白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

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お待たせいたしました、次話です。

過去のアンケートへのご協力、誠にありがとうございます。

未だに目を通し、参考にしています。

楽しんで頂ければ幸いです。


第153話 The Upcoming Battle of Dead Spirits

 莫大な力を伴う『介入』。

 

 それがある世界でのある日、『母上』の一部に『刺激』を与えてしまった。

 

 今まで静かだった湖に葉っぱが落ちて、小さな波が出来るように。

 

 あるいは山の上で積もりに籍もった雪が、指してきた日光によってごく僅かに絶妙なバランスを崩すかのように。

 

 いずれ『刺激』は大きな変化をもたらした。

 

 

 

 

『自己認識』の再来である。

 

 

 

 


 

 

 ___________

 

 黒崎一護、『渡辺』チエ 視点

 ___________

 

「「………………………………」」

 

 あれから二人の間に長い撃沈が続いた。

 

「(どうする?)」

 

 今までに聞いた情報を飲み込むために考え込んでいたらしい一護をチエが横目で見てそう思った。

 

 彼女は珍しく()()()()()

 

「(私は……()()()()()()()()()?)」

 

 何せ今までの彼女にとって、()()()()()()()()()だった。

 

 ここには自分を『姉』と自称しながら半場無理やりに連れまわす者も、

 外部からの『刺激』も、

 明確な『敵』も、何も無かった。

 

「他の皆はどうしているのか心配だ……」

 

「……………………」

 

 一護はぼんやりと上記の言葉を出し、チエはその続きを待った。

 

「なぁ、チエ? お前とアイツ(三月)って、他の世界を行き来しているんだよな?」

 

「そうだ」

 

「だったら俺の世界のことも、()()()()()のか?」

 

「………………ああ」

 

 一護がここで聞いていた『知っている』とは前情報、いわゆる『原作のことだ』とチエは思い、肯定の答えを出した。

 

「そう、か…………なら俺が見たあの『黒崎一勇』と『黒崎織姫』も知っているのか……」

 

 だがここで、意外な()()()()が生じる。

 

「……? どういう意味だ?」

 

「え? いや、2013年の俺の家族……らしい?」

 

「私は()()()()ぞ」

 

「え? ……そうか。 じゃあ、今度は俺が話す番ってワケか」

 

 そこから一護が話し始めたのは、『黒崎真咲』が死んだ後の『原作の10年後』の話だった。

 

 

 

 

 

 

 ___________

 

 虚圏援軍要請組 視点

 ___________

 

 リカたちがルドボーンの髑髏兵団(カラベラス)に案内されたのは大きな砂丘の一つ。

 

「それでこちらの事情はどこまで知っています、ドクロさん?」

 

「『瀞霊廷に似た土地が突然虚圏に現れた』、と。 生存者は何名いる?」

 

「う~ん、全部入れて1000と少し?」

 

「そうか」

 

 ルドボーンとリカたちの前の砂丘にはポッカリと不自然に空いた穴があり、そこを通ると彼女たちが見たのは『空洞になった砂丘の内部』だった。

 

「うお?! んだこりゃ?!」

 

 アパッチが見上げてそう言ったのは空洞になった砂丘を内側からドーム状に支えていた無数の髑髏兵団(カラベラス)たち。

 

 一体一体がまるでパズルのピースのように上手くかみ合い、文字通り体を張った『壁』となっていて内部は小さな集落の形をしていた。

 

「まるでサナギか何かですね……」

「(この場合は木の実ではなくて?)」

「(そうとも言いますね。 さすがはギリシャ)」

「(それって今、関係あるのかしら?)」

 

 「……私の『蛇殻砦(ミューダ)』に似ていますね」

 

「原理は同じようなモンだからな」

 

 スンスンの独り言のような言葉に、不満そうなグリムジョーの声がして『ソレ』は起きた。

 

 なんでよりにもよってあの生意気な弓兵(アーチャー)の声なの?!

 

「「「「え」」」」

 

 突然リカが声を出したと思えば、口調でさえもどこか大人っぽく変わっていた。

 

しかも『青い髪』って何よ?! 嫌味?! 嫌味なのね────?!

 

 ────パシン!

 

「……………………………………失礼しました」

 

 何かを言い続ける前に理科は自分の口を両手で覆ってから数秒後、いつもの様子へと戻っていた。

 

「あーっと、『弓兵』ってのはどういうことだ?」

 

「………………………………………………『あい・あむ・ざぼーん・おぶまいそーど』?」

 

「「「「???」」」」

 

 この気まずい空気をどうにかしたいミラ・ローズの問いに帰ってきた返答にその場に居た全員が頭を傾げた。

 

「ま。 それはともかく、貴方がここを仕切っているということでいいですか?」

 

 グリムジョーの口が笑みによって吊り上がる。

 

「……だったらどうする?」

 

「先ほども言ったように、『交渉』をしに来ました」

 

「『交渉』、だと? 」

 

「ええ。 このまま人工破面の軍団に、大打撃を入れませんか?」

 

「…………………………プ。 ハッハッハッハッハ!」

 

 話を続けるリカに、グリムジョーが面白おかしく笑い始めた。

 

「おかしいことを言うじゃねぇか、『()()』?」

 

「ボクは死神ではありません」

 

「んじゃあなんだ? テメェはさっきの奴らとは()()ってのか?」

 

「『さっき』?」

 

 リカは顎をそでに入れたままの手の上に乗せる。

 

「………………なるほど。 あの逃げた愚か者たちですか。 じゃあ戦った相手はあなたたちですか?」

 

「だとしたら? 仇を取るのか?」

 

「いいえ? むしろ『馬鹿どもがご迷惑をおかけしました』と言いたいほどです」

 

「ハ! よく知っているじゃねぇか。  アイツらは人工破面相手に逃げただけじゃなく、俺らにぶつけて来やがった。 とんだとばっちりだったぜ」

 

「それでさっきの話ですが────」

「────()()()

 

「「「はい?」」」

 

 笑ったまま、意外と了承するグリムジョーに3獣神とリカが目を点にさせる。

 

「勿論、『死神たちと破面モドキたちが潰しあった後に』だがな」

 

「フーン……意外と()()なんですね」

 

 ピキッ。

 

 グリムジョーのこめかみに血管が浮き出る。

 

「なんだと? もういっぺん言ってみろ

 

「『臆病』、と言ったんでs────」

 

 ────ヒュッ!

 ドォン

 

 グリムジョーの体が一瞬消え、リカは気付けば彼の右手に喉を掴まれたまま地面に押し倒されて今にでも自分の目をえぐるような構えをする、顔がスンと表情が抜けた彼を見る。

 

最後の言葉は『臆病』でいいか、チビ

 

「『敵同士が弱ったところで狩る』のは立派な狩り人としての戦略ですが、()()を全部片づける()()()()を逃がしますよ?」

 

「……『彼らを全部片づけるチャンス』だぁ?」

 

「ええ。

 

 

 

 

 

 

 人工破面の軍団と、それらを操る滅却師達の拠点を()()()()()チャンス到来です。 やってみたくはないですか?」

 

 

 ___________

 

 瀞霊廷内 残存兵組 視点

 ___________

 

 周りの流魂街を天然の堀へと変えた瀞霊廷内にある人口の湖の、『最後の砦』とも呼べる四十六室の中央地下議事堂へと通じる橋の上を魂魄たちと食料や様々な器具を運んでいた死神たちで混雑していた。

 

「非戦闘員たちを早く中の居住区へ避難させろ!」

「物資を運び込むにまだ時間が────」

「────もう時間がない! 戦は今にでも始まるんだぞ?!」

 

 そこでは席官たちが籠城の物資か魂魄の避難の優先を言い争っていた。

 

「んだよアニキ?! あたしだって戦えるんだ!」

 

「ちょ、落ち着いてください志乃さん!」

 

 橋の上の一か所では、ムスッとした一角に今にでも殴りかかろうとしていた女性────『志乃』がいた。

 

 そして彼女が一角のことを『アニキ』と呼んだように、彼女の苗字は『一角』。

 

 まごうことなき一角の妹で、遺伝子が強く出て髪が薄い ピカピカのおでこと頭に乗せた、布傘のようなかんざしが目立つ彼女を翠眼に涙を浮かべそうな男性が彼女を背後から羽交い絞めで止めようとしていた。

 

 「はなせ行木(ゆき)! ただの兄妹喧嘩だ!」

 

 「『喧嘩』って言ってる時点でだめですよ志乃さん?!」

 

「それに同じ十三番隊ならいざ知らず、アニキにあたしがどこに配置されるとか言われる筋合いは()ぇ!」

 

「うるせえよ志乃。 海燕の野郎が言い出したことだ」

 

「ングッ」

 

 左耳に小指を突っ込んだままぶっきらぼうに上記の言葉を言う一角と、それを聞いて口をつぐむ志乃。

 

 今の十三番隊に隊長である浮竹は居なく、更に海燕を最後に十三番隊への副隊長任命が無かったことで自然と副隊長に、海燕は戻っ……………………………………っていなかった。

 

 何せ彼は元々『戦死』と扱われていた上に、『仮面の軍勢(ヴァイザード)』のリサやマシロと違って体は生粋の『アーロニーロ(破面)』で、その気になれば体を虚のように形を変形させることもできた。

 

 本人は気味悪がって、極力しないが。

 

 そんな彼をリサや平子やマシロたちのように『死神(?)』と部類するには当時、無理があったことと彼の護廷に復帰しなさそうな態度も関係していた。

 

 だが今の非常時にそんなことも言っておられず、今ではルキアに代わって十三番隊の『副隊長代理』を務めていた。

 

『あくまで非常時だからな?!』と言いながらイヤイヤな態度をする海燕を見た十三番隊の皆は内心、ホッとしていた。

 

 そんな二人に、同じ十三番隊所属の誰かが声をかけた。

 

「班目志乃隊士。 ここは大人しく行木龍ノ介隊士たちと一緒に配備についてくれ」

 

 混雑していた橋の人込みから出てきたのは優しそうな笑みを浮かべたメガネの青年。

 

「か、可城丸(かじょうまる)六席(ろくせき)!」

 

「………………」

 「チッ」

 

 そして彼を見た志乃は頬を若干赤らめながら緊張し、彼女の豹変ぶりに竜ノ介(りゅうのすけ)行木は呆れ顔になり、一角は小さな舌打ちを打つ。

 

 彼は『可城丸(かじょうまる)秀朝(ひでとも)』、十三番隊の第六席。

 

「で、ですがあた────自分も護廷の死神です! なのに何故非戦闘員たちのいるこの地区の警護をさせられているのですか?」

 

「……君は『どうして自分が前線へ配備されなかったのか』に不満を抱いているみたいだね。 君、現世駐在任務には就いたことあるかい?」

 

 余談だがここで補足すると、『原作』での『班目志乃』は『行木龍ノ介』と共に空座町へと車谷善之助の後任として就く筈だった。

 

「い、いえ! 自分はまだです!」

 

「だろうね。 じゃあ単刀直入に言おう。 ()()()()()()()()だ」

 

「ッ!」

 

 秀朝のズバッとした物言いに志乃は息を素早く飲み込んだ。

 

「戦で最も危険なのは『敵兵』じゃないよ。 ロクな実績も経験もない『新兵』だ。 土壇場で『何をするのか分からない』ならまだしも、『何もしない』ことのほうが恐ろしいんだ。 何せ役割を持った人手がその役割を果たしていないからね、『予測以下の戦力低下』になってしまう」

 

「……………………わかり……ました!」

 

「あ、志乃さん! 待ってください!」

 

 今にでも奥歯をかみ砕くように閉じた口から志乃が了解の言葉を発し、そのまま龍ノ介の腕を振り解いて橋の上を走っていき、龍ノ介が彼女の後を追う。

 

「おい。 可城丸六席」

 

「なんです、班目五席?」

 

「あれだけモノを言えるなら、さっさと志乃への気持ちをいい加減にハッキリさせろ。

 俺に似すぎて、男勝りな志乃が『男』として他人を意識したのはお前が初めてだからな。 付き合うにしろ、振るにしろな? だが────」

 

 

 

 一角から今までに出たことのない圧力が全て可城丸へと向けられる。

 

「────『可愛い妹を振るってんなら覚悟しろよテメェ

 

「………………班目五席。 この戦をどう思います?」

 

あ゛? 話題変えて逃げンなよコラ────」

「────僕はこの戦が終われば返事をします。 ですから班目五席も是非その場に居たいのであれば自分を蔑ろにするような戦い方は止めてください」

 

「んだと────?」

「────彼女には貴方が必要です。 もし、貴方がいなくなるようなことがあれば彼女の心は折れてしまう。 ですから、もっとご自分を大切にしてください」

 

 それを最後に、可城丸は自分の配置の場所へと歩いて見えなくなるところで一角は気付いた。

 

「あ?! 結局はぐらかされたじゃねぇか?!」

 

「君も鈍いね」

 

 近くの陰から弓親がニタニタした笑みを浮かべながら一角の横まで来る。

 

「でも、彼の言ったことに一理はあるよ? 君が大けがをしたり、亡くなるようなことがあれば大勢の人が影響される」

 

「そりゃお前も同じだろうが」

 

「僕は嫌がられているからね。 影響するといっても、君ほどじゃないよ。 人気者は辛いね?」

 

「ガラじゃねぇよ」

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 瀞霊廷の外壁の上で来る敵を迎え撃つ準備は着々と進められていき、武器の点検も再度行われていたのを、カリンは確認していった。

 

 斬魄刀を持つ死神たちは恋次が以前使っていた旧式マスケット銃型に加え、ボルトアクション式なども背負い、それらの使い方を流魂街の魂魄たちと共に技術開発局の隊士に教授されていた。

 

 ここには流魂街の魂魄たちで、通常の霊子兵装が扱えない志願者たちには槍などの長物や、弾丸に特殊な処置が施された銃型の霊子兵装も同じく説明を経験のある他人から受けていた。

 

 更に外壁の中では、瀞霊壁の『四大瀞霊門番』を務めていた巨漢の一貫坂(いっかんざか)兕丹坊(じだんぼう)比鉅入道(ひごんにゅうどう)斷蔵丸(だんぞうまる)、そして嵬腕(かいわん)のそれぞれが鎧を身に着け、大きな彼ら用の得物を手に取った。

 

「あの……」

 

 これらをカリンは見渡しながら歩いていると17歳、あるいはそれ未満の子供が彼女に声をかけてきた。

 

「ん? どうした?」

 

「『これ』の使い方を教えてもらえませんか?」

 

 そこでカリンは彼の手の中で握られていたのが霊子兵装のライフルだということに気付いて、彼女の愛想笑いがピクリと動いた。

 

「……坊主、ボルトアクション銃のことは知っているか?」

 

「あ、はい。 自分は生前、少年兵でしたので物理的な銃の使い方は知っていますがこの『霊子兵装』は初めてです」

 

「………………んじゃ、全く同じだ。 違いは詠唱と()()()()が必要なだけだ」

 

「詠唱と、イメージ……ですか?」

 

「ああ。 ボルトハンドルを起こし、回転させて薬室の閉鎖を開けて後方に引くだろ? ボルトを前方に押して弾薬を薬室に装填する間に詠唱をするんだ……その銃は見たところ、『白雷(びゃくらい)タイプ』だから、『破道の四、“白雷(びゃくらい)”』で弾丸の効果を起動していつでもそれが撃てれるようになる」

 

 技術開発局がさらなる戦力補充のため霊子兵装に改良を加えたことで、低レベルの鬼道ならば普通の魂魄でも撃てるようになっていた。

 

「……ありがとうございます」

 

「良いってことだ」

 

 それこそ、カリンの前にいる元少年兵でも。

 

「……僕たち、食われるんですか?」

 

「ッ」

 

 元少年兵の言葉にカリンは息を素早く飲み込んだ。

 

「みんな、このことを『負け戦』と呼んでいます。 『望みは無い』、とも」

 

「………………………………お前、名は何という?」

 

 カリンは膝を地面につけて、目線の高さを少年と合わせる。

 

「オイラは西崎(にしざき)。 西崎武雄(たけお)です」

 

「家族は?」

 

「父ちゃんは元陸軍で、あっちで部隊長補佐をしています。 母ちゃんは先に避難しています」

 

「一つ、裏技を教えてやるぞ武雄(たけお)。 この霊子兵装、実はというと『破道の』とかは省いても弾さえ装填していれば撃てるんだ」

 

「え?」

 

「それをお前の父親にこっそりと教えてお前んとこの部隊強化に使ってくれ。 武雄────」

 

 カリンが少年の肩に手を添えて、まっすぐと彼の目を見る。

 

「────『望み』は自分が捨てない限り、ずっと共にあるもんだ。 それにオレがいる! もし信じられなくなったら、信じるオレを信じろ!」

 

 カリンがニかっと笑うと、武雄はキョトンとして釣られるかのように笑った。

 

「……ありがとうございます!」

 

 少年はその場で回転してそのまま自分の父親らしき男性がいる場所へと戻る姿をカリンは目で追い、()()()()様子を思い出す。

 

≪オイラ達、正真正銘の家族なんだ!≫*1

 

 この少年、実はというとルキア奪還時に尸魂界にチエと三月が侵入した際に、チエがかつて来た時に世話になった右之助の居場所を探していた時に二人が出会った流魂街の子供だった。

 

 あの時、父親は『自分は戦死、家族は空爆で亡くなった』と紹介したのは嘘ではなく、少年は徴兵されて基礎訓練をしているときに大規模な空爆で同じ町にいた母親と共に亡くなっていた。

 

「…………………………」

 

 これを後に知ったカリン(三月)は、何とも言えない気持ちで歩きを再開する。

 

 背中に背負った紅い槍とライフル、腰に二丁の拳銃と短剣、さらに足にナイフといった重装備を確認しながら。

*1
22話より




『あい・あむ・ざぼーん・おぶまいそーど』。
英語に略すると“I am the bone of my sword.”

または『体は剣で出来ている』とも。

とある世界線で行われている『聖杯戦争』と呼ばれている大型魔術儀式にて登場する「弓兵」の枠に部類される使い魔である『サーヴァント』の詠唱。

そして『心は硝子』。
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