白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

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いつも読んでくださって誠にありがとうございます! m(_ _)m


そしてアンケートへのご協力ありがとうございます! (´;ω;`)

かなり長めになってしまいましたが、楽しんでいただければ幸いです!

12/1/21 7:50
誤字修正いたしました


第113話 Strawberry In the Rain

 ___________

 

 一護 視点

 ___________

 

 結局、雪緒の空間の中で過ごした時間は『断界(だんがい)』のように外の時間とかみ合っていなかった。

 

『プチ断界』と言ったところか。

 

 「た、ただいまぁ~。」

 

「あらおかえりなさい一護!」

 

 それでも太陽がとっくに沈んだ時間だったので、小声で(俺からすれば)久しぶりに家に帰ってきたらおふくろが笑顔で玄関に出迎えに来ていた。

 

「ちょうどよかったわ、さっき懐かしいお客さんが来たのよ~!」

 

『懐かしいお客さん』と聞いて、俺は竹刀を壁に立てた。

 誰だか知らないが、不良と思われるのは御免だしな。

 

 ……派手な髪の事は言うな。

 

「懐かしい客? 誰だよ?」

 

「ヤダわ一護、玄関の靴を見てわからないかしら────?」

「────だから誰だよ?」

 

 そこで一護が居間の中を見ると、思わず息をするのを止めるほどの衝撃的な場が彼を待ち受けていた。

 

「ッ。」

 

 左目の上の古傷が特徴的なスーツにサスペンダー姿の月(・)島(・)がお茶を飲んで寛いでいた。

 

「やぁ、一護。 久しぶりだね。」

 

「(なんだ、これは?)」

 

「────今日の夕方に来てね、近くに居たから寄ってきたんだって────!」

「────連絡無しで急に来るのって兄(・)妹(・)そろって昔からだよなぁ一兄────」

「────でもうれしいわぁ~。 少し前まで病院にいたんでしょ────?」

「────はは、妹(・)が未だに世話になってすみませんね真咲さん。」

 

「なんだよ……これ?」

 

「ん?」

 

 ガッ!

 

 月島が。

 月島の。

 奴(月島)の面白おかしくモノを見る目と笑みに怒りを覚えた。

 

「テメェ! ここで、何(・)し(・)て(・)ん(・)だ(・)?!」

 

「お兄ちゃん?!」

「一兄?!」

「一護?!」

 

「『何』って…『お茶を飲んでいる』意外にかい?」

 

 月島に迫り、襟を掴んで無理やり立たせると目を見開いて遊子と夏梨だけじゃなく、おふくろまでもが俺を引きはがそうとする。

 

「何しているの?!」

「どうしたんだよ?! シ(・)ュ(・)ウ(・)兄(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)と(・)チ(・)ー(・)姉(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)が(・)急(・)に(・)フ(・)ラ(・)ッ(・)と(・)来(・)る(・)な(・)ん(・)て(・)昔(・)か(・)ら(・)ザ(・)ラ(・)に(・)あ(・)っ(・)た(・)だろ?!」

「そうよ一護! それに二階のチエちゃんは今寝ているんだから、少しは気遣いをしなさい!」

 

「こいつはチエの兄貴なもんか! 姉ちゃんは三月だろうが?!」

 

 そんな家族を無視して、月島に問い詰める。

 チエとこ(・)い(・)つ(・)が『兄妹』だと?

 

 趣味の悪い悪夢としか────

 

「────『三月』?」

「誰(・)そ(・)れ(・)?」

「えっと……そ(・)れ(・)っ(・)て(・)た(・)つ(・)き(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)の(・)知(・)り(・)合(・)い(・)か(・)し(・)ら(・)?」

 

 足が笑い始める。

 

 喉がカラカラになる。

 

 身体の震えを『恐怖』から『怒り』に変えようとしても、『恐怖』が波のようにとめどなく押し寄せてくる。

 

「月島、お前……まさか……ま(・)さ(・)か(・)────?!」

「────『まさか』…なんだい、一護?」

 

 ピンポーン♪

 

「あら、誰かしら?」

 

「ああ。 多分ケ(・)イ(・)ゴ(・)た(・)ち(・)だよ、真咲さん。」

 

「……………………………………………………………………………」

 

「久しぶりだし、皆に会いたくて連絡をしたんだ。 構(・)わ(・)な(・)い(・)だ(・)ろ(・)、一(・)護(・)?」

 

「……………………………………………………………………………」

 

「そう怖い顔するなよ。 明日は皆の休日だから、別にいいだろ?」

 

 玄関から様々な人たちが入ってくる。

 

「おお、本当だ! 秀(しゅう)さんじゃん!」

「やぁ、ケイゴ。 久しぶり。」

 

「へぇー、今度はどこの国から帰ってきたの秀(しゅう)さん?」

「それはちょっと言えないかな、水色。 あれ? たつきは?」

 

「ああ、なんか具合が悪いって言って……そのぅ……外で────」

「────ああ、そうか。 チ(・)エ(・)の(・)事(・)だね。 いいよ、兄(・)の(・)僕(・)は(・)気(・)に(・)し(・)て(・)い(・)な(・)い(・)し、彼女は昔(・)か(・)ら(・)極端なところがあるから。」

 

「……………………………………………………………………………」

 

 月島が一護を見て、笑みを更に深くさせた。

 

「チ(・)ャ(・)ド(・)と(・)織(・)姫(・)がどこにいるのか、誰か電話をして────?」

 

 ────ドッ! ガシャーン!

 

「きゃあ?!」

「な、なんだ?!」

「「秀さん?!」」

「「月島さん?!」」

 

「一護! 久(・)し(・)ぶ(・)り(・)に(・)会(・)う(・)奴(・)に(・)顔(・)面(・)パ(・)ン(・)チ(・)は(・)ど(・)う(・)い(・)う(・)こ(・)と(・)だ(・)?!」

 

 一護が気付いた時には、既に月島を吹き飛ばして叫んでいた。

 

 「テメェがアイツの兄貴なんて馬鹿な話があるか! そりゃ小さいけど姉の三月だろうが?!」

 

「一護! すぐに謝りなさい────!」

「────お、おふくろ────」

 

「────そうだよ一兄! さっきからわけの分からないことを言って────!」

「────夏梨────」

 

「────久しぶりに会ってイライラしていてもこれはどうかと────」

「────浅野────」

 

「────ああ、気(・)に(・)し(・)な(・)い(・)で(・)皆(・)。 妹(・)ともども、僕たちは頑丈だから────」

 

「────謝れよ、一護。」

 

 最後の水色の言葉が、冷たい氷のように胸の中へスルリと入っていった。

 

「そうだよ、謝れよ一護。」

「お兄ちゃん、おかしいよ。」

「そうだよ一兄。 どうしちまったんだよ?」

 

 一護はそのまま玄関から外へと出ていくと、黒崎家の前でオロオロとしていた竜貴とばったり出会って彼女の肩を掴んだ。

 

「たつき!」

 

「うお?! 一護?! どうしたんだよ、靴も履かないで?!」

 

「一護! 早く秀さんに謝りなさい!」

 

「真咲さん? 一護、お前……月島さ(・)ん(・)に何を────?」

 

「────たつき! お前……お前なら三月の事を当然知っているよな?!」

 

 後ろからくる真咲の声に竜貴が何かを察したのか、一護に問いかけようとして逆に彼から疑問を投げかけらた。

 

「ハァ? …………………………誰(・)だ(・)よ(・)そ(・)れ(・)?」

 

「……………………………………………………………………………」

 

 一護はクラクラする頭と眩暈の中、必死に声を絞り出す。

 

「『渡辺三月』だよ! 『ちっさい』って呼ぶと逆ギレする生意気で、見た目以上に食い気が目立って『普通』を必死に演じる自称『渡辺チエの姉』だ!」

 

 それは疑問と言うより、何かにすがりたい子供の声に近かった。

 

「一護こそなに言ってんだよ? 『姉』じゃなくて『兄』だろ? それに『渡辺』じゃなくて『月島』だろうが────って一護?! 裸足でどこ行くんだよ?!」

 

 一護は夜の空座町を走っていった。

 

 冬ではないにしろ、太陽が沈んだ街の空気と地面は冷たく、小石などが一護の足の裏をチクチクとする痛みを感じさせた。

 

 だがそれ以上に、彼は自分だけが別の世界に孤立されたような感じをがむしゃらな行動で塗りつぶそうとしていた。

 

「(何が、どうなっている?! これが月島の能力なのか?! 周りの連中が月島の事を『知(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)』ような、それでいて三月の野郎を『知(・)ら(・)な(・)い(・)』だと?!)」

 

 ただただ走った。

 

「何が……どうすれば……どうなっているんだよぉ?!」

 

 それはまるでどうしたらいいか分からない、迷子の子供のようだった。

 

 

 

 ___________

 

 チエ(?) 視点

 ___________

 

「(何やら下の階が騒がしいな。)」

 

 そう思いながら彼女はひっそりと『日記』を閉じてからベッドを起き上がり、外の夜空を見ながら読み終わった情報を頭の中で整理していく。

 

「(『空座町』。 『死神』。 『黒崎家』。 そして『黒崎一護』か。)」

 

 下の階が数分ほどゴタゴタと物音が続いたが、それもやがて静まり返った時期にチエ(?)は外から叫び声が聞こえてきた。

 

『────たつき! お前……お前なら三月の事を知っているよな?』

 

『ハァ? …………………………誰だよそれ?』

 

「(『三月』が『誰』……だと?)」

 

 ベッドから出て、彼女は自分の衣類らしきものへと着替える。

 

『“渡辺三月”だよ! “ちっさい”って呼ぶと逆ギレする生意気で、見た目以上に食い気が目立って“普通”を必死に演じる自称“渡辺チエの姉”だ!』

 

『一護こそなに言ってんだよ? “姉”じゃなくて“兄”だろ? それに“渡辺”じゃなくて“月島”だろうが────って一護?! 裸足でどこ行くんだよ?!』

 

 チエ(?)が近くの壁に立てかけあった竹刀を手に取りながら頭から?マークが出る。

 

「(『月島』? 『渡辺』ではなく? それに『兄』だと?)」

 

 以上の疑問を胸にしながら、彼女が下の階へと降りると一護が壁に立てかけたままの竹刀が目に入った。

 

「あれ? チエの姐さん? どこ行くんすか? って姐さん?!」

 

 

 コンがそのまま玄関を出ていくチエ(?)の後を追うために、一護の部屋から飛び降りてトテトテと走る。

 

 これを見たチエは(?)彼を拾い上げてから自分の頭に乗せてから走り出す。

 

「うわっぷ?! ちょ、どこ行くんすか?」

 

「■■。」

 

「……え?」

 

 知らない言語に、コンは目を丸くしながらパチクリとした。

 

 

 

 

 

 ___________

 

 ??? 視点

 ___________

 

 空座町で、黒崎家から少し遠い距離ではとある事務所のドアが乱暴に開けられた。

 

 バァン!

 

「一護?!」

 

 一護は育美の叫びを無視し、うなぎ屋の事務所をそのまま血相を変えて再び夜の街へと飛び出た。

 

 彼の酷い有様と尋常ではない顔色を見て育美は事務所に連れ戻すと、月島が事務所内で育美の息子である馨(かおる)と寛いでいたのだ。

 

「(誰か、誰かマ(・)ト(・)モ(・)な奴はいないのか?!)」

 

「一護! 俺だ、銀城だ!」

 

 ほとんど休息をしていない一護の息が上がりそうなところで、銀城が同じように焦った様子で叫んだ。

 

「やられた!」

 

「やられただと?!」

 

「リルカも、沓澤(くつざわ)も、雪緒も、ジャッキーも皆、月島に(・)やられていた!」

 

「なん……だと?」

 

 一護はただ立ちすくみ、手放しそうな意識を一方的に弱まっていく気力でなんとか引きとどめた。

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 上記よりさらに別の場所では、浦原と一心が『穿界門(せんかいもん)』を通って空座町をビルの上から広く見渡していた。

 

「やっぱり、『予定』より早く帰って来て良かったっスね。 さすがは『父親の感』♪」

 

「つっても爺たちを説得するのに時間がかかり過ぎた。 『こいつ』もちゃんと効くかどうか……」

 

「アッハッハッハ! 少し荒療治にはなるのは間違いないっスね!」

 

 一心が『こいつ』と呼びながら見たのは手で握りしめていた、霊子で出来たような刀だった。

 

「全く、度し難いですね。」

 

 新しい声の言葉に、一心はムッとする。

 

「それもこれも、アンタたちが爺との交渉で粘った所為だろうが?」

 

 後ろに立っていたものが、上記を言いながら眼鏡をかけ直す。

 

「ええ。 ですがこうでもしないと、我々の悲願への第一歩は達成されなかったでしょう?」

 

「全く……『空(・)座(・)町(・)を(・)半(・)独(・)立(・)地(・)域(・)と(・)し(・)て(・)の(・)承(・)認(・)』なんて無茶が本気(マジ)で通るとは俺でもぶったまげたぜ。」

 

「その代わりとして、我々も(・)ここに来ているではないですか。」

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 

 一護は銀城と共に新たなアジトらしき廃ビルで銀城に突っかかっていた。

 

 ダァン!

 

「お前の所為だぞ銀城! お前が! 俺を巻き込んだから!」

 

「……すまん。」

 

 銀城があっさりと誤ったことに、一護の顔はさらに歪む。

 

「……クソ! 頭では知ってんだよ! お前らが……………お前らは俺が『力を取り戻したい』ってことで、俺に『力を貸していただけだ』ってことぐらい!」

 

 ドッ! 

 

 一護は溜まっていたストレスを物理的に出したい衝動から、逃げ込んだ廃ビルの壁を殴る。

 

「誰の所為でもねぇよ。 お前も……お前自身を責めるな、一護。 今の状況があるから、月島の能力について俺なりの推測を言わせてくれ。 

 俺はチャドの話から俺はてっきり月島の能力は『記憶を混乱させる』と思っていた。

 だが俺に襲い掛かった雪緒たちはむしろ『混乱していた』と言うより、『記憶が鮮明になった』ような口ぶりだった。」

 

「……?」

 

「おそらく、月島の能力は『過(・)去(・)の(・)操作』だ。」

 

「それは……」

 

「月島の能力の媒体は『本のしおり』だ。 もし、これが俺たちが知らなかった新たな能力とすると媒体の形態にも符合する。 奴は……月島は『自(・)分(・)を(・)斬(・)っ(・)た(・)相(・)手(・)の(・)過(・)去(・)に(・)挟(・)み(・)込(・)ん(・)で(・)い(・)る(・)』んだ。 おそらくな。」

 

「………………そんなことが……可能なのか?」

 

「さっきも言ったように、ただの推測だ。 

 だが『月島側』になった奴らの言葉を聞いたろう? アイツらは『信じている』、『信じていない』というレベルじゃなかった。

 アイツらにとって、『月島』と言う野郎は『ず(・)っ(・)と(・)居(・)た(・)存(・)在(・)』で、『過(・)去(・)か(・)ら(・)深(・)く(・)繋(・)が(・)っ(・)た(・)相(・)手(・)』なんだ。

 つまりは『過(・)去(・)の(・)事(・)実(・)』なんだ。 逆に『月島を知らない』と言った俺(・)た(・)ち(・)二(・)人(・)だ(・)け(・)が(・)正(・)気(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)んだ。」

 

「…………………………………………」

 

 一護は固まった。

 

『固まった』というよりは、『体が強張った』と呼んだほうが的確だった。

 

 そしてきつく握りしめ過ぎたのか、拳の内側からにじみ出た血が指の間を滴り床へと落ちていく中、彼は意を決したかのように口を開けた。

 

「銀城……『完現術(フルブリング)』の能力は……術(・)者(・)を(・)殺(・)せ(・)ば(・)元(・)に(・)戻(・)る(・)モ(・)ノ(・)か(・)?」

 

「いち────ッ。」

 

 銀城が驚いて一護を見ると、彼は口を噤(つぐ)んだ。

 

 一護の顔は、少し……否、かなり険しいモノだった。

 

 それは銀城に、今すぐにでも一護の視線を自分から別の対象に向けさせたい衝動から『そうだ』と思わず言わせたくなるほどのものだった。

 

「…………………………………………………………………………………分からない。 殺したとしても、戻る確証はない。」

 

 だが長い沈黙の後、銀城は一護と自分の為にもあえて自分の考えを正直に口にした。

 

「物騒だね、二人とも。」

 

「「ッ?!」」

 

 廃ビルの部屋に、雪緒がどこ吹く風のような足取りで現れた。

 

「どうして……ここが?! ここは誰にも伝えていないアジトだ!」

 

「や(・)っ(・)ぱ(・)り(・)ど(・)う(・)か(・)し(・)ち(・)ゃ(・)っ(・)た(・)んだね、空吾(くうご)。 さ、行こうか? 月(・)島(・)さ(・)ん(・)が(・)す(・)ぐ(・)に(・)マ(・)ト(・)モ(・)に(・)戻(・)し(・)て(・)あ(・)げ(・)る(・)よ。」

 

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 一護と銀城が連れてこられたのは森の中でひっそりと建っていた屋敷だった。

 

「やぁ、待っていたよ。」

 

「月……島!」

 

「一護、焦るな。 俺の推測通りなら一度だけでも奴に斬られたら終わりだ。」

 

「僕は君たちと話したいだけだよ? 丸腰だし、君たちを殺したいのなら雪緒ごと消すような罠を森で仕掛けているよ。」

 

「「…………………………………………」」

 

 パパパパパァン!

 

「「「「「おかえりー!」」」」」

 

 一護たちが入ると知人たちが勢ぞろいでクラッカー音と満面の笑みをしながら歓迎していた。

 

 学校の浅野、水色、みちる、千鶴、竜貴。

 家族の真咲、遊子、夏梨。

 うなぎ屋の育美に馨たちもいた。

 

「良(・)か(・)っ(・)た(・)ね(・)お(・)兄(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)! 秀(・)さ(・)ん(・)怒(・)っ(・)て(・)い(・)な(・)い(・)って!」

「………………………」

「そうだぞ! 良(・)か(・)っ(・)た(・)な一護!」

「………………………」

「秀さん、器(・)が(・)で(・)か(・)く(・)て(・)よ(・)か(・)っ(・)た(・)な一護!」

「………………………」

 

 一護の知人たちの言葉は気遣うものや善意から来るモノばかりだが、一護からすれば狂気の沙汰としか思えなかった。

 

 それも次の出来事で感じが強まっていった。

 

「だ(・)か(・)ら(・)今(・)の(・)う(・)ち(・)に(・)謝(・)っ(・)と(・)け(・)よ(・)、一護。」

「………………………」

 

 一護からすれば、上記はさらに知人たちを『狂気』から『狂人』へと定義づける言葉へと変わっていた。

 

「そうだ。」

「ちゃんと謝れ。」

「謝っときな、一護。」

「謝りなさい。」

「謝れ。」

「謝れ。」

「謝れ。」「謝れ。」「謝れ。」「謝れ。」「謝れ。」「謝れ。」「謝れ。」「謝れ。」「謝れ。」「謝れ。」「謝れ。」「謝れ。」「謝れ。」「謝れ。」「謝れ。」「謝れ。」「謝れ。」「謝れ。」

 

 これを見た銀城は、冷や汗を掻きながら一護に注意をする。

 

「一護、こいつらは月島を仲間と思っているが……お前の事も仲m────」

 

 ────ヒュッ!

 ボッ!

 

 銀城の言葉を遮るかのように、一護は『完現術(フルブリング)』を発動すると同時に月島の利き腕と思われる右腕を瞬時に切り落とした。

 

「きゃあああああ?!」

「秀さんの腕が?!」

「い、一護?! アンタやっぱりおかしいよ!」

「血が! 血がぁぁぁぁぁ?!」

 

 周りの知人たちは突然の出来事に当(・)然(・)混乱する。

 

「なんだよ一護、その気味悪い姿は?!」

「チ(・)エ(・)に(・)や(・)っ(・)ぱ(・)り(・)何(・)か(・)さ(・)れ(・)た(・)のか?!」

 

 そんな叫びなどが飛び知る中、月島は痛みに抗いながら『良き親友』を演じ続けようとした。

 

「一護! 怒────」

 

「────場所移すぜ、月島。」

 

 ドォォォン!

 

 だが一護は彼らを無視し、月島の首根っこをつかんでは無慈悲に彼を屋敷の天井へと放り投げ、月島が投げられたことによって空いた穴から二階へと飛びこんだ。

 

「グッ……ここまで……『完現術(フルブリング)』をここまで使いこなすとは────ッ!」

 

 月島が感心に浸っていたため、彼が一護に気付いたのは、己の首を狙って刀を振るっているところだった。

 

「(殺す! こ(・)い(・)つ(・)は(・)! こ(・)い(・)つ(・)は(・)俺(・)が(・)────!)」

 

 ────ギィン!

 

「『三天結盾』。」

「井上?!」

 

「『巨人の右腕(ブラソ・デレチャ・デ・ヒガンテ)』!」

「チャド?!」

 

 だが一護の攻撃を織姫が防ぎ、茶渡が彼を負傷した月島から遠ざける。

 

「『双天帰盾』。」

 

 そして一護の目の前で、織姫の能力で月島の右腕がみるみると戻る。

 

「やめろ、やめろよ二人とも!」

 

「うん、さすがだね織姫。」

 

「ありがとう!」

 

「ッ。」

 

 月島が褒めた織姫は笑顔で彼に返事をする。

 

 その場に一護は何とも言えない、嫌な感じで心がドロドロになっていく。

 

「チャド……お前も……お前たちも同じかよ?!」

 

「一護。 お前の言う『同じ』が分からない。 そしてお前がどうしてこんなことをしているかもだ!」

 

「な、何を────」

 

「────忘れちゃったの黒崎君? 今まで月島さんに助けてもらっていたじゃない?! 私も、お兄ちゃんに会えたのは月島さんが探してくれたからじゃない?!」

「ッ。」

 

「そうだぞ一護。 母親の時も、朽木も、藍染も倒すことができたのは全部! 月島さんが居たからじゃないか?!」

「…………………………ち、ちが────!」

 

 ギィン!

 

「────ガッ?!」

 

 月島が一護に斬りかかり、一護は半ば無意識にそれを自分の刀で受けた。

 一護はその勢いを防ぎきれずに壁に衝突して、次の部屋まで貫通したところで何とか踏ん張りがついた瞬間、月島が彼と同じ部屋に入って話しかけた。

 

「SF小説や映画の中で、タイムマシンって奴で過去に戻って『未来が変わる』って話などを聞いたことをあるかい? 

 それは時間が『過去』から『未来』へと流れているとされているからだ。 僕の『ブック・オブ・ジ・エンド』は『斬(・)っ(・)た(・)モ(・)ノ(・)の(・)過(・)去(・)を(・)改(・)変(・)す(・)る(・)』。」

 

「……やっぱり、銀城の推測通りか……」

 

「へぇー……意(・)外(・)だ。 でも大丈夫だよ、今(・)は(・)君だけが『誤った過去を歩んでいる』けど……それも『無(・)か(・)っ(・)た(・)こ(・)と(・)』に変えてあげるよ。」

 

 「月島ァァァァァァァ!!!」

 

 そこに織姫の結界が一護を止めて、茶渡のパンチを左手で一護が受け止める。

 

「どうしてだ一護?! 俺は……俺はお前を殴るために強くなったんじゃない!」

 

「お、俺だってだチャド! けど月島は! そいつだけは殺────!」

 「────『悪魔の左腕(ブラソ・イスキエルダ・デル・ディアブロ)』!」

 

 巨大な爆発音とともに、一護は屋敷街へと吹き飛ばされた。

 

「クソ!」

 

 いや、正確には吹き飛ばされることを利用してその場から離脱していた。

 

「クソ! クソ! クソ! 何でこんなことに! 俺は……俺はせめて! ア(・)イ(・)ツ(・)だ(・)け(・)で(・)も(・)────!」

 

 そんな一護の前に、月島が先回りしたように現れる。

 

 「────月島ァァァァァァァ!!!」

 

 ギギギギギギ!

 

 二人の刀から火花が散る。

 

「怒りのあまりに言葉────ガッ?!」

 

 「『月牙天衝』ぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 一護は問答無用に月島の脇を蹴った直後に、黄色い『月牙天衝』を繰り出す。

 

 殺(・)気(・)と共に。

 

 月島はこれを見ては痛みに歪んだ表情が笑みが戻り、避けながら独り言をこぼす。

 

 「まいったな。 もうこ(・)れ(・)で(・)い(・)い(・)んじゃないか?」

 

「一護!」

「黒崎君!」

 

「チャド! 井上?! 来ないでくれ!」

 

 ドッ!

 

 一護が飛び出てきた茶渡と織姫に気を取られた瞬間、月島が死角から一護へと斬りかかる

 

「グッ……」

 

 その攻撃を銀城が代わりに受け、地面へと落ちていく。

 

「銀城!」

 

 一護はすかさず銀城のもとへと急ぎ、この場で唯一の味方である彼の体をゆする。

 

「銀城! おい! 大丈夫か?!」

 

「お、俺に気を取られてんじゃねぇよ! 月(・)島(・)に(・)斬(・)ら(・)れ(・)た(・)ら(・)終(・)わ(・)り(・)だ(・)って言っただろ、黒(・)崎(・)?!」

 

 ギィン!

 

 一護は追撃してきた月島の攻撃を流し、銀城は体をダルそうに起こす。

 

 スタッ。

 

 そんなところに雨竜が上空から背後に着地し、一護は振り返りながら警戒を眼(・)前(・)の(・)新参者に対し最大限にする。

 

「い、石田? (どっちだ? どっちの味方なんだ?)」

 

 彼の姿を見た瞬間、疑心暗鬼になった一護の思考はグルグルと悪循環を始めた。

 

「(こいつに重傷の傷が無いところを見ると、月島に斬られた井上に治されたという事か? もし井上が月島を『仲間』と思っていたのなら、石田を月島の『戦力(仲間)』として治したことになる!)」

 

 無言で霊子の弓矢を石田が構えると、一護は苦虫を噛みつぶしたような苦しいモノへと顔を歪ませる。

 

「やっぱり……やっぱりお(・)前(・)も(・)か、石田!」

 

「黒崎。 話(・)は(・)聞(・)い(・)た(・)────!」

「(誰にだ?! やっぱり月島か?!)」

「────僕(・)は(・)味(・)方(・)だ、黒崎! だからさ(・)っ(・)さ(・)と(・)退(・)け(・)────!」

 

 ザシュ!

 

「────グァ?!」

「────チィ!」

 

 一護は痛みに声を出し、雨竜は舌打ちも込めた声を出した。

 

 一護は背後に居た銀城に、雨竜は背後に移動した月島の攻撃を躱した先で銀城に斬られていた。

 

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 銀城が狂ったような、歓喜に満ちた笑いを出しながら死神代行証を取り出して自身の大剣である『クロス・オブ・スキャッフォルド』に融(・)合(・)さ(・)せ(・)る(・)。

 

「君の芝居はあまりにもお粗末だな、銀城。」

 

「そう言うなって、月島。」

 

 一護は膝を地面につけたままこのやり取りを見て、呆然とする。

 

「銀城、やっぱり、月島に?」

 

 笑う銀城に驚愕の顔を向けながら一護が途切れ途切れに問うと、銀城は心の底から嬉しがる笑みを向ける。

 

「あ? 確かに月島に斬られたぜ? 二(・)度(・)斬(・)ら(・)せ(・)て(・)元(・)に(・)戻(・)っ(・)た(・)んだ。」

 

「………………………………………………」

 

 ザクッ!

 

 一護が放心している間、銀城の大剣が彼の胸を貫くと急激に力が無くなっていく感覚が一護を襲う。

 

「そういう事だよ、『黒崎一護』。 僕の『ブック・オブ・ジ・エンド』は二度相手を斬ると元に戻る。 僕を殺さなくて良かったね?」

 

 カラン。

 

 ついに一護の体を纏っていた鎧が無くなると、普通の木の板に戻った代行証が虚しく地面へと落ちた。

 

 さっきまで体をめぐっていた霊力や、感じていた霊圧の感覚が無くなっていたことに、一護は自分の震える手を見る。

 

「う……うあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」

 

 一護はついに実感した喪失感に頭を抱えて、額を地面にこするかのようにぶつけ、降り始めた雨の中でただ叫んだ。

 

「グッ……黒崎……」

 

 雨竜はただ泣きだして苦しむ一護を、何とか起こしあげた上半身で見ながら自分の『言葉の無さ』を呪った。

 

「あーあ。 ついに泣かせたじゃないか、銀城。」

 

「好きに泣かせろ。 そいつはもう搾りカスだ、用はねぇ。」

 

 ガシッ。

 

「あ?」

 

 ついに本格的に雨が降り出し、その場から離れようとした銀城の足に一護がしがみついた。

 

 その様子の一護は、『死神の黒崎一護』ではなく。

 

『気丈に振る舞う黒崎一護』でもなく。

 

『16歳の黒崎一護』でもなく。

 

 かつての『泣き虫の一(・)護(・)』の姿だった。

 

 「……返せ。 返せよ、銀城。 俺の……俺の力────」

 

「────なに言ってんだテメェ?」

 

 そんな子供のような一護に、銀城は冷徹な言葉を返す。

 

「コレは元々俺のお陰で得た力だろうが? 俺が貰って何が悪い? それに女ならともかく、野郎は趣味じゃねぇんだ!」

 

 ガッ!

 

 銀城は一護から足を引き離してから彼を蹴り飛ばす。

 

 降る雨の中、一護は痛みからか冷たい雨からか、身を丸めてただ泣きだす。

 

「……チッ! 用済みのクセに命も取らないでいるのに『これ』かよ────」

「────ッ?! 銀城!」

 

 ガキン!

 

 月島の焦るような声を出すと共に動いた瞬間、金属にヒビが入るような音が響いた。

 

「テメェは…………な(・)ん(・)で(・)テメェがここにいるんだよ?!」

 

 今起こったことに呆気に取られた銀城の声が、次第に怒りへと代わる。

 

 月島と言えば声を出す余裕もないのか、雨とは違う液体(冷や汗)が体から噴き出しさせ、目の前の刀の先を睨んでいた。

 

「渡辺……さん?」

 

 その場に現れたのは右手に抜刀した刀と、左手に鞘に入ったもう一刀の刀を持ったチエだった。




作者:や、やっと自分の部屋に戻れたよ……

竜弦:熱は下がってめまいも無くなったようだが薬は飲み続けて、睡眠をよくとるように心がけろ。

作者:ウイーっす…………………………前者はともかく、後者はきついかも。

竜弦:請求書はこれだ。

作者:金とんの?! てかなんでここに?!

竜弦:では次話でまた会おう

作者:しかもちゃっかり仕切っているし?!

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