白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

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お待たせしました、次話です!

楽しんで頂ければ幸いです!

1/3/2022 8:10
誤字修正いたしました。


第126話 The Sun(Visor)

 ___________

 

 尸魂界組 視点

 ___________

 

「ぬりゃああああ!」

「なんの!」

 

 ドォン!

 

「ぬん!」

 

 ビュッ!

 

 大男のドリスコールと右之助の拳がぶつかり、その余波を物ともせずに雀部が『厳霊丸』で突く。

 

 ギィン

 

「ハッ! 効かねぇよ!」

 

 だが先ほどからと同じように、ドリスコールの皮膚に模様みたいなものが浮かび上がっては『厳霊丸』が弾かれ、彼は数歩分の距離を退く。

 

「『厳霊丸』では傷が付けないか。」

 

「う~む、やはりワシら二人ではちぃっとばかし分が悪いの。」

 

「……体の調子はどうですか、右之助殿?」

 

 距離を取った雀部に右之助が近くまで来ると心なしか、右之助の肉体がさっきより少ししぼんでいたかのようだった。

 

「……()()抜けておらん。 が、持って数分。 ……()()()()()()()。」

 

 右之助の言葉に雀部だけでなく、ドリスコールまでもが反応する。

 

「あ゛? 耄碌したのかこのジジイが? 『次で終わらせる』だぁ~?」

 

 こめかみに青筋を無数に浮かべたドリスコールの両手に、今までの中で巨大な霊子で出来た槍が出現する。

 

 「ならやってみろよ、()()とやらをなぁぁぁ!」

 

 ドリスコールが次々と投げる槍は山砲(さんぽう)のような爆風を一つ一つが起こしながら飛来してくるこれらを雀部が『厳霊丸』で受け流し、右之助がその強靭な肉体と『瞬閧』に似たようで違う術がオーラのようにまとった両腕で弾く。

 

 ドドドドドドドドドドドドドドド────!

 

 「────オラオラオラァ!!! (とっとと『卍解』を使え!)」

 

 ドリスコールは沸騰しそうな頭に血管を浮かべながらそう強く念じ、残存霊力など配慮していないかのような猛攻を続けているうちに、霊力の消費か物理的な運動によって体が熱くなったのか次第に汗が滝のように頬や顔から出始める。

 

「今じゃ!」

 

「あ?!」

 

 そして右之助の怒鳴り声に、ドリスコールがハッとするような顔をして右之助の視線の先、つまりは()()()()()()()()()()

 

「んな?!」

 

 そこで彼が見たのは太陽にも勝るといっても過言ではない火の玉が彼に襲った。

 滅却師である彼は即座に『静血装(ブルート・ヴェーネ)』を全力で展開する。

 

 ギャアアアアアアア!!!」

 

 だが、この能力はあくまで『皮膚の硬質化で防御力を上げる』であって『急激な温度変化』に対応しているわけではない。

 

 アツイアツイアツイアツイィィィィアァァァァァァァァ?!?!?!」

 

 ドリスコールの全身が一気に包まれ、彼を襲ってきたのは疑似的な太陽に迫る熱気。

 彼の眼球は瞬時に蒸発する前に気圧で内部から破裂し、服装も地毛はもちろんのこと皮膚も一気にボタボタと体から殻のように焼け落ち、彼はともかく逃げようと必死にもがいた。

 

 だが彼を包んだ火の玉は密着しているかのように彼を逃がさず、結果彼は生きたまま火達磨状態を余儀なく維持され、叫びから肺の中から空気を全て吐き出した後も苦しみから無理やり声を出そうとして蒸発した嘔吐の臭がまき散らされる……事さえも無く、それすら熱によって浄化された。

 

 さっきまで雄雄しかったドリスコールは微塵も見当たらず、体は地面に横たわり、母の温もりを乞うように体を丸めながらいまだに焼かれる『なにか』がそこにあった。

 

「……容赦無いのぉー。」

 

「本当に彼女は変わられましたね。」

 

 その場に『飛梅』を構えた雛森が言葉を訂正しながら降り立ち、苦笑いをする右之助と雀部へと心配の顔を向ける。

 

「右之助さん! 雀部副隊長! ()()()()()は────じゃなくてお二人とも大丈夫ですか?!」

 

 奇襲とはいえ、さっきまで上記の二人を苦しめていたドリスコールを殺した張本人がこのような少女とは普段なら思い浮かばないだろう。

 

 特に『雛森桃』という人物ならの尚更の事である。

 

『原作』での彼女は玩具のように利用され、崇拝していた理想(藍染)に裏切れられ精神に多大なダメージを受け、やっと戦いに参じたのは偽・空座町での決戦時。

 

 というのも『原作』の彼女は相当無理をした状態でハリベルの部下である三獣神(トレス・ベスティア)を乱菊と応戦、そして敵たちスンスン、アパッチ、ミラ・ローズへ鬼道と『飛梅』の性質を利用した結界にて牽制するも、出現したアヨンに乱菊同様に重傷を負い戦線離脱(リタイヤ)

 

 この時を境に彼女は心身ともに傷つき、いずれは五番隊長に復帰した平子真子の元でかつての依存症の名残化、よく彼に付きまとうようになり『全快』するのに10年ほどの時間を費やすことと成った。

 

 否、()()()()()()

 

 ここでの『雛森桃』は依存する相手を他でもない山本元柳斎にて『五番隊の隊長代理』に任命された『渡辺チエ』が存在。

 本来(原作)では市丸の三番隊と東仙の九番隊同様に『裏切り者の隊』として冷遇される五番隊は残った副隊長のケアをするどころか汚名を晴らす為に奮闘……

 を出来ずに副隊長と隊士共々にズルズルとした、『特にこれ!』と言った大きな戦果を挙げることもなく活躍の場は終ぞ『原作』では無かった。

 

 だが荒療治とはいえ、『隊長代理』は五番隊の根性を叩きなおすだけでなく、やる気を出させるために自分へヘイト(怒り)稼ぎ(向けさせ)、本来では考えられない『上位席官に隊長業務の補佐』、『単独(または孤立か混雑)行動を前提にした隊士の教育方針』、『敵を倒す』のではなく『現在の脅威を取り除くことで未来の脅威を減らす』思想への変化、等々と言った改革的な変化の中でここでの『雛森桃』は大きく変化した。

 

 戦闘技術はもちろん、モノの見解や捉え方、精神的な面でも『原作』からは程遠い成長や視野の広さを持った。

 

 更に、彼女の中で燻っていた依存症を無理やりに取り払ったのが他でもない藍染だったことも大きいだろう。*1

『原作』での彼女は死んだと思われた藍染との再会にて、藍染に礼と別れをされながら胸を貫かれた。

 だが織姫とアネットと一緒に、藍染が移動していた虚圏へと攫われた彼女は彼との再会で彼から突き放されるような態度を取られる。

 

 さて、少し長くなってしまったが要するに彼女(雛森)は『原作』よりもいろいろな意味合いではるかに強くなっていた。

 

 現に彼女は突然襲ってきた、対話の暇もなく隊士を手当たり次第に殺しにかかった賊ないし『滅却師』に彼女は生温い対応ではなく徹底的な反撃を他の五番隊の者たちと一緒に行い、彼女の初解である筈の『飛梅』も他者の卍解とは引けを取らないほどの威力なっていた。

 

「雛森!」

 

「シロちゃん!」

 

 一番隊舎の真央地下大監獄から出た日番谷が雛森の霊圧を辿っては互いを見ての開口一番が上記である。

 

「だから公務では『隊長』────!」

 

 ヒュッ

 ムニュン《。

 

「────うぶ?!」

 

 もう心配させないでよバカァァァァァァァ!」

 

 そんな日番谷を見た雛森は瞬時に彼の近くまで移動しては抱きしめ、彼の脳天に鼻を埋めた。

 もちろん、日番谷も『原作』からは雛森のように違いも出ていたが、今この場で思い出してほしいことは彼の身長が伸びたこと。

 

 それでも雛森が両腕で抱きしめたのは昔からの癖か『彼の頭』で、必然的に雛森の胸に彼の顔が押し付けられる形となっていた。

 

「モガガガガガガガガガ?!」

 

 うわぁぁぁぁん!」

 

 バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ!

 

 余談ではあるがこの二人、少し前の出来事に『原作』でもたまにチラつかされていた、互いへの思いを晴れて認識したのである。

 

 主に『雛森気付かされた』のだが。

 

 少し前に、彼女は重症のチエに言われた通りに藍染との決戦後から少し時間が空いた時に日番谷と向き合った。*2

 

 その際に日番谷からある種の好意を寄せられていたことに気付かされ、戸惑いながらも以前よりさらに仲睦まじい姿があった。

 

 今では『幼馴染』という枠を超え『付き合う仲』……とまでも行かないが、少なくとも『姉弟』の間柄から進展していた。

 

「……あー、コホン……雛森副隊長? 日番谷隊長が赤を通り越して紫色になっているのだが?」

 

「へ? うきゃぁぁぁぁぁぁぁ?!」

 

 雀部の指摘に雛森は日番谷の脳天を頬擦りするのをやめて下を見ると気を失いそうに口からエキトプラズム的なものを出していた彼の姿を見て叫んだ。

 

「……ブハッハッ────ハァァァ?!」

 

 その時、右之助は笑うのを中断されたような声を出しては体が空気の抜ける風船のように明らかに縮んで行き、以前よりさらに輪をかけたヨボヨボの姿に戻って膝を地面につける。

 

「ウェッホ、エホ、ゲホゲホゲホ、ゴッホ!」

 

 右之助は酷く咳き込みながら近くまで来ていた隊士に杖を持たされて、肩を貸されていた。

 

「やれやれ……やはり年には勝てんのぉー……あー、誰かワシを慰めてくれる心優しい女性はおらんかのぉ~? ……おい、そっぽを向くでない。 誰かこっちを見てくれぬか?」

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 上記と時を同じくして、マスキュリンとマシロの攻防は続いていた。

 

(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)(せい)!!!」

「どりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!!」

 

 というのも二人は意地(プライド)をかけた勝負でヒートアップし続けていたところで拳西も虚化して参戦していた。

 

「うらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうら!!!」

 

 ジェイムズからの歓声を受けるマスキュリンがパワーアップする度に、マシロと拳西は虚化に費やす霊力を高めて注ぎ込んでいった。

 

 彼女は剣八ほどでは無いにしろ、かなりの霊力の持ち主であり以前の『15時間の虚化維持』は伊達ではなかったのだ。

 

 拳西に至っては見た目にそぐわない、超絶な霊力のコントロールを駆使して攻撃と防御の際にだけ霊圧を高めたり弱めたりして虚化の維持時間を引き延ばしていた。

 

 無論その場にいた恋次も何もしていないわけがなく、恋次は『蛇尾丸』で瓦礫などを使って間接的な攻撃もしていたが……

 

「がんばれぇぇぇぇ! スーパースタァァァ────ギャアアアアアアア?!」

 

 ドゴォン!

 

 ジェイムズは声援を送っている途中で恋次の投げた瓦礫の下敷きになった。

 

 恋次の『(あれ? 俺ってばこいつ(ジェイムズ)を消せばいいんじゃね?!)』という、彼にしては珍しい機転だった。

 

「ジェェェェェェェイムズ! 貴様ぁぁぁぁぁぁ!」

 

「ぎゃ?!」

「うお?!」

 

 マスキュリンの怒りが上乗せされた攻撃に、マシロと拳西は驚愕の声を出しながらマスキュリンを逃してしまう。

 

「恋次!」

「赤パインちゃん!」

 

「この悪党がぁぁぁ!!!」

 

 拳西とマシロが恋次の名(あだ名?)を呼びながら恋次の近くまで一気に移動したマスキュリンを見る。

 

「破道の三十一、『赤火砲(しゃっかほう)』!!!」

 

 ドォン!

 

「ゴブァァァァァァァ?!」

 

 叫びながら拳を振るうマスキュリンは恋次の()()()()()()()()が顔面に直撃して変な声を出しながら吹き飛ばされた。

 

 思いだしてほしいが、恋次は『鬼道が下手』を通り越して馴染みであるルキアでさえも『鬼道が使えない』というレッテルを張られるほど。*3

 

「「恋次(赤パイン)が……詠唱破棄の破道で自爆しなかった……だと?」」

 

 そんな彼に拳西とマシロは素直に驚愕し、似た言葉を並べた。

 

「っしゃ! 道具に頼るのはどうかと思ったが技術局の『試作品』……中々使えるじゃねぇか。」

 

 恋次が複雑な気持ちで『蛇尾丸』を持っていない手の中で握られていたものを見る。

 そこには、一昔前のマスケット銃より一回り銃身が短くなったモノがあった。

 

 何を隠そう、これは先日滅却師たちに『空座町の半独立地域』の了承を瀞霊廷から得るために交渉材料の一つとして滅却師側が提供した『霊子兵装』を、死神でも扱えるように改良を重ねた試作品だった。

 

 これにより『死神』という動力源(霊力提供装置)、そして霊圧の出力調整や詠唱による精神的な細かい動作を『霊子兵装』という媒体で肩代わりし、比較的簡単に多少の訓練と扱い方の説明で鬼道が容易に使えるようになった。

 

 つまり恋次のように霊圧操作が下手な宝の持ち腐れを失くすような、革命的な第一歩とも言える代物が試作段階でも作られていた。

 

 ヌガァァァァァ!!!」

 

 マスキュリンは起き上がり、彼のマスクと共に顔が半分焼け落ちようとしていた。

 

「死なぬ! スターはぁぁぁぁ! ()なぁぁぁぁぬ! そう思わんかジェイムズゥゥゥゥゥ?!」

 

 「はい! その通りですミスター!」

 

「「「?!」」」

 

 恋次、拳西、マシロがガラガラと崩れる瓦礫のほうを見るとハンバーガーミンチのような肉片が蠢く中でジェイムズの口のようなものが上記の言葉を口にしていた。

 

「ミスターはスター! 希望の星! 悪党になど負ける通りが無いのです!」

 

「ぬおおおおおおおお!」

 

 みるみるとジェイムズが虚の超速再生(ちょうそくさいせい)のように蘇り、マスキュリンの体がさらに巨大化し、さらにムキムキマッチョなものへと変わった。

 

 ちなみにマスクも模様が変わっていた。

 

「フハハハハハ! 神の威光をまとう真のスーパースターであるワガハイにひれ伏せるが良いわ!」

 

 霊子で出来たマントをしたマスキュリンは一気に上空へ加速し、星形の陣を描くとそこから巨大な星形の光線が放たれた。

 

「え。」

 

 ドォォォォン!!!

 

「んな?! なんだと?!」

 

 だが光線は恋次たちに向けていたはずが、何故か()()側のジェイムズを一瞬にして灰にしていた。

 

「なぜだ?! ワガハイは確かに悪党どもを狙っていたはず?!」

 

 滅却師完聖体となった状態のマスキュリンは興奮中にも困惑していた。

 

「アホォ、どれだけイノシシやねん『自称スーパースター』?」

 

「?!」

 

 ()()()()も、ハイになった状態からだと思っていたがマスキュリンは声が聞こえた方向に向くとそこには逆さまで『逆撫(さかなで)』を展開した平子がいた。

 

「貴様! よくもワガハイのファンを!」

 

「アホかお前。 さっきの技ぶっ放したのはお前やろが?」

 

 平子のあおる言葉とやる気のなさそうな表情にビキビキとマスキュリンのこめかみに青筋が浮かんだ。

 

「ええええい! あくとか正義とかはこの際どうでもいい! ブチ殺す!」

 

 マスキュリンは動こうとして、違和感を持った。

 明らかに体の動きが()()上に、霊圧が上手く思うように操れなかったのだ。

 

「なん、だ? こ、れは?!」

 

「終いや。 やれ拳西、マシロ。」

 

 マスキュリンの頭上に拳西は卍解である『鐵拳断風(てっけんたちかぜ)』で物々しい両腕と上半身を覆う鎧姿になりながら刃の付いたメリケンサックの拳を振るい、マシロはかかと落としのモーションの最中だった。

 

 「「ぬおりゃぁぁぁぁ!」」

 

 ドォン

 

 二人の攻撃にマスキュリンが声をあげる暇もなく地面に叩きつけられた。

 

「「「虚閃。」」」

 

 カッ!

 

 そんなマスキュリンに平子、拳西、マシロの三人は虚化した上で虚閃を一斉放射した。

 

「………………………浮かれていた俺がバカだったぜ……」

 

 恋次は跡形もなく灰になったマスキュリンがいたと思われる地面から、自分の手に持っていたマスケット銃に視線を動かしながら上記の一言を喋った。

 

「『スター』いうからには燃え尽きて本望やろ?」

 

 虚の仮面を解除した平子のその言葉は、『原作』での恋次のモノと酷似していた。

*1
71話より

*2
99話より

*3
73話より




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今年もよろしくお願いします!

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