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三月、チエ 視点
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「一護の奴の心配か、織姫?」
「ふぇ?! 竜貴ちゃん、もしかしてエスパー?!」
「んな事ないっての。 織姫の顔に出ていたよ? 『
「そ、そうかな……えへへ~」
「(うーん、原作通りでこれはこれで良いのかな?)」
三月は織姫と竜貴の話をそれとなく聞いていた。
織姫は
それが功を表したのか、彼女は竜貴と仲良くなり、ずっと一護一筋を示していた。
だがそれよりも────
「────おはようございます、井上さん」
「あ、石田君おはようー」
「珍しいね、石田君が遅れるなんてー」
「ああ、昨日ちょっと夜更かしをしてね」
三月は汗がダラダラと出ながら顔が赤くなっていくのを感じ、横を石田と呼ばれたクラスメイトの少年が横通るのを待った。
「? 渡辺さん、大丈夫ですか?」
三月の具合に気付いた彼の気に掛ける声で更に赤くなっていく。
「ア.ハイ。ダイジョウブ。デス。ハイ」
「?」
この様子の三月と石田のやり取りに竜貴がニヤニヤとする。
この少年の名は『
彼は黒崎真咲のように数少ない『滅却師』の一人であり、空座高校の手芸部部長でもある。
「ねえ竜貴ちゃん? 何で三月ちゃんって、石田君の周りだとああいう風になるのかな?」
「さぁ? もしかして青春かもね~」
「???」
未だにニヤニヤする竜貴の楽しそうな答えに対して織姫はただ?マークを出していた。
実はと言うと、織姫の所為で三月と雨竜は面識があるのだが………
この話は少し後に続けるとしよう。
「あれ? 織姫達聞いていないの? 何か一護ン家、トラックが突っ込んだらしいよ?」
「うぃえ?! な、なんだってぇ?! じゃ、じゃあ何?! 一護の奴、死ん────?!」
「────でねえよ」
慌てる竜貴に一護の声と共にカバンがぶつけられ、青くなっていた織姫の顔がパァッと輝き出しながら赤くなっていった。
「くくくく黒崎君! お、お、お、お、おはよう!」
「お、おう? 今日も────い゛?!」
席について座ろうとした一護がそこで固まり、彼の視線を辿った竜貴が察する。
「あぁ…」
「遅かったな、黒崎一護」
「おまっ?! なっ?! へ?!」
「(あー、これは『あの』流れね………これ位は変えても良いかも知れないか────)」
『────チエ、聞こえる?』
『三月か、何だ?』
『一護を校舎裏に誘って。 私はルキアを誘うから』
『分かった』
そこで突然立ち上がったチエが一護の席へと歩いて、彼の動揺する言動を無理矢理遮る。
「おい一護、少し顔を貸せ」
「ちょ、おま、どこの不良だよ?! そもそも────!」
ドンッ!
チエが一護の机を手できつく叩き、彼のしどろもどろする顔に自身の顔を急接近させながらもう一つの手で彼の顔を無理矢理自分へクイッと向けさせる。
一護の眼は泳ぎ続けて、決してチエと合わせないようにしていたが。
そして今の二人の鼻と鼻の距離、僅か数センチ。
「良いから黙って来い」
「……………………………………………………………………………………………ハイ」
未だにチエに強く出られず、畏まる一護だった。
この一連の出来事を見ていた周りの女子達は「キャーキャー」と黄色い声を上げ、その中でも数人は鼻を両手で押さえながら妄想を膨らませていた。
そして数人の男子は恨めしそうに一護を睨んでいたか、涙を堪えながらハンカチを噛んでいた。
尚チエは未だに男性の制服を着用していたが、周りの人達が中学の頃からの知り合いなどが多かったので小学生時代のように彼女の性別を間違える者はかなり少なかった。
だがやはり彼女の性別関係ない言動は未だに健在で、そんな彼女がこんな風に誰に対しても強く出られる事が未だに『双竜の王子』と呼ばれる要因の一つだった。
「ルキア、ちょっと学園を案内するけど興味ないかしら?」
「ん?」
ルキアは声をかけて来た三月を見て、チエに半場引っ張られていく一護の様子を見る。
「成程。 そうだな、少し歩き回りたいな」
「って、一護達に続いてあんた達二人はどこ行くの?」
ガタッと立ち上がるルキアと三月に竜貴が声をかける。
「や、だからルキアに学園の案内」
「今から?」
「今から」
竜貴がジト目を一瞬向けて、諦めた様に溜め息を出す。
「ハァ~………………理由、どうする?」
「……………………腹痛?」
「了解っと。
「交渉成立ね。 何時もありがと、竜貴」
「ん。 おかずを期待にしているよ」
スタスタと歩く三月と?マークを出しながら後を追うルキアが教室から出ていく。
「さっきのあれは何だったのだ?」
「ああ、あれ? 取引」
「???」
ルキアは昨日の今日で渡辺家の朝ごはんしか経験していないが、子供の頃からの付き合いがある竜貴や黒崎一家に渡辺家の全員が料理を割と得意にしていたのを知っていた。
そしてその中でも竜貴は弁当箱やおかずの代わりに頼み事を聞くようになっていて、今回の様に『用事』がある時などチエや三月の代わりに先生への言い訳をしてくれていた。
ぶっちゃけ、サボリの共犯者である。
金ではなく、食物に買収された共犯ではあるが。
二人が校舎裏へと向かう途中、授業のチャイムが鳴ったが、それを無視して進んだ先に、無理矢理連れてこられた一護は不機嫌の中でも超不機嫌で、どれ位かと言うとチエの目を見ながら睨む程。
そんな彼がルキアと三月を見て、自分の不機嫌さを露わにしながら口を開けた。
「で? ここに俺を連れて来て、どうするってんだ?」
「だから説明をするの。色々と。 と言うかルキアからのきつい、毎回意識を取るようなパンチとかを回避させたんだから感謝して欲しいわよ」
「「???」」
三月の最後の方の声は小声での独り言で、一護とルキアには聞こえていなかった。
「…………大事な事か?」
一護がそう他の三人に問う。
「うん。 大事だよ?」
「………………ったく、しょうがねぇなぁ」
一護は自らの頭をガシガシと掻いた。
…………………
………………
……………
…………
………
……
…
ルキアをメインに、一護に話した内容は死神とソウル・ソサエティ、虚の事と今のルキアには死神の力が無く、その代わりに力を受け取った一護に死神の仕事を手伝って貰わなければならないような状況の事を。
「今の私に戦う力が無い以上、私はこの仮の体で過ごさなければならない。 虚退治にこの二人も手伝ってはくれるが、あくまで手伝いだ。 担当外の者にすべてを任せる訳にもいかぬ」
「その線で行くと、俺も『担当外』って枠に入るんじゃ────?」
「────何を言うか、戯け! この町の担当である私の力を受けた時点で私の仕事は貴様の仕事同然なのだ!」
「んなっ?! そ、そんな屁理屈………」
「(ごもっとである。 と言うか今のルキアのセリフ、何気に
完璧に余談だが、別の世界で盛大にくしゃみを出した金髪青年がカソックをした神父と孤児の子供達に気を使われていた気が三月にしたが………………彼女はそれを無視する事にした。
「(さて、『原作』では渋々、仕方なく仕事を徐々に受ける一護、今はどうなるとやら? やっぱり『やってらんねーよ!』って突っぱねるのかな?)」
考え込む一護を見ながら三月はそう思っていた。
だが────
「────いいぜ。 死神の仕事、受けてやろうじゃねえか」
「(うんうん、やっぱり断るよn────)────え゛」
「ほう? 意外だな。 なかなか話の分かる奴ではないか?」
一護の顔は何時か見た、『覚悟を決めた者の眼』をしながらチエと三月を互いに見ていた。*1
「……………恐く、ないのか?」
ここでチエが自ら喋り出して、意外そうに一護が彼女を見てから再度言葉を出す。
「そうだな、怖えさ。 だけどこの力が手に入った途端、こんな風に色々と俺にここまで話してくれたって事は、子供の頃に見た化け物の事も俺が聞いていいって事じゃねえか?」
「???」
ルキアがチエと三月を互いに見る。「何の事だ?」と言いたげな表情で。
「そうだね」
「あー、安心した! やっぱあれは夢じゃなかったんだな!」
「だから何の事だ?」
「………ルキアにも話しておこう。 あれは数年前、私が────」
そこからチエはルキアと一護に、以前のグランドフィッシャーの出来事を一から話し始めた。
…………………
………………
……………
…………
………
……
…
「そんな事があったのか…………」
「…………やっぱり、お袋と俺を襲ったのはそのホロウって奴で間違いないのか」
「そうだ」
「…………ありがとう、チエ。 そしてすまない、俺が………俺が頼りなくて、力が無いが為に怪我をさせちまって」
「気にするな。 頭を上げろ。 虚は視えても、どうにか出来るモノではない。 故に他者や、自分を責めるな」
「……………やっぱり、その口調からすると………親父もおふくろも知ってはいるんだな? あの時襲った化け物の正体を知っていて、俺に『二度とあんな様な奴に近づくな』って言って、お前達二人にも聞くなって耳にタコが出来るぐらい言われていたからな…………」
そこで一護がニカッと笑った。
「けど、力を手に入れた! これで俺も
「…………そうか」
一護が声を出したチエの方を向くと、ギョッとした。
それは彼に釣られてチエを見た三月も同じだった。
彼らの目線の先では
「よかったな、一護。(悔しかったのだろう、『力が無い』と言うだけで知る事も出来ずにただ周りに保護される事が。 『一護』と言う名に恥じぬ度胸だ)」
「………………………………………………」
「か、カメラカメラカメラカメラカメラカメラ!」
一護がポカーンとして、三月が慌てて携帯電話のカメラ機能でこの表情を撮ろうとするが、時はすでに遅し。
「??? どうしたのだ、二人とも?」
チエの顔は何時もの眠たそうな、興味の無いような表情へと戻っていた。
そこで突然、ピーピーとルキアの伝令神機の音が鳴った。
「ッ! 一護、さっそく仕事だ!」
「え? あ────」
ルキアが
「どう? 私達の手伝い、いるかしら?」
「……………………いや、私達だけで対処しよう」
「分かったわ。 電話、何時でもしてね?」
「行くぞ、一護!」
「あ。お、おう────」
「────一護」
「ん?」
チエが駆け出しそうになる一護に声をかけ、彼は足を止めて彼女に振り返る。
「
「……………ああ!」
そこから一護は笑みを上げながらルキアと共に空座町へと走っていった。
「………行ったな」
「行ったわね」
「「………………………」」
「して、これからどうするのだ?」
「しょうがないからこのままサボろうか?」
「………………は?」