白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

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*注*
タイトル変更と伴い若干のネタバレを含む話の投稿です。



第0話 Can(Not) Retry(do)

 長い間、私は夢を見ている。

 

 それはいつものことだ。

 知的生物、特に人間の脳内構造をしているならなおさらのことだ。

 あたかも現実の経験であるかのように感じる、一連の観念や心像を『夢』として見なければ私は……

 

 いや、そもそも考えても無意味だ。

 

 それよりも今は私がすべき事は経験と見聞きしたこと、出会った者たちと彼らの辿った末路を、『次の世代に残す』ことだろう。

 

 と言ってもそれを出来るのはほぼ一瞬、『黒』が『白』に戻る刹那のごとき合間。

 今の夢が終わり、次が始まるまで。

 

 常人ならば無意識の瞬きを一つ終える前に過ぎ去る時間だが、今の私にとって造作もないことだ。

 肝にこの体は()()()()()

 

 私は色が変わるのを横目で何となく(気付き)ながら簡潔に情報を書き残す。

 

 さて、次はどうなることとやら。

 

 いつ、夢は終わりを告げてくれるのだろう?

 

 いつになれば私は終幕を迎える?

 

 それらを思い浮かべながら、私は目を閉じて終焉を静かに迎えた。

 

 密かな願いを込めて。

 

 

 


 

 

 長い夢を、『それ』は見ていた。

 

 何時眠りに入ったのかも忘れるほどの長いそれは『それ』に取っての現実。

 

 そもそも『自己』としての認識が薄い『それ』にとって夢は暇つぶし。

 

 ある日、耳元で一際大きく囁く声によって『それ』の夢が終わりを告げる。

 

『井上! ルキア! チャド(茶渡)! 石田────!』

 

 まどろみの中、夢の中で何度聞いたことのある声が────

 

『────浦原さん! 夜一さん! 恋次! 白哉! 冬獅郎────!』

 

 ────何度も名を呼ぶ。

 

 それらは、『それ』が微睡の中で見てきた人物の名ばかりでさらに意識が□□の傍へと引きずり込まれていく。

 

『誰も、誰も居ねぇのかよ?!』

 

 なんと悲痛に満ちた声なのだろう。

 

 ぼんやりとオレンジ色の陽光が目に刺さり、肌がチリチリするほど喚起した大気が口と喉を経由して肺を満たす。

 

 次第に目が慣れて来たのか、周りはさぞ立派だったはずの建造物が映る。

 

 どれもこれもがガラクタのように壊れ、声の持ち主と思わしき人物は元々オレンジ色の髪は所々土がへばりついており、身体に纏わりついた黒い着物はボロボロだった。

 

 疲労の隠せない目とクマはさぞ長い道のり(人生)を秘めているのだろうと思い、『それ』が見つめ続けると情報(記憶)が自然と染み渡っていく。

 

 純粋無垢な子供がかつて居た。

 昔に母親を理不尽にも亡くし、それを上手く整理することができずに周りに当たった。

 

 己のふがいなさに腐りかけた少年が居た。

 彼は現実に意識が向き、己がやってきた過去に振り向くはしないように生きた。

 

 少年は大きな流れに巻き込まれ、『力』を開花した。

 他者に、大切な人を無意味に亡くす経験をさせまいとがむしゃらに動いた。

 

 周りを護ろうとすればするほど、周りは巻き込まれていく。

 

 夢のような、()()のような、目くるめく冒険譚の中で目の前の者は『生』を実感していき、やがて世界を崩壊から救うほどまでに至った。

 

 伴侶を取り、子も得た彼は周りを護ることをやめなかった。

 

 長い道端で得た、同()と思える者たちと共に。

 

 なんという冒険譚なのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、そんな彼らでも『世界』には敵わなかった。

 

 さらに『それ』が見ると、目の前が成した子は『世界』を根底から脅かす存在と判明してしまった。

 

 かつて少年が世界を救うため、倒して敵のように。

 

 新たな戦火の火種となった子を取り巻く事態は加速化し、やがて『世界』が相手になっても少年はベストを尽くして周りを護ろうと奮闘した。

 

 だが護ろうとすればするほどに、己の子と対立が確定していく。

 

 周りの者たちとも対立していく。

 

 その末に待っていたのは『世界』か『子』か。

 二つに一つ。

 

 三つ目の選択を探そうとして、()()()()()と自覚した頃に待っていたのは選択を探した故に時間が無くなり、壊れていく世界と子がいなくなった現実。

 

 そう思いながら『それ』が目を覚ますと、『私』は居た。

 

 何もかもが妄想で組み上げられた幻想。

 

 それでも『私』は顕現した。

 

 ()()()()()()()()

 

『クソ! クソがぁぁぁぁ! 俺は……俺は一体……何の為に……』

 

 彼はとうとう泣き出し、その背後に顕現しながら問いを掛ける。

 

「それが、“悲しい”と言う、モノ?」

 

 初めて空気が『私』の声帯を通り、どこかぎごちないながらも透き通るような声が出る。

 

 目の前の者がゆっくりと振り返る。

 

「アンタは……誰だ?」

 

 初めて大気に乗った声が耳に届き、鼓膜を震わせて『声』と言う情報が直に届く。

 

「私は、歴史に存在してはな、らないモノ。 誰からも、生まれず誕生し、存在を望、まれず不定されたモ、ノ。」

 

「……はは、なんだそりゃ。 ついに俺も狂ったか。 じゃあなんだ? “悪魔だ”、とでも言いたいのか?」

 

「城家付きで、肯定する。 悪魔、が『望まれない必要悪』と定義す、るならば『私』はそれに値する。」

 

「そうかよ……」

 

「この世界は、間もなく活動停止へ、と向かいます。」

 

「そう……か……」

 

「問い。 数少ない、この時代最後の生物として、言い残すことは、ございませんか?」

 

「…………………………は。 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

 目の前の青年は突然、笑い出す。

 

「ハァ~……俺も、色々と他に言う事があるはずなのになぁ~。 “戦いのない世界を目指せ”とか、“家族を大事にしろ”とか……

 なのに、“死にたくない”ってどういうことだよ、こりゃあ? ハ、ハハハハ……………………」

 

「……問い。 “死なない”と言う、定義を示してください。」

 

「そりゃあ────」

 

 その瞬間、青年から流れてくる思念等で『私』は理解する。

 

『死にたくない』。

『もっと生きたい』。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』。

 

「────承諾した。 その願い、聞き入れ、ましょう。 『()が溶けていく、剥き出しになった魂が夜見(暗闇)に怯えて震え出す────』」

 

『それ』は大気に散りばめた力をかき集める。

 人間(ヒト)風で言えば“塵も積もれば山となる”か?

 

「『────魂は弱く、脆く、衣をまとう前は誰もが等しい────』」

 

 それが例え亡くなった者たちの残留思念を含んだものだとしても、

 

「『────存在もあやふやで、何時消えるかも分からないながらも、────』」

 

 記憶を含んだとしても、

 

「『────“自分が我”、

 ただそれだけの確固たる信念(目的)をもって“ここ”に、────』」

 

「『────それは“高潔”で“儚く”、────』」

 

 強い個の人格が色無き『私』を染めるとしても、

 

「『────“終わり(始まり)始まり(終わり)”をここに。』」

 

 利用できるものは全て利用する。

 

 さぁ、終わった世界を再起動しよう。

 

 そして、今度こそ幸せにしよう。

 

 たとえそれが暗中模索ながらでも、茨の道だとしても。

 

「『未来永劫(Cosmic)輪廻の輪(Reincarnate)』。」

 

 彼は、笑顔がよく似合う(幸せになっていいはずの)類なのだから。

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

「……………………………………………………………………」

 

 あの時から何度同じ時を繰り返したのだろう?

 

 数を考えることもバカバカしくなってきた。

 

 また世界を再構築する間の無へと化した空間で、人間味の濃い『私』がそう思考を巡らす。

 

 何度も。

 

 何度も。

 

 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。

 

 何度も繰り返しても、笑顔(幸せ)は最後まで続くことは無かった。

 

 かつて覚悟を決めて、この世界の秘密を共有した同士もかつて願いを聞き入れた少年を数に入れなければ、最後の一人となってしまった。

 

 その一人も、裏で何かをコソコソとしている節がある。

 

 「……………………()()()。」

 

 その一言が思わず口から出たことで、内心で燻っていた感情はたちまち油を注いだ火のように大きく心を塗り替えていく。

 

 どうせ笑顔が続かないのならば、()()()()()()()

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ん?」

 

 無い筈の()()()()感じが『世界の外』から来て、『それ』が反応する。

 

「まさか……『来訪者』?」

 

『それ』の胸が高鳴る。

 

 終わらせない(終われない)

 

『それ』はそう思い、『来訪者』へと意識を向ける。

 

 そこでゾクリと、無いはずの体に悪寒が走る。

 

 あらゆる警報がベルを鳴らす。

 

『この者と対立するな』という警告が返ってくる。

 

「ちょうど良いわ! それぐらいの力を持っているという事は、糧にすればそれだけの利子が返ってくるという事じゃない! アハハハハハハハハハハ!」

 

 それらを絶望によって壊れていた『それ』は歓迎した。

 

「でも二体同時にいると厄介かもしれないなぁ……やっぱり一度引き離して観察するか? うん、そうしよう!」

 

『それ』と似た一体は、弱肉強食が基本の虚圏へ。

 

 よく分からないモノ(悪寒がする)は、今は乱世の尸魂界へ。

 

『それ』は熟した果物を収穫するまで待つ農夫が持つ気持ちで『来訪者』を出迎える。

 

 気長に余裕をもって『それ』は再び目を閉じる。

 

 

 たかだか数十年の時は『それ』にとっては『ついさっきの出来事』と等しかった。




次話はネタバレ含む資料話です。
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