白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

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大変長らくお待たせいたしました! 次話です!

殆ど前回の勢いのまま書いたものですが楽しんでいただければ幸いです!


第161話 Collision

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 現世組 視点

 ___________

 

「う~ん、こんな風に一護とお出掛けなんて小学校以来かしら~?」

 

 現世の空座町を巨大な大砲と槍を無理やり合体させた武器(ガンランス)を構えながらマイは一護たちの隣で歩いていた。

 

「……………………」

 

「ん? なぁに、一護~?」

 

「い、いや……何でも……」

 

「そぉ~?」

 

 一護の視線に気付いた彼女の問いに、彼はさっと視線を外して誤魔化すような言葉を放つ。

 

「いや~、まさかボクが何時か滅却師の世話になるとは夢にも思っていなかったっス!」

 

「ん~、そう言うのなら私だってまさか死神の隊長さんのお守をするなんて思わなかったわ~!」

 

「相変わらず君たちは鬱陶しいネ」

 

「「照れますねぇ~」」

 

 更に後方ではミニーニャと浦原(陽キャラ)に対してマユリの嫌みも効いているのかわからない返しに彼はただ歩きながらため息を出す。

 

「ハァ~……少なくとも私以外に一人は状況の複雑化を理解しようと努力しているのに……」

 

 彼が見たのは心ここにあらずと言った様子の一護。

 

 彼が思い出すのはついさっき、マイの自己紹介パート2(後半)

 以前彼女は自分を『改造魂魄の試作モデル』*1と説明していた。

 これは偽りではなかったが全てではなく、彼女は義骸と言う『肉体』をベースに『魂』と『精神』を注入された存在。

 

 おっとりで天然かつ()()ペースながら『母性の塊』とも呼べる『マイ』。

 

 それがまさか三月の『()()()()()()』とは浦原でも予測していなかったらしく、彼は珍しくさっきまで黙っていた。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 時間を少しだけ戻すこととなる。

 

 場は丁度マイの『最悪の事態と言うのは~、“暴走”の事ねぇ~?』宣言直後。

 

 ようやく最初に回復したマユリが……と言うよりは新しい情報含めて、考えをまとめた彼が話を進ませた結果が(簡潔にだが)以下の通りとなる:

 

 1. 彼女は『三月』と言う少女が思考を長年の期間で並列起動させた産物に一つで、マイは『母』と言うイメージを凝縮した元に生み出された一人

 2. ここでマイが言った『暴走』とは『三月』が元々『大きなモノの一部』として覚醒し、いつかは『自分』を見失った時の抑止力として実体を与えられた

 3. 一護、浦原、夜一たちの証言から霊王宮で彼らが見たマイに似た女性は、恐らくこの世界(BLEACH)での『大きなモノの一部』が覚醒したモノ、あるいはその意識か魂が願望機を使われて肉体に移し替えられた姿

 

 頭で理解を拒否しそうになるような内容だが、直感ではそれらが正しい認識の方向を辿っていると感じたその時に一護が手を挙げた。

 

「あの、質問」

 

「ん? なぁに、一護君?」

 

「マイさんが『三月』と言うのなら……『神様の一部』ってのにも割り当てられるのか?」

 

 一護の問いに、マイはポスンと手をやさしく重ねあう。

 

「あらあらぁ~! そこに気が付くとは流石一護君ねぇ~! そうなの~、私ったら『人間』でいうところの『母神』をイメージされてこの姿にされたのだけれど、正直困るのよねぇ~」

 

「え?」

 

「私は『本体』が育った世界での、えっと……()()()()()()()()()()()()()を基に創られたのだけれど、()()()()()()()だけなのに良いことが一つもなくて~。 

 肩も凝るだけだし、異性のみならず周りの人たちの視線を集めちゃうし~……あ! でもでも~? ()()()()()()()のが別に都市伝説じゃないことは分かったわぁ~」

 

 ムニュン、ムニュン。

 

「「ブフッ?!」」

 

『神様の一部』を否定しないどころか、彼女の困る理由に一護と浦原が吹き出しす。

 

「??????」

 

「…………では、現状についての予測と方針を話してもいいかネ?」

 

 

 

 ___________

 

 瀞霊廷内 残存兵 視点

 ___________

 

「た、退避だぁぁぁ!」

「中だ! 早く中に入れ!」

 

 瀞霊壁に亀裂が入って数時間後、最初は拮抗状態を保っていたがやはり数の暴力と時間が経っていく内に特性が変わる敵には抗えず、次第に彼らは奥へ奥へと攻め込まれていく。

 

「「「「「キャハハハハハハ!!!」」」」」

 

 最初はのっぺりとした人工破面たちの姿も、今では頭部の()だけでなく体の胴体と腕にはギョロギョロと瞬きもせずに周りをくまなく見渡す目らしきモノも追加されていた。

 

「自分で最後です!」

「よし、作動しろ!」

 

 ヴォン!

 

ギィィィ?!

 

 やがて四十六議事堂に最後の生存者が駆け込むと同時に斥候型が防衛機能によって結界のようなモノに弾かれる。

 

「阿近、今の作動だけで一割消化した!」

 

「想定内だ鵯州! 中の奴らに動力源に交代で供給させろ!」

 

「聞いたなリン?! ぼさっとしてないでさっさと行け!」

 

「は、はいいいい!」

 

 議事堂内では急遽十二番隊が設置した端末などを経由して議事堂本来の機能を使っていた。

 

 ここで鵯州が言った『動力源』とは電気の事はもちろん、以前マユリが虚圏に出てから『戦利品』として持ち帰ってきた、彼が『エンジン』と呼んだ一つの器具*2

 

 それは『魂魄を招集し、エネルギー源へと変換する』と言った機能を持ち、瀞霊廷の全てを起動するには出力が足りなかったが最後の砦ともいえる議事堂を作動するには十分。

 

 そして今、阿近は交代で非戦闘員たちに『エンジン』に魂魄供給を命じていた。

 

 だが外に設置されていたカメラ越しでも分かるように徐々に数が増える人工破面がひっきりなしに結界にぶつかっていく。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 ゴォン……ゴゴゴォンゴォン……《xsmall》

 

 地価の空洞内に大きな柱のような建物がある『清浄塔居林』に響くのは地上の、人工破面が結界に体当たりをする音。

 

 それらが中に避難した死神や魂魄たちに事の重大さを物語り、暗い空間であったことも関係していたのかその場全員の士気を大きく低下させていた。

 

 「もう……もう駄目だ」

 

 そうポツリと口にしたのは運よく瀞霊壁が破られた付近にいて、片腕を亡くした魂魄。

 

 残った腕で頭を抱え、地面に座り込むと彼の怯え様はすぐに伝染していった。

 

 無理もない。

 

 慣れない極限状態で、彼らは体感ではすでに長い時間戦っていた。

 

 実際、彼らが戦ったのは数時間と言う生温い期間ではなく丸一日ほど。

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴォン……バキィン!

 

「うわ?!」

「い、今の音は?!」

「き、き、きっと結界が破られたんだ!」

「あ、あああああ……」

 

 明らかに戦意がごっそりと削がれていく彼らに、人影が近づく。

 

「あー、そこな人たちちょっとええかぁ?」

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 上記の魂魄の叫びは当たっていた。

 

 彼らより地上に近い死神たちは家具などを出入り口付近にせっせと持っていき、バリケードを作っていく。

 

 「大型! 再度来ます!」

 

「われら気張れよぉぉぉぉぉ!!!」

 

 殿を務めていた鉄左衛門の声に、死神たちは悲鳴を上げる体に鞭を打って外部へと通じる議事堂内への扉にバリケードをさらに厚くさせていく。

 

 ドォン

 ミシミシ!

 

 大きな衝動と共にその場が揺れ、扉が悲鳴を上げる。

 

「早よぅせいお前ら!」

 

 額の出血を止めるために包帯を巻いていたリサも家具を七緒と共に運びながら叫び、この光景を鉄左衛門と共に殿をして肩で息をしながら見ていた大前田(希千代)は何とも言えない内心だった。

 

 「……これ、までか………………」

 

「「「「「……………………………………………………………………」」」」」

 

 弱気になった貴族の私兵の一人がそういうと、今度は死神たちに動揺と怯えが広がり始める。

 

 「だらしねぇテメェらぁぁぁぁぁ!」

 

 そこにカリンの怒りをこめた声が響き渡り、パッと見ただけでも重症の彼女が地下の『清浄塔居林』と通じる階段から上がっていた。

 

 ぱっと見える範囲だけ額と右目、首に左腕が痛々しいほどの包帯と浮かび上がる赤い色でどれだけの血が滲み出ているかが窺えた。

 

 それでも無理やり包帯を手の形に巻きなおした右手にはしっかりと槍が掴まれていて、強固な『戦う意思』を示していた。

 

「お前らの守るべき対象はまだあるだろうが?!」

 

 情熱的で義に厚い、かつまどろっこしいモノや行動を見ると()()カリとする苛立ちを隠せない、ある意味『直接的』な『カリン』。

 

「そうだ、まだだ! まだ終わっちゃいねぇ!」

 

「そうだよ。 皆、命懸けで守ったんだ」

 

「いや、『まだ命懸けで守っている』と言えるね」

 

 カリンの叫びに一角、吉良、弓親が口を開けてどんよりとし始めた空気が薄まっていく。

 

 ドォン

 ミシミシミシミシミシミシミシミシ!

 

 だがそれもさっきよりも大きな悲鳴を上げる扉によってまたも雰囲気は陰気なモノと沈んでいく。

 

「そうだ。 それに、俺たちはまだ死んでいない!」

 

「……海燕殿の言うとおりだ! まだ、我々には『何か』をすることが出来るはずだ!」

 

「……その『何か』とは何だ?」

 

「え、いやその……」

「えっと……」

 

 海燕とルキアに、その場の空気にあてられた雀部が問いを投げる。

 

「瀞霊壁は破られ、いまや隊長たちほどの実力者の安否は不明。 そして当初とは違い、進化していく敵に逃げ道のない議事堂にまで追い詰められ、結界も効力を失いつつある………………我々にどうこう出来るような事態ではなくなった。 

 もう……ここで『どう死ぬか』を決めるしかないだろう?」

 

「「「「「………………………………………………………………………………」」」」」

 

 冷たい水をかけられて夢から覚めさせられた者のように、雀部の語る冷たい現実味のある話によって皆が心と脳裏の奥底に埋めていた最期を突き立てられる。

 

「(……………………クソ……もう、ダメなのか?)」

 

 その中にはカリンもいた。

 

 理性では分かっていても、『それがどうした』と言いたいような考えが後に『()()』に繋がる事を信じて、彼女は今まで動いていた。

 

 だがそこに、意外な声が提案を上げた。

 

「…………………………打って出ましょう」

 

「「「「「ッ?!」」」」」

 

 声の持ち主の周りにいた者たちと、カリンまでもがギョッとして()()を見る。

 

「お、お前…………」

 

「何を言うかと思えば……()()副隊長、何の冗談だ?」

 

 雀部の悲観的な目線に、雛森(声の持ち主)が真剣なまなざしで見返していた。

 

「いいえ。 冗談なんかじゃありません。 立ち向かうのです」

 

「雛森……君」

 

 誰もが耳を疑い、彼女が()()雛森と信じられなかった。

 

「もし、どちらにせよ『死、あるのみ』ならば中の人たちを逃がす為に包囲を一転突破し、戦えない人たちを逃がしましょう」

 

 彼女の言った言葉の重みに、あるいはその決意の強さに充てられた恋次や一角などに海燕がニヤニヤし始める。

 

「『名誉ある死』、か」

 

「まさか十一番隊でもない雛森から聞くとはな」

 

「けど悪くないぜ、その考え。 俺は乗るぜ」

 

「いいえ、『名誉ある死』だけではありません。 瀞霊廷…………ここまで生きた人たちの為です」

 

 雛森を見ていたカリンの胸に、熱いものが込みあがる。

 

「長い夜でも……生きて入れさえすれば、『記憶』は次へと繋がります」

 

「(雛森、お前……)」

 

「それに上手くいけば外にいる卯ノ花隊長や右之助さん、逃げ遅れた人たちも見つかるかもしれません」

 

 ドォン

 ミシ! バキ!

 

 背景音を除いて、長い撃沈はやがて口を開けた雀部によって破られる。

 

「……………………そうだな。 そのような『生き方』もあるか……まだ戦う意思のある者たちを全員集めろ! 斬魄刀の能力の出し惜しみもなしだ!」

 

「「「「「おう!」」」」」

 

 さっきまでの空気が嘘だったように、皆がそれぞれ新しい目的のために動く。

 

「ぁ」

 

「よ、お疲れさん」

 

 雛森はさっきまでがくがくと笑いそうになっていた足で姿勢が弱ったのか後ろへと倒れそうになるのを、吉良と恋次が支える。

 

「見直したよ、雛森君」

 

「おう! よく言った!」

 

「え? そ、そうかな? カリンさんが言いそうなことを言っただけなんだけど……」

 

 近くまで来たカリンが雛森の頭をワシャワシャとかき回す。

 

「それでも大したモノだ……強くなったな、()()

 

「「「え?」」」

 

「っし! そうと決まればこの邪魔な包帯とかも取らなきゃな!」

 

 ここでカリンが初めて雛森を名前で呼んだことに、同期三人(吉良、雛森、恋次)がポカンと口を開けている間に、彼女は包帯を剥ぎ取っていく。

 

「なんや。 ボクたちの出番、何もなかったやん」

 

「市丸隊長?」

 

 そこに、地下からの通路から市丸が顔を出す。

 

「元やで、イヅル。 しっかし、雛森ちゃんもえらい成長したな~。 まさかボクの考えと同じやったとはねぇ~」

 

「え?」

 

「下の連中に、今の作戦で納得させたんよ。 どうせ『死ぬ』言うなら、『助かるかも知れへん』風に言った方が効果的やろ?」

 

「「「「「……………………………………」」」」」

 

「ん? どないしたん?」

 

 「吉良、今更だけど? 結果が同じでも、言い方がスゲェな?」

 「それが市丸隊長なんだよ……」

 「え、えっと……ご苦労様です?」

 「雛森君の優しさが物理的に染みるよ……」

 「え?! 何で吉良君そこで泣くの?!」

 《xsmall》「いい加減に察せよ雛森」

 「え? 今なんて、阿散井君?」

 

 久しぶりに立場などを考えない同期三人の砕けた言いたい放題である。

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 ドォン

 バキ!

 

 外へと通じる扉には、今にでも壊れるような亀裂が走る。

 

「斬魄刀を持っていない奴らは、霊子兵装に銃剣を装着しろ! 弾倉も確認しておけ!」

 

「要の言う通りや。 このまま出てすぐ突破できるようにな~?」

 

 ドォン

 バキバキ!

 

 中では不安ながらも、霊子兵装などをがっしりと手に持つ魂魄たちや初解をまだ会得していない隊士たち。

 

「扉が砕けると同時に鬼道型の初解を放ち、それを合図に総員出撃せよ! 出遅れるなよ?!」

 

「なぁ、恋次?」

 

「ん? どうした、ルキア?」

 

()()をする時ではないのか?」

 

「『アレ』? ……え?! おい、まさかお前…………………………マジか?」

 

 いつ扉が崩れてもおかしくない時に、ルキアがその緊張した空気に似つかわしくない笑みを浮かべる。

 

「こういう時だからこそではないかたわけ! ほら、手をを重ねろ!」

 

 ルキアが近くの人の手を無理やり掴む。

 これを見た恋次や、彼のように廃れた風習を覚えていてもおかしくない一角、鉄左衛門、志乃なども他者の手を掴んでは重ねていく。

 

「イェーイ! ほらほらナナちゃんも!」

 

「え、ええええぇぇぇぇ?!」

 

 ドォン

 バキバキバキ!

 

 ルキア、恋次、一角、鉄左衛門、マシロを筆頭にそれぞれが時を同じくして口を開ける。

 

『我ら、今こそ決戦の地へ!』

 

 それは、藍染に虚圏へと攫われた者たちを救う為に独断で乗り込んだ時にいつかの恋次が蘇らせた風習。

 統一感と士気を上がらせる『まじない』と称した行動。

 

 『信じろ、我らの刃は砕くだけぬ!

 信じろ、我らの心は折れぬ!

 たとえ歩みは離れても、(こころざし)は共にある!』

 

 ドォン

 バキバキバキバキ!

 

 (ちかえ)! 我ら、血肉が裂さけようとも!』

 

 ドォン

 バキバキィン!

 

「「「「キャハハハハハハ!!!」」」」

 

 やっと扉に大きな亀裂が入り、外から中の様子が見えた時に人工破面の笑い声が聞こえてきた。

 だが中にいた者たちはこの時、この一瞬だけは何とも言えない気持ちを胸にしていた。

 

 そこには死神や魂魄と言った種の違いが無く。

 

 

 男性、女性、成人、未成人、いわゆる老若男女(ろうにゃくなんにょ)の違いもなく。

 

 

 『再び、共に!』

 

 

『ただ護る』と言った、単純な志を共にした『同士』だけが居た。

 

 バリバリバリバリィィィィ!!!

 ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ!!!

 

 「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああ────!!!」」」」」

 

 大きな音で追加のダメージに耐えられなかった扉が崩れていく。

 きっと高らかに笑っているであろう人工破面の鳴き声より、尸魂界の住人達があげる咆哮だけが聞こえそれぞれが全身で前進をし、瀞霊壁の欠けた場所へと目指す。

 

 鬼道の遠距離、中距離型の初解が唸りを上げては敵を吹き飛ばす。

 

 横から駆け寄ってくる敵を刀が斬る。

 

 銃剣が刺され、銃身を通して発砲がされその反動で銃剣が抜かれる。

 

 そのまま彼らはウジャウジャいる敵を突き切って、ボロボロな廃墟へと変わり果てた瀞霊廷を駆け抜ける。

 

 この突然攻勢に出た者たちを前に、戸惑いを隠せない人工破面たちの中を駆け抜ける。

 

 誰もが息の続く限りに叫ぶ。

 

 斬る。

 

 撃つ。

 

 敵に刺されながらも。

 

 足や腕を失っても。

 

 胴体を掴まれても。

 

 それでも誰もが叫び、出来るだけ多くの敵を道連れにしていく。

 

 

 

 まるで『我々はここにいた』と、爪痕を世界に残すかのように。

 

 

 

 総勢千人と少しの戦力も、今ではわずか数百名。

 それでもこの一体感によって、彼らは瀞霊壁が破れられた場所まで全身を続けた。

 

「ッ! リカか?!」

 

 そこに、カリンの一言が奇跡的に周りの者たちに聞こえ、死神も魂魄も人工破面もが彼女の視線を追う。

 

 砂丘の上をリカが頑張ってフロートボートを一人で引きずっているのを、彼らは見た。

 

 

 

 ___________

 

 虚圏援軍要請組 視点

 ___________

 

「んしょ、んしょ、んしょ」

 

 上記と同時刻、リカはフロートボートを一人さみしく引きずっていた。

 

「ふぅー……やっぱり肉体労働は嫌ですね~」

「(そうね、そこは同感よ)」

「やっぱり竜牙兵欲しいですねぇ~」

 

 合理的で好奇心満載、新しいモノやことに興味が尽きないかつ冷めた心持ちで物事を見定める、ある意味古典的な『探究者』の『リカ』。

 

 額の汗を袖でふき取りながら、彼女は砂丘の上から瀞霊廷の奥から一気に打って出た場面を見下ろす。

 

「う~ん、やっぱりこうやってみると独りですねぇ~。 『孤独』ですね~」

 

 

 

 

 

 

 

 

「『孤独』? 知らねぇよ」

 

 リカの背後から、グリムジョーが前へと出る。

 

「何せ『王』の俺が来てるんだ。 それごと吹き飛ばしてやるよ。 なぁ、お前ら?」

 

「誰が王よ?! 誰が?! と言うか仕切ってんじゃないわよ!」

「まぁ別にいいじゃねぇか、チルッチ」

「異議、大いにありですぞ?! 王ならば吾輩が立候補する!」

「「却下」」

「何故だ?!」

 

 彼が後ろを見るとと言った帰刃(レスレクシオン)済みの破面たちがゾロゾロと姿を現せながら前へと出てくる。

 

 チルッチ、ガンテンバイン、ドルドーニはもちろん、野良の破面たちも含めて。

 

「ですが彼の生き方は獣に寄りながらも、知性ある者の統一を成しているもまた事実。 今この時の彼を『王』とは認めなくても、『将』としてはどうかしら?」

 

 そしてネル────厳密には帰刃(レスレクシオン)済みのネリエル・トゥ・オーデルシュヴァンクも居た。

 

「は! どっちでもいいさ! 俺ぁクソ死神たちだけじゃなくて、破面モドキや背後でこそこそ隠れているはずの滅却師のクソッタレどもに、俺たちの力を見せれることに満足してんだ! 行くぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!

 

 「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおお────!!!」」」」」

 

 ここでグリムジョーが手足のみを帰刃(レスレクシオン)し、大地を他の破面たちと共に駆けながら雄叫びを上げる。

 

「では、力を貸してくださいキャス子さん」

「(無事に帰ったら約束を果たしてもらうわよ?!)」

「はい~」

 

 人工破面たちは側面から近づく彼らを迎え撃つために向きを変え、二軍が衝突する寸前の時だった。

 

「『神官魔術式(ヘカティック)灰の花嫁(グライアー)』~。 ミニ改」

 

 リカはフロートボートから杖を出し、上記の詠唱を言いながらそれを頭上に構えると小さな光球が上空へと打ち上げられていく。

 

 カッ!

 

 

 光の玉は花火のように爆発をし、虚圏に一瞬だけまるで太陽が照らしたような光がその場に広がった。

 

 破面たちのグリムジョーや、瀞霊廷の者たちは反射的に突然の眩さに瞼を閉じる。

 

 「「「「ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ?!」」」」

 

 だがついさっきまで無かった『目』を表現させた人工破面たちは開かれたままのそれらでモロにこの光を受ける。

 

 もし万が一に『瞼』を表現させていたとしても、『晴天』を知らない彼らでは太陽出来ていなかったかも知れない。

 

 どちらにせよ、この怯んだ一瞬が致命的だったのは間違えようもない。

 

 人工破面たちは揃いも揃って出来るだけの『目』を腕で塞ぐか視覚からくる痛みで地面をのたうち回り、横と正面からの突撃で一方的に倒されていく。

 

「………………………………ふー」

 

 リカは長い溜息をだし、これを見ながらダルそうにフロートボートへと体を寄りかからせる。

 

「………………………………疲れ、た」

*1
14話より

*2
92話より




作者:目を開けたらもういい時間になっていた……だと? ま、まさかこれが『鏡花水月』?!

平子:アホ。 ちやうがな。

リサ:ただ単にニ徹しててアラームをまた付け忘れただけやろ?

ハッチ: 皆サン言い方がチョットきついデス
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