白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

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お待たせしました、リアルで急遽事情が変わった知人たちの急な引っ越しを物理的にも手続き的にも手伝っていたので短めですが次話です。

お気に入り登録、誠にありがとうございます。 とても励みになります。

今回もin瀞霊廷です。

楽しんで頂けると幸いです。


第150話 毒を以て、毒を制す

 かつて、現在『地球』と呼ばれる惑星と似た環境と時間経歴の進化を辿った一つの星があった。

 

 時が経つに釣れて他でもない星に住んでいた欲物たち自身によって環境は汚染されていき、星は悲鳴を上げた。

 

 これに反応したプログラム化したかつての神々は、『無意識下の集合体』を通して介入を図った。

 

 

 


 

 

 ___________

 

 瀞霊廷 残存兵組 視点

 ___________

 

「(やばいな……)」

まさか『市丸ギン』が斬魄刀を所持していたとは。 方法はともかく、今は厄介な展開だ

 

 カリンは自分の脇を見たときに血が出ていなかったことに焦っていたが、内心の声は別の視点から現状況を指摘した。

 

「(神鎗(しんそう)』という二つ名も、『藍染』って野郎を騙そうとした『天才』ってのも伊達じゃねぇってことか)」

 

「ん? ああ、これ? 君のような子なら、僕の『神槍』の性質わかるやろ?」

 

 市丸の握っていた脇差をよく見ると鍔も柄もなく、『脇差』というよりはむき出しだった(なかご)に布を巻いた粗末な見た目をしていた

 

「僕はそれを上手く利用しただけや」

 

 「…………吉良か」

 

「え? 吉良君?」

 

 パチパチパチパチ。

 

 カリンがぼそりとこぼした名前に雛森が反応し、市丸が小さな拍手をする。

 

「ご名答♪ そこで『乱菊』って言えへんかったという事は、大方予想はついているんやろ?」

 

「……『塵も積もれば山となる』」

 

「アッハッハッハ! ええ例えや!」

 

「お前の作っておいた干し柿に、仕込んでおいたのか」

 

 以前、市丸は四十六室に判決の選択を迫られた後に不満そうな吉良に確か彼はこう言った。

 

『ああ。 そういえば隊長室の裏庭にある離れの中に作っといた干し柿があるから、皆で仲良なかよう分けてくれる?』*1、と。

 

 市丸の『神槍』の能力は乱菊の『灰猫』と同じ性質を持ち、『刀身が塵となる』。

 そして卍解能力は()()()()初解の延長線にあるため、彼の『神殺槍』の『刀身の細胞に発動式の猛毒になる』は言い換えれば、『刀身を塵にしたままでの仕込みが可能かつ能力発動するまで無害』。

 

 もし、これら刀身の細胞が仕込まれた物が『蛆虫の巣』内に差し入れ可だっとすれば?

 

 無論その様なものを見つける意識を持っていたとしても、感知が限りなく不可能なほどごく僅かな量だとすれば?

 

 まさに、『塵も積もれば山となる』。

 

「いやぁ、最初は一か八かの為に取っておいた切り札やったんけど……割と上手くいって中の人たちを()()するのに役立ったわぁ。 しかも、入り口を君たちが開けてくれて。 ホンマおおきにな?」

 

「なら提案だ、市丸ギン」

 

 ここでカリンがニヤリと笑みをする。

 

「ん?」

 

「実は────」

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

『蛆虫の巣』入り口周辺に雀部、檜佐木、そして移動中に何事かと思って合流した鉄左衛門、リサが数人の隊士を連れて立っていた。

 

 七緒が地面に寝転がされていた見張り役の隠密機動の容態を見て、ただ気を失っていることを確認した。

 

「見事数発で気を失っていますね。 打撲の外傷が残っているものの、骨折や戦闘への支障をきたさない絶妙な加減さです」

 

「しっかし、ここに来るとは……人生、なにあるか分らへんな」

 

「ここに来たことがあるのか? わしらにゃあおおかた知らざるべき場所じゃったぞ?」

 

「前に浦原のアホォ経由で真子とひよ里に聞いただけや」

 

「「「(浦原のアホ)」」」

 

 リサの言葉に鉄左衛門、檜佐木、七緒の脳裏を同時にかつて裁判後に瀞霊廷内で見たケタケタとおちゃらける様子の下駄&帽子の浦原イメージが過ぎる。

 

「ッ! 来るぞ!」

 

 雀部の声にその場にいた副隊長に緊張感が走り、裸足で階段を上る数人の足音が聞こえてきたことに全員が抜刀する。

 

「ご苦労さん♪ こうも勢ぞろいでの出迎えなんて僕、感激」

 

『蛆虫の巣』から市丸に続いてぞろぞろと長い間収監(しゅうかん)されていた者たちが出てくる。

 

 ぐっと体を伸ばしたり、呆然としながら夜空を見上げたり、キョロキョロと『蛆虫の巣』内部とは違う景色に戸惑っていたりと様々な反応をする者たち。

 

「市丸ギン! 貴様、何をした?!」

 

「ん? な~んもしてへんよ、()()

 

「うっわ。 『蛇男』がこれだけ似合う奴、初めて見るわ」

 

 市丸のニィ~っとする薄笑いが蛇のように見えたリサの言葉に、彼が脇差をあげ────

 

 タッ。

 

「何してんのよ、ギン」

 

 ────る前にジト目で乱菊が潜んでいたらしい木の上から降り立った。

 

「ありゃりゃ。 もう出てくるん? もうちょい楽しんでもええやろ?」

 

 ちなみに乱菊は身を潜めてサボっていたわけではない。

 

 ()()()()()()()()でカリンたちが蛆虫の巣の中へと強行したのを見て、現場で待機していた。

 

「冗談にしては悪質すぎるわ。 アンタだけとかならまだしも、中の奴ら全員出してどうすんのよ? ()()しちゃうじゃないの?!」

 

 「「「「お疲れ様です、松本の姐御(あねご)!」」」」

 

 「だから姐御って呼ばないでよ?!」

 

 急に市丸の後ろにいた者たちが乱菊に頭を下げ、挨拶すると彼女は牙をむき出しにする猫のように抗議する。

 

「いややなぁ~。 そんなカッカしたらあかんで乱菊? 更に拍が付いてもうて『松本の姐御』呼びが密着するやないの、松本のあ・ね・ご♪」

 

 「誰の所為よ?! だ・れ・の?!」

 

 本来、『蛆虫の巣』は余程のことがなければ通常は立ち入り禁止の地区。

 その上に白打の実力がなければ近寄ることさえ叶わない。

 

 だが例外として、身内かつ護衛(監視)付きであれば市丸や乱菊などは面会を許されていた。

 

 というのも、吉良はともかく乱菊は持ち前の面倒見の良さ(姐御肌)を発現し、差し入れを市丸だけではなく『蛆虫の巣』の囚人たちや看守の隠密機動の者たちにも持ってきて配っていた。

 

 生気が抜けていた囚人たちだけでなく、無気力に見えて突然発狂して暴れだす者たちもこれらで少しは理性を取り戻していき、明らかにおとなしくなっていったので普通は罰を与える筈の四十六室や看守たちは静観していた。

 

「松本の言うとおりだ、市丸。 今は時間がない」

 

 乱菊を弄る市丸を東仙が人混みの中から出て口を開ける。

 

「(『市丸ギン』に、『要東仙』! 元隊長各が二人も?!)」

 

「雀部副隊長、私や市丸はお前たちと争う気はない」

 

「は?」

 

 人混みの中から更にカリンと雛森が横から出てくる。

 

「よ、雀部のおっさん」

 

「お、おっさんではない! カリン、これはどういうことだ?! なぜ囚人たちを────?!」

「────いま人手が足りねぇ。 ならこいつらも出さない手はないぜ?」

 

 カリンのあっけらかんとした態度と言葉の内容に、雀部たちは唖然とした。

 

 何せ場所を知っている彼らからすれば『蛆虫の巣は危険分子の収容所』としか認識していない。

 それに釣られ、最近までは場所の存在さえ知らなかった他の者たちはここ(蛆虫の巣)が普通ではない人を閉じ込めていたことを察していた。

 

 そんなところから出てきた人材を『人手』として利用する発想など思いのほかである。

 

「しょ、正気か?!」

 

「正気? 正気で今の状況のまま戦争に勝てるのならいま言ってみな」

 

 カリンの問いに、誰もが互いを見た。

 

 確かに現在の人手不足は深刻な問題で、我が是非にでも解決したい問題だった。

 そのままの意味でも、戦力的な意味でも。

 

「それでも不満があるのなら、オレがこいつらと一緒に前線にいて、指揮して、全責任を取る。 これでいいか?」

 

「ヒュゥ~、すんごい言い張りますやん!」

 

「今は黙っとけ、キツネ野郎」

 

「はいはい、トラの♪」

 

 ならず者同然である元囚人たちの行動を彼女が責任を取ると言ったカリンの宣言は魅力的だった。

 

 だが懸念は残る。

 

「それで……市丸と、東仙は?」

 

 そう。 元とはいえ、隊長である二人がこのような申し出を受けるか以前に、彼らを御しきれるのかが問題。

 

 ()()()

 

「ん? 僕は別にええよ、手伝い」

 

「私もだ」

 

「は?」

 

 そう呆気に取られたのは誰だろうか?

 

 雀部含めた副隊長たち全員かもしれない。

 

「私は、奇跡的なほどの偶然が重ねあって今生きている。 それに私が居た上で瀞霊廷が無くなりでもすれば、きっと狛村は私を殴るだろうな……(悲しんだ上で)」

 

「う~ん……僕は要とは違って『面白そう』、やから? かな?」

 

「ギン……アンタねぇ……」

 

「アッハッハッハ!」

 

 市丸がケタケタと笑う彼に乱菊は呆れ顔と共に笑みを浮かべた。

 

 殆どの者たちは知らないが、彼らなりの『じゃれ方』がこれである。

 

 本心を口にしていなかった者同士だが幼い頃から長い年月を共にした二人にとって、一度壁が砕けば割と互いのことが自ずと分かってしまうようになっていた。

 

「(ホンマ……()かった)」

 

 特に以前のように生死をかけた隠し事をしなくなっても良い市丸にとって、今の切羽詰まった状況下でもかなり居心地の良い気持ちになっていた。

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 人工破面たちの軍勢が到着するまで、あと少しの間まで元隊長たちを含めた『蛆虫の巣』の囚人たちが加わったことで瀞霊廷の作業は各段的に加速した。

 

 それが要塞化であれ、技術開発局関連であれ、流魂街の魂魄たちの不安を取り除くことであれ。

 

「これで……武器を持てる者全てに行き渡ったか」

 

「ああ。 配置も大体は決められたな……敵が一つの方向から来てくれているのが助かったぜ」

 

「これで包囲網なんかせんのが不思議じゃ。 自信の表れか、はたまた何か別の理由があるのか……」

 

 瀞霊壁のそばに建てた野営テントのような物の中で雀部が見ていた瀞霊廷とその周りの地形と敵の予測進行を現す地図を一角と鉄左衛門が一緒に見下ろしながら口を開ける。

 

 キラッ。

 

「多分、大規模な実験なんとちゃう?」

 

 キラッ!

 

「実験? どういうことですか、矢動丸さん?」

 

 リサが眼鏡を光らせながら掛けなおすのを真似るように、七緒も同じく眼鏡を掛けなおしながら問う。

 

「ウチの勘やけど、この『人工破面』ってのは今まで虚や破面を相手にしていたんやろ? だから戦術もくそもない数の力押しでどこまでウチらの相手出来るか試してるんとちゃう?」

 

「なるほど……『数は力』とはよく言ったものだよ」

 

「吉良、大前田たちの様子は?」

 

 吉良が頷いて、恋次は今まで姿を見せなかったデブ ふくよかな大前田や、他の四十六室に相手にされなかった下級貴族たちのことを伺う。

 

「ダメだった。 未だに自分たちの地域を固めているみたいだ……」

 

「頑固者の集まりだとは知っていたがよ……お前が言っても、か……」

 

「??? 恋次、なぜ吉良副隊長に貴族たちのことを訪ねているのだ?」

 

「う」

 

 ルキアの質問に吉良がどこか気まずそうにそっぽを向く。

 

「ああ? いやだって、オレらの知っている奴で今ここにいる貴族って言えば吉良だけだろうが?」

 

「………………………………………………ああ、そう言えばそうだったな」

 

 少しの間を置いてからルキアも吉良の家が(ほとんど没落気味とはいえ)貴族に部類されていることを思い出す。

 

 彼女自身も一応、朽木家なのだが養子に対して吉良は直径。

 

「ルキアお前、完全に忘れていただろ?」

 

「んな?! し、失礼な! 忘れてなどいないぞ?!」

 

「まぁ、気持ちは分かるがよ。 何せなんでこいつが俺たちとつるんでいたかと言うとひn────」

 「────うわぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」

 

「へ?! ど、どうしたの吉良君?! それに、阿散井君もどうして私を見るの?」

 

「どうしてだろうなぁ~?」

 

 恋次がニヤニヤしながら赤くなりながら自分を睨む吉良を無視する。

 

「恋次、どういうことだ?」

 

「うぇ?! あ、ああいやその……なんだ」

 

 そして今度はルキアに尋ねられて困る恋次だった。

 

「いや~、相変わらず凄いなぁ~」

 

「うんうん、青春よねぇ~」

 

 似た者(他人を弄るのが趣味)同士の市丸と乱菊がほんわかとした空気を出す。

 

「あっまあま過ぎて胸焼けするわ」

「同感……余所でやってもらいたいわ」

 

 これまた似た者同士(?)のリサと七緒がため息交じりに言葉を出す。

 

「「「(俺/わしも何時かは!)」」」

 

 内心で気張る檜佐木と鉄左衛門と一角。

 

「なんかオレの知っている護廷十三隊より良い空気だな、おい」

 

 そして重体ながらも出席した海燕がいた。

 

 意識が一足先に戻った海燕も、今の瀞霊廷の状況を知るや否や粉骨砕身の勢いで動いていた。

 体が元々破面だったからか、四番隊の総合詰め所で未だに動くことが出来ない空鶴と岩鷲と違って彼の回復速度は比較的に早く、今では何とか歩き回れるほどまで回復していた。

 

「海燕さんは嫌いですか?」

 

 彼に付き添った勇音がそう聞くと、海燕は笑みを浮かべて首を横に振る。

 

「いや? むしろ好きだぜ?」

 

 このワイワイとした夜空の場にカリンの姿はなく、彼女はテントの外で空を見上げていた。

 

「………………はぁ~」

 

 押し寄せるプレッシャーと負の感情と共に吐き出すようなため息を出し、どこともなく独り言のようなモノを始めた。

 

「……戦いが始まる。

 鳴り響くはずの笛や太鼓(ドラム)も何もない。

 かつての明るい日々は、山に降る雨のように流れた、

 地を渡る風のように。

 太陽の日は遠い西へ西へと去り、

 大地は陰に飲み込まれ、今は夜明け前。

 夜は明けるのか、それともこれからもずっと夜のままなのか?

 ……なぜだ? なぜこうなった?」

 

 それは独り言というより、答えが返ってくるはずのない疑問染みた独り言を交えた詩のようなものだった。

 

 彼女は目を閉じて耳を澄ませる。

 

 ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ。

 

 遠く離れた場所から、リズミカルな地を揺るがす程の心拍音に似た音が聞こえてきた。

 

「……来たか」

*1
99話より




次話は恐らく別組視点も混ざります。

リカ:呼びました?

まだです。

リカ:チェンジは別料金です。

……お金取るの?
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