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『渡辺』チエ 視点
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「え? 俺が戦う理由……だと?」
一護は私の問いに少し困ったような顔をする。
空座高校の屋上の昼休み、三月たちとは離れて柵に寄りかかっていた一護はそう答えた。
浅野は私が『一護に話がある』といった瞬間、何を思ったのかニヤニヤしだして『んじゃ、あとは若者二人で~!』とか言いながらひらひらと手を振ってその場から離れた。
気が利くな、浅野は。
「う、うーん……なんか藍染の野郎にも同じようなことを前に訊かれたな。」
「藍染にか?」
少し意外な名前が出てきたことに、チエが復唱するかのように訊き返した。
「ああ、『何のために戦う』ってな。 あの時、『虚圏に行ったのは井上を取り返すためだろう?』ってアイツが言ってきてな? んで後で『天鎖斬月』にも聞かれたよ。」
「『天鎖斬月』に? どういうことだ?」
「あ? ああ……『最後の月牙天衝』を得るときに斬魄刀との対話をしたときに言われたよ、『俺の視野が狭くなった』ってな。
多分だけど俺は余裕がなくなってきて、前は多くの人を守りたかったのにいつの間にか周りの身近な人たちだけを守ることに固執しちまった。」
「………………………今は、どうなのだ?」
「んあ? 今は……………………」
一護はまたも困ったような表情を浮かべて口に含んだジュースパックのストローを上下に揺らした。
「んー…………………どうなんだろうな? 死神の力も無くなって、幽霊も見えねぇ俺にそんな『守る力』なんて────」
そこで一護はガシガシと頭を乱暴に掻く。
「────ああああヤメだ! ヤメ! んなこと考えてもしょうがねぇし、俺は
「竹刀を背負ってか?」
「そりゃお前もだろうが。」
「「…………………………………」」
ナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデ。
「おま?! だからやめろって! なんでそこでナデるんだよ?!」
「………………………なんとなく?」
未だに自分の頭を撫で続けるチエを一護はジト目で見て、覇気のない文句を言う。
「……へいへーい、俺ぁどうせチエにしたら『子供』ですよ~だ。」
「どちらかというと『弟』か『孫』だな。」
「歳臭ぇ言い方だなオイ?! ……けど……そうかよ。」
一護は冴えない顔のまま空座町に目を向け、チエは彼の制服のポケットからはみ出ていた代行証をちらりと視線を移した。
…………………
「一護。」
「んだよ、さっきから?」
「『
一護は嫌そ~~~~~~~うな心をそのまま表す顔をチエに向けていた。
それはもう梅干や苦虫を噛んだ比ではなく、内なる魂が『
「滅却師っつーたら石田の野郎や『ポテト』や『ディズニー』の奴らみたいな事だろ?」
余談ではあるがその時手芸部では雨竜、尸魂界でのハッシュヴァルトやバンビエッタたちが同時にクシャミを出したそうな。
「そうだ。」
そして一護の言い間違えた名前らを訂正せずに、話を続けるチエもチエである。
「……んなもの、誰にでも成れる筈ねぇだろうが? それこそ、石田の野郎みたいなのが『最後の滅却師だ』って言うわけねぇし。 実質、ほかの奴らが現れるまでアイツは『自分が最後』って信じていたんだし。」
「十分に素質はあると思うぞ?」
そろそろ一護はこの話題を続けたくなかったのか、口調が少し荒くなった。
「何を根拠に言ってんだよ? 大体、俺に
「────お前こそ何を言っているのだ?
チエの予想だにしなかった言葉に、一護はピクリと反応して彼女を見る。
望む薄だが、『彼女なりの冗談』と思いながら。
「へ、気休めでもありがとよ。」
「『気休め』???」
だが幸か不幸か彼女は本気だったらしく、一護の心臓の鼓動は早くなっていった。
「どういう……事だよ? だって、俺は────」
その時学校のチャイムが響き渡り、チエは踵を返すようにいまだに和んだ気持ちでモキュモキュと菓子パンを頬張っていた
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一護 視点
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『であるからにして────』
≪お前こそ何を言っているのだ? 気付いていないのか?≫
クラスの教師の言葉より、昼にアイツが言った言葉がグルグルと頭の中を回る。
『そして────』
『気付いていない』?
何にだ?
…………………………………いや、三月は三月で結局は意味が二重三重にも深すぎて後になって『ああ、このことか』って大抵の場合なるけどよ?
だけどチエの場合は、『目の前に見えている』ようなものだ。
ならば俺も気付く筈だ。
思い出せよ、俺!
なにを見落としている?
…………………
………………
……………
…………
………
……
…
キーンコーンカーンコーン♪。
最後のチャイムが鳴って、周りの奴らは浮かれ気分になり辺りが騒がしくなる。
そして俺はいまだに悶々と考えこんでいた。
あれからずーっとアイツとの10年間を思い返していたけど、いまだに『気付いていない』モノに目星はつけてねぇ。
……『気付いていない』から当たり前か。
なら学校の終わった今なら順序を追って考えるだろう、クラス中は教師たちの投げる問題やチョークをよけるのに気が散っていたからな。
まず、アイツは俺の『戦う理由』を訊いてきた。
んで、俺は藍染の話を出して……
『守る力』うんたらかんたらで、頭をなd────
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
────い、いやそこは飛ばそう。
うん。
でもそこからなんだよなぁ、『滅却師に興味はないか?』って訊かれたのは。
つーことは『滅却師』関連の事だ、当たり前だけど。
けど俺と『滅却師』の接点なんて
………………………………………………………………あんま気が乗らねぇけど、訊いてみるか。
…………
………
……
…
一護はその目立つ
だが『原作』と違い、一護は中途半端な撃退などせず、徹底的に敵を粉砕してきていた。
『再起不能』になるまで。
ちなみにどれほどかと言うと、普段は温厚でも『やるときはやる』茶渡でも止めに入るほど。
これによって一護に絡むのは余程の馬鹿か腕試しの馬鹿たちだけになったのだが……………その話は追々、するかもしれない。
「石田。 ちょっと顔貸してくんねぇか?」
そんな見た目不良の『黒崎一護』が空座高校で堅物(そう)な雨竜を名指しで呼び出していたことに手芸部の部室の中でどよめきが走る。
「断る。 僕は君と何も話すことはない。」
既に前から延々と自分の事をしていた『触らぬ神に祟りなし』状態であった雨竜の表情が眼鏡をかけ直しながら一層固くなったことにより、さらにどよめきは走る。
「お前が俺に話すことは無くても、俺がお前に用があんだよ。」
ピリピリと緊張感がさらに増していく中、急に雨竜は体ごと制服の上着から持ち上げられる。
「おわ────?!」
「────面倒くさい(声だけ似た)眼鏡ですね。 そこは意地にならずに
「あ、アネットさん?! おろしてくれ!」
足がプラプラとする雨竜を、アネットが片手で持ち上げていたことに周りの男女は純粋に感心するような声を出していた。
「「「おおおおおおお。」」」
一人だけは別の意味で感心していた。
「さすが『怪力B』保持者。」
「ほら、貴方も行きますよ────」
「────え。」
そこでアネットがもう一つの空いた手で一護を持ち上げて、さっそうとそのまま手芸部から連れだして行った。
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??? 視点
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「「…………………………………………………………………………………」」
校舎裏ではブッスーと、大変不服そうな顔と腕を組みながら互いを視界にいれないように一護と雨竜が立っていた。
「面倒くさいところ
「「誰が『似ている』だ?! ……………………チッ!」」
自分たちを『面倒くさくて似ている』と呼んだアネットにほぼ同時に突っ込んだことに一護と雨竜が舌打ちをする。
「ハァ……サクラやワカメやリンやイリヤスフィールやシロウ達のいない時に上姉様を独占できるチャンスなのに何故私がこのようなことを……」
そしてアネットはため息交じりに額に手を添えてから『ビシッ!』と効果音が出るような人差し指で一護と雨竜を差した。
「いいですか? 貴方たちは変な意地を貫いているようですが理由がまるっきり子供です! 一人は純粋に嫌々ながらも頼り方が雑すぎて、もう一人は『こんな時に頼られるのはお門違いだ』と言いそうな態度がさらに事態をこじらせています! さぁ、吐いちゃいなさい!」
アネットは間を挟んでから長い三つ編みポニーテールの髪をなびかせ、照れたのかわざとらしい咳払いをして普段の様子に戻る。
「コホン……………………………………っと、『上姉様』なら言っているでしょうねきっと。 では私はこれで。」
「あ、おい?!」
「なんです?」
アネットがくるりと180度回ってその場を後にしようとしたとき、不意に一護から声がかかったことで彼女は首だけを回して面倒くさそうに一護を見た。
「あ、いやその……ありがとう。」
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………別に。」
アネットはそれだけを言うと今度こそ速足で歩きだし、一護と雨竜だけがその場に取り残された。
二人の容姿は似ていないが、気まずい静けさの中でソワソワするその様子は似ていた………………とも言えなくはなかった。
「……あー、それで? 黒崎は何を僕に尋ねに来たんだ?」
その沈黙を先に破ったのは雨竜だった。
「え?」
「『え?』、じゃないだろ? 君が僕のいるところに来ることはかなりの異例だからな。 アネットさんの言った通り、少し気が立っていたんだ。 要件は何だ────ってなんだ、その顔は?」
雨竜が見ると、一護の顔が『マジか?』と疑惑に似たものを浮かべていた。
「いや、お前って『こういう素直なキャラだったか?』って────」
「────君の中で僕はどういう立ち位置か全く興味はないけれど絶対にろくでもないものだと今ので想像がついたよ。」
雨竜のこめかみがピクピクとし始めたことに一護が慌てながらもなんとか彼をなだめようと言葉を続ける。
「ああ、なんかスマン。 実は────」
…………
………
……
…
一護が簡単にチエに言われた『気付いていないのか?』までのいきさつを雨竜に話した。
それは一護も雨竜からしても、これだけ互いが話したことは出会って以来、初めてだった。
せいぜいが以前、雨竜が『虚退治』が本業に近いはずの死神代行であった一護を勝負で打ち負かすために、滅却師と死神の因縁を延々と一方的に話した時。
だが今では少なからず互いを『敵』とではなく、『共に利害が一致して死地を潜った者同士』という奇妙な意識をしていた。
あと一護に幸いしたのは、『石田雨竜』と言う一種の『ひたすら努力する天才』はその気になればどんな人物を前にしても考えを切り替えて事を考えられる、同年代より数段大人びた精神を持ったことか。
これが何十年、何百年と生きてきたはずの死神たちの何人かと比べると……………………………………………………………………
「ぶえっくし?!」
「どうした恋次?」
「いや、なんか寒気が……風邪か?」
「ハッハッハッ! 面白い冗談だ! お前に限って風邪はないだろう!」
「オイどういう意味だルキアテメェこら。 あ?」
……
…
「はい平子隊長、隊長のハンコが必要な次の書類です。」
「………………………いや、俺マジで『ハンコ押すだけマシン』になってる気分やねんけど?」
「き、き、気のせいですよ平子隊長。」
「ハァ~、桃ちゃんマジええ子やわぁ~……あのけったいな奴にはもったいなすぎやわ────」
「ンんんんンンンンンンんん?」
「────ヒェッ?!」
……
…
「イッキシ?!」
「お。 なんだひよ里、風邪か?」
「誰かがウチの事を話しとる奴やで?」
「ああ、『チビ、ガサツ、女子力と胸無し』ってな。」
「その星形の頭、ホンマもんの夜空に飾ったるわクソハゲェェェェェ!!!」
……
…
…………………………………………………………いや、比べるまでもなく悲しい対決になるだろう。
場を現世の空座高校の校舎裏へと戻すと、ちょうど一護が話をし終わったところなのか、またも二人の間に無言の時間が過ぎていく。
明らかに深く考え事をしている雨竜を見ながら一護はイライラしていたのか貧乏ゆすりを必死に意識して止めていた。
そんなところに、雨竜がやっと口を開けた。
「………………これは僕の想像だけど、聞くかい?」
「でなきゃこれだけ待って
辺りはもうすでにあらゆる部活活動が終わっている時間帯。
未だに学校にいるのはスポーツや陸上部などの、学校のグラウンドや設備を使わざるを得ない生徒たちしか残されていなかった。
「黒崎君の家族はいたって
無数の冷や汗をダラダラと流しながら目を泳がす一護を、雨竜はフツフツと再度湧き始めた苛立ちが混ざった視線を送る。
「ああー……………………
「そうだね。
実の父親である一心を『アレ』呼ばわりする一護も一護だが、それを一発で誰を指していたのか分かった雨竜も雨竜であった。
「そうだなぁ………………う~~~~~ん……」
一護が手を組んで考えこむその仕草で雨竜は(口には出さなかったが)沸騰し始めるヤカンを連想したそうな。
記憶に浸った一護の脳裏に一瞬だけ浮かんだのは幼い日の、いつか見た真咲の
その日は梅雨時の雨で、彼女は珍しく顔を笑顔ではなく、別の何かに歪ませていた。
子供の頃は何なのか分からなかったが……
成長した今で言うのならば強いて────
────『情けなさ』。
それはまるで
毎朝起きて
洗顔して
鏡の中で自分をm────
「────ッ。」
突然胃の中からこみ上げてくる感覚に一護は口を覆い、歯をギシリと直に聞こえるほど鳴らせる力強さで噛み締めた。
「……別に何もないようだね。」
急に表情が強ばった一護に気付かない筈の雨竜だが、彼は見て見ぬふりをした。
「何もないのなら、僕は失礼するよ。 君と違って、僕は暇じゃないんだ。」
それどころか、雨竜は今すぐにでも一護との話を終わらせたいような言葉を出して、その場から離れようとしたことに一護は慌てるように口を開けた。
「あ……………石田、サ────」
「────君の間抜け
「…………………………………………………」
そのまま歩く雨竜の後姿を目の敵を見るような目でにらんだ一護は────
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! やっぱアイツの事が気にくわねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
────大声でフラストレーションを吐き出すように叫びながら、グシャグシャに髪の毛を掻いていた。
「一瞬でもアイツに頼ろうとした俺がバカだったぜ! その上、日課の組み手もすっぽかしてチエから説教モノだよチクショウめぇぇぇぇぇぇ!」
一護の叫びに応えるものは(今回はカラスも含めて)何もなかった。
次話の投稿が少々遅れるかもしれません、申し訳ございません。
あとエタるのを防ぐために息抜き作品を投稿しました。
『バカンス』や『天の刃待たれよ』のネタもあるのですが、三月やチエを含むので別の作品を書きました。
ご興味のある方たちにリンクをここに入れておきます。
https://syosetu.org/novel/273903/
どのような投稿スタイルが好ましいですか?
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投稿できる日は同じ時間帯
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短くても毎日投稿(時間に多少バラ付き可)
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長く、切りの良い所
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作者が死なない/エタらない程度
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その他(感想欄にて)