LASだと思う、知らんけどw   作:かの存在完全に消滅す

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「ちゅーことで、アスカの住まいはここね。荷物は後で届く話になってるわ。」

 ミサトが地図を指差しながら、新生のあたしの住居の場所を説明する。

 体の中にいる私にとって、それは朗報だった。窓もない殺風景なネルフの個室から、アパートの一室ではあるが、まともな住居が提供されるのだ。

 それに、死人の私が生者に口出しする権利は無いとはいえ、あたしとは別の女の子がシンジと暮らしているのを見るのはこれ以上は御免だったので、前史のような同居生活では無い事にホッとしたのである。

「…あの…ミサトさん…」

「何?」

「…無茶振りかもしれないんですけど…あたし、シンジと暮らしてもいいでしょうか…?」

 そう来るとは思わなかった。

(おいバカやめろっ!シンジと一緒に暮らすのだけは絶対にダメだっ!)

「…やっぱ…ダメ…ですよね…」

(そうよっ!ダメに決まってるでしょ!)

「あっ、全然いいわよ〜。」

(おいミサトォォォオォォォ!!!)

「えっ?いいの?」

「アスカが望むならね。」

「でも…シンジがダメって言うんじゃ…」

(そうだそうだっ!同居生活は互いを傷つける事にしかならな…)

「ちょうどパイロット達の連帯力を高めたいと思ってたのよ〜。それに、アスカみたいなキレイな女の子、シンジ君もきっと受け入れてくれるわよ。」

(この呑んだくれアラサー女がぁぁ!!)



撫。

 ミサトの住むマンションに、新生のあたしの荷物が届いた。彼女は大量の段ボール箱を、先ほどまでシンジの部屋であった場所に運び込み、シンジの荷物は1つの段ボール箱にまとめられた。

 

 そこそこの広さがあった筈なのに、その部屋はみるみる狭くなっていった。

 

「ほんと…日本の部屋ってせっまいわね…」

 

 独り言を言う新生のあたし。声には疲れが見える。黙々と作業を続けていると、外の階段を複数人が上がっている足音が耳に届く。

 

 足音が止まったと思えば、玄関のドアが開く音。

 

「「お邪魔しまーす!」」

 

「…お邪魔します…」

 

 玄関から2バカと優等生の声。どうやら、学校からシンジが帰ってきたらしい。

 

「…ファーストの声?」

 

 新生のあたしは、シンジが2バカやファーストを連れて来た事に苛立っているようで、玄関の方を睨みつけた。

 

 まぁ、私には好都合なのだが。シンジ1人が帰って来るよりずっといい。シンジと外のあたしが2人きりなのはもう嫌だから。そんなことをずっと続けていたら、私は…どうなってしまうのだろう…

 

「…なんやこの段ボールの山…」

 

 鈴原が新生のあたしの部屋を覗き込んでいる。それに続くシンジと相田。

 

 シンジが部屋を覗き込んだ瞬間、シンジの前に飛び出す新生のあたし。

 

「シンジ!ようやく帰ってきたわね!ここあたしの部屋になるからあんたの荷物物置に運んで!そこにまとめといたから。」

 

「で、出たああああ!!」

 

 鈴原が腰を抜かす。マヌケな顔が非常に愉快だ。

 

「なによ、の◯太のバトルドームも出たー!みたいに言わないでよ!」

 

 新生のあたしは、ぼーっと突っ立っているシンジに再び目の照準を合わせる。

 

「ほら、早くしなさいよ!ただでさえ狭い部屋なのに、あんたの荷物があると余計場所がとられるんだから!…全く日本の部屋ってどーしてこんなに狭いのかしら!」

 

「…なぜあなたがここにいるの…?」

 

「何でって…あんたには関係ないでしょ!それにシンジ、勘違いしないでよ!ミサトに言われただけであたしの意思じゃないんだから!」

 

「シンジ、お前…惣流とナニしたんや…」

 

「あぁ…ひとつ屋根の下に美少女と美女の2人と暮らせるなんて…俺はお前が羨ましいよ碇…!」

 

 

 

 

 

 

「たっだいまー!」

 

 玄関から明るい声。ミサトがネルフから帰ってきたのだ。

 

「お帰りなさい。ミサトさん。今日は早いですね。」

 

「そうそう、今日は珍しく残業が無くて…って、レイ!シンジ君のクラスメイトも…」

 

「あ、はい上がらせてもろてます!」

「お疲れ様ですミサトさん!」

 

 緊張した顔をする2バカ。しかし、ミサトと目があった瞬間、にやけた顔に崩れる。

 

(無様ね…)

 

「…葛城一尉、なぜ2番目の子が?」

 

「ああ、アスカが自分で来たいって言ったのよ。よっぽどシンジ君と暮らした5日間が楽しかったのねぇ…」

 

 まあ、そうでしょうね。あたしは全然楽しくなかったけど!

 

「惣流と五日間暮らしたやとォ⁉︎」

 

「なんかイヤーンな感じ…」

 

 そう言うと相田は、元シンジの部屋をアスカの部屋へと嬉々として作り変えている新生のあたしに視線を向けた。

 

 目が合ったのに気づいた新生のあたしは、相田を睨む。すると、相田は視線をミサトの方に逃がした。

 

「…!ミサトさん昇進されたんですねおめでとう御座います!」

 

「え…ええ、そうね。」

 

「どうして分かったんやケンスケ…」

 

「気付かないのかね諸君!葛城さんの襟章の線が二本になっていることを!一尉から三佐に昇進されたんですよ!ネッ!」

 

「あ、有難う…」

 

「そんなの気付くの相田君だけだ

わ…」

 

 青白い肌をさらに青く染め、相田から離れるファースト。

 

「よっしゃあ、そうと決まれば!」

 

 

 

「葛城さんの昇進及び、惣流様のお引越しを祝して…カンパ〜〜イ!」

 

「…なぜ焼肉パーティなの?」

 

 ファーストが新生のあたしに質問すると、彼女は不愉快そうに返す。

 

「知らないわよ、メガネバカが勝手にやり始めたんだし…」

 

「そこ!何ヒソヒソやってんの?さあ食べて食べて!」

 

「嫌よ。肉、嫌いだもの。」

 

「試験の作戦会議はどうなったんだろう…」

 

(あぁなるほど。そういう事か。4バカが揃ってたのは。)

 

「やっぱワシはさっき言ったように腹括ったでェ…」

 

 チャイムが鳴る。「はい、葛城です。」と、ミサトが出る。

 

「あのう、お邪魔します。」

 

 玄関にいたのは洞木ヒカリ。旧世界での私の親友であり、あたしが壊れていた時の恩人でもある。

 

 まぁ、この世界のヒカリは所詮新しい命…悪く言えば偽物だ。本物のヒカリは、サードインパクトの時既に死んでいる。

 

 生き残ってこの世界に来れたのは、シンジだけなのだ。

 

「な!何でいいんちょーがここにくんのや!」

 

 鈴原の頬がほんのりと赤色に。

 

「来たわねヒカリ!あたしが呼んだのよ、むさ苦しい男共がいるから。とくにあんた。」

 

「何やとォ⁉︎」

 

 赤い顔が怒りの赤さへ変わっていく。茹で蛸のようで、非常に愉快である。

 

「アスカホントに碇君と住むんだ…」

 

「そ。作戦上仕方なくね。」

 

 またもチャイムが鳴る。

 

「!まだ呼んどるやつおんのか⁉︎惣流!」

 

「いや…?」

 

「よ!葛城!松代の土産、買って来たぞってあれ?人口密度が随分高いな?誰かの誕生日(バースディ)か?」

 

「加持さん!」

 

「げ…バカジ!」

 

 突然家に入り込んでくる加持さん。懐かしい顔だ。

 

 かつて、好きだと思っていたヒト。

 

 かつて、知らぬ間に死んでしまったヒト。

 

「アスカの引っ越しとあたしの昇進祝いですけど!あんたなんかだーれも呼んでませんよーッ!」

 

「つれないなぁせっかく土産のわさび漬けと桜肉持って来たのに…」

 

「あたしは?あたしにはお土産ないんですかぁ?」

 

 くねくねと腰を動かして土産をねだる新生のあたし。正直中の私からするとウザい。

 

「アスカにはこれさ!」

 

「わーい、嬉しい!ありがと加持さん!」

 

「…おまえこの兄さんにはアカラサマにワシ等と態度が違うな…」

 

 鈴原が猫を被る新生のあたしに一言。

 

「当たり前でしょ、月とぞーり虫に同じ態度がとれるわけがないわ。」

 

「…草履虫ってワシのことか?」

 

「そうよ、あんたがぞーり虫で相田がミトコンドリア。シンジは………よく言ってスッポンね。」

 

 はぁ、とため息をつくと、鈴原は顔の向きを加持さんへ。

 

「あんさん騙されたらあきまへんで、この女カワイイ顔してホントはとんでもない女なんや。」

 

 鈴原が加持さんに新生のあたしの本当の性格を伝えようとする。

 

「ちょっと!加持さんになんて事言うのよ!」

 

「意地は悪いわ、口は悪いわ、暴力的だわ…」

 

「や、やめてよ!なんてことっ!」

 

(…無様ね)

 

「オマケに裏表の激しさと言ったら、そらもうこんな性根の腐った女は後にも先にも…」

 

 鈴原が畳み掛ける。

 

 後になって思えば、私はシンジを奪おうとしている相手が追い詰められているのを嬉しく思ってしまっていたんだろう。

 

 私は高揚感を感じていた。

 

「…そろそろやめなよトウジ!」

「やめてってばぁッ!」

 

 鈴原を止めようと、鈴原に向かうシンジ。それと同時に、新生のあたしの拳が放たれる。拳は鈴原に真っ直ぐ向かっていき────

 

 射線上に出てしまったシンジの左頬に命中した。

 

「げふっ!」

「あっ」

 

 冷や汗が頬を伝う。倒れ込んだシンジ。

 

「ごめんシンジ!大丈夫⁉︎」

 

「いや…僕は大丈夫なんだけど…」

 

 ゆっくりと起き上がり、周りを見回すシンジ。

 

「え?…はっ!」

 

 気づけば、ミサトたちが新生のあたしを驚いた目で見つめていた。

 

(猫被りを破られた、か。)

 

「……へ、変ねぇシンジは…ちょっと小突いただけで倒れるなんて…」

 

「…よーやく正体表したな惣流!」

 

「正体⁉︎な、なんのことよっ!」

 

 大量の汗をかきながら、必死に言い訳をする新生のあたし。服の中がじめじめと蒸し暑くなっていく。

 

「…知ってたわよ、薄々とね。」

 

 ミサトが慌てる新生のあたしに声をかける。彼女が振り返ると、そこには優しい表情をした加持さんとミサトが立っていた。

 

「アスカの演技はまだまだ甘いよ。」

 

「…演技なんか…してないわよ…」

 

 顔を反らす新生のあたし。

 

「…アスカ…もう育ててくれた義理の両親の前じゃないんだから…無理していい子でなくてもいいのよ…」

 

「…無理なんか…してないわよっ!」

 

 肩に冷たい手が置かれる。バカシンジの手だ。

 

「アスカ…」

 

「なによ…シンジ。」

 

「かわいいね。」

 

(…は⁉︎)

 

 ぼんっ、と聞こえた気がする。顔が熱い。

 

(???)

 

 他人の体の中でただ混乱するしかない私。

 

(シンジって…こんな積極的な奴だっけ…⁉︎)

 

「ななな、なに言うのよ突然!」

 

 仰け反る新生のあたし。

 

「イヤーンな感じ…」

「シンジ君⁉︎」

「なんか変なもんでも食ったんか⁉︎」

「碇君…すごいわね…突然すぎだわ。不潔よ不潔!」

「碇君がそういうことすると、むかむかする…」

「グワーァ…」

 

「あ、あはは!」

 

 シンジも恥ずかしそうに顔を赤くする。

 

(だめ…共感性羞恥で死ぬ…)

 

 

 夜は更けていく。私も、眠る時間が近づいていく。

 

 

「すぅ…すぅ…」

「ぐうぅぅうぅぅ…」

「すぴー…」

 

 皆眠ってしまったようだ。新生のあたしも寝息を立てている。

 

(ふう…なんとか今日は乗り切れた…)

 

 そして、思考を始める。

 

 とにかくデータが足りない。

 

 どうすれば、体を取り返せるだろうか。

 

 どうすれば、バカシンジに抱きつけるだろうか。

 

(強く念じると新生のあたしの思考に影響を与えられる、か…)

 

 それを練習し続ければ、体を取り返せそうではある。しかし、膨大な時間を要するだろう。

 

(でも、今はそれをやるしかないか…)

 

 試しに、「瞼を開ける」という事に集中してみる。

 

 うっすらと、瞼が開いた。

 

(ナイスナイス!!できた!)

 

 なんともあっさりと成功してしまったことに驚きと喜びを覚える。

 

(なんだあ、寝ている間だったら動かし放題だったのね!今まで考えてばっかりだったのがバカみたいだわ!)

 

 次は、「手をついて立ち上がる」ことに集中。

 

 体が重く、うまく動かない。

 

(うぐぐ…動いて!)

 

 体が震えながら起こされていく。

 

「あれ?アスカ起きてたんだ。」

 

(えっ⁉︎)

 

 シンジに話しかけられた。予想外の事態に焦る私。

 

(どうしよう…なんて返そう…?)

 

 起き上がると、シンジと目が合う。

 

(と、とりあえず会話しなきゃ!)

 

 発声することに集中しながら、何を言うか考える。並行してものを考えるのはなかなか難しい。

 

「シンジ…」

 

「何?」

 

 名前を呼んでみたが…この先が思いつかない。

 

「おフロ…沸いてる?」

 

「あ、うん。」

 

 そして思いついた言葉がこれだった。いたって普通の日常会話である。

 

「じゃあ入ってくるわね…」

 

 とりあえず会話を終わらせ、バスルームに逃げる。

 

(会話…できちゃった…)

 

 緊張の糸が切れ、体はそのまま床に崩れ落ちる。

 

 しかし、私はこれで満足だった。今はこれでいいと思えた。体を一時的に奪い返せた、それが嬉しかった。

 

(いずれ、シンジともちゃんと話そう。私も逆行してきていることを。)

 

(そしたら…今度は抱きしめてくれるかな…)

 

 幸福感に包まれたまま、私は眠りについた。

 

つづく




過去一間が空いてしまった…申し訳ありやせんした。

次回予告はめんどいんでやりません。(飽きてきたなんて言えねぇ)

引き続きタイトル変えのアンケートでふ

  • 変えてもええで
  • だめに決まってんだろがよ
  • タイトル変えるならいいアイディアある
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