護衛しているらしく、戦自隊員を倒しながら進んでいる。
「!…第3層に浸入者、防御できません!」
戦闘はミサトに動揺する暇を与えない。
「なんですって⁉︎……っ…第3層までを破棄、全通路とパイプにベークライトを注入!」
「了解!」
…
エレベータが地球の核に近づいて行く。
行き先はターミナルドグマ。
ゲンドウに引きずられてここに来たレイは、エレベータの中でうずくまる。
ちん、と目的地に着いた音がして、扉が開く。
右手をゲンドウに掴まれ、強制的にエレベータを出る。
「立て、レイ。」
「………」
「立てと言っている。」
「………」
起き上がる。
「…付いて来い…」
カードキーを使い、リリスのいる部屋の扉を開く。
「…レイ、老人達は間違いなくここでサードインパクトを起こすつもりだ。いや、時は満ちた…起こさざるを得ないだろう。用意していたシナリオと多少違っていてもな。あとは、アダムとリリスの融合のみだ…」
…
「ようやく着いたな。」
第八ケイジ前に到着。
そこには、NERVの戦闘員が大量に待機していた。
「貴様…何者だ、所属は?」
加持に銃を向ける戦闘員達。
「えと、加持さんは敵じゃ無いんです!」
「サードチルドレン、それに根拠はあるのか?」
「彼はここまで僕らを護衛してくれました!」
「そうです!加持さんはあたし達を助けてくれたんです!」
「…わかった…通れ。銃は我々に。」
「はいはい。」
持っていた拳銃と装填用の弾を渡す加持。
ケイジの中に入ると、準備が整っている弐号機。
「じゃ、また後でね、シンジ。」
エントリープラグに乗り込むアスカ。
「うん、また後で。」
エントリープラグが弐号機に挿入される。
「加持さんはこれからどうするんです?」
「…考えてなかったな…」
「加持さんらしくないですね。」
「君達を助ける事で頭が一杯だったからね。」
「…じゃあ、ミサトさんの所に行ってあげて下さい。」
「え?」
「ここから直通で行ける筈です。」
「オレは部外者だぞ?」
「こんな非常時にそんなこと言ってられませんよ。」
「なかなかトンデモなことを言うんだな?シンジ君。」
「そうですかね?」
「…自覚ないのか…」
…
戦略自衛隊、臨時作戦本部。
「現在第3層と4層の黄色いやつは制圧下にあります。」
「紫のやつと赤いやつは?」
「防衛が堅く、部隊が壊滅してます。五分後に再度一斉攻撃をかける予定です。」
「…ちっ…」
「…おとなしく降伏すれば良いものを…」
「…!直下に高エネルギー反応!」
「なにぃ…っ⁉︎…」
閃光。
地面が膨れ上がり、破裂する。
消し飛ぶ臨時作戦本部。
十字架状の爆発が起こり、姿を現すエヴァ初弐号機。
『…!まずい、エヴァンゲリオンだ!作戦本部がやられた…!』
『慌てるな、戦力はまだ残ってる!』
重戦闘機がミサイルを放つ。
爆発で空気が揺れ、エヴァが見えない程の弾幕が命中する。
『どうだ⁉︎』
しかしエヴァにはA.T.フィールドがある。
『ぐわあぁぁぁぁ⁉︎』
弐号機に掴まれ、振り回された挙句、仲間の重戦闘機に衝突させられる重戦闘機。
爆発が起こる。
『くそ、何故効かん⁉︎』
戦車大隊が一斉射撃をするが、エヴァ初号機に踏み潰される。
『慌てるな…!赤のやつと違って紫のやつは無限に動けない筈だ!ケーブルがついてないなら残り5分で活動停止するは…ぐわぁ⁉︎』
次々と落とされていく重戦闘機。
地底湖に浮かぶ護衛艦が全火力を初号機に命中させるも、初号機のA.T.フィールドで真っ二つになり、轟沈する。
『退避ーッ!退避ーッ!』
空から巨大なミサイルが二つ、弐号機にぶつかる。
しかし、爆発しても一切効いた様子はなく、戦車大隊を破壊し続けていてる。
『何故だ…何故効かんのだ…⁉︎』
『第2戦車隊、全滅!』
『航空隊の増援を呼べ!今すぐだ!』
『ダメです、通信途絶!何者かにハッキングされています!』
『なんだと⁉︎例のスーパーコンピュータか⁉︎』
『いえ、これは…』
…
「…今頃戦自は焦ってるだろうな…」
小型の電子機器を弄る加持。
「ふぅ…これで少しは時間が稼げる…」
エレベータの扉が開く。
「よぅ!葛城、増援に来たぞ。」
「加持⁉︎なんでここに⁉︎」
「…加持君、君は部外者の筈だが?」
「いやぁ…これでも元NERV職員ですからね。」
「戦自からのスパイやってた癖によく言うわね!」
「………」
嫌な沈黙。
沈黙を破ったのは、爆発音。
「⁉︎」
「もう戦自がここまで⁉︎」
下を覗くと、戦闘班が爆発により壊滅していた。
「…なんてこと…」
…
「どうぉりゃあぁぁあ!」
弐号機のA.T.フィールドが、戦車隊を吹き飛ばす。
背後から迫った重戦闘機も、蹴り飛ばされ地面に激突、爆発する。
「こっちには…一万二千枚の特殊装甲と…A.T.フィールドがあるんだからっ!」
弐号機を大量の誘導ミサイルが襲うが、A.T.フィールドに阻まれる。
「あんた達にぃ…!負ける訳無いでしょ!!」
地を蹴り、空を舞う弐号機。
着地した先の自走式多連装ロケット弾発射機群を蹴散らしていく。
「どう⁉︎シンジ!凄いでしょ!」
「確かに凄いけど…戦闘中なんだから、僕より敵に集中した方がいいと思うよ?」
「…ごめん。」
ゼーレの最高責任者、キールが呟く。
「…忌むべき存在のエヴァ…またも我々の妨げとなるか…やはり毒は、毒を以て制すべきだな…」
箱根上空。
9つの全翼機にそれぞれ搭載されている白いエヴァ。
『KAWORU』と書かれた紅いプラグが、白いエヴァに挿入される。
そして、全翼機から射出されると、翼を展開してジオフロントへ滑空していく。
空を飛ぶエヴァ量産機を見上げる初号機と弐号機。
「…エヴァシリーズ!…とうとう来たわね…」
「…うぷ…」
「!…シンジ、大丈夫?」
「いや…ちょっと前の事思い出しちゃっただけだから…」
「そっか…でも今回は前とは違うわよ、S²機関を搭載した弐号機と初号機、前回よりは安定したメンタル!そして何よりシンジがいる!今のあたし達は最強よ!」
「うん…ありがとう。」
…
NERVの最深部、ターミナルドグマ。
「…お待ちしておりましたわ。」
「…赤木博士…」
「…!…」
ゲンドウに銃を向けるリツコ。
「レイを離しなさい、従わなければ殺すわよ。」
「…そのちっぽけな拳銃でかね?」
「…ええ。あなたには相応しい末路だわ。」
「残念だが…それは不可能だ。レイには計画に協力してもらわなければならないからな。」
「そう…では死になさい。」
引き金を引くリツコ。
しかし、弾丸は光の壁に阻まれた。
「⁉︎…A.T.フィールド!」
「赤木リツコ君。」
ゲンドウの左掌には、火傷と何かの眼。
「…アダム!人を捨てたのね!」
「…今まで君は、本当によくやってくれていた。」
「…ッ!」
「愛していた。」
銃声が響く。
「…撃った…わね…母さんにも撃たれたこと…ないのに…っ…」
倒れるリツコ。
「……ぁ…」
目を見開くレイ。
「行こう、レイ。」
「……レ…ィ……」
「………ぁ…ぁ…」
「………」
…
「…S²機関搭載型を9機全機投入とは…大袈裟すぎるな。」
戦闘音の響く発令所で、呟く冬月。
「…まさかアレをここで起こすつもりか⁉︎」
…
戦自隊員を踏み潰す白い足。
背中に羽が収容され、ニヤリと嗤う。
ウナギのような顔をしたエヴァ9機は、両刃の剣をそれぞれ装備している。
「作戦は確か、各個撃破でプラグを引っこ抜くのよね。」
「うん、僕は右の4体を、アスカは左の5体をよろしく。」
「りょーかい!」
アスカとは逆方向に駆け出し、自身の目標の頭を潰す。
「この!」
活動を止めたエヴァの装甲を剥がす。
すると、背後から両刃剣で突かれそうになる。
「!」
素早く躱すと、両刃剣が停止したエヴァを貫く。
「今だ!」
両刃剣が抜けなくなり、動けない量産機の装甲を殴り、破壊。
そのままの勢いでプラグを引っこ抜く。
すると、量産機の動きが止まる。
「よし!」
そして、両刃剣が突き刺さったまま停止している量産機のプラグも引き抜く。
「これで2つ!次!」
…
戦闘班が敵の数を減らしてくれていた為、発令所の十数人だけでなんとか捌けている。
「マヤ!ロック外して!」
「でも私…銃なんて撃てません!」
しかし、マヤは銃を撃てずにいた。
「訓練でやっただろ⁉︎」
「訓練の時は人なんて居なかったんですよぉ⁉︎」
「…バカ!撃たなきゃ死ぬぞ!」
「日向君、敵の増援は⁉︎」
「今の所…監視カメラには確認できません!」
「ということはあそこにいる奴らを倒せば勝ちね…!」
「葛城…オレの出番は…」
「あんたは部外者なんだから下がってなさい!」
「…はい…」
「あっちこっち爆破されてるのにここは手を出さないか…」
「当然ですよ、ここにはMAGIのオリジナルがありますからね!」
「連中も無傷で手に入れたい筈です。」
…
(何を、してるの…)
レイのプラグスーツが脱がされ、ゲンドウが囁く。
「アダムは既に私と共にある。ユイと再び逢うには…これしかない。アダムとリリスの、禁じられた融合のみだ。」
ゲンドウの左手が、レイの胸にめり込んでいく。
「A.T.フィールドを、心の壁を解き放て。不要な体を捨て、欠けた心の補完を…」
(…痛い…苦しい…何を…されているの…?)
「さぁ、私をユイのところへ導いてくれ…レイ。」
(何を…しているの…私は…)
腹にめり込んだゲンドウの左手を掴む。
(…こんな手…リツコさんを傷つけた手…そんなの…)
「いらない。」
「レイ…⁉︎」
銃声が響く。
ゲンドウの表情が、苦しみに満ちる。
「…っ…ぁ⁉︎」
撃ったのは、リツコであった。
ゲンドウの左手を自身の体から引きずり出すと、ゲンドウは床に崩れ落ちた。
「リツコさん!」
リツコに駆け寄るレイ。
「…レイ…治った、のね…」
「リツコさん!今助けを…」
「…構わないわ…どうせ私は…助からないもの…」
「そんなこと言わないで!」
「最期に頼みがあるわ…」
「リツコさんは死なない!私のお母さんになってもらうの!」
「…どうして…最期の時は…素直に聞いてくれないの…」
「だから死なないんだってば!」
子供のように泣きじゃくるレイをそっと抱き寄せる。
「…大丈夫よ…あなたの事は…天国で…いいえ、地獄かもしれないけど…」
「…えぐっ…うぅっ…」
「…ずっと…見守ってて…あげるわ…」
「…リツコ…さぁん…」
「…大好きよ…レイ…」
「うぅぅ…っ…ひぐっ…」
「だから…最期に…お母さんって…呼んで欲しいの…」
「…っ…おかあさぁん!」
「…なぁに?レイ。」
「…おかあ…さぁん!…」
「…ありがとうね…レイ…」
そう言って、リツコは息を引き取った。
「おかあ、さん…」
「………」
「…ぅぅぅう…」
つづく
…最終にしようとしたけど…文字量がエグくなるので…次最終という事で…
無様ですね、僕。
本小説で好感度が高いキャラ
-
シンジ
-
アスカ
-
レイ
-
カヲル
-
ミサト
-
加持
-
リツコ
-
ゲンドウ
-
冬月
-
青葉
-
日向
-
潔癖症
-
満月アキナ
-
トウジ
-
ケンスケ
-
ヒカリ
-
鈴原サクラ
-
碇サクラ少尉