「はい、どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
今日は、三月十四日世に言うホワイトデーだ。この日は、バレンタインのお返しをするイベントで、デート中の斎賀玲はその恋人である陽務楽郎から贈り物を受けとる。
(うれしい……)
決して、なにかを貰えたことが喜ばしいのではなくて、こういうやり取りを普通にできる関係性になれたんだなと思って、胸がポカポカする。
「そう言えばさ」
嬉しくて、渡された贈り物が入った紙袋をギュッとしてると、彼が問いかけた。
「高校の時、なんで俺にバレンタインくれなかったの?」
「ぴぇっ!」
何て事を聞くんだ。
動揺した玲は、あわや彼からの贈り物を地面に落としかけた。
◆
楽郎の問いかけに、彼女は予想以上に動揺している。
「ああああのの、しょしょれはでしゅねえ!」
「うん」
ワタワタとしている彼女に、袋が振り回されると危ないので、一旦預かった。
「だ、だってあの頃は、わ、私の片想いで」
「うん?」
楽郎の予想とは違う方向から、彼女は話し始めた。
「その、勇気がでなくてですね!数年間、チョコレートを作っていたのに、岩巻さんに渡すしかなくてですね!」
「あー、ちょっと待って、数年?」
高校の頃の話だけと思ってたのだが、言い方的にもっと期間が長そうだ。
「は、はい、その中学生の頃から」
楽郎は思わず天をあおいだ。
もちろん、彼女が自分のことを長いこと思っていてくれたことは、知っている。けれど、具体的に彼女からエピソードを聞かされると、色々と込み上げるものがあるわけで。
「取りあえず、中学生の頃の俺を殴ってくるわ」
「なぐっ!?な、なぜ?」
なぜってそりゃここまで健気に自分を思ってくれていた女の子に気づいてなかった男には、制裁を加えないとだめだからだ。
「だ、大丈夫です。い、今はちゃんと気づいてくれてるじゃないですか」
「玲さん……ありがとう。女神?」
「めめめめめめめめぇぇーー??!!!?!」
楽郎はどうやら言葉の選択を、ミスったようだ。本心からの思いだったので、反省するつもりはないけど。
「お詫びじゃないけど、何でもやりたいこと言って?」
「な、んぐっ。……何でも良いんですか?」
「俺のできる範囲なら」
世界の半分がほしいなんて言われても無理だ。
「な、何でも」
「まあ、すぐじゃなくても大丈夫だから」
「手!手を繋いでほしいなって」
「そんなことで良いの?」
「い、いえ、その。数十年後もずっと、繋いで欲しい、何て」
その言葉を聞いた瞬間に、楽郎の身体の底から何かが上がってきた。その何かは、とても甘くてけど少し苦くて。楽郎は、何だが息苦しくなって、はぷはぷとしか呼吸ができない。
「玲さんの仰せのままに」
楽郎は自然と彼女の手をとり、大事なお姫様の手の甲にひとつキスを落とした。
「んんんんん…………死!??!?!?」
「あ……まっておれいまなにやったの」
恋人たちは、仲良くテーブルに突っ伏した。