第11話 同居人、参上
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??? 視点
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場所は夜空の下の空座町の民家の一つ。
「何だこれは?」
その民家の屋根の上で独り言を上げる黒い着物に身を纏った黒髪で紫色の目をした少女は辺りを見回していた。
「虚の気配は確かにある…………だが
この少女の名は『朽木ルキア』。
ソウル・ソサエティから派遣され、前任の死神から継いで担当地区が空座町になった現世駐在任務の為に来たばかりの新米ペーペー同然の死神。
少なくとも
「(だが私も来たばかり。 『教本通りではない事など日常茶飯事』とは良く言ったものだ)」
ルキアは一人で自身を納得させ、虚の霊圧の強さを頼りに屋根を蹴って宙を舞って霊圧の強い一つの民家に降り立った。
「(ここには
『
通常の霊魂、いわゆる『幽霊』だが何かに強い未練がある場合で成仏せずに現世に留まる魂の事で虚にとっては格好の餌食。
「近い!」
ルキアは虚の気配が強まって行くのを感じ、隣の部屋を横切ろうと────
「────『近い!』、じゃあるかボケェ!!」
ドゴン!
ルキアは後ろから蹴飛ばされていた。
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ルキア 視点
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「……? ?? ???」
後ろから突然蹴飛ばされたルキアは、来た衝撃によって何が何だか分からなくて目を白黒させた。
そして彼女の前にはオレンジ色という、派手な色の髪の毛の
実はと言うと、ルキアにこの少年は眼中に無かった。
人間の存在など、
「不法侵入って言葉知ってっかコラ? 説明してやろうか? あ?」
そしてその
「(あ、ありえんが…まさか────)」
「────ったく……何でわざわざ
「ッ?! き、貴様……やはり私の姿が視えるのか? て、て、て、ていうか今、蹴り……蹴りを────」
────ありえん。
この人間の少年は、どこからどう見てもただの人間の筈。
ならば何故、
「あ? 何当たり前の事を言ってんだ?」
そこでドタドタとした足音と共に中年の男が少年たちのいる部屋に入って来る。
「うるせえぞ、一護! 何時だと思っている?! 二階でバタバタすんな、近所迷惑────ゴフェ!!」
「やかましい! これがバタバタせずにいられるか!! 見ろよコイツ────あ、そうか。親父には視えなかったんだったな」
「(やはり父親か。 しかし、実の父親の顔を蹴るとは……)」
「畜生! また幽霊かッ?! 自慢なのかっ?! 自慢なんだなッ────痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!」
実の父親をゲシゲシと蹴り始め部屋から追い出す一護。
「近所迷惑なのはテメェだ、へっぽこ医者!」
「(やはり異常だ。 この少年……死神である自分に触れ、話しかけるだけではなく『常人には視えないもの』として認識している)」
ルキアは黙りこくって親子のやり取りを眺め、少年の父親が部屋から
「貴様、死神の存在を知っておるのか?」
「死神ぃ? あれか? 鎌を持ってて、命を奪うっていうアレか?」
「(人間は死神という存在を誤認していると霊術院で教わったが………それは今の時代でも健在か)」
「まあ、お前の言う『死神』ってのがお前みたいな着物着て、刀を差して、
「(………………何という事だ)」
ルキアは唖然としていた。
前任者からの報告では『
だが目の前の少年のような異常事例がよりにもよって新人の 経験の浅い自分が出くわすとは。
「(だがそれ以前に、前任者がこの少年に気付かなかったのが悪い! 何をしておったのだ? 間抜けか、あ奴は?!)」
丁度その時、
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三月、チエ 視点
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「本当にこれで良かったのか?」
死神化した一護が初めて斬魄刀を振るって虚を倒し、力尽きたように倒れ伏した一連の出来事をチエと三月の二人が隠れながら見ていた。
「うん、予定通りよ。(ここまでは『原作』通り………まあ、一護が突然現れたルキアに対してギャアギャア騒がなかった事は仕方ない事として────)」
────三月が見ている先では、白装束を血で染めた朽木ルキアが途方に暮れたように座り込んでいた。
「……………どうすれば良いのだ、私は?」
「お困りのようっスねぇ」
そこに浦原の声と共に彼の下駄が聞こえて、ルキアが身構える。
「……何者だ、貴様」
「(あー、成程ね。 こういう接触があったのか)」
三月の知っている
ちなみに今の
これは勿論、一連の出来事が『原作』通りに進むか否か確かめる為の確認である。
「(というかこれやっぱりキッツイわ、これ!)」
三月は汗を大量に体中から噴き出していた。
これは別に気温が暑いからではなく
『
「さてと」
浦原が軽い出血止めの回道を気の失ったルキアと一護に施して、携帯電話を出す。
「(これで浦原商店の人達に連絡して、ルキアの
────そして突然三月の隣から何故かマナーモードの携帯電話特有の振動が鳴り出した。
「む? 誰だ、この時間、私に電話をして来るのは?」
「………………え、何で?」
…………………
………………
……………
…………
………
……
…
「いやー、流石『死神モドキ』! さっきのは何なんスカ? 『曲光』じゃないッスよね?」
「………『曲光』を
「へぇ~? それはそれで興味をそそるッスねぇ」
結局電話の相手はやはり浦原で、ルキアを浦原商店に連れ戻す『依頼』を受けた
その間、浦原は虚との戦いの後始末を受け負った筈だが………何故か三月達と一緒に浦原商店へと帰って来て『さっきの事』を聞いて来ていた。
「浦原さんの方はもう大丈夫なの?」
「ええ、もう終わりましたよ?」
「(図ったな、シャ────じゃなくて、『浦原』!)」
浦原商店でルキアはテッサイによる治療を受け、目を覚ました彼女は大層混乱していた。
が、浦原の説明により遥か以前から『窮地に陥った死神が本部に知られたくない時、御用になる商人』と自己紹介をした。
「成程、闇商人という奴か」
「いやいや、アタシは自分の事をそんな風に思った事は一度も無いッスよ? ただ
あまりよろしくない顔をするルキアにあっけらかんと笑いながら答える浦原。
そしてその隣には何故かチエと三月の姿があり、ルキアはその二人を見ていた。
「…………彼女達が気になりますか?」
「無論だ」
「アタシのじょs────」
「────雇われの身です」
「いえいえ、アタシの助手────」
「────雇われの身です!」
「そ、そうか」
ムキになりそうな三月と浦原にルキアは顔を引きつかせ、彼女の視線は自然とチエの横に置いてある何時も持ち歩いている布に巻かれた
「………前もって伝えるが、
「ッ」
ルキアがサッと目を別の場所へと移す。
「さて。 本題に入りましょうか?」
「?」
そこから浦原はルキアに霊力をほぼ全て失っている事を確認し、支給されている護廷の義骸では回復する見込みがないと説明をし始める。
勿論初対面の浦原を信用する訳でも無いのだが、今のルキアの思考はかなりごちゃごちゃになっていた。
彼女は死神の力である霊力を失った事にガッカリしていた半面、過去の出来事からホッとしながらどこか受け入れていた。
後者は無意識ながらで、自覚は全く無かったが。
「そこでです。 通常とは違う機能の良い義骸、お貸ししましょうか? お代は………そうですね、魂魄の回収やその後始末、虚の対処で手を打ちましょうか?」
「それ…………は…………」
今浦原の提案した『お代の代わり』は死神の『現世駐在任務』と大差無いものだった。
つまりルキアが何とか任務さえ続行すれば
「それにいざとなれば雇われの身の二人も仕事のサポートを致しますよ? 勿論、極秘でしかもアナタの任意で」
「ちょっと待って、何で私達まで勝手に巻き込むの?」
「「駄目?/か?」」
浦原とチエが同時に頭を傾ける。
「……………何で
「…………………」
それは今の状態のルキアにとって、あまりにも甘い誘惑だった。
「(うっわ。 ちょっと分かっていた事だけど、浦原ってエグイわねー)」
三月がジト目でニヤつく浦原と複雑な顔のルキアの二人を互いに見る。
…………………
………………
……………
…………
………
……
…
「朽木ルキアだ。 よろしく」
次の日、ルキアは無事に
「気になっている奴も多いだろうが、朽木は渡辺姉妹の遠縁の親戚だそうだ。 苗字が違うのは別々に暮らしていて………まぁ、あれだ。質問ある奴は休み時間にでも本人にでも聞いとけ」
『原作開始』から一夜、三月とチエは義骸に入ったルキアと共にマイに見送られ、渡辺家のアパートから高校に向かった。
最初同居する事に異を示したルキアだが新米 現世での浅い経験の彼女は無一文の身。頼れるところが胡散臭い闇商人の元か、(少なくとも)他人同然の
「じゃあ野宿しまスカ?」と尋ねた浦原にほぼ即答でルキアは「渡辺家で良い!」と答え、取り敢えず一夜を過ごした。
次の日、登校する際一護の近所は避けて、高校の職員達は浦原の偽造行為を信じ込んでいて、転入手続きも済んでいた。
ちゃっかり「緊急料金は別に取りますので♪」というメモもアパートのポストに入っていたのを発見しては紙飛行機を作り、三月が飛ばした。
そんな事をせずとも携帯には既に仕事の依頼メッセージが届いていたので尚更だった。
先生の緩く、明らかに説明を面倒臭がった言葉でホームルームは締められ、チエと三月とルキアは興味を煽られたクラスメイト達に質問攻めにされた。
「へー! チエと同じで黒髪なんだ~」
「でも目が紫色…………良いわ~」
「『姉妹』って、チエって本当に女子だったんだね」
「だから何故私を男と思う者が居るのだ?」
「朽木さんの喋り方、どことなくチエに似ているな?」
「「む。 駄目か?」」
「「「「ハモったー!」」」」
ワイワイと騒ぐクラスメイト達の一人が三月に声をかける。
「でもでもー、朽木さんってどちらかと言うと体型が三月ちゃんに似ているねー」
「グッ」
三月が俯いて、なるべく顔を合わせないようにしていた。
「織姫の言うとおりだな…………ちなみにどっちの方の背が高いのかな?」
「無論、私だ」
「フフン」とちょっと(?)ドヤ顔をしながら、(ない)胸をルキアが張る。
これはルキアの分の制服を三月が貸そうとして判明した事である。
元々空座第一高校女子制服のスカートの丈は長くない方だが、
たった4cmといえど
顔文字風に表すと「○/ ̄乙」である。
なので、ルキアは今チエの予備を着用している(スカートの方)。
「へー。まるでチエと三月を足して、2で割ったような感じだねー」
等々の事が起きてルキアはどちらかと言うとクラスに割とあっさり溶け込めた、『原作』と違って。
三月の痛む胃と悩み事からの頭痛を配慮しなければ。
何せルキアは現世での義務教育を受けていない。 せいぜいが簿記のようなもの。
数学や文法に頼る授業は何とか凌いだが、英語などはもう破滅的だった。
必死に念話を飛ばさず、メモにローマ字で発音などを書いたので授業どころではなかった。
作者:ふい~、取り敢えず一話投稿
マイ:はい、プレッツです~
作者:ああ、やっぱ駄菓子良いな~
ルキア:おい、ここはどこだ?
作者:ういぃぃぃぃ?! ナンデココニ?!
ルキア:いや、開いていた扉から声が────
作者:────マイさん、ルキアがお帰りになります!
マイ:は~い
ルキア:な?!ちょっと待て?! 私を離せ! おろさんか、戯け?!
マイ:小っちゃくて扱いやすいわ~
ルキア:『ちんちくりん』は余計だ!
作者:誰も言ってねーし…………