白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

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お待たせしました、少々勢いで書いたのでドキドキ不安のまま次話の投稿です。

久しぶりだったので戸惑っていますが、楽しんでいただければ幸いです。


第155話 All Fall Down

 さて。

 

 長い間仮説や昔に起こった()()()()()()演説に、付き合ってくれてありがとう諸君。

 

 ここからは独り言だと聞き流してもいい。

 

『運命』に定められた『異端』が『普通』となるにはどうすればいいか、考えたことはあるかね?

 

 無論、『変わる事』となるが……

 

 何も『異端』変えることだけではない。

 

()()()()()()、『()()()()()()()()()

 

 だが全てを賭けても、相手は『運命』。

 

()()()()()()』というのなら他から借りだせば良いだけのことだ。

 

 例えそれが幾億の()かけて手に入れたモノだとしても、

 それがひと晩明けて朝の鶏が鳴けば残る事無く崩れ去るとしても、

 賭場は()()

『運命』はカードを混ぜ、『配られた手札』がどれだけ優秀だとしても相手は規格外のジョーカー。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()

 

 この一度きりの、『一夜の勝負』の為に、全てを賭けよう。

 

 それでも『足りない』となったならば…………『それまでの事だった』と言うだけだ。

 

 

 

 

 …………………………………………ん?

 

『ところでお前は誰だ』って?

 

 まぁ、そう気にかけないでくれ。

 

 別に大したものではない。

 

 ()()()()()()だよ。

 

 そしてこの話の続きは、また何時かやるとしよう。

 

 今の私は、()()()()()()からね。

 

 


 

 

 

 

 

 

 ___________

 

 瀞霊廷内 残存兵組 視点

 ___________

 

『壁の鬼道発砲隊、総員準備! 初撃は命令あるまで待ち、その後は魂魄たちの一発に隊士たちは二発撃ちを開始!』

 

 ギギギギギギギギギギ!」

 

 無線機越しに聞こえてくる雀部の声は燃える流魂街の瓦礫の中から木霊する人工破面の鳴き声(?)に上書きされそうになるが、瀞霊壁沿いの死神たちが銃を構えると同時に流魂街の魂魄たちも同じようにする。

 

 何人かは地面を伝っておぞましいほどの人工破面が大地を動く鼓動に影響されたのか震えながらも、今か今かという焦りを持ちながらも、次の指令を待った。

 

 バァン

 

「ヒッ?!」

 

 バババババババァン

 

 一人の魂魄が震える手のまま引き金を引く為にかけていた指に力が入りすぎたのか誤って発砲し、これにびっくりした周りに者達も発砲した。

 

「待てぇぇぇぇぇぇい!」

 

ギィィィィ?!

 

 これを見て焦った近くの死神が静止の叫びを出し、人工破面の断末魔らしき音に瀞霊壁、そして流魂街からの音すべてがピタリと止む。

 

「「「「「………………………………………………」」」」」

 

 聞こえてくるのはパチパチとする鋭い炎の音のみと、震える銃や鞘に入ったままの刀たちがカチャカチャと出す金属音。

 

 その状態が何分、何秒続いたのかは定かではない。

 

 あるいは一秒未満だったのかもしれないが、当事者たちの時間の感覚はマヒしていた。

 

 そしてその正に『嵐の前の静けさ』と呼べる状況は一転する。

 

 ギギギギギギギギギギ

 

 今までよりけたたましく、鼓膜が破れそうになるほどの鳴き声と共に『津波』と呼んでも過言ではない数の『白』が流魂街だった瓦礫の中から瀞霊壁へと押し寄せる。

 

 ────!

 

 鳴き声に応戦するかのように壁沿いから発砲音が止め処なく、ただただ続いた。

 

 死神も、魂魄も、誰も彼もが一心不乱に鬼道を銃越しに行使し、目の前の波を近づかせない為に抗うことに必死だった。

 

 その動きは統率が取れている時よりも素早く、停止した思考によって逃げる者が出ることもなく、文字通り『死に物狂い』。

 

 宙を舞う、様々な鬼道が迫り来る敵を感電させて動きを止め、光線が穴をあけ、火の玉に当たって火だるまになったり、吹き飛ばしたりしていった。

 

 マネキンのような手が。

 腕が。

 足が。

 上半身が。

 足を失くして地面を這いずる肘が。

 

 それでも尚、人工破面たちは向かってくる。

 

 もし、この時に壁沿いの者たちが隣人を見ていれば気付いていたかも知れない。

 

 死神と魂魄、この二組で銃を発砲していた者たちが全員口を開けて叫んでいたことに。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 上記の激戦の音は貴族街に届いていた。

 

 これによって緊張感が更に高まり、戦意喪失しそうになる者たちがチラホラと出始める。

 

 実は『見えている恐怖』より『見えない』、または『知らない』恐怖は恐れる気持ちと想像で実際より増幅される趣向がある。

 

「(うおおおおおおおお! 前線にいなくてよかったぁぁぁぁぁぁ!!!)」

 

 その中で大前田(希千代)はビビると同時に安心(?)していた。

 

「よっこらっせ、っと」

 

 近くの建物に希ノ進は背中を預けてから懐から煙草を出して唇に含む。

 

「……怖いか、希千代?」

 

「は、ハァァァァァ?! ここここれは『武者震い』だっての!」

 

 デブ ふくよかな大前田(希千代)の震えは隠そうとしても出来るものではなく、彼の悪趣味なこれ見よがしに高そうな金のブレスレットがカチャカチャと小さな音を出し続けていた。

 

 これを見ていた希ノ進は煙草に火を点けず、ただ彼をじっと見ると、大前田(希千代)が視線を気まずそうに外した。

 

「てか何で俺を指名したんだよ親父?!」

 

 大前田(希千代)はもうイラつきを隠そうともせず、父親に自分の持っていた疑問を投げた。

 

 彼は決して口にはしないが彼の父親である希ノ進は夜一が現役の隊長だった頃の元二番隊副隊長で、あの砕蜂でさえも敬意を持つほどの有力者だった。

 

 護廷十三隊から身を引いて、()()した今でも。

 

『出来損ない』。

『似ているのは姿だけ』。

『蝶と蛾』。

『偽物』。

 

 などと、大前田(希千代)は前代の父親と比べられて育ってきた。

 

 ちなみに希ノ進は漸術や白打に歩法もそれなりに使えていたが、鬼道は特に達人の域に達していた。

 

 いとも簡単かつ余裕の詠唱破棄で、八十番台である『断空』を6重展開出来るほどに。

 余談だが現在の護廷十三隊でこんな芸当が出来るのは手で数えるほどの少人数。

 

 しかもこのことが出来たのは本人(希ノ進)曰く、『サボり魔の上司(夜一)を捉えるには、これぐらい朝飯前だ』とか。

 

 何をしようにも、何を遂げようとしても、必ず(夜一や浦原とはやや劣るも)『稀代の天才である父親ならばもっとできていた』という言葉を浴びた。

 

『もっと効率の良い方法をとっていた』。

 

『希ノ進なら』。

父親(希ノ進)なら』。

 

 ならならならならならならならならならなら。

 

 行動をとる度にそんな言葉だけが返ってくれば、苦手意識が芽生えるのも無理もないだろうか?

 

 そんな、ある意味潜在的なトラウマの父親が逃げ遅れた下級貴族の私兵たちの頼みに対し、『息子(希千代)が指揮をとる』といった張本人がこうも飄々としているのは大前田(希千代)にとって胃の痛くなる原因でしかない。

 

「「…………………………………………」」

 

 二人の間に言葉はなく、周りからはただ遠くから聞こえる戦闘音だけ。

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

ギィィィィィィィィ!!!

 

 撃てども撃てども『(人工破面)』が『灰色(死神)』たちのいる場所に迫り来て、ついには壁に到達した。

 

「撃てぇぇぇぇぇぇ!」

「登らせるなぁぁぁぁ!」

「一斉射ぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 バババババババババババババババババババァン!!!

 

 死神と魂魄たちの何割かが壁を登ろうとした人工破面を撃ち殺す。

 だがそれでも止まらない人工破面は仲間の死骸を登っては死に、次の人工破面が後を続いていく。

 

「門だ! 門の方へ行ったぞ!」

「門を守れぇぇぇぇ!!!」

 

「オラだちの出番だ!」

「ではいきますよ!」

「……(コクリ)」

「待ちわびたぜ!」

 

 この時、瀞霊壁ではなく虚圏の砂で作られた即席の門と壁を破ろうとする人工破面たちに気付いて叫ぶ死神たちに答えるかのように四大瀞霊門門番たちの四人は、近くの投擲用のオブジェを手に取る。

 

「しくじんなよテメェら! 虎の方向、投げろぉぉぉ!」

 

 ォン!!!

 

 空鶴の叫びに、門番たちは一斉にオブジェを投げてそれらが敵のいる地面に着弾すると爆発していく。

 

「もうちょい上だ! 投げろぉぉぉ!」

 

 ォン!!!

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

「(敵が単調的でよかった)」

 

 この場を大局的に見ていた雀部は最初こそ内心焦っていた。

 確かに敵の人数は決して少なくないが、イノシシのようにただ真正面から攻め込んでくる人工破面たちを一方的に蹂躙できる現在に安堵を感じていた。

 

 だが次の瞬間、またも焦ることとなる。

 

『グワァァァァァァ?!』

『な、なんだこれは?!』

『クソ! こんなの聞いていないぞ?!』

 

「ぬ?! どうしたお前たち?!」

 

『こちらスーパー副隊長マシロ!』

 

 無線機から来たのは中央の、雛森から近い距離の即席壁にいたマシロの声だった。

 

『あの変なマネキンたちが槍を撃ってきたよ!』

 

「なに?!」

 

『自分の腕を千切って投げてきてる!』

 

「なん……だと?」

 

 なんと、人工破面たちが自らの腕を変化させてはもぎ取ってそれを投げていた。

 

 ……

 …

 

ぎゃああああああああああああああああああああ?!

いでぇぇぇぇ?! いでぇよぉぉぉぉぉぉ?!

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!

 

 前線の壁沿いで、敵が投げてきた槍が直撃した死神や魂魄たちは倒れては苦しむ叫びを出す。

 

 ()()()()()()()()()()

 

「し、死んでいる?!」

「な、なんで?!」

 

「君たち、こっちを見るな! 相手を撃つことに集中しろ!」

 

 これを見た魂魄たちに動揺が走るも吉良の怒鳴る声で銃を壁に近づいてくる人工破面たちの軍勢に発砲を再開し、吉良は苦しむ声を出す者たちのことを診始める。

 

「(なんだこれは?! 確かにこの人たちは死んでいる……なのに()()()()()()()()だと?)」

 

『怖イ?』

 

 吉良の脳裏に浮かんだのはとある男の言葉。

 

 だが彼はこの考えを否定するように首を横に振る。

 

「(馬鹿な! 奴は死んだはず! 確かにローズ隊長とルキアに倒されて、総隊長にとどめをされた筈だ!)」

 

 ここで吉良の脳裏を過ぎったのは『恐怖(ザ・フィア)』の『エス・ノト』。

 

「(それに相手は()()だ! 滅却師じゃない!)」

 

「き、き、吉良さん!」

 

 そこで魂魄の一人が彼の名を呼んだことで考えにふけそうになった意識が今へと戻された。

 

「あ、()()を!」

 

「(『あれ』?) ッ?! そ、そんな馬鹿な?!」

 

 吉良が魂魄の指していた方向に視線を移すと彼は声と共に驚愕の表情を浮かべて乱菊の方を見た。

 

「ッ」

 

 乱菊はズキリと一瞬痛む体を震えさせ、泥沼化した堀の上を障害なしと同様に歩いて近づいて来た巨体を睨む。

 

 姿は少し彼らが覚えているモノと違ったが、その大きさと特徴は確かに()()()だった。

 

 

 

 ___________

 

 虚圏援軍要請組 視点

 ___________

 

「なるほど~、だから警戒していたんですねぇ~」

 

「お前、何か調子狂うな」

 

「それほどでも~」

 

「……………………チッ」

 

 グリムジョーの嫌みが含められた言葉にリカのノホホンとした返答に、彼は舌打ちをする。

 

「なるほどなるほど…………あれらは君たちの『アヨン』をもとに作られたタイプだったと言うわけだね」

 

「近づくな、変態紳士」

「噛み切るぞ」

「ぺ」

 

 ドルドーニの頷きと納得する言葉に3獣神はそれぞれ雑な返しをする。

 

 さっきまでリカたちがこの隠れた集落にいた破面たちに聞いた情報は彼らが虚圏で遭遇した様々な人工破面の型のことだった。

 

 四足の斥候型。

 二足の凡庸型。

 大型の『アヨン』型など。

 

「それにしても遅いですねぇ~」

 

 リカが見たのは、自分の提案に乗るか否かを話し合う他の破面たちの姿。

 

「仕方ないんじゃない? 元十刃や十刃落ちのあたし達はともかく、あっちは藍染様の下にいなかった野良の破面たちがメインなんだし」

 

「相変わらずフレ〇(SEED)は見た目重視なんですね、ネイルなんか気にして」

 

「だから何よ、その〇レイってのは?」

 

「赤髪のビ────いえ何でないのよ?

 

「…………アンタ、声変わった?」

 

気のせいではなくて?

「(なんですか急にキャス子さん)」

「(今の状況で『ビッチ』呼ばわりはどうなのよ?!)」

「(え? ダメですか?)」

「(ダメに決まっているでしょ?!)」

 

 

 

 

 

 

 ___________

 

 『渡辺』チエ 視点

 ___________

 

「……………………………………」

 

 チエのブーツがザクザクと地面の砂を踏んでいく。

 

 彼女の首越しには一護の吐息と、背中にはグッタリとした彼の体。

 

 チエが自らの血を水代わりにあげた時から彼女は塔を出て周りの建物を探索したが、食料などになる様なモノが無かったことで彼を背負い、再び砂漠へと出て遠くに見えていた人工物へと再度歩いていた。

 

 流石の彼女もこれには堪えたのか、顔には大粒の汗が噴き出ていて、切った手には破いた布を包帯代わりに巻いていた。

 

 彼女は珍しく、自ら行動を起こしていた。

 

『一護は生きて元の世界に返す』と言った思い付きから。

 

「ウッ?!」

 

 急にふらつく足がもたつき始め、彼女はぐっと力を入れ直して姿勢を戻す。

 

「────」

 

「……何か、言ったか?」

 

 一護が何か言ったと思ったチエは聞き返すが、戻ってきたのは彼の吐息だけ。

 

「………………………………」

 

 チエの目に汗が染みこんで視界がぼんやりし、彼女が瞬きをしながら歩きだすとまたも声が聞こえてきた。

 

何時まで背負う?

 

「……………………」

 

 チエに聞こえてきたのは頭に直接響く声で、()()()聞いていないものだった。

 

このままでは共倒れになるのは明白。 希望がないのになぜ助けようとする?

 

「……………………(黙れ)」

 

いいや、黙らない。 背中の者が今を生き延びたとしても、いずれ別れは来る。 それをお前は知っているはずだ

 

「(黙れ)」

 

この場を“それ”と一緒に切り抜けても、

 “それ”が生き抜いても、

 死すべき定めの辛さを味わうことになる。

 

「………………」

 

例え敵に倒れずとも、

 やがて時が過ぎれば衰え、

 それが病であれ歳であれ、

 死を迎えることとなる。

 そうなれば()()失う苦しみが続く。

 今も昔も周りが死して世界の全てが終わり、枯れゆく森や変わる大地をどれだけ歩いても尚、

 一人寂しく世の中を彷徨っていずれは星もない夜を過ごすことになる。

 

「…………………………………………………………………………」

 

 ドサッ。

 

 チエは思わず膝を地に着け、気付けば口を開けていた。

 

「…………………………………………………………………………♪~」

 

 彼女の口から出てきたのは聞きなれない言語を使った歌のような響き。

 文字に出来ない、聞く者がいれば体の芯にある心がスッキリするようなモノ。

 

そこまでするのか? “それ”の為に。 やめろ

 

 それは敢えて例えるのなら『賛美歌(さんびか)』、または『祈り』だった。

 

「♪~」

 

 チエは目を閉じながら一護を背負ったまま体をゆっくりと前後に揺らしながらただ()った。

 

 その姿はまるで、今まで宗教を()()にしていた聖職者が藁にでもすがる思いで、誠心込めて神へと祈りを捧げる者の姿だった。

 

「(誰でもいい…………何でもいい…………誰か私の声を聴いてくれ。 この背中の者だけでも救ってくれ)」

 

 チエが思い浮かべるのは空座町や、瀞霊廷で知り合った人たち。

 

「(彼を必要としている者たちがいるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()()。 ()())」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その願い、聞き入れたわ。 ()()()()()()()♪」

 

「ッ」

 

 不意に聞こえてきた女性の声に、チエは息を素早く呑み込んでまどろみの中へと消えていく意識で抗おうとする。

 

「(これが狙いか。 よく………………………………………………考えたものだ)」

 

だから言ったのだ、“やめろ”と…………』




大前田の父親や関係などに関しては独自解釈や独自設定などがわんさか山盛りされています。 ←今更
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