白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

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少し短いですが、キリのいいところでしたので投稿しました……


第124話 The Outer (and Inner) Masks

 ___________

 

 ??? 視点

 ___________

 

 ドォン!

 

「ハッハッハー!」

 

 ドリスコールが次から次へと投げてくる投槍を雀部がレイピア状の『厳霊丸(ごんりょうまる)』を使ってそれらを横へと軌道をズラ(パリィ)していた。

 

「す、すごい!」

「あんな猛攻を受け流すとは!」

「さすがは副隊長! 正面切ってもあの大男と渡り合っている!」

 

 あの場付近から離脱し、傍から見ていた死神たちには雀部が冷静にドリスコールの攻撃を分析しながら戦術を立てていたように見えていただろう。

 

「(……これはマズイな。)」

 

 それはあながち間違ってはいないのだが、果たしてその戦術とやらの中に『勝ち筋』があるかどうかと問われれば微妙なところである。

 

「辛いかオイ?! えぇぇぇ?!」

 

 というのも、先ほどから雀部は受け流すだけでなくドリスコールに接近して一瞬だけ攻撃をするヒット&アウェイを繰り返しているのだが彼の『厳霊丸(ごんりょうまる)』では致命的な一打が与えられない。

 

 ドリスコールはその巨体に似合う腕力と、両手に装着しているメリケンサックから繰り出される拳は物理的に脅威だが、霊力がモノを言う死神や滅却師の戦いならば話は違ってくる。

 と思いきや、ドリスコールのパンチは風圧に乗った霊圧だけでもかなりゴリゴリと雀部の霊力を(僅かにだが)乱すほどだった。

 

 ならばと今度は『厳霊丸(ごんりょうまる)』から雷撃を飛ばせばドリスコールの投槍は雷撃を相殺するどころか、そのまま雀部を襲い彼はこれをいなす。

 

 この様なやり取りをさっきから二人はしていた。

 

「(さて、どうするか。)」

 

 雀部は長らく昔、護廷十三隊の設立直後からずっと一番隊の副隊長として業務をこなしていた。

 主に書類業務で、半歩下がった位置にいた為か実戦の実績はほとんどなく、それも一つの要因で『原作』ではドリスコールの一方的な物量にモノを言わせる攻撃に、切羽詰まった雀部は焦って挽回を繰り出してそれが彼の敗因へと繋がった。

 

 現に、彼は卍解を解放しようかどうか迷っていたがさっきの『天挺空羅』から総隊長命令で卍解の使用禁止となったので雀部はどうするか迷っていた。

 

 いわゆる、『|理論的に文句はないが、実作業の経験がほとんどない《OJT》』状態。

 

 そんな考えごとを命のやり取りでするのは珍しいことではないのだが、『多少の余裕』を持ってからこそできる芸当。

 

 雀部は牽制に雷撃を飛ばし、来るであろうドリスコールの投槍に『厳霊丸(ごんりょうまる)』を構えた。

 

「どりゃああああああ!」

 

「何?!」

 

 だがドリスコールはそのまま飛廉脚(ひれんきゃく)の勢いをつけた突進をし、雷撃を真っ向から受けながらも雀部の胴体目掛けてメリケンサックのついた拳を振るった。

 

「(なんだ、奴の体に浮き出た()()は?!)」

 

 ある程度の実力者であるなら普通、このような急展開でも雀部のように、敵の観察をしても不思議ではない。

 

 だが彼は()()()()()()()考えをしてしまっていた。

 

 別にこれは『足がすくんだから』などではなく、ただ単に彼が実戦に不慣れだったから。

 

 そんな彼の目の前で不敵な笑みをするドリスコール。

 

 ドッ!

 

「ガッ?!」

 

 重苦しい音と、肺の中にあるすべての空気が無理やり出される吐息。

 

 ボキボキッ!

 ドゴォン!

 

 それに続いて骨が折れる鈍い音と壁を貫通する音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フィ~、『一骨(いっこつ)』はやはり腰に来るのぉ~。」

 

「右之助殿?!」

 

 雀部の前で横からドリスコールを吹き飛ばしたのは、いつものヨボヨボで今にでも倒れそうな姿から一転してムキムキマッチョの老人(右之助)の姿。

 

 もしラブ、または三月が今の彼を見ていたら『どこのシップを張ったサングラスをかけた仙人だ?!』とツッコミを入れていたのかもしれない。

 

「その姿は……卯ノ花隊長に叱られますよ?」

 

「ホッホ! これを無事に乗り越えたらの!」

 

 「ガァァァァァァァァァ!!!」

 

 瓦礫の中から状藩士を出して獣のような叫びをするドリスコールが叫びに負けない、ブチ切れた形相で雀部と右之助を睨んだ。

 

 「テメェェェ! 」

 

「ぬ? 立ち上がるとは……はて、先の()()()()()の所為かの?」

 

「くそジジイがどうやってそいつの雷撃も防ぐ、俺の『静血装(ブルート・ヴェーネ)』を破った?!」

 

静血装(ブルート・ヴェーネ)』。

 それは血管の中に直接霊子を流し込み、防御力を向上させる滅却師の技。

 以前に蒼都が使っていた能力、『鋼鉄(ジ・アイアン)』と類するものである。

 無論、『鋼鉄(ジ・アイアン)』と違って『静血装(ブルート・ヴェーネ)』は発動の際に()()()デメリットはあるが。

 

 右之助はグルグルと肩コリを解すかのように肩を回しながらドリスコールに近づいた。

 

「なんじゃ。 お前さん、さてはあの金髪チビ助(三月)が口にする『のうきん』かえ? ああ、ちなみ『頭の中も筋肉』という意味じゃそうな……さてと、最近は山坊と喧嘩ばかりしておったから加減がイマイチわからん────」

 

 ギュ!

 ドォン!

 

 ドリスコールの投げた矢の軌道を右之助が変えた。

 

「────俺の、『神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)』を?!」

 

 ()()で。

 

「アチチチチ! もう少し年寄りをいたわらんかい!」

 

 まるで熱いものを掴んだように右之助はフゥフゥ息を掌にかけた。

 

 さて、短く右之助のことを記入しよう。

『右之助』。 フルネームを『右之助平左衛門(へいざえもん)』は山本元柳斎が子供のころから常に傍で世話を見ていた付人。

 

 と言っても、当時の山本元柳斎はかなりの腕白(わんぱく)者というか貴族階級の者にしては『腫れ物』扱い。

 

 良くて『変人』。

 

 そんな彼の『世話をしろ』と最初言われた右之助は『あ、これは厄介者同士をくっつけたな』と思いながら全く気の乗らない青臭いガキ 世間知らずの子供の世話をすることに。

 

 だが当時、瀞霊廷の世間体に嫌気を差して酒に明け暮れた右之助は現代の一般人に近い感性をもっていたことが幸いし、彼の『力は弱者を虐げるモノではなく、力無き者の為にある』という思想に興味は抱いていた。

 

 少なくとも、付人として幼い山本元柳斎の行動を静観させるほどには。

 

 少し詳細を飛ばすが、この二人は次第に行動範囲を瀞霊廷からほぼほったらかし(無政府)状態同然の流魂街へと広がる。

 無論、そこでは彼らのように少しとはいえ霊力の持っているゴロツキなども徘徊しているので喧嘩などもしょっちゅうしていた。

 

 そんな時の山本元柳斎の技量が今ほど良いワケがなく、右之助も巻き込まれることなど日常茶飯事。

 自然に回道の腕も、対人戦闘の腕も上げて右之助はその流れから()()()()()薬の調合を流魂街でする野良医師(のモノマネごと)のようなことをし始めた。

 

 これが上記の二人がチエと初めて出会う少し前の、ざっくりとした流れである。

 

「(さぁて、()()()()()前に終わらせるとするかのぉ。)」

 

 そう思いながら右之助は襲ってくるドリスコールを見て構えた。

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

「スーパースター! がんばれぇぇぇぇ!」

 

 別の場所では似つかわしくない、眼鏡をかけたスキンヘッドの小人のような男がマスキュリンを()()()()()()

 

「フハハハハハ! いいぞぉジェイムズ! 力がみ・な・ぎ・るぅぅぅぅ!!!」

 

「チ! またかよ!」

 

 恋次は舌打ちをしながら、傷が全快したマスキュリンの攻撃を紙一重でかわす。

 

 というのも、紙一重でかわすのは本望ではなく時間が経つにつれてマスキュリンの動きがより速く、腕力がより強くなっていくような気が恋次にした。

 

「スターフラ────!」

 

 「────うるせぇぇぇぇぇ────!!!」

 

 ドゴッ!

 

「────ぐほぉ?!」

 

「ミスター?!」

 

 マスキュリンは横からこめかみの青筋を浮かべた拳西のドロップキックを頭に受けて吹き飛ばされた。

 

「大丈夫か、恋次!」

 

「六車隊長?! それに檜佐木まで?!」

 

「おう、朽木の小僧はどうした? って、見りゃ分かるか。」

 

 拳西は周りの建物のほとんどが瓦礫に変わった様子で、恋次は白哉から分断されたと察した。

 

()()()()()()()、スーパースター!」

 

 「ぬおおおおおおお!」

 

 ジェイムズの掛け声で瓦礫の中から元気よくマスキュリンが出てきたことに恋次、拳西、檜佐木たちが構える。

 

「チ. 卍解出来ればこんなチンピラ、屁でもねぇのに」

 

 「正義はぁぁぁぁ! 悪になど負けんのだぁぁぁぁぁ!」

 

 (ましろ)ドロップキィィィィィィィック!!!」

 

 ドオォン!!

 

 その時、はるか上空から飛来してきたマシロのドロップキックによってマスキュリンを中心に巨大なクレーターができ、恋次、拳西、檜佐木が吹き飛ばされそうなのを力んで無理やりその場に残った。

 

「フハハハハハ! 見たか悪党め! このスーパー副隊長のマシロの実力を!」

 

「マシロ、コノヤロー! 急に虚化全力マシマシの攻撃をするんじゃ────!」

 

 「────聞き捨てならぁぁぁぁん!」

 

 今にでもマシロに突っかかりそうな拳西の言葉を、土煙の中から来た怒鳴り声が遮った。

 

「ワガハイが『悪』だと?! ふざけるなこの小娘がぁぁぁ! ワガハイが『正義』だ!」

 

「何をぉぉぉぉぉ?! 私のほうが『正義』なんですぅぅぅぅぅぅ!」

 

「「むぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」」

 

「「「「…………………」」」」

 

 子供の言い(張り)合いに似た場面に、恋次、拳西、檜佐木そして滅却師側のジェイムズまでが唖然と見ていた。

 

 「ぬおりゃぁぁぁぁ!」

 「せぇぇぇぇぇい!」

 

 ドォォォォン!

 

 マスキュリン(ルチャドール風)マシロ(何某ライダー風)の拳が衝突し、その余波が周りの風景を変えていく。

 

 (せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)────!!!」

 「どりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ────!!!」

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド────!

 

 マスク(仮面)をした二人がどこの奇妙な冒険譚クライマックスシーンのように、互いの攻撃を相殺しながら叫ぶ。

 

「(うわ。 久南さんってマジで出来る人だったんだ。)」

 

 恋次はスーパー副隊長を自称するマシロを(少しだけ)見直した。

 

「(こういう時は妙に頼もしいんだなアイツ……普段からこうであれば副隊長復帰できたかもしれないのに。)」

 

 拳西は副隊長になることを拒否したことで『スーパー副隊長』を自称するマシロは『性格以外はマシ』だということを再度認識しなおした。

 

「(これ、なんて言うマンガのワンシーンなんだ?)」

 

 おいバカ(檜佐木)やめろ。

 

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

「(妙だ……)」

 

 上記からそう遠くない距離では、白哉は()()()()()()()ことを不思議に思っていた。

 

「(手足の凍るような感覚……もしや奴の針には毒が仕込まれているのか?)」

 

「全力ガ出セナイ事ガソンナニモ不思議カイ? それは君が長らく感ジテイナイ、ドンナ生き物でも持ッテイル感覚だヨ? 人は……ソウだね、君も気が付イテイルと思ウケドソレハ『恐怖』ダ。」

 

「……親切なことだな。」

 

「敬意だよ。 僕の矢を紙一重で避ケルノハ得策デハナカッタけどヨクココまで耐えたことにね? 何から何まで、全ての行動や考えに至るまで『恐怖の対象』にナリ、並の者ナラバ発狂し心が壊レテ息絶エル。」

 

 白哉はエス・ノトが話を続けている間にも攻撃を続けた。

 

「(恐怖…だと? 下らん。 恐怖は戦事とは切り離せない存在。 そんなものを意識するのならばいかに敵を叩き伏せるかだけを────ッ。)」

 

 白哉の脳裏に一瞬だけだが、緋真が日に日に弱くなっていくときのもどかしい記憶が蘇り、それがルキアへと変わった。

 

「(違う! ルキアは強い! 強くなっている!)」

 

 脳内の横たわるルキアの肌は青白く、死人のようで────

 

 「────ぬあああああああああ!!!」

 

 白哉はその創造事切り伏せるかのように叫びながらエス・ノトをがむしゃらに攻撃する。

 

 ギィィィィィン

 

 白哉の繰り出した()()()斬撃がエス・ノトの静血装(ブルート・ヴェーネ)で止められ、エス・ノトの邪悪で愉快そうな笑みがさらに深くなった。

 

「ソウ。 それが『恐怖』。 生きている限り、どんな生物にも存在する本能(感覚)。 何人タリトモ抗エナイ。」

 

「ほぅ、では()()()()()()()()()()のか。 良いことを聞いたぞ?」

 

「ン?」

 

「ッ?! なぜ、ここに?!」

 

 白哉が動揺し、いつもの冷静な表情でないことに驚愕しそうなルキアが手に『袖白雪』を持ちながら、二人を近くの建物から見下ろす姿があった。




体調がすぐれないのでコントは無しです、申し訳ございません。

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