白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

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何とか投稿!


第8話 バケモノと北斗、そしてヒヨコエプロン

 ___________

 

 『渡辺』家 視点

 ___________

 

「…………着いたで」

 

 彼らが電車に乗って一時間弱。

 

 降りた駅から更に30分ほど歩いて、夏の暑さが弱まり始めた頃に着いた場所は()()()()()()だった。

 

 その()()()をしっかりと見ていたチエ、三月、マイを平子は横目で見ていた。

 

「どないした?」

 

「えっと…………()()()()()()()()()()?」

 

 マイがおずおずと答える。

 

「空地()視えるんやな」

 

「ハッ! その程度やっちゅう事や!」

 

「霊力の弱い者には()()()()()()()()()()のに、流石ですね♪」

 

 浦原は何かが面白いのか、ニヤニヤとしながらチエ達を褒めていた。

 

 「…多重結界か」

 

「正解。つーか、色々とおもろないな。 ドッキリのつもりやったのに」

 

 チエの一言に近くの平子が答えて空き地内へと足を踏み込むと、浦原とひよ里も先を歩いて姿()()()()

 

 チエ達も足を踏み出すと古びた建物が姿を現した。

 放置された町工場っぽいコンクリートの壁からはペンキが所々剥がれていて、屋根は錆びついていた。

 

「(この世界の結界()かなり優秀ね…………それとも()()の問題かしら?)」

 

「ほら、早よ入れやクソハゲ共」

 

 何時の間にか玄関には()()()ひよ里しかおらず、平子と浦原は既に中に入った様子だった。

 

「あら。ごめんなさいひよ里()()

 

 マイがそう言い、彼女と共にチエと三月が中に入ろうとすると、ひよ里が声をかけて来る。

 

「ちょい待ちぃや。 お前ら、何ウチを『さん付け』なんて平気にずーっとしてるんや?」

 

「「「だってひよ里さんがそうしろって言ったから?/し~?/じゃん?」」」

 

 チエ、マイ、そして三月の答えにひよ里は少しだけ目を見開いた。

 

 これは平子の紹介の後、駅前で仁王立ちする彼女が「しゃーないからウチの名前も言うとくわ! 『猿柿ひよ里(さるがきひより)』や! ちゃんと『さん付け』で呼びや、お前ら!」

 

 そこからはチエ、三月、そして大人の姿のマイでさえも彼女(ひよ里)を必ず『ひよ里さん』と呼んでいる内に、ひよ里本人の態度はタジタジして行き、最後には黙り込んだ。

 

 この様子のひよ里を見た浦原は満面の笑みを浮かべ、平子は何か摩訶不思議な事を見るかのような顔になっていた。

 

「それは…………そうやけど………何もそんな律義に………」

 

「???」

 

 マイは?マークをただ出していた。

 

「あ、もしかしてひよ里さんの見た目の事じゃないかしら?」

 

「何だ、そういう事か」

 

 そして気付いた三月と気付かされたチエの言葉にコクンと頷くひよ里。

 

()()()を背負っている時点で外見など関係ない」

 

 チエがひよ里の背中にある()を指差す。

 

「ッ…………お前ら………知っとんのか、()()?」

 

「「何を?」」

 

「…………………」

 

 そう言う三月とマイ、そして静かなチエは中へと入る。

 

 外の見た目も結界の一部だったのか、錆びついた町工場の中は普通の一軒家………より少々広く、綺麗だった。

 

 そして三人が中へ入った瞬間、九人分の視線と()()()()()が彼らを襲う。

 

 周りの犬や猫の類はその瞬間に周りから一目散に逃げ去って、上を飛んでいた鳥は気を失って地面へ落ちるほどだった。

 

「それでお前ら、何(もん)や?」

 

 座っていた人達の中で唯一立っていた平子がそう三人に問う。

 

仮面の軍勢(ヴァイザード)』。

 かなり単純化し、短縮化するが、全員が()()()()()()()()()()()()集団で、更に()()()()使()()()

 

 百年は優に生きて来た猛者達が冷たい視線と共に()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 普段、のほほんとしたマイも真剣な顔をしながらも汗が出て頬を伝る程で、()()()()すぐに戦闘態勢に入るチエ。

 

 だが三月とチエは平然として、()()()()()()()

 

「聞こえへんかったみたいやな? お前らは何者やと訊いとるんや」

 

「…………初めまして、『渡辺』三月と言います」

 

「…………『渡辺』マイですぅ」

 

「……『渡辺』チエだ」

 

「「「「「…………………………」」」」」

 

 撃沈が続いて数秒、または数分とも感じ取れる時間が過ぎてからフッと殺気と霊圧が嘘のようにパッタリと止まる。

 

「ぁえ────」

 

 緊張感から解放され、足の笑い始めていたマイが倒れそうになると近くにいた三月とチエが彼女を両側から支える。

 

「ったく、ホンマに子供かいなお前ら?」

 

「当たり前でしょ? 何に見える?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 平子の言葉が合図だったかのように周りの人達の反応は様々だった。

 

「突然だったのは謝る。 だが俺達の視点からも見て欲しいと思う。 ちなみに俺は愛川羅武(あいかわらぶ)だ。 趣味はジャンプ」

 

 星型のアフロとサングラスをした男性の言葉に三月の目がカッと見開く。

 

「じゃあ敢えて使わせてもらうけど、『お前達の血は何色だァァァァァァ?!』」

 

 ギュピーンと愛川羅武のサングラスが光ったような錯覚後、彼が口を開く。

 

「『オレの名を言ってみろぉぉぉぉ!!!』」

 

「愛川羅武ぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 三月と羅武ががっしりと両手で固い握手を交わした。

 

「俺の事はラブで良い」

 

「じゃあ私もミーちゃんで良いわよ♪」

 

「『北斗〇拳』、良いな」

 

「じゃなくて『ジャ〇プ()』、でしょ?」

 

 さっそく意気投合する三月とラブ(ジ〇ンプファン達)

 

「やれやれ、ラブには困ったものだけど…僕もこれはどうかなと思うよ? 困っている女性をそっちのけで。 そこのレディ、すまないね? ボクは鳳橋楼十郎(おおとりばしろうじゅうろう)。ローズと呼んでくれたまえ」

 

 ローズがマイの方を見てウィンクを飛ばしながら、彼女に肩を貸す。

 

「あらぁ~。私は別にどちらでも良いけど、思わず『(じゅう)ちゃん』って呼びそうね~」

 

「ハウ?! 君のその言葉が、僕のハートに! 響くぅ!」

 

 そして天然でのほほんとしたマイにすっかりペースを取られる長いウェーブのかかった金髪で薄幸そうな男のローズ。

 

「お前ら、ガキの癖に肝が据わっていんじゃねーか。 っと、俺は六車拳西(むぐるまけんせい)。ローズの事は無視している方が身の為だ」

 

 筋肉でゴツい、銀髪青年がローズと共にマイを立ち上がらせる。

 

「ちょっと拳西ぃぃぃ? 今のは聞き捨てならないね~?」

 

「ありがとう。 優しいのですね、貴方は」

 

「ッ」

 

「『ケンちゃん』、と呼んでいいかしら~?」

 

「…………………好きにしろ」

 

 ニッコリと微笑んだマイから顔を逸らす拳西(ケンちゃん)

 

「じゃあじゃあ! (ましろ)の事は『シロちゃん』で良いよー!」

 

「オイ白、椅子持って来い」

 

「私を無視するなケンちゃん!」

 

「あの鬱陶しいのは久南白(くなましろ)だ」

 

「はい、よろしくお願いしますね? シロちゃん」

 

「イェーイ!」

 

 三月がジッと(シロちゃん)を見て、彼女が視線に気付く。

 

「どうしたの?」

 

「ううん、その…………『特撮ヒーロー』っぽいから」

 

 それはマシロが白色のライダースーツと、頭にゴーグルを着けていたからの感想だった。

 

 どこぞの『仮面ライ〇ー』っぽかった。

 

「あああ! 分かる?! 私も実は変sh────グエ」

 

 マシロの首に巻かれてあるマフラーが強引に後ろへと引かれる。

 

「ウチは矢胴丸(やどうまる)リサ。 アンタに質問が一つだけ。 ()()()、本物なんか?」

 

 これまたひよ里と平子みたいな関西弁に眼鏡におさげとセーラー服を着た、風紀委員を匂わせるような少女がマイの胸部装甲(たわわな胸)を指差しながら訊く。

 

「??? はい、本物ですけど~?」

 

「ホンマか? なら揉ませろや」

 

「へ?」

 

「確かめる為や、別にええやろ? 減るもんやないし」

 

「えええぇぇぇぇぇぇ?」

 

 訂正。

 

『風紀委員』とは真逆の存在のようだ。

 

「私は有昭田鉢玄(うしょうだはちげん)と言います。 以後、お見知りオキヲ」

 

 大柄で寸銅な男が出来るだけチエの目線に合わせようと膝をつくが、巨体故に彼女を見下ろす体勢のままだった。

 

「お前の姿と同じようで強そうで頼りになりそうな名だな」

 

 チエの全く悪気のない、ストレートな感想に「ハッチとお呼び下さいませお嬢サンッッッッッ!!!!」と、(少々泣きながらも)喜んで彼女の手を両手でブンブンと握手するハッチ。

 

 上記のようにそれぞれの『仮面の軍勢』のメンバー達が割と気さくな性格等でチエ達と接していた様子を、浦原と平子とひよ里の三人が少し離れた所から見ていた。

 

 そして浦原からは何時ものヘラヘラとした笑みは無かった。

 

「どう思います、平子サンにひよ里サン?」

 

「お前が言った通り、あの三人…………特に()()()()()()()()やな。 元とはいえ、隊長格の俺らの殺気と霊圧受けて()()や」

 

「腹立つけど、ウチから見ても同感や。 あれだけの殺気と霊圧に汗一つどころか、()()()()感じが特に気に食わへん」

 

「………………………皆サンが戦うとしたら、勝算は如何ほどですか?」

 

「お前達の言った事とか考えれば……………玉砕覚悟で、俺らの満身創痍での勝利…………それか、五分五分と言った所やろ。 状況次第付きやけどな。 というか俺は思わず『どうやって他の()()()()にぶつけてから全員始末しようか?』、と考えたぐらいやで?」

 

「ハゲの言った事を皆は多分、心ン中で理解しておる。 ()()()()皆あの態度をとっておるんや」

 

 ひよ里はワイワイと意気投合する他のメンバー達とチエ達の様子を見る。

 

「せめて『敵対する可能性の爆発物』ではなく、『対話出来る化け物』で居られる様に…………ですか」

 

 平子とひよ里の言葉に浦原は目線を隠すように帽子を深くかぶる。

 

「そして『もし彼女達と敵対するような事があれば、少しでも勝算を上げる為に人情を使う』…………………本当に、僕達は似た者同士ですね」

 

「ケッ。 お前と一緒くたされると思うと反吐が出そうやわ」

 

「隣のハゲと同感や」

 

「さっすが関西! 息がピッタリですね!」

 

 「「関西ちゃうわ、ボケェ!」」

 

 実に息がぴったり合った関西ツッコミだった。

 

 余談ではあるが、様々なメディアで聞いた声で懐かしむ、または『人物像が全然違う!』などと言った思考が止まらなかった三月と、()()()のセクハラ行為に困るマイ、そしてチエはこの団欒を見ながら未だに死神と虚の匂いを不思議に思ったが、()()()何も言わなかった姿がそこに在った。

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 何時の間にか浦原の姿が見えず、平子に「仕事に来たんやから今は仕事中や」と言われ、手持ち無沙汰になったチエ達は各々が出来る事を探し、実行に移った。

 

 三月はラブとローズ、そしてマシロに強引に連れてこられたケンセイがジャンプやアニメ、そして特撮話題で盛り上がった。

 尚、ケンセイは三月が「ボクシングが好きそう」という考えから『始め〇一歩』を出してからも知らん振りを貫き通すも、物凄い食い気味で聞き耳を立てていた。

 

 チエはハッチと色々話し込んで、楽しそうなハッチにイライラしたひよ里に「ムズイ話ばっかやないけ?!」と怒ってハッチにきつく当たる。

 そしてチエの「そのような話をしているのだが?」と言う天然ツッコミにてナチュラルのコントが何時の間にか出来上がっていた。

 

 キッチンではマイに『裸エプロン』を(全力で)強要しようとしているリサを(困って笑いながら)マイは拒み、許可をもらっては料理を(しようと?)していた。

 

 余談ではあるが平子はこの三つのグループのやり取りを交代で見ながら浦原からの連絡を()()()()()

 

 断じて、決して、ラブ達の漫画やアニメの話を全力で立ち聞きしたり、

 ハッチ(やられ役)チエ(天然(?)ボケ)ひよ里(ツッコミ)コントの中をたまに混ざったり、

 何故か壁に上半身が埋め込まれていたリサを面白ながらからかい過ぎて浦原を忘れた訳では無い。

 

『忘れた』訳では無い。

 

「ボクの事を忘れるなんて…………グスンッ………一人寂しく延々と作業していたボクをそっちのけで皆サン楽しそうに────ぐおへはぁぁぁぁぁぁ?!」

 

「めんどくさいねん、ワレェェ!」

 

 平子は『()()()』のではなく、『()()()』していたのだ!

 

 拗ねながら膝を抱え、俯きながら地面に「の」の字を指で書いていた浦原の後頭部にひよ里のドロップキックが炸裂する。

 

 ちなみにその日の夕食は豚汁、野菜炒め、魚の煮物と白米だった。

 

「いや~、渡辺家のご飯は何時食べても美味しいッス!」

 

「ちょいまちぃや、喜助。 お前んとこの料理はこいつらが仕切っとんのか?」

 

 実はと言うと、浦原商店の料理は『ウルルが絶対離れない騒動』の泊り始めた三月とチエが担当し始め、それからは交代制でご飯を作っては泊って行く事を未だに続けていた。

 

 少し考えてみて欲しい。

 

 毎日お菓子やつまみや栄養錠剤を飯代わりにする家庭を。

 

 しかもそれが朝昼晩。 たま~に近くのスーパーなどから買った弁当。

 

 それに耐えられる人間が居るだろうか?

 

 ちなみに「そこに居るの、そもそも人間じゃないだろ?!」と言うツッコミはただいま受け付けていません。

 

「流石にこれはアカンですよ!」と思った三月はチエと共に()()()()()()を作り、すぐにウルルと浦原に嬉しがられていた。

 恐らくテッサイもだが無表情の者が「ウム」と言うだけが果たして嬉しいのかどうか微妙な点である。

 

 尚、夜一に関しては「猫缶さえあれば全て良し」だったが、作っておいた彼女(夜一)の分もこっそりと何時の間にか無くなっていたのはチエ、三月、そしてマイ全員が気付いていたが敢えて何も言わなかった。

 

「うん! ケンちゃんのご飯より美味しーよ~!」

 

「だったら俺の作った飯を次からバクバク食わないって事だな、マシロ?」

 

「それとこれは別だよ~? 変なケンちゃん」

 

「変はお前だ!」

 

「味が合って良かった~♪ 実は今、()()()()()に料理を教えている所なんで、味が何時もより濃いめになっているんですよ~」

 

「「「「「ブフッ」」」」」

 

 テーブルに居た何人かが吹き出しそうになる。

 

「その…………『テッちゃん』といウノハ?」

 

 ハッチがおずおずといった様子でマイに訊く。

 

「勿論、テッサイさんの事よ~? あの人、エプロンに憧れていたんですって~。 だから私の編んだヒヨコエプロンを未だに使っているわ~」

 

 マイの言葉に数人がそれぞれの妄想で青くなっては身震いをしたり、笑いを必死に堪えたり、「テッサイxマイのテッサマイ………悪くない」というような事になっていた。

 

 最後のコメントはともかく、200㎝の長身髭マッチョ眼鏡で三つ編みの無表情中年おじさんが「ピヨピヨ」と鳴きそうなヒヨコエプロンを付けたまま『ヌンッ』とした感じで玄関で立ったまま「いらっしゃいませ」と挨拶するのを想像すれば皆の反応に納得が行くだろう。

 

 ちなみにその日、浦原商店に来店した子供達はその姿のテッサイを見た瞬間逃げていった。

 

 たまには泣いて叫びながら。

 

 これに彼はかなり落ち込んで、無表情ながらも重~~~~い空気を出しながら俯いて、トボトボとした足取りを数日間していた。

 

 どれ程の重症だったかと言うと、()()おっかなびっくりのウルルが(彼女からすれば怖い)テッサイを元気づけようとした程であって、この一連の出来事を話したマイに苦笑いを浮かべていた浦原を『仮面の軍勢』メンバー達が見てこれが嘘偽り無きの出来事と肌で感じた。

 

 だが一人だけ他の皆とは違う反応を示していた。

 

「………………ヒヨコエプロン…………良いデスネ」

 

 ハッチが何故かウンウンと納得していた。

 

「「「「「え」」」」」

 

「ではハッチさんの分も編みましょうか?」

 

「お願いできマスカ?」

 

 そして聞くマイに頼むハッチ(身長257cm、体重377kg)だった。

 

「「「「「」」」」」

 

 何とも、何時もの食卓とは違う雰囲気に内心楽しみを感じていた『仮面の軍勢』メンバー達が居た。

 

「(ホンマ、おっそろしい奴らやわ。 何時の間にか、()()()こいつらに感情移入してしまっているやんけ)」

 

 そんな平子本人も満更ではなく、楽しかったのを隠せずに笑みを浮かべていた。

 

 ひよ里は不機嫌な顔を崩さず、不気味な程黙っていたが、「触らぬ神に祟りなし」と言った方針で他のメンバー達は深く追求しなかった。

 




では、勢いがある内に次話を書いてきます。


余談ですが自分はキャラとして『仮面の軍勢』も好きです。

個性的なキャラ達なので(キャラの実力が強い、弱いは二の次で)
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