冒頭のは某ペンギンアニメの運命ポエムのイメージです。冒頭と最後だけ思いついて一気に書き上げたので不足なところもあると思いますが読んでいただければ幸いです。
世界には「運命」というものがある。
才能を持って産まれたとかお金持ちの親の下で育ったとか人間関係に恵まれたとか。そうでなくても大事な局面でまるでサイコロを振って最大値を出すように正解を選べる人というのがこの世界にはいる。そしてそういう人が世界にとって重要な「登場人物」になれるのだということが私が成長するにつれ理解したことだった。…私はきっとそういう存在ではないと言うことも。
そんな私が神ゲーとして有名な「シャングリラ・フロンティア」を遊び始めた時思ったのは「ここでなら私も一人のプレイヤーとして主役になれるかもしれない」ということだった。豊富な職業やスキル、多彩なNPCの反応は私をシャングリラ・フロンティアにのめり込ませいつの間にか私も中堅の上位くらいのプレイヤーになっていた。私はとても充実していた日々をおくっていた。
…あの時。難攻不落の黄金の龍の角をへし折った超高速の光、いや一人の「プレイヤー」を見るまでは。
その偉業を成し遂げた彼、通称ツチノコ─本当の名前はサンラク
というらしい─の今までの行いは調べればすぐに出てきた。ヴォーパルバニーを仲間にしているとかユニークモンスターであるクターニッドを初めて倒したパーティーにいただとか探せばキリがなかった。
そしてそれを調べるほどに私の心は劣等感に苛まれていった。今までしてきた努力、選択は何だったのか。それともそもそもの思考、才能が違ったのか。分かっていることは一つ。
結局この仮想世界にも「運命」はありそれに私は選ばれなかったということだけだった。
それからというものあんなに鮮やかだったシャングリラ・フロンティアでの日々はくすんでいってしまい私は引退すら考えるようになっていった。
そんなある日前にパーティーを組んでいたプレイヤーから相談が持ちかけられた。
「なあマリ。お前アルバイトする気はないか?」
「…どういうことですか?」
「いやさあ俺の甥っ子たちがこのゲームで遊びたいっていうから最初のガイドをしようと思ってたんだが週末急に仕事が入っちまってな。それでどうしようかなと考えてたらお前が前に組んだ即席パーティーで初めて会った奴にコツとか教えてたの思い出したんだ。なぁ頼む!!欲しい素材とかあったらできる限り工面するから!!」
「はぁ。別にいいですよ。特に予定とかないですし。」
昔ならあちこちユニーククエストや貴重な素材なんかを探し回っていたのだが最近は全く気力が湧かず街をぶらつくことがほとんどだ。
「良かった。じゃあよろしく頼むな。」
そう言われたのが数日前。そして今私は3人のプレイヤーに囲まれている。
「よろしくお願いしまーす!」
「よろしくねお姉さん!」
「…よろしくお願いします。」
アバターの見た目こそ若者だが声と動きで彼らが中学生になったかならないかくらいの年齢であることは容易に分かった。正直うるさいなと思いながらも年上として接する。
「うんよろしく。ところで何がやりたいとかある?」
「オレやっぱりモンスターをかっこよく倒したい!」
剣士を選んだらしい少年がそう答える。
「私は魔法をいっぱい覚えたいな!いつか空も飛びたい!」
こっちは杖を持った少女だ。
さてどうしようかと思いながらもう一人、弓を持った少年の返事を待っていたのだが中々答えない。
「………。」
「…君は?」
つい痺れを切らして問いかけてしまった。
「…僕は二人についていけたらそれで…。」
なんとも歯切れの悪い返事だ。まあさっきの二人と全く方向性が違うことを言われるよりはマシか。
「よし分かった。ならさっそく近くの森に行こう。」
「「はーい!」」
数時間ほど森で戦闘などを行った結果だんだん三人について分かってきた。剣の少年(プレイヤー名は別だがあーくんと呼ばれている)がどんどん前に切り込み魔法使いの少女(こっちはふーちゃんらしい)が状況に応じて魔法を放ちつつ作戦を考える。そしてその作戦に合わせて弓の少年(りーくんだそうだ)が弓を放つ。まあ連携としては悪くないがそれよりも弓の少年が戦闘中やたらと他の二人の顔色をうかがおうとするのが気になった。それは戦闘中だけではなく移動中もそうだ。別に二人が彼を嫌っているとかではなさそうだし逆もそうであることはなんとなく分かる。ならどうしてなのか。
その理由を私は街に着いてからそろそろ終わりにしないといけない時間だとログアウトの準備を始めている時に聞いてみることにした。別にことさら強い興味やしなければならないと思ったわけではない。…強いて言うなら気まぐれだった。
「何だかずいぶんキョドキョドしてたけど…楽しくなかった?」
「楽しくなかったわけじゃないよ。僕こんなにきれいなVR初めて見たし戦うのも面白かったし。だけど…」
「だけど?」
「僕あーくんとふーちゃんがやりたいって言うからシャンフロ始めたんだ。だからあーくんとふーちゃんがやりたいことできるようにしないとって思って。それで二人のこと見てたの。」
「…別に二人がきっかけだからといって彼らの顔色見ないといけないわけでもそもそもついていかないといけないわけでもないと思うけど。」
「でも僕あーくんやふーちゃんと違って明るくもないし行動力もないし…だったら二人についていったほうが…。」
…聞いていてだんだんうざったくなってきた。思わず年上であることを忘れて声を荒らげる。
「あーもう!別に好きにすればいいじゃない、これはVRMMOでつまり一人一人が主役のゲームなんだから!!」
それを聞いた彼がハッと目を見開くのが分かった。そして自分が発した言葉なのに自分も同じ表情をしていることも。
「…いいの?じゃああーくんとふーちゃんはもう次は自分たちだけで遊ぶつもりらしいんだけど僕お姉さんについてっていい?まだまだ聞きたいことたくさんあるんだ。」
「…予定が合うなら。」
そう返事をしながらも私の思考は先ほど発した言葉を反芻していた。
一人一人が主役。それはよく現実世界で大人がよく言う言葉でそれを私は綺麗事だと思っている。だって他の誰かより優れた何かや運を持っていないものは「
でもゲーム、つまり私が楽しむ事を目的とするのなら。別に世界にとって主役じゃなくてもいいんじゃないか?特別な何かを持たなくても優れた選択をしなくても。今まで積み上げたことが私だけの物語になるんじゃないか?
それは幻想かもしれない。いつかそう考えた自分を消したくなる時が来るかもしれない。それでも少なくとも今は。
この世界の主役として歩く夢を見ていたい。
神ゲーと称される「シャングリラ・フロンティア」、その広大なマップの半分である旧大陸にて。一人の女が最近小さな噂になっている。何でも彼女は旧大陸を歩き回って野良パーティーを組んでは新人プレイヤーの教育を行っているらしくしかもその教え方がとても上手いんだとか。またただ一人取っている弟子も有名クランからスカウトがかかるレベルの実力なのに全て断っていてその理由が彼女のそばのほうがいい勉強になるからだっただとか。
しかし例えそんな噂が今の彼女らに届いたとしても特に気にすることはないだろう。だって。
今彼女らは自らによる自らのための物語を楽しんでいる途中なのだから。