白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

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お待たせしました、仕事の合間に書いたので短いですが次話です。

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楽しんでいただければ幸いです。


第140話 The Bunny

 ___________

 

 現世 視点

 ___________

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!」

 

 姉のみづ()頼み(命令)で、彼は夜食を近くのコンビニで買ったお菓子の入ったバッグが壊れても構わないぐらい両腕を激しく振っていた。

 

 これは彼がより速く走れる為である。

 

「なんだよなんだよ、なんなんだよぉぉぉ?!」

 

 浅野啓吾は全力で夜道を全力疾走していた。

 彼の人生で二度目のこと。

 一度目はもちろん少し前に藍染から逃げていた時で、『浅野を囮に使った水色絡み案件をカウントしない』と状況を限定すればだが。

 

「前の怪獣とかと全然違うじゃんかぁぁぁ?!」

 

 彼が涙目で見たのはオフィスビル内からガラス張りのフロアやドアを叩く清掃員や、ブラック業務で寝泊まりをしていたような会社員の人影。

 

 一瞬パッと見ただけではまるで外に助けを求めるような行動に見えるが、注意すると動きは鈍い上に、その誰もが何かしら大きなケガを負っていた。

 瀕死の傷を負いながらも生者を求める『何か』が出現した現象は空座町だけではなく、隣の鳴木市でもこの異常事態は発生していたらしく、とてもではないが正気の者ならケガの規模やそれらに伴う痛覚で立つことは本来不可能なほど。

 

「何ゲーだよこれ?! それにやるなら山の中の洋館かアメリカの都市と相場は決まっているだろうがぁぁぁ?!」

 

 浅野は角を曲がりそうなところを、今度は明らか異形の化け物()たちが激しく揺れる()()()()()()()らしき物を互いに取り合いながら生々しい食音を発していた

 

 そのそばではさっき見た清掃員や会社員のように生気が抜けた男性の肉体が異音を口から出しながら、浅野の方向へとおぼつかない足取りで近づいていたのを見て彼は回れ右をするかのように方向を反転して走る。

 

「そもそもこちとら今まで幽霊関連なんだよ! 信じたか無いけどな! 『動き回る死人』なんて、ジャンルが違い過ぎるだろがぁぁぁ?!

 

 藍染のこともあり、前から見えていた虚や死神たちが特撮などの類ではないことを理解しながら未だに否定的な浅野は何とか自分と姉が住んでいるアパート近くまで戻っていた。

 

「ハァ、ハァ、ハァ……も、もうちょいで着く……」

 

 ヴゥゥゥゥゥ。 ヴゥゥゥゥゥ。

 

 見覚えのあるビルの近くまで来た彼は息切れを改善すべく、大きく息をして出来るだけ新鮮な空気を肺へと取り込もうしたところで、ポケットの中に入れていた携帯が鳴っていたのを反射的に着信の相手先を確認した。

 

『姉ちゃん』。

 

「ッ?! も、もしもし姉ちゃんか?! いま俺、アパートの近くまで────!」

 

啓吾(けいご)、早くアパートから離れな! そこは危険地帯だ!』

 

「へ?」

 

 ドォン!

 

 浅野が珍しく自分を名前で呼んだ姉の事で呆気にとられている間、彼の目前にアパートの屋上から虚が数体彼にいる場所に飛び降りていた。

 

「あ……」

 

『ちょっと啓吾?! 返事をしなさい! 啓吾?!

 

「(や、やべぇ……これ……俺、やべぇよ)」

 

 カチャン!

 

 この拍子で彼はガミガミと(これまた珍しく)心配している様子の姉の声が出てきている携帯から虚へと注意が移り、次第に今彼は自分の状況に頭が追いついたのか、彼の震える手から携帯が地面へと零れ落ち、それが引き金だったように一体の虚の拳が浅野に直撃する。

 

 ドッ!

 

「(あ、やべ。 意識が────)────え?」

 

 浅野は顔面を殴られ、頭の揺さぶりから意識を手放した。

 

 そう思った彼が次に()()()()()()()()()()()()()のは、吹き飛ばされる自分の体だった。

 

「へ?! ちょ、なにこれ?! ()()()()?! なんだよこの鎖?!」

 

 浅野は自分が地面から浮きそうなほどの身軽さと、己の胸から地面に転んでいった体へと延びていた鎖に混乱していた。

 

「どわぁぁぁぁぁ?!」

 

 さらに浅野の遠ざかる体に繋がっていた鎖に強引引っ張られる感覚とともに彼自身が前のめりに倒れると虚たちは彼の体に飛びつき、一体は浅野と浅野の体から伸びた鎖に噛みつく。

 

 ガシィン!

 

「ぐわぁ?! (いて)ぇぇぇぇ?! (いて)ぇよぉぉぉぉぉ?!」

 

 浅野は噛まれたのが自分や自分の体ではなく、繋がっていた鎖だった筈なのにまるでそれが体の一部かのように、胸が引き裂かれる痛みに苦しんだ。

 

 ドッ!

 

 「どこぞのライダーやないけど上空からのキィィィック!」

 

 次に浅野が見たのはかつて見たウサギ柄のなにか(パンツ)だった*1

 

 「またウサギ柄ぁぁぁぁ?!」

 

 「だから何で人様のパンツに注目しとんねんワレェェェェ?!

 

「おわぁぁぁぁ?!」

 

 上から虚を蹴った少女はそのまま浅野の胸ぐらを掴んでは浅野の気を失った体へと野球のピッチャーよろしく放り投げると、彼は吸い込まれるようにスッポリと体の中へと戻った。

 

「い、生きてる?! 俺、生きている?!」

 

「オラァァァァ! 死ねやクソ虚ォォォ!!!」

 

 ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ!《i》

 

 自分の身を確かめる浅野を他所に、本能でその場から離れようとした虚たちをひよ里の『馘大蛇(くびきりおろち)』が無慈悲に切り裂いていく。

 

「ナイスタイミングや、ひよ里()()!」

 

「アホォ! まだ『さん付け』引きずるんかいこのハゲ?! というかお前なに勝手に関西弁喋っとんねん?! 当てつけかこのハゲ?!」

 

 「ハゲてへんわ、このクソガキ!」

 

「『猿柿(さるがき)』や! ……ってガキ呼ぶな、クソチビ!」

 

 未だに『さん付け』と言う、ある一種の黒歴史を掘り起こされてキレたひよ里は(ほぼ)初対面である三月に似た少女を怒鳴ると、今度はひよ里が逆切れされた。

 

 《i》ガシ!

 

「もいっぺん言ってみ! 東京湾に沈めたるわこのガキ!」

 

「なんぼでも言ってやるわこのチビ!」

 

 ゴリッ!

 

「コントはそこまでにしとけ、お前ら」

 

 互いの胸ぐらを掴んでがんを飛ばしながら顔を寄せるといった、最悪の一触即発の空気にヒートアップした関西人二人の頭がラブによって無理やりぶつけられた際に骨と骨が衝突する音が鳴る。

 

「「……」」

 

「だ、だ、大丈夫か?」

 

 ひよ里たちは頭を痛みに悶えながらも抱え、さすがの浅野も連続で起きる展開に精神的に一周回って冷静になったのか心配する言葉を送った。

 

「おう、そこのお前。 この二人に付いていけ」

 

「「ハァァァ?!」」

 

「俺は取り敢えずできるだけ数を減らしてから機を見て、こいつらから離れる」

 

 ラブの言ったことに異を唱え始めた二人の前に、ラブは『天狗丸(てんぐまる))』を肩に掲げながらドンドンと増えていく虚を顎で指す。

 

「……五分で()ぇへんかったら虚閃、打つで?」

 

「おう。 援護助かるぜ、ひよ里」

 

「って誰がハゲ(お前)の心配してる言うた?!」

 

「「「言ってねぇし」」」

 

「うっさいわ!」

 

 渋々とひよ里たちがその場を離れると、ラブは虚化をして目の前の虚たちに『天狗丸(てんぐまる)』を両手で握り、仮面の下で大きな笑みを浮かべた。

 

「さて、と……汚物は消毒だゴラァァァァァ!!!

 

 まるで何かを成し遂げたような、清々しいまでの叫びとともに彼は棍棒をふるう。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

「ちょちょちょちょっと! いくら何でもこの運ばれ方、恥ずかしいって!」

 

「じゃあ落とす」

 

「ウチに異議なし」

 

異議ありぃぃぃぃぃぃ!!! 落とさないでくださいぃぃぃぃぃぃ!」

 

 浅野は自分より小柄な女性の肩に担がれていたことに男性としての威勢で上記を口にしたが、帰ってきた即答にその威勢を出した時よりも素早く引っ込めた。

 

「(どう考えてもこいつ、怪しさ満点やわ)」

 

 ひよ里は命乞い(?)をする浅野をさらにいじる隣の八重歯が目立つ、三月に似たツキミを見てそう思った。

 

 鳴木市は空座町のように滅却師などいなかった為か、担当地区の死神たちだけでは虚や魂魄を亡くした肉体たちが蘇り生者を襲っていたところを、現世にとどまったひよ里、ラブ、ハッチが急遽対応に出ていた。

 

 というのもひよ里はどちらかというと非協力的で主にラブとハッチが行動していたが、とある人物が急に表れたところで状況は少し変わった。

 

「あ! ええ所におった!」

 

 そのとある人物はツキミで、彼女は空座町から鳴木市周辺に居るはずの『仮面の軍勢』のもとへ行くよう、マイに頼まれていた。

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 なぜ藍染封印後、撤去したはずのツキミがまたここにいるか説明するには少し時間を巻き戻し、空座町へと場を変えよう。

 

「せい!」

 

 ゴッ!

 

「え~い!」

 

 ドゴォン!

 

 鉄裁は虚を拳で殴り、前より幾分か顔色が良くなったマイは以前にドルドーニを助けるために虚圏で披露したガンランスで虚を吹き飛ばす。

 

「……ぅクッ?!」

 

 ガァン!

 

「マイ殿?!」

 

 時はちょうど霊王宮にて藍染が『聖杯』と呼んだものを三月から抜き取った直後に現世にいたマイは急に手に持っていたガンランスを落とし、胸を両手で掴んだことに彼が彼女の名を呼んだ。

 

 マイは破面モドキが出現したことに最初は病院を抜け出そうにも、竜弦が退院を承諾しなかったことに彼女は無理やり(物理的)に我儘を通し、マイが病衣から私服に着替えて周りに人の目がないことを確認してから事前の『万が一』を発動させていた*2

 

()()()()!」

 

 マイがそう叫び、地面に魔法陣らしきものが浮かんで光の因子と共にツキミが姿を現した。

 

「……んあ? なんやこれ?」

 

「ツキミ、時間がないから移動しながら話をするわ。 『()()()()』よ」

 

 何時もののほほんとしたマイの表情が真剣だったことにツキミはただ頷き、二人は浦原商店へと向かい、そこにいた鉄裁、ウルル、ジン太たちと合流した。

 

「マイ殿?!」

「マイさん!」

「マーの姉貴!」

 

「皆、大丈夫?! こっちは()のツキミよ!」

 

「よろしくな?」

 

「すぐに移動する準備をして、出来るだけ運べるものを運ぶ用意をして!」

 

 三人は久しぶりにマイを見たことに喜んだのも束の間、軽い紹介をしてからマイの言葉で浦原商店に設置してある結界や罠を作動してからウルルとジン太がお店の者を軽トラックに載せ始めた後にマイ、鉄裁、ツキミは空座町の虚と出来るだけの生者を滅却師たちと連携してなるべく空座総合病院、空座高校、たつきや一護が通っていた空手道場のある風臨会館(ふうりんかいかん)、そして馬芝(ましば)中学校などと言った避難場所へと誘導をしていた。

 

 そこで異変は空座町だけでなく、隣の鳴木市でも起きていたことが瀞霊廷に連絡を取ろうとしていた死神たちの通信を浦原商店にいたウルルたちが傍受したことで、先に鳴木市へ身軽のツキミが移動してどこかにいる『仮面の軍勢』の残りを探し出すことになった。

 

 それが簡単に現世での一連の流れをまとめたのが以上の事だったが……

 

 彼ら彼女らはまだ知らない。

 

 この惨状が空座町や鳴木市にだけ留まっておらず、日本中……否。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()、これらが起きていたことに。

*1
97話より

*2
117話より




少し逸れますが、この頃あまりにも投稿する文章量が短いことに申し訳ない気持ちがあるので上手く書き上げることが出来た&可能であれば土曜日辺りにも投稿を目指します。

ですが確実にできるかどうかは保証できかねませんので、出来ない場合は月曜日のストックに足しますのでご了承くださいますようお願い申し上げます。
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