『笑えば、いいと思うよ。』
「!」
無機質な部屋。掃除すらされておらず、唯一の装飾品は割れた眼鏡。
野戦病院に置いてあるようなベッドの上で、月明かりに輝く紅い目がふたつ。
「…なに?今の夢……碇君?」
体育の授業。男子はソフトボール、女子はプールだ。
だが、男子の大半は真面目にソフトボールなんか全くやる気は無く、女子の水着姿を覗き見をしている者ばかりである。
「おーう、センセもスケベェやなぁ〜誰見とんのや?洞木か?おっ綾波きゃ?おたくシブいねぇ。」
綾波がなんと無く気になって見ていたところを、トウジにからかわれる。
「ち、違うよ。そんなんじゃない。」
そう、本命は綾波では無いのだ。
いくら感情が見えるようになっても、
ぜった…多分惚れはしない。
そう、多分惚れはしない、しないんだ。
…
第六ケイジでシンクロテストが行われ、今日は綾波も参加した。
「レイ…明日はいよいよ零号機再起動実験だな」
「はい。」
「怖いか?」
「大丈夫です。心配ありません。」
「そうか…」
(父さんと話すと心なしか嬉しそうだな…でも父さんが見てるのは綾波じゃない。母さんの面影なんだ…)
帰り道…
「碇君。次の土曜日、NERVのプール、一緒に行きたい。」
「え?どうして?」
「今日のプール、気持ち良かったから、碇君にも気持ち良くなってほしい。」
「でも僕泳げないよ?」
「水深が浅ければ大丈夫の筈よ。」
確かにそうである。
でも怖いもんは怖いのもまた事実…
「じゃあ断る理由も無いし、そうするよ。」
綾波の願いは断れない。だって可愛いんだも…ゲフンゲフン…感情を活性化させる為だもんね仕方ないね。
コンフォート17のミサトの家
「シンジ君〜これ、本チャンのセキュリティカード。」
ミサトさんに渡される。
「あ、ありがとうございます。」
「あとコレ、レイの更新カード。」
綾波のカードも渡される。
「リツコが渡し損ねたらしいから、明日渡しといて。」
「分かりました…」
そういえば綾波は明日の朝はシャワーを浴びてた筈だ。もしこの世界でもそうだとしたらまずいことになる。
男子としては見たい気持ちもあるが…理性でそれをなんとか抑え込む。
(…家を出てくるまで外で待とう…)
…
綾波レイは朝のシャワーを浴びていた。
「笑う…笑うってなに…?」
本では何回も見た事のある表現。
嬉しい時や楽しい時に使う感情表現。
「嬉しい…嬉しいってなに…?」
わからない。
そのままバスルームから出て、着替えはじめる。
「碇君…いっしょにいるとぽかぽかする…離れていると…碇君に会いたくなる…」
だからプールに誘った。
「ぽかぽかする気持ちが…嬉しい?…分からない…」
早くNERVに行って碇君に会おうと準備を急ぐ。
ドアを開けると、そこに会いたい人がいた。
「あっ…綾波!」
「碇君⁉︎」
突然の遭遇に心臓が高鳴る。
(まただ、またぽかぽかする気持ち。)
「これ、新しいカード。リツコさんが渡しそびれたからって…」
シンジがセキリュティカードを差し出す。
「…ありがとう」
カードを受け取る。少し汗ばんだ手が自分の手に触れて、胸が少し熱くなったように感じる。
「綾波、NERV行くんでしょ?一緒に行こうよ。」
「う、うん。」
(なんだか…ぽかぽかして…ちょっと胸の中が熱い感じ…)
顔を赤くしながら、廃墟のようなマンションを出た。
…
『これより、零号機再起動実験を行います。』
「レイ、準備はいいか?」
ゲンドウがレイに話しかけている。
『はい。』
ゲンドウ達の後ろで零号機の再起動実験を見守るシンジ。
零号機の再起動実験が順調に進んでいることに安堵しながら、思考の海に入る。
(綾波…今はいつもの綾波だけど…さっきはなんだか調子がおかしかったな。なんだったんだろう…)
「…ルスおよびハーモニクス正常…」
(そういえばこの実験は中止になるんだっけ。)
(たしか、使徒が現れて…それから…)
着信音が鳴る。受話器を手に取る冬月。
「…分かりました…碇!未確認飛行物体が接近中だそうだ!」
受話器を置くと、ゲンドウに対してそう言った。
「テスト中断!総員第一種警戒体制!」
…
零号機エントリープラグ
「…使徒⁉︎」
反射でガラス越しのシンジ達の方を見るレイ。
(如何して…如何して…このタイミングで使徒が!?)
動揺。
(…今回も碇君の手助けが出来ないのね…)
落胆。
(…嫌な…感じがする…)
不安。
レイ本人が気づかない内に感情は目覚め始め、そして再び第3新東京市に最強格の敵が迫っていた。
つづく
これは本当にLASなのだろうか…
てか一気に感情目覚め過ぎです綾波サン。