Re:ナツキ・スバルが女だったら   作:ラノベキャラの女装ネタ好き

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第二章4『放蕩貴族』

王都の道にはまだ不慣れな所が多いとはいえ、知っている道をただ逆走するだけで迷子になるわけがない……と、思い込んでいた数刻前の自分を呪いたい。

 

「ここ、どこだよ……?」

 

ナツミは頭を抱えて立ち尽くしていた。

 

 

 

いつの間に紛れ込んだのか人並みの喧騒から離れた狭い路地。

異世界転移は路地裏からのスタートだったが、少なくともあの場所とはまた違った場所であり、今度はあの三馬鹿のような不良の姿すら見当たらない。

 

「コミ力に定評あるナツミちゃんでも、流石に誰もいない状況となっては、どうしようもないんだがこれが」

 

老人だって、赤ん坊だって、しまいには犬猫とだって仲良くなれる自信のあるナツミだが、今回はその個性も役に立ちそうになかった。

ならば大人しく来た道を引き返そうにも、パン屑を落としてきた訳でもあるまいし……いや、パン屑だと鳥や鼠に食べられてどのみち意味がないのだが、入り組んだ道のせいで、もう自分が右か左から来たのかも分からない。

 

正真正銘、迷子である。

 

「あー、本気で不味いぞ。フェルト達も待ってるだろうし、二回目の死因が迷子の末の餓死とか目も当てられねぇ」

 

死に戻りに何か特別な条件があれば話は別だが、このままでは本当にやり直すことになるのではないかとナツミは震える。

 

「死にたくねぇよ。こんな馬鹿みたいなことで!」

 

最悪これでリンガ屋から再タートならまだいいが、またエルザと戦う羽目になるなら、それは死んだ目をして生きるのを諦めるレベルだ。

せいぜいオートセーブであることを願いつつ、ナツミはせめて人通りのある場所に行こうと歩き出した。

 

 

「そこをちょと待ってくれるかぁ~な」

 

「どひぇ!?」

 

 

だからその肩を優しく叩かれたのは完全に不意打ちであり、乙女らしからぬ悲鳴を上げてしまったのも無理はない。

 

「実は道に迷っていてねぇ。宜しければ貴族街までの道を教えてくれないかぁな?」

 

「背高!?ピエロ!?貴族街!?つぅかお前も迷子かよ!初登場のクセして設定盛り過ぎじゃねぇかテメェ!?」

 

「ん~?成る程、どうやら君も迷子のようだねぇ」

 

長身のピエロメイクをした見知らぬ男性。見た目こそ奇抜だが、第一村人発見という本来なら舞い上がる状況も同じ迷子であるという言葉に落胆に沈む。

 

「ここは白馬の王子様が助けてくれる流れじゃねぇのかよ……」

 

「どうやら、ガッカリさせてしまったよーぅだね」

 

「そぅ~だね、ナツミちゃんがっくりだよ」

 

「おや、自己紹介かぁい?

ならば私も一応名乗っておこうか。私はロズ……そうだね、気軽に『ロズっち』と呼んでくれたまーぇ」

 

能天気そうにロズっちと名乗るその男。

この時彼がロズワールと名乗っていれば、ナツミはエミリアとの出会いやオットーの話から知り得た情報で、ひもづる式に彼がロズワール・L・メイザース辺境伯であることに行き着いたのだろう。

 

(愛称、それとも偽名か?……おいおい、実はやんごとなき身分のお方でした、とか止めてくれよ)

 

だが、ロズワールがここで真名をボヤかしてしまったので残念ながら気付くことはなく、"一難去ってないのにまた一難"という現状に胃が痛くなる思いだった。


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