白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

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大変お待たせ致しました、前話の勢いのまま書いた次話です。

そして過去アンケートへのご投票、誠にありがとうございます。
未だに目を通して参考&励みにしていますので非常にありがたいです。

今更ですが独自解釈や設定にその他もろもろが続きますが、楽しんで頂ければ幸いです。


第156話 Make a Man Out of You

 ___________

 

 虚圏援軍要請組 視点

 ___________

 

「(お腹の減り具合からすでに数時間経っていますね…………遅いです)」

「(仕方ないわよ。 内容が内容だけに)」

「(それでも想定よりは遅いです)」

 

「「「「…………………………」」」」

 

「「どぅわぁ?!」」

 

「わ」 ←棒読み

「(アジャパ?!)」

 

 野良の破面たちが議論を始めてかなりの時間が経過したのを感覚で感じていたリカの自己問答(?)の末に、アパッチとミラ・ローズが声を出しては近くに三メートル弱の最下級大虚(ギリアン)が数体、音沙汰も無く立っていたことにリカと彼女が『キャス子』と呼んでいた者も気付いて一緒にビックリする。

 

 リカのモノトーンな『わ』に対し、キャス子は意味不明な『アジャパ』だが。

 

「ハッ。 ビックリする時も顔色一つ変えないとは表情筋、死んでいるんじゃねぇのか?」

 

「まぁ、ほぼ壊死しているのは認めますけど」

 

「「え」」

 

 グリムジョーのからかう一言をあっさりと認めたリカに、彼とさっきまで静観していたスンスンが目をパチクリとしていた。

 

 だが今度は次のことでリカも彼らと同じく目を見開くこととなる。

 

誰?

 通訳:誰?

懐かしい匂いがする

 通訳:懐かしい匂いがする

ウン

 通訳:ウン

うん

 通訳:うん

うン

 通訳:うン

 

 男女、あるいは大人か子供かも分からないような、様々な声帯が混じりあった声がリカの近くにいた最下級大虚(ギリアン)たちからしては集落からワラワラと他の最下級大虚(ギリアン)が彼女の周りに群がり始めた。

 

おおおおおおおおおおおおおお?? リアルで『荻野〇尋』の気分です~」

 

 逆に3獣神たちは最下級大虚(ギリアン)が喋ったことにポカンとしていた。

 

 以前、日番谷が一護に説明した時の言った『アジューカスはギリアンより知能が高い』は嘘ではないがここで省かれたのは『ギリアンは自我がほとんど無く、知能も低い』という情報。

 

 つまり本来最下級大虚(ギリアン)は殆んどが本能によって動く『獣』。

 もしくは『野良の動物』が虚圏や尸魂界の()()

 

「お前らも初めてか」

 

「ネルたづもびっくり! 何時ものように挨拶すたら急さ答えが返って来だ!」

 

「オレはお前(ネル)にもっとビックリしたけどな」

 

 グリムジョーがガシガシと頭を掻き、一体のカ〇ナシ 最下級大虚(ギリアン)の頭に乗ったどМ幼女 ネル(幼女)がケタケタと豪快に笑いながらやってくる。

 

 そしてグリムジョーの頭上には成人し、自分が知っているネルと今のネルの間に『≠』の絵図が浮かんだ。

 

わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 ←モノトーン

 

 リカはさらに寄ってくる数が多くなっていく最下級大虚(ギリアン)たちに待ちあげられそうになり、珍しく焦ったのか手足をバタつかせた。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

「で? 急に最近になって『自分たちが解った』という事でいいですか?」

 

「「「「「うん」」」」」

 通訳:うん

 

 やがて最下級大虚(ギリアン)たちの手から自分を解放したリカはいつも以上にハネっ毛&寝癖のボサボサした髪型に代わり、彼女の問いに最下級大虚(ギリアン)たちが一斉に頷きながらする。

 

「(タイミング的には丁度私たちが再召喚された時ね)」

「(みたいですね~。) それで? ギリアン(小)の貴方たちはボクの提案をどう思います?」

 

 リカの問いに彼女が命名した『ギリアン(小)』たちは互いをキョロキョロと見る。

 その仕草は世間を知らないような無垢な子供、あるいは初めて水の中へ飛び込むのを躊躇するペンギンたちのようだった。

 

「(可愛いですね~)」

「(え゛。 私的にはナイわね、これ)」

「(あれだけワキャワキャする竜牙兵を召喚した葛木キャス子に言われたくないです)」

「(あれは……………………ノーコメントで)」

 

自分たちには……無縁?

 通訳:自分たちには……無縁?

これまでずっと人間や死神の事より虚

 通訳:人間や死神の事より虚

うん

 通訳:うん

たまに来るけど全然興味ない

 通訳:たまに来るけど全然興味ない

 

「ですが今は話が違いますよね?」

 

 まるで数体が意識を共用しているかのような返事がギリアン(小)から帰ってきて、リカは少しトゲのある返しをする。

 

 またもギリアン(小)たちは互いを見てから視線をリカに戻す。

 

じゃあ決める

 通訳:じゃあ決める

決める?

 通訳:決める?

うん

 通訳:うん

 

「(やっぱり可愛いですね)」

「(……………………ノーコメント)」

 

 ワラワラとするギリアン(小)に愛着が沸いたリカに葛木キャス子は黙秘を貫いた。

 

 

 

 

 ___________

 

 瀞霊廷内 残存兵組 視点

 ___________

 

「「………………………………」」

 

 瀞霊廷内の貴族街での即席であるバリケードの近くにいた大前田ーズ(希ノ進と希千代)の間にただただ長く、(少なくとも大前田(希千代)には)気まずい沈黙が続いた。

 

 瀞霊壁側から来る『激戦の背景音を除けば』の前提だが。

 

 鬼道やかすかに聞こえてくる人工破面らしき鳴き声と応戦する者たちの叫びが風に乗って大前田(希千代)の耳に入ってくる。

 

「……スゲェ音だな、おい」

 

「だろうよ」

 

 まさに『戦乱の世』と言っても誰もが思わず頷くような音の中、大前田(希千代)がぼそりと上記の言葉を漏らし、いまだに口に咥えた煙草に火を点けていない希ノ進があいづちを打つ。

 

「何せ瀞霊廷の奴ら全員入れても、敵の10万を超えることは無いんだ。 そりゃあ死に物狂いになる。 瀞霊壁が突破されれば多分、押し寄せてくる敵サンの波はもう瀞霊廷の中にいる誰にも止められねぇ」

 

「………………」

 

 希ノ進の言葉は大前田(希千代)にとって、回りくどい自分へ向けられたモノに聞こえていた。

 

「ちげぇよ」

 

 「ケッ、どうだか」

 

 これを知ってか、あるいは勘付いた希ノ進の否定を大前田(希千代)は切って捨てた。

 

「お前、護廷に入ったは理由は覚えているか?」

 

「(アンタの所為だろうが?!)」

 

 大前田(希千代)の中でリプレイするのは何をしようにも父親と比べられる数々の場面。

 

「………………その様子じゃ、忘れちまっているようだな?」

 

「あ?」

 

 ため息交じりに言った言葉に、大前田(希千代)が視線をようやく父親の方へと移すと彼はギョッとした。

 

「ん? ああ、そういや()()を見せるのはお前で三人目だな」

 

 大前田(希千代)が見たのはスーツのズボンがたくし上げたことで見えたもの。

 右の膝から下がバックリと無くなった希ノ進が、懐から出したスプレー缶で()()の関節に油を注入する姿。

 

「お、親父……その足────」

「────ん? これか? まぁ……ちょいと昔にドジッちまってな? 『もう瞬歩が満足に使えんお前は要らん』って言われて除籍された。 この足は『ついでに試作品が出来たンで僕からプレゼントです。 夜一サンに言われたからではありませんよ?』、だそうだ」

 

『あの父親(希ノ進)がドジを踏んだ』。

 

 まさかそんなことがあるとは思っていなかった大前田(希千代)は戸惑いや現状に恐怖することを忘れさせ、純粋に興味を持たせるには十分だった。

 

「俺ぁよ? 嬉しかったんだぜ? お前が護廷十三隊に入ったって聞いた日はよ? 何せ、お前はずっと前から俺に比べられて引きこもり気味だったからな」

 

 希ノ進はここでようやく咥えていた()()()()()()()()()をポリポリと食べ始めた。

 

「ま、そんときゃ希次郎三郎(まれじろうさぶ)が既に読書で引きこもって頭の良さを披露していたから家にいられなくなって工場を立ち上げてそっちに寝泊まりしていたよな?」

 

『大前田希次郎三郎(まれじろうさぶ)』。

 希千代の兄であり偏屈者であるが頭の回転と知識だけならば瀞霊廷内全てを入れても上から順に数えたほうが圧倒的に早い……が、やはり希千代のように父親に比べられるのが嫌で現在でのいわゆる『ニート生活』を徹底している。

 

 そして希千代にそのまま蝶ネクタイと丸眼鏡を着けた姿。

 

「んで希美(まれみ)は……」

 

 希千代と希ノ進の頭上に浮かんだのは白と青が混ざった着物に長い茶髪、紫のアイシャドーと赤い口紅をした希千代 希美(まれみ)

 

「「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」」

 

 母親譲りの強烈なまでの性格をした希美(まれみ)を思い出す二人は若干青ざめた。

 

「ま、まぁあれだ。 母親(希華)みたいにタフな女になった」

 

 果たして悪趣味をした女性貴族の模範とも呼べる彼女と彼女の母親が『タフ』かどうかさておき、他人の陰口など気にもしない様子は確かである。

 

「あれは……護廷十三隊に入隊したのは、別に理由なんかねぇよ。 ただ親父が推薦状なんて出したから、仕方なく────」

「────やっぱ忘れてんじゃねぇか、お前。 希代(まれよ)の為に入ったんだろうが」

 

「え?」

 

『大前田希代(まれよ)』。

 大前田家の末っ子で恐らく家族の中で唯一顔が家族とはかけ離れ、まさに将来はきっと大物の容姿になると断言できる美少女。

 

 そして良い意味での模範的な引っ込み思案な貴族令嬢の性格に口調は、誰もが『ホンマに大前田家なんかワレェ?!』と叫びたくなるような人物。

 

「確かに希美(まれみ)希次郎三郎(まれじろうさぶ)にお前は俺と比べられるがよ? 希代(まれよ)は昔からお前含めた俺ら全員に比べられていたんだ」

 

「(知っているさ。 だからアイツ(希代)はよく俺の離れや工場に来るんだ)」

 

 希代(まれよ)の容姿はどこからどう見ても遺伝子レベルで大前田家からかけ離れていただけに、周りの貴族のある事ない事の陰口が絶えず、かなり肩の狭い思いをしていた。

 

 そんなストレスを無意識的に感じたのか発散するためか、彼女は趣味や性格の合わない母親や姉や兄たちとは離れ、希千代が行く先によく付いていった。

 

 それだからか、希千代はずっと彼女の相手を良くしていて今ではすっかり『お兄様っ子』になっていた。

 

「ある日、お前はスッゲェ酔っぱらって『希千代を護りたい! だから推薦状を書いてくれオヤジ!』って頼んで来たときはどうしたものかと思ったぜ、正直」

 

「(まっっっったく身に覚えがねぇ……)」

 

 余談だがこの時、希千代は工場の取引先との交渉後という事も待ってかなりお酒が入っていて帰り道に、通りかかった人達がとあることを口にしていた。

 

『それにしても希千代が可哀想だなぁ、あんな金の亡者の家族に生まれて。 きっと相手が金さえ注ぎ込めば誰にでもオッケー出すんじゃね?』

 

 それを聞いた希千代は、その人たちをその場で半殺しにしたそうな。

 

「大変だったんだぜ? あの時お前が殴った奴らが訴えようとして……おかげで久々にコネと根回しと()()()()をしたときは歳を感じたぜ」

 

「(まっっっっっっっっっっっっったく覚えがねぇ……)」

 

 更に余談だがこのことがきっかけで希千代は無意識に泥酔することを控え始めたとか。

 しかも屋敷に帰れば、玄関へ迎えに来た希代が手と顔と服に血がついた彼を見てギャン泣きしたこともトラウマになったとか。

 

 これを聞いた希千代は恥ずかしさ半分、混乱と気まずさ半分で顔を覆った。

 

「はっはっは! 久しぶりに見たぜ! お前が照れる顔!」

 

「言うなよ?!」

 

 豪快に笑う希ノ進に希千代は怒鳴ってから数秒後、希ノ進はサングラス越しに真剣な顔をする。

 

「希千代よぉ……今の俺は、守りたくても満足に守れねぇんだ。 お前はどうだ?」

 

「………………………………俺は親父ほど────」

「────そこだよ。 俺が言いてぇのは」

 

 希ノ進がビシッと食べかけのキャンディータバコを希千代に向けた。

 

「お前、『(親父)とは違う』って昔から言っている割には、いつもお前自身が比べてから俺の所為にしているよな? 俺がさっき言った『お前はどうだ?』は『大前田希ノ進の息子』じゃなくて『大前田希千代』という『一人の男』に質問しているんだ」

 

「………………………………」

 

「お兄様~!」

 

 希千代が黙り込んでいる間、希ノ進が義足をガポッと膝に取り付けてからズボンの裾を下すとほぼ同時に横から二人に(というか希千代に)少女が声をかけながら走って寄ってくる。

 

「あ……希代(まれよ)……」

 

「お兄様、希代(まれよ)は聞きました……瀞霊廷に、かつてないほどの危機が迫っていると……お兄様は、やはり今回も行ってしまわれるのですか?」

 

 希代(まれよ)は希千代の死神装束を積みながら目に涙を浮かばせ、上目遣いで希千代を見上げる。

 

「お、俺……は……」

 

 希千代の脳裏に浮かんだのはさっき希ノ進が語った話と情報。

 

「いかないでくださいまし、お兄様。 希代(まれよ)は怖いです。 希代(まれよ)と……希代(まれよ)はもうわがままを言いませんから一緒にいてくださいまし!」

 

 そして自分(希千代)が護廷に入った理由。

 

希代(まれよ)────」

 

 希千代が膝を曲げてなるべく涙ぐむ希代(まれよ)と視線を合わせて、さっきまでのオドオド&呆けた顔が真剣なモノへと変えた。

 

「────賢い希代(まれよ)なら解るだろ? 兄様は希代(まれよ)を怖がらせる為に行くんじゃないって? 

 兄様は、希代(まれよ)を。

 三郎も、姉さまも、父上も母上も、お隣の権田原(ごんだわら)さんも金満(かねみつ)さんも護り………………

 そして瀞霊廷を護る為に、兄様は護廷十三隊に入ったんだ」

 

「お兄様────」

「────親父。 ほかの奴ら、集めてくれるか?」

 

「ん? どうするんだ希千代?」

 

「ちょいと話をするんだよ」

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 一方で、瀞霊壁ではいまだに死神と魂魄の混雑部隊である『鬼道発砲隊』は銃身からの熱で陽炎が発生するほど撃ち続けていた。

 

 幸か不幸か、迫る敵の数のおかげで狙いを特に定めなくとも『何かに当たる』ことは出来るので視界が悪くなっていくのは彼らにさほど支障は無かった。

 

ギィィィ!

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ?! 来たぁぁぁ?!」

 

「そこをどけ! 遊撃隊に斬り込ませろぉぉぉぉぉ!」

 

 だが先ほど現れた『人工アヨン』に霊子兵装を通した鬼道の効きが悪く、瀞霊壁への密着を許した。

 

 腕を上に伸ばしても瀞霊壁より身長が低い『人工アヨン』の背中を斥候型が伝って体を使った梯子(ハシゴ)を更に人型の人工破面が上って壁沿いの死神や魂魄たちに襲い掛かり始めた。

 

「よっしゃ! やっと出番だぜテメェらぁぁぁ!」

 

「ここが正念場じゃ! わしらに続いて気合い入れろよ!」

 

 たじろぐ混雑部隊と違い、接近戦用の遊撃隊員は今か今かと出番を待ちわびていた血気盛んの者たち(主に十一番隊)が瀞霊壁を上ってきた人工破面たちを次々と斬っていき、傷を負った者たちを四番隊や足の速い者たちがその場から連れ出していた。

 

 一応は死神たちが善戦しているかのように見えたが……

 

『大型、もう一体きます!』

 

 無線から来たその一言で死神たちは悟った。

 

『アヨン型が一体だけではない』ことを。

 

「いくで、七緒!」

 

「え?! きゃあああああ?!」

 

 ヒュルルルルルルルルルルルルル!

 

 そこでリサは控えさせていた予備隊を動かすために自らが七緒を無理やり引きずってまで動き出し、二体目のアヨン型がへばり付いた壁へと向かったその時、場違いな『無数の矢が大気を切って飛来する』音が聞こえた。

 

「(む、あれは?!)」

 

 この屋の出所を見た雀部は驚きを顔に出し、矢はカーブを描いて瀞霊壁の向こう側にある人型とアヨン型の人工破面に突き刺さって表面がドロドロに溶けていき、周りの者たちの足を接着剤のように止めていく。

 

 そしてこの多くの矢が飛来した元では────

 

「よぉぉぉし! テメェら、決して敵に情けを掛けるんじゃねぇぞ?! かけたところで何の見返りもないどころか自分が死ぬだけだからなぁ?!」

 

 ────いまだに不安な貴族の私兵や死神たちを率いていた、大前田(希千代)の姿があった。

 

「ここから逃げれば、俺以下になることだからなぁぁぁぁ?! 弓兵は多連装矢台に装填し直してぶっ飛ばせ! 総員、抜刀! 下民共に、俺たち貴族の力を見せつけてやれぇぇぇぇ!」

 

 背水の陣という極限状態の中で覚悟を決めた男、『二番隊副隊長の大前田希千代』の誕生である。

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

「うおおおおおおお!」

 

 希千代の『五形頭』が人型人工破面を数体壁の上から吹き飛ばし、至るどころで彼と彼の連れてきた者たちの加勢によって前線維持はかなり楽になった。

 

 決して余裕はなく、『前線維持』で精いっぱいだったのが現状。

 

 だが籠城戦の場合、『現行維持』で有利になるのは防衛している側。

 何せ蓄えはある程度している彼らと違って人工破面は(必要かどうかは知らないが)物資など見当たらず、恐らくは瀞霊廷内のモノを当てにしている節があった。

 

「(この程度ではあるまい…………)」

 

 雀部が書く場所を見ながらそう思った。

 

 何故ならこのような大規模戦闘での拮抗状態が変わるには大きな要因が必要となるのは彼から見ても明らか。

 

 ならば敵もこれを理解して、何かを仕掛けてくるはずと彼は思った。

 

 だが、それこそ戦場を根底からひっくり返す程のものでなければ不可能という事も分かっていた。

 

「雀部副隊長!」

 

「ぬ?!」

 

 ドォォォォォン!!!

 

 近くの誰かが名を呼んだことで雀部は意識を考え事から今へと戻すと同時に、瀞霊壁の向こう側から飛来してきた流魂街の残骸が瀞霊廷内に落ちて衝突する。

 

「クッ! (まさか、()()()()()とは!)」

 

 外部からアヨン型が、流魂街の瓦礫を力任せに瀞霊廷内へと投擲してきたのだ。

 

『雀部副隊長! こ、こちら後衛組! 投げられてきた残骸の中から敵が────ぎゃあああああ?!』

 

「ッ! しまった!」

 

 瀞霊廷に訪れた長い夜は、まだ続く。




『竜牙兵』:

とある世界で竜の歯で大地に歯を蒔き、竜種の魔力と大地からの知識を得て作られた使い魔の一種。

TRPGの方たちにはお馴染みかもしれない使い捨ての雑兵。

ちなみに低レベルのまま挑むとd20でクリティカルが数回出さないと返り討ち……かもしれない。



『ギリアン(小)』:

リカ命名。 身長は三メートル弱、会話は一応可能らしい。
何らかの理由で急にサイズダウンすると同時に知能が『我』を認識できるまで上がったが、生まれたてのようで仕草一つ一つが純粋無垢。

リカ曰く『可愛い』とのこと。
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