白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

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お待たせしました、短いですが次話です。

お気に入り登録や過去で出したアンケートへの御協力、誠にありがとうございます。

リアルでの仕事が忙しくなってきましたので、今週の投稿が出来るかどうかわかりません。 誠に申し訳ございません。


第135話 The Miracle, Champion of People

 ___________

 

 ??? 視点

 ___________

 

 「侵入者たちよ! よくぞ来た!」

 

「いや、『来た』というよりは『気が付いたら居た』というか」

「その上に『侵入者』はそちらだろう?」

 

 剣闘士風のジェラルドが高らかに胸を張りながら挨拶をし、彼と対面していた一護とチエがツッコムをする。

 

 「ここから出たければ、我を倒していくがよい!」

 

「(『スルー』かよ)」

「(『するー』というモノか)」

 

 ゴォ!

 

「ゴハァ?!」

 

 圧倒する熱気と同時に出現した巨大な爆発がジェラルドの眼前で起こり、彼はそのまま後方へと吹き飛ばされては周りを囲む闘技場(コロッセオ)の壁に衝突する。

 

「むぅ……今のを受けて吹き飛ばされるだけとは」

 

「こいつも()()ありそうだな、総隊長」

 

 斬魄刀を持った山本元柳斎、そして日番谷が平然と口上無しで入れた技は『氷輪丸』で出した一気に絶対零度で凍らせた空間に『流刃若火(りゅうじんじゃっか)』の高熱を浴びせた即席の水蒸気爆発だった。

 

「何度見ても総隊長はともかく、あの真面目で堅物の日番谷も紀州とはえげつないな」

 

「だが六車、それ程までにしなければならない相手とお主も感じてはいないか?」

 

「だな!」

 

 拳西と狛村もある意味日番谷とは違う方向での堅物(情に厚い者)同士。

 

 だがそれ以上に訳も分からない間に他の者たちとはぐれただけでなく、場所でさえも霊王宮から変わったことでとっとと(ジェラルド)を倒すことには賛成らしく、互いに『天譴(てんけん)』と『断風(たちかぜ)』を展開して襲い掛かる。

 

「クッ、この我が!」

 

「(今ならいけるか?!) って、え?!」

 

 一護が今の状況を好機とみて、動き出す前にチエが彼の肩を持って物理的に制止させたことに声を出す。

 

「まだだ、一護」

 

「ハ?!」

 

 チエが見ている先で一護は立ち上がったジェラルドが不敵な笑みをしながら口元の血を拭っていたのを見て、良くわからない寒気が走った。

 

「『奇跡』とは何を示しているか知っているか、賊ども? 『奇跡』とは、敵前を前に、危機に瀕して起きるものだ!」

 

 ドシャ!

 スパッ!

 

 狛村の『天譴(てんけん)』がジェラルドの体を物量で押し潰し、次に拳西の『断風(たちかぜ)』が切り刻む。

 

 パキパキパキッ!

 ボッ!

 

 次に日番谷と山本元柳斎の能力でジェラルドだった肉片と血液に火が付き、それらが凍り付いた。

 

 その容赦のない攻撃が終わったと思い、一護は足に再度力を入れたところで事態は急変した。

 

「な────?!」

 

 ────『なに』。

 そう叫ぼうとしたのは誰だろうか?

 

 巨大な手で弾かれそうになった狛村か拳西だろうか?

 それとも巨大な足から繰り出された蹴りを間一髪で免れた日番谷だろうか?

 

 ……敢えて山本元柳斎ををここで記入していないのは彼が単純に瞼を開けて行動に移ったからである。

 

「な、なんだこりゃあ?!」

 

「だから()()()と言っただろう?」

 

 一護たちが見上げていたのは巨大化した上に、負ったダメージも全快したジェラルドの姿。

 

 「我が名は、『ジェラルド・ヴァルキリー』! 頭文字(シュリフト)は『奇跡(ザ・ミラクル)』のM! 我が力は『傷を負ったもの』を神の尺度(サイズ)」へと『交換』する!!!」

 

 ジェラルドは巨大化したにも関わらず、素早い攻撃で次々と闘技場(コロッセオ)だけでなく、その周りの街並みと地形そのものでさえも変えていく。

 

「うおあ?!」

「(なるほど、『カウンタータイプ』とやらか。) いったん離れるぞ一護」

 

 一護とチエはその闘技場内から何某怪獣映画のように暴れるジェラルドによって破壊されていく街並みの中へとほかの隊長たちと同じように身をひそめる。

 

 「……他愛ない」

 

 暴れて数分後、見事な街並みは廃墟寸前へと変わったところでジェラルドがつまらなさそうに独り言を始める。

 

 「護廷十三隊と言えど、『奇跡』の前ではあまりにも小さき存在……」

 

「ムグ」

 

『小さい』という単語に思わず突っ込みそうな日番谷は己自身の口を塞ぐ。

 

「なんつナリでー動きしてんだアイツ……」

 

「じゃが『()()()()()()()()()()()()』だけならば()()()はある。 狛村、行けるな?」

 

 山本元柳斎がこくりと頷く狛村を、開いた瞼で見る。

 

「……儂の『天譴(てんけん)』ですな?」

 

「いや……卍解を試そうと思う」

 

「よろしいのでしょうか、山本総隊長?」

 

「あんな自信家の事じゃ、ここまで来て()()()はせんじゃろうて」

 

「『ここまで来て』?」

「『小細工』?」

 

「こっちの話じゃ」

 

 日番谷と狛村の困惑する言葉に山本元柳斎ははっきりとしない、濁したような答えをする。

 

「(まさか『卍解が盗まれる感じがしていた』などと言っても……いや、狛村なら信じかねんが、その根拠が『()()()()』とはちぃ~と無理があるかの…………………………………………狛村なら信じかねんが)」

 

「?」

 

 「プフッ」

 

 何故か自分を見る山本元柳斎に狛村が(犬のように)?マークを出しながらキョトンとすると、山本元柳斎が思わずほんの一瞬だけ震えた。

 

「(山本総隊長殿が、武者震いをしておられる!)」 ←違います

 

「(総隊長のジジイ、いま狛村を見て笑いそうになったな……)」

 

 かく言う日番谷もぴょこんと横に偏る耳を見て柴犬を連想していたのだから『お前もな』、という漫画での矢印テロップが彼の頭上にあってもおかしくはなかった。

 

「ならば一番槍は儂が努めよう」

 

「日番谷隊長は狛村の援護を」

 

「了解────」

 

 日番谷が了承した次の瞬間、狛村は物陰から姿をジェラルドの前に表してさっきの彼のように声を出す。

 

「────『黒縄天譴明王(こくじょうてんげんみょうおう)』!」

 

 彼がジェラルドの前に出た理由は別に自分へ注意を牽こうなどと言った戦略だけではなく、単純に『黒縄天譴明王(こくじょうてんげんみょうおう)』狛村と直接繋がっているのは動作のみ。

 

 つまり遠隔でリモコン操作をしているようなもので、狛村が『黒縄天譴明王(こくじょうてんげんみょうおう)』を動かすにはどうしても目視が必要となってくる。

 

 なお余談だが三月がこれに気付いてこの場にいていれば『思い出した! まるっきり“Gファイター”だ!』と言っていたかもしれない。

 

 あるいは『“28号”や!』とか?

 

 ズズン!

 

 ジェラルドと同等の図体をした狛村の卍解である、『明王』が現れたことでタイになる巨体がその場に出現した。

 

 巨大な鎧武者の『明王』と剣闘士のジェラルド。

 

 「フハハハハハ! その意義や良し! このジェラルド、受けて立つ!」

 

「……………………………………なんか俺、マジ(モン)の『ゴ〇ラ対メカゴ〇ラ』の再放送をまたも見せられているような気がするんだが……なぁチエ?」

 

 呆けそうな一護は、少し前に『懐かしいから!』と出たばかりの新作映画に対して訳の分からない、半ば強制的にどこぞの『黄色い悪魔』(雁夜命名*1)と一緒に観た映画が脳裏に蘇りながら横を見ると忽然とチエがいなくなっていたことにここで初めて気が付いた。

 

 ドォン!

 ギィン! ギィギィン

 

 「獣の類と思えばこれほどの武人とは、恐れ入る!」《big》

 

「貴様たち旅禍に武人と呼ばれる筋合いはない!」

 

 明王とジェラルドが一歩ずつ前に動き出し、互いの持っていた得物が衝突した余波で空気がビリビリとする振動が周りに木霊(こだま)していく。

 

 《big》「ぬ?!」

 

 急に足が何かつっかえたと思ったジェラルドが視線を下に向けると膝から下が見事な氷漬けになっていたことに気付く。

 

「『皮膚の感覚』ってのは? 急な温度変化に対応できないの、知っていたかデカブツ?」

 

 「これしきの事────ガッ?!」

 

 下を向いていたジェラルドの顔を『明王』が殴って彼の言葉を遮り、その拍子で彼の足は膝から上がボッキリと折れては離れる中、殴られた頭が粉砕されて血液が赤くなった雨のように降り出す。

 

「重国も同じ考えか────」

「伊達に弟子をやっておらんかったわい────!」

 

 チエと山本元柳斎がいつの間にか飛び上がっており、山本元柳斎に至っては老人とは思えないムキムキ筋肉マシマシの上半身を露わにしていた。

 

「「────四楓院(夜一殿)の見様見真似────」」

 

 二人が同じ構えをすると同時に、拳を作った二人の手に発動寸々状態の鬼道が霊圧として覆う。

 

「「────からの『双骨(そうこつ)』!」」

 

 ズッ。

 

 二人の繰り出した白打技は頭部をなくしたジェラルドの胸を正確に狙い、低くて重い一撃でクレーターのように皮膚がへこんだ速度は肋骨が折れる音をかき消すほどで次第にクレーターは大きな穴へと極大化していく。

 

 ズズズズズズゥゥゥン。

 

「う~む、やはり歳は取りたくないのぉ。 膂力が落ちとる」

 

「……そうか?」

 

「そうじゃよ。」

 

「そうか」

 

「………………」

 

 腕をグルグルと肩を慣らすチエと山本元柳斎の仕草を一護はただあんぐりと見ていた。

 

「どうした一護?」

 

 チエが今の彼に気付いて声をかけると、彼はハッとして声を出す。

 

「あ、いや、その……お前と総隊長さんが思っていたより仲がいいから……ちょっと……」

 

「『()()』……じゃと?」

 

 一瞬だけ何かの(プレッシャー)を一護目掛けて山本元柳斎が発しようとしたが、それを潔く引っ込めて代わりに言葉を口にした。

 

「フン、当り前じゃ。 伊達に『弟子』と儂は名乗っておらんぞ、黒崎一護!」

 

 むき出しになった背中を見せつけるようにそう言った山本元柳斎から一護は視線をチエへと移す。

 

「……何だ一護?」

 

「いや『ソレ』……どういうことだ?」

 

「????? どういうことも何も、重国が言ったではないか?」

 

「へ…………………………………………………………………………………………………………………………あ」

 

 少しの間を挟んで、一護は色々な点が繋がったような、腑に落ちた息を吐く。

 

「いやちょっと待て! 更木の奴に、『(弟子)を倒した後でないと戦わない*2』って言ってなかったか?!」

 

「私はそんなことを言っていない」

 

「嘘つ────!」

 

≪勝負だコラァ!≫

≪断る≫

≪んだとテメェ?!≫

≪まずは弟子から倒せ≫

≪うむ、ワシ────≫

≪────ああ? ()()の野郎を先にだぁ?!≫

≪そうだ≫

 

 ここで蘇るのは少し前の記憶。

 主に藍染離反騒動が落ち着き始めたころ、更木が喧嘩(という名の()闘)をチエに挑んだ日。

 そして()()()『弟子』と聞いてそれを『一護』と指定した後になぜかショボショボした山本元柳斎の姿。

 

「────ま、まさか……更木の野郎の勘違い(早とちり)で俺は命狙われていたと言うのか?」

 

 一護がワナワナとした手で頭を抱えているところに、チエが彼の肩にポンと手を置く。

 

「最初は重国と言い直しても良かったのだがこれでお前の杜撰(ずさん)な足運びを直せば御の字と思ったまでだ*3

 

「…………………………あ……おま……お前……」

 

 上手く口から言葉が出せない一護の反対側の肩に、今度は山本元柳斎が手を置く。

 

 ウンウンと頷く彼のほうを一護が見ると、稲妻が走るかのように昔から『訓練』と書いて『なぶり殺し』と読む記憶の日々が過ぎ通る。

 

「「………………………………」」

 

 ガシッ!

 

 無論、何故かその場にいない筈の山本元柳斎(一護)が隣でヒィヒィとしながら付き合わされる幻影まで見たところでようやく『あ。 ここに理解者おる』と思い、それが伝わったのか互いがガッシリとした握手を交わす。

 

 ドォォォォォォン

 

 頭を失くし、胸に穴が開いていた筈のジェラルドの体が起き上がる。

 

 「ハハハハハ! 我を転ばすだけなく、一時の死を味わせるとは正しく強者! 我が『希望(ホーフヌング)』の錆となれ!」

 

 復活したジェラルドが縦の内側から両刃剣を出す。

 

「頭部と胸を破壊してなお動くか」

 

「肉片残らず滅せねばならんとは……老骨に響きそうだわい」

 

 「我が力は『奇跡(ミラクル)』! 民衆の思いを形に────!」

 

「────破道の八十九、『黒翔砲(こくしょうほう)の門』」

 

「ッ! 狛村、卍解を解け!」

 

 一瞬お腹に直接響くような音と共に、ジェラルドの頭上を中心に黒い穴のようなモノが開くとそこから一気に黒い色のした何かが巨体のジェラルドに襲い掛かる。

 

 「ぬおおおおおおお!」

 

 彼はこの攻撃を盾で受け取ろうとして、見た目と違って重みのある攻撃に左腕自体がずらされて今度は右手に持った剣で斬る。

 

 「我はぁぁぁぁぁ! 負けんッッッ!」

 

 彼はあまりある腕力で自身に襲い掛かる重みを撥ね退けたが、その拍子で持っていた剣が刃こぼれするのを見て、彼は不敵な笑みをする。

 

 「見よ! 『希望(ホーフヌング)』に傷がついた! それ即ち民衆の『希望』が傷つき、『絶望』と変わるのだ!」

 

 ガゴッ!

 

 「……黙れ」

 

 「意義や良し!」

 

 チエが静かに飛び上がり、ジェラルドを斬ろうとして彼の持っていた盾に防がれる。

 

 自分の体についた斬り傷を無視して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

「なるほど、これは思わぬ収穫だった」

 

 別の静かな場所での独り言の声は広い部屋の中で響く。

 

「ここに来るまでに……」

 

 言葉の主はただ目を閉じたまま言葉を続けてから、自分の横に置いてある器具を確認する。

 

「……うん。 ちゃんと繋がっているね。 さて、見ものだね? ()()()()()()()()()()()()』」

*1
作者の他作品『バカンス取ろう』より

*2
32話より

*3
魂魄状態でウルルに勝った18話より




破道の八十九、『黒翔砲の門』: オリジナル鬼道で『黒棺』の重力を頭上から真下の標的に襲い掛かせるというモノ
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