白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

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お待たせいたしました、短めですが次話です。

楽しんでいただければ幸いです。


第157話 Fires of War

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 瀞霊廷内 残存兵、後衛組 視点

 ___________

 

「く、来るぞぉぉぉ!」

 

 瀞霊壁から離れていたリサや七緒より更に後方のいわゆる後衛組の一人がアヨン型によって投げられた残骸を指さしながら、我先にと死神や魂魄が飛来してくるモノから逃げ出して間一髪と言ったところで避ける。

 

 ドォォォォォン!

 

「「「「うわぁぁぁぁ?!」」」」

 

「ししし志乃さん────!」

「────狼狽えるんじゃねぇよ竜ノ介! 相手もウチらと同じく投げているだけだ────!」

「────ギギギギギギギギギギギ!

 

 ガラガラガラガラガラガラ!

 

 志乃の叫びを、耳をつんざく音と瓦礫が崩れる音が遮って彼女は思わず斬魄刀を抜きながらも顔から血の気が引いていく。

 

「うわわわわわ?!」

「で、出たぁぁぁぁぁぁ?!」

 

 突然の出来事に腰を抜かせるものやただ呆然と目の前の現状を見る者たちの前には、先ほどの飛んできた瓦礫の中から斥候型と人型の人工破面たちがゾロゾロと出てくる。

 

 その景色を例えるなら、アリの巣から中から兵隊たちがウジャウジャと出てくる様子だった。

 

「ひ、ヒィィィィ────?!」

「ここここ心の準備がまだ────!」

「こんなの聞いていない! 聞いていないぞぉぉぉ────?!」

 

 この『後衛組』とは本来、『万が一の時の後退』用に結成された部隊で主な役割は罠の設置や武器の点検、工事などの戦闘支援など現世でいうところの工兵たちとごく少数の護衛。

 

 一応武器の使い方の訓練は人と通り施されているが、決して前線に立てるような者たちではない。

 

 そして言い方が悪いかも知れないが、主に結成隊員は魂魄たちでも『前線や実戦では腰が引ける素質を持った者たち』の集まりだった。

 

 ザシュ!

 

「ぎゃあああああ?!」

 

「「「「「キャハハハハハハ!」」」」」

 

「いやだ! し、死にたくないぃぃぃぃ────!」

 

 ────ズパァァァァ!

 

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛?!」

 

 「「「「「キャハハハハハハ!」」」」」

 

「逃げるな貴様らぁぁぁぁぁぁ!!! ぐああああ?!」

 

 人工破面が瓦礫の中から出てきては逃げ惑う魂魄や死神たちを次々とほぼ一方的に

 

「き、鬼道衆! 総員発砲用意────!」

「────ですが魂魄たちがまだ────!」

「────構うな! 撃てぇぇぇぇぇ!」

 

 ァァァァン!

 

「「「「「ギィィィィィィ?!」」」」」

 

「「「「「ぎゃああああ?!」」」」」

「お、俺の腕がぁぁぁぁぁ?!」

「は、ははは……夢だ。 悪い夢だ……内臓がこんなピンク色なワケがない……こうやって寝れば、次……起きた時には……」

 

「あ、ああああ……………………」

 

 ついさっきまでアクビを出す余裕だった空気は一瞬にして地獄絵図へと転換し、阿鼻叫喚がそこかしこから志乃の耳へと届く。

 

 周りには逃げ惑う魂魄たちを楽しそうな笑いに似た音を出し人工破面たちが彼らを虐殺し、魂魄たちもろとも霊子兵装で一掃しようとする鬼道衆の光景に、志乃は思わず膝を地面についてしまう。

 

 だがそれも仕方がないかも知れない。

 

 前回書いたと思うが、初代護廷十三隊ならともかく、今の彼ら彼女らの多くの知っている現実は長く続いた平穏の世。

 

 たまに生存競争に敗北してあぶれた低レベルの虚が仕方なく魂魄を食事にする為に虚圏から尸魂界へと来てそれの退治が数か月間の内、一度はあるか無いか。

 

 つまりは軍隊的な組織と言うより、警察や警備会社に近い存在で隊員たち自身らもそのような認識をしていて、志乃のような反応が一般的で今瀞霊壁で戦っている者たちが異常なほど現状へと順応しているだけ。

 

 そしてその証拠に、彼女(志乃)は目の前で自分へと襲い掛かろうとする敵を前に彼女はただ唖然とただ見ているだけだった。

 

 「志乃さん!」

 

 ドッ。

 

「ぁ」

 

 ザシュ!

 

 志乃は横から聞き覚えのイライラする声(竜ノ介)が聞こえたと思いながらなぜか横に倒れ(横へと無理やり避けさせられ)、次は聞き覚えのない血生臭い(血肉が裂けられる)音が届く。

 

「……………………え」

 

 彼女の頬に生暖かい、ヌメっとした液体が付着したことで瞬きをしながら手を添え、掌を見ると()()()()()()()

 

 ドッ。 ドッ。 ドッ。 ドッ。

 

 この最後のことに気付いた時点で彼女の耳朶には己の心拍音によって支配され、視線を恐る恐る下へ下へと移していき、心臓の鼓動はより大きく聞こえてきた。

 

 ドッ。 ドッ。 ドッ。 ドッ。

 

 そこには

 

 

 

 地面には

 

 

 

 微動だにしない

 

 

 

 昔から見知った人(竜ノ介)の体が血まみれに横たわっていた。

 

 ()()ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

キャハハハハハハハ!

 

 彼女が初めて彼を名前で呼んだ瞬間でもあり、斥候型の人工破面が鋭い刃上に計上を変えた前足を振り下ろした瞬間でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガッ!

 

ギッ?!

 

ステーキ(Steak)です」

 

 ボォォォォォン!

 

 人工破面の前足が妨げられ、モノトーンな女性の声の次に聞こえたのはまるで大砲を射出する轟音と伴い、大気を飛び散る元人工破面の血肉。

 

「あ、は、へ?」

 

「あ。 ステイク(Stake)でしたか」

 

 突然の出来事にその場は静かになり、死神である女性はカンペらしき紙を左手で出して呼んでは誰にとも向けていない言葉を発する。

 

 そして右手には己の身長より一回り大きな対戦車ライフルらしきモノの銃身下部に取り付けられた大きなグレネードランチャーに似た器具。

 

 彼女には似つかわしくない、体を覆う外骨格かのような機械でできたスーツと背中には大きな軍用リュックに似せた箱。

 

「く、涅副隊長?」

 

「はい、涅です」

 

 グッタリとする竜ノ介を抱えた志乃とどこか噛み合わない返答をネム(涅副隊長)がする。

 

「「「「ギィィィィィィィィィィ!!!」」」」

 

 ついさっきまで戸惑っていた人工破面たちがこの新たな襲来者に対して一気に飛び掛かる。

 

「危ない!」

 

 ネムはライフルのストラップを首から下げてからリュックの両脇から拳銃を出し、背中のリュックから更に拳銃が取り付けられたアームが出ては周りの人工破面へと発砲していく。

 

 ダダダダダダダダダダダダ────!!!

「「「「「────ギィィィィィィィィィィ────?!」」」」」

 

 ネムの両手と背後の拳銃が火を噴き、飛び出た薬莢たちが肉片へと化していく人工破面とともに地面へと落ちていく。

 

 ────ダダダダダダダダダダダダァァァァァン!!!

 

 ネムと彼女のリュックから無慈悲に出る攻撃はやがて止まり、カラカラと薬莢の金属音と()()()()()がその辺りに充満する。

 

「「「「「…………………………………………………………」」」」」

 

「本体200kg。 追加装備込みで345kgは肩が凝りますね……リックンちゃん様とマユリ様に進言しないといけませんね」

 

 生存して周りにいた者たち全員の視線を集めているにも関わらずマイペース(?)のネムが着々と銃の点検とリュックから出たメモパッドのようなものに書き込みをしていく。

 

「ナニソレ」

 

 誰かが(恐らく)その場にいた全員の疑問を声にして代弁をした。

 

「30ミリのセミオート対巨大虚火砲、総重量70キロです」

 

「「「「「…………………………………………………………」」」」」

 

 ガシャン!

 

『それじゃない』と言いたげな周辺の視線に全く意にしないネムは上空を見上げ、さらに平してくる残骸たちをその大きなライフルで狙うと背中のリュックとスーツから鉄の棒などが地面に食い込み、ネムはリュックからジャラジャラと音がする弾帯(だんたい)を装填する。

 

「ちなみに元々はリックンちゃん様がご自分で使用する筈の『ぼくのかんがえたロマンこじんへいそう(個人兵装)』だそうです。」

 

 ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ!

 

 ネムが独り言のような言葉を言い終わると同時に、さっきより明らかに重い発砲音と共に上空の瓦礫などを中に潜んでいた人工破面ごと粉砕していく。

 

 さっきの鉄の棒などが何故出てきたかというと今ネムが使用している方法でライフルを連続で撃つと反動が恐ろしいモノだからである。

 

 ちなみに余談かも知れないがこれら無しで、リカがスーツのみでライフルを使用したときはマユリの研究室の重壁を何個か貫通してしまった。

 更に余談だが一つだけでも以前恋次が懺罪宮(せんざいきゅう)のドアを破る為の『始解して何度も斬りつけりゃあ何とかなるだろ』*1では傷もつかないほど。

 

「(それでもこの兵装は()()()()きついですね)」

 

 上記の事で改良に改良を重ねた日々を思い出しながらネムはひたすらライフルを撃ちながら、傷み出す肩から意識を逸らす。

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 後衛組と瀞霊廷の中へと投げられていく敵がアイアン〇ン化した 重装備化したネムによって食い止められている間、瀞霊壁の戦いは更に激化していった。

 

 最初は一体のアヨン型だけが壁を超えるハシゴ代わりになっていたが、ネムの行動によって瀞霊廷内への投擲が実質無意味と悟ったらしい他のアヨン型が最初の一体のようにハシゴ代わりになった。

 

 これによって斥候型や人型が壁沿いの数か所から親友を試みていた。

 

 鬼道発砲隊と遊撃隊の区別がもう出来ないほど入り込んでいて、未だに瀞霊廷側に混乱が生じていないのが奇跡だった。

 

「おらぁぁぁ! 27ぁぁぁぁぁ!」

 

 その一か所に一角は倒した敵の数と思われる叫びと同時に鬼灯丸を振り回す。

 

「(「『蒼火墜(そうかつい)』!)」」

「(『双蓮蒼火墜(そうれんそうかつい)』!)」

 

 別の場所でルキアや吉良や雛森は声に出さずに詠唱を心の中でしながらイメージを脳裏に浮かべて鬼道でアヨン型を登る際に密集する敵を出来るだけ吹き飛ばしていた。

 

「ほなバイバイ♪」

 

「「「「「ギィィィ?!」」」」」

 

 市丸の気楽な言葉とは裏腹に、彼の『神鎗』が次々と人工破面を────

 ────グッ。

 

「ッ」

 

 市丸の笑みが一瞬固まり、彼は()()()()()『神鎗』で目を開ける。

 

 彼が見たのは体を切り避けられながらも硬質化らしき人工破面たちが銅像のように互いと瀞霊壁にへばりついて市丸の攻撃を止めた景色。

 

「なんや。 ビックリさせやんといてぇや」

 

「「「「「ギィィィ?!」」」」」

 

 笑みが戻った市丸は『神鎗』を塵状に変化させて抜けさせた後の一瞬にまた刃へと戻った『神鎗』で敵を切り伏せていった。

 

「「「「「ギギャァァァァァァァァァァ?!」」」」」

 

 またも別の場所では東仙の周りに近づいた人工破面が地面へと倒れてのたうち回りながら叫ぶ、異質な場面。

 

「姿は違っても、三半規管の波長は破面のようだな」

 

「(いつも思うけど、隊長って独り言が以前に増して多くなったな)」

 

 そんな敵にとどめを刺していく周りをよそに東仙は独り言をして、檜佐木が内心でツッコミを入れる。

 

 さっきの『アヨン型が瀞霊廷内に同胞を投げる』のは戦局を変える大きなきっかけではなかったようで、またも拮抗状態へと戻った。

 

 

 

 

 

 ___________

 

 虚圏Landwehrkorps(ランデュエヘール部隊) 視点

 ___________

 

「さて。 どうしたものですかねぇ」

 

 キルゲは月光に照らされた地図を見下ろしていた。

 

 地図には様々な色をした駒があり、それらが()()()()()

 

「(粘り(ます)ね。 まぁ、文字通り命懸けとくれば愚か者でもジタバタともがき(ます)からね……このままでも押せばいずれは勝ち(ます)()()()()()()()()()()。) …………………………やはり『アレ』を使いましょう」

 

 キルゲが義手で一つの駒を地図の上に置いて、瀞霊壁中央へそれを押す。

*1
27話より




リカ:ネムネム、先に使っちゃいましたね

マユリ:気にすることはないとモ。 すでにマークII を製造中だからね。

リカ:どこぞの私兵化した部隊のように一号めと同じチタン合金セラミック複合材を使用していますか?

マユリ:…………………………………………

リカ:『水の星へ愛をこめて~♪』 ←バリバリの音痴&タコ踊りに似た変な動き

マユリ:たまにリックンが言っていることが理解できないことを嬉しく思うよ、私ハ

作者:(お前が言うな)
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