白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

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大変お待たせ致しました、次話です。

過去のアンケートへの投票、誠にありがとうございます。 *注*いまだに目を通し、参考にしています

混沌としていますが、楽しんでいただければ幸いです。


Late Adulthood - 『文字化け篇』
第164話 Foolish Madness Dance


 ___________

 

 虚圏Landwehrkorps(ランデュエヘール部隊) 視点

 ___________

 

「アッハッハッハ! アッハッハッハッハッハッハ!!!

 

 キルゲは複数の破面相手に善戦していた。

 

 無論これは彼が星十字騎士団(シュテルンリッター)の中でも虚圏で孤立同然だった遠征隊を、原作ではあのユーハバッハが一任するほどの実力者であるのも関係はしているだろう。

 

 だが果たして(負傷したとは言え)グリムジョーの上に、ドルドーニ、チルッチ、ガンテンバイン、ネリエルと言った実力者たち。

 

 しかも全員が帰刃(レスレクシオン)済みで、原作のように未知数であった滅却師たちの軍勢から不意打ちを食らったわけでもなく、数での暴力に侵略されたわけでもない。

 

 実質上の一対五。

 

『それでもあのキルゲなら』と思うかも知れないし、そこは同意しよう。

 

「(ぬぅ……こいつ、ニーニョ(坊や)並みの化け物か?! 吾輩たちの攻撃が効かぬ!)」

 

「(なんで眼鏡の奴ばかりに苦戦する羽目なのよ?!)」

 

「(いつもの調子が出ないこれは何? 藍染様の幻術でもない……東仙要のような搦め手の能力か何かなの?)」

 

 ()()()()()()()()という点を無視すれば。

 彼についた傷も、さっき足を負傷したグリムジョーがつけたモノばかり。

 

 先ほどの彼の攻撃がグリムジョーに効果があまり出なかったように、破面たちの攻撃もキルゲには当たってはいたが結果がイマイチだった。

 

「アッハッハッハッハッハッハ!!! 無駄ですよ?!」

 

「(何を言っているんだこいつ────クソ、帰刃が!)」

 

 グリムジョーは足をやられてイラつきから怒り任せの生半可な攻撃を続け、それ故の霊力不足で自分の姿が独りでに人型へと戻っていく腕を恨めしいそうに見る。

 

「グリムジョー。 私に考えがあります、協力してください────」

「────あん?」

 

 グリムジョーにネリエルが小声で声をかけ、今までキルゲの軍刀と義手を警戒して中と遠距離からの攻撃をしていた破面の輪からガンテンバインが一気にキルゲとの距離を詰める。

 

「(変な防壁とかあっても、ゼロ距離ならば────!)────『主よ我等を許し給え(ディオス・ルエゴ・ノス・ペルドーネ)』!」

 

 ゴォォォォォォ!!!

 

 両手を組んだガンテンバインはキルゲの背後、かつ至近距離からエネルギーを叩き込んだ。

 

「ですから無駄だと言ってい(ます)!」

 

「な────グハァ?!」

 

 だが先の直撃で壊れたと思われる義手や体中から流れる血を見れば明らかにダメージを受けたはずのキルゲが砂煙の中から姿を現し、軍刀でガンテンバインに深い傷を負わせた。

 

「無駄です! 無駄です! 無駄です!()()()()()()()()()s────!

 

 ────ザクッ!

 

「…………あ?」

 

 先ほどから狂ったように笑うキルゲは自分の胸から生えた物体を見下ろす。

 

 キルゲは後ろを見ると羚騎士(ガミューサ)状態のネリエルが槍で自分を背後から刺していた。

 

 ドォン

 

「気に障るんだよ、テメェの声はよォ?!」

 

 更にネリエルを騎兵のように乗っていたらしいグリムジョーが飛び掛かり気味で、キルゲを斬魄刀で()()()()()()()()()()()()()()()()

 

がはっ?! なん……だと?

 

「貴方は何故かグリムジョーだけを警戒し、彼の機動力を奪っても私の機動力を奪おうとしなかった。 いえ、()()()()()()()()。 つまり貴方が危険視していたのは彼だけ。 『ならば大打撃を当てられるのでは?』という予測は当たっていたようですね」

 

「へっ! やっぱり、()()()()()()()()()()?!」

 

「ま、まだです! 『乱装天傀(らんそうてんがい)』を使えばこれしきの────!」

 

 ────ドサッ。

 

 冷静に『知性有るもの』として喋るネリエルと高揚感で高らかに勝利を確信したグリムジョーに、諦めの悪い悪役のように吐血しながら叫ぶキルゲ(の真っ二つにされた体)が虚圏の砂漠に力尽いたように落ちる。

 

「………………あ、れ? ガフッ?!

 

 キルゲ自身、周りの破面たち同様に呆気に取られる声を出すと更に吐血する。

 

「……そう、ですか……()()()で、すか……」

 

 ぼそぼそとした独り言を言いながら、彼の表情は体と共に死んでいく。

 

「陛下の…………………………見立て………………通り…………」

 

 

 

 

 ___________

 

 黒崎一護 視点

 ___________

 

 月光が照らす、夜の空座町。

 

 そこでは現代では考えられない激闘が繰り広がれていた。

 

 ギィィィン!

 ガギッ!

 ヒュッ!

 

 金属がぶつかり合う音、コンクリートが力ずくで抉られる鈍い音、そして正しく『風を斬る』音。

 それらが一護の耳に届いていたが、彼の思考は別の方角へと向けられていた。

 

 それは眼前で己を殺そうとする知り合いたち(月島と銀城)に似たモノたちではなく。

 建物からこの荒れた場を少し遠くから浦原や夜一たちの攻撃をいなしながら、ほくそ笑む藍染でもなく。

 予想より強くなっていた滅却師たちでもなかった。

 

「(……なんだ、これ?)」

 

 一護が意識を向けていたのは他の誰でもなく、『自分』だった。

 

「(身体が軽い?)」

 

 彼は連戦と連続の異変で疲労しているはずの自分が思っていた通り────否。 

 ()()()()()()()()()()調()の自分に戸惑いを感じていた。

 

「(それに……遅い)」

 

 彼は対峙している者たちの攻撃や動きなどが全てスローモーションのように見えていた。

 

 それはまるで死に間際や極限状態に陥った人の防衛本能がどうにかして身体を動かし、危機を回避させようと()()()()()()()()()()()ようなものと似ていた。

 

 だが上記の例たちと違い、一護は冷静そのものでこれを不思議に思いながらも来る刃を受け流しながら遠心力を使った体術で反撃をしていく。

 

 彼は切羽詰まった状態どころか、不思議に思えるほどの余裕からか考え込む。

 

「(俺がこんなに調子いいのは、何か絶対に理由があるはずだ)」

 

 だが彼が脳裏で考えても、辻褄か通りが合わなかった。

 

 もしこれが『現世に戻ったから』と仮定しても、浦原や夜一が苦戦している筈がない。

 ならば『虚の力があるからか?』と自分に問いを投げても、周りの滅却師たちと対峙する虚や破面モドキを見れば『違う』と本能が答える。*1

 

 同じ線で、『自分が滅却師だからか?』と考えた途端に違うと断言できなくなり、可能性の候補として出てくる。

 

 だがここで一つの疑問が浮かぶ。

 

「(()()()()は何だ?)」

 

 一護の質問はもっともである。

 

 以前の彼ならば勢い任せにこの力をフルに活用していただろう。

 

 だが藍染や銀城という『前例』があったからこそ、彼はこの(みなぎ)る力を不思議に思えた上に慎重に行動できていた。

 

 

 ___________

 

『渡辺』チエ 視点

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 ドッ!

 

「グブッ?!」

 

 肉が皮膚越しにめり込むような音とくぐもった声は、いかにチエが()()していたことを物語っていた。

 

 そう、『苦戦』である。

 

 先ほどから小さな出来事が多発して、それら全てが彼女を不利な状況や態勢へと働いていた。

 

 紙一重で避けようとすれば小石で足がもつれたり。

 攻撃に転じる瞬間に目に埃か土が入って視界を一瞬閉ざさなければならなくなったりなどといった、()()()()()

 

「(だがその都度にこいつが入れる一発一発が……()())」

 

 チエはそう思いながら自分の身体の様子を伺う。

 

「(肋骨。 左の太もも。 さっきの右腕に右肩。 そして左手か)」

 

 彼女が思い浮かべた部位などは獅子河原(?)の攻撃を受けた場所。

 

「(やはり人間とは言え、『ふるぶりんぐ』は厄介だな)」

 

 目の前の獅子河原(?)がまたも猪のように突進気味で拳を振るい、チエは距離をとるかのように横へと飛ぶ。

 

 ドゴォン!

 

 彼女の背後から獅子河原(?)のパンチで建物に大きな穴が開く音がする。

 

「(やはり『因果律』……それも『運』関連────)」

 

 ────ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。

 

「うわわわわわあ?!」

「あ、やばい。 崩れる」

 

「(この声は────)」

 

 重苦しい音が建物から響き渡り始め、中から彼女の()()()()()()()()()声に気を取られる。

 

 

 ___________

 

 現世組 視点

 ___________

 

「うわわわわわあ?!」

「あ、やばい。 崩れる」

 

 たつきと水色は(少なくともたつきは)慌てて崩れていく建物の中とから出口を目指す。

 

「だからここで隠れるのは反対だったんだよ!」

 

「いや~、どんまい♡」

 

「『どんまい♡』じゃ、ねぇぇぇぇ! 三月かお前は?!」

 

「あ、小さいほうの渡辺さんはやっぱりそうなんだ?」

 

 「だぁぁぁぁぁ! お前も空気たまに読めぇぇぇぇ!」

 

 この二人は先ほどまでミニーニャとリルトットが戦場から連れ出していたのだが、まさか歩く死人たちだけでなく破面モドキまでもが急に出現するとは思わなかったので応戦しに水色とたつきのそばから離れた。

 

 だが戦いが乱戦へと移行し、その規模が拡大したことで二人は近くの頑丈そうな建物内部へと駆けこんでいた。

 

 無論、どれだけ堅牢でも()()()構造ごと歪められれば大きな建物ほど重心がずれてより早く崩壊する。

 

 バキ! ガラガラガラガラガラガラ!

 

「あ、落ちてくる」

 

ギャアアアアアアアアアアアア?!」

 

 その証拠に水色があっけらかんとした口調で見上げていた天井が、ついに歪んだ形に耐え切れずにごっそりとした破片が二人の頭上に迫る。

 

「(うわ、ダメだ!)」

 

 たつきと水色は思わず両手で頭を覆い、目を瞑る。

 それが現状況で、何の意味がなさなくともしてしまったのは反射神経ゆえの防衛行動。

 

 ズズズゥゥゥン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………あれ?」

 

「僕たち、生きている?」

 

 たつきたちは少なくとも怪我をすることぐらいは覚悟していたが、重苦しい音がなった後でも予想していた痛みや押しつぶされる感覚は来なかった。

 

「ぁ」

 

 そう息を吐きだしたのは水色かたつきか。

 あるいは目を同時にあけた二人ともか。

 

「グッ……ク、ク……」

 

 ボタ。 ボタタタタ。

 

 二人ではない誰かが歯をがっしりと力強く閉じた口からくぐもった苦しい声を出し、額と頬を伝う液体の感覚を無視しながら二人に落ちそうだったがれきを頭を背中、そして無事だった左腕で持ち上げていた。

 

「な、なんで………………」

 

 水色にとっては自分が懐いている一護を弟扱いする天然で、最近ではあまり宜しくない噂を聞くようになった顔見知り。

 

 たつきにとっては昔から一護と同じほどの馴染みの一人で何かと物静かで口数が少なく、最近では『物騒な奴』と確認しそうになってその人の悪い噂を止めるどころか見逃していたのを悪いと感じていた相手。

 

 額から。

 耳と打った首から。

 吐血していたのか口から。

 

 皮膚と肉が破れ、服装の上からでもわかるほど出血をしながら文字通りに体を張って水色とたつきに落ちていた瓦礫を止めていたチエの姿があった。

 

 

 

 ___________

 

 ??? 視点

 ___________

 

「(……キルゲが逝ったか)」

 

「ちょこまかと逃げおって!」

 

 藍染は相変わらず避けることに専念していた。

 まるでスピードを売りにした夜一あざ笑うかのように。

 

「自分と同等の速さであることが恨めしいかい、四楓院夜一?」

 

「いや、お主の傲慢さに賭けていただけよ! 今じゃ!」

 

「行くぜ、マーの姉貴!」

「はぁ~い♪」

 

 藍染の背後には巨大なこん棒(無敵鉄棍)を振るところだったジン太と、一種のロマン武器(ガンランス)で突くところだったマイがいた。

 

「ちょうどよい角度です、ウルルさん♪」

 

「うん、タイミング教えてありがと」

 

 地上にはバズーカのような千連魄殺大砲で上記の二人を打ち上げたウルルと浦原。

 

 ゴリッ!

 ザクッ!

 

 完全な不意打ちだったこん棒と槍が藍染の頭部と胴体に()()()()

 こん棒で彼の首は曲がり、胴体に刃が突き刺さる。

 

「よっしゃ! やぁりぃ!」

「(『()()』は私の方だけれど……この手応えは────)」

「────うん。 合格♪」

 

 決して藍染ではない、女性の声にマイの背筋はゾクリとした寒気が走り、彼女はジン太を蹴り飛ばした。

 

「ぐわ?! マ、マーのあn────?!」

 

 ────バシャア!

 

 急に蹴られて目を白黒させていたジン太の声を遮ったのは、彼の顔にべったりと生暖かい液体が付着した感覚。

 

「やっぱり改造していても、義骸は脆いわね♡」

 

「え?」

「やはり『似ている』と思いましたが……」

「は? え? マ、マーの姉貴が()()?」

 

 ウルル、浦原、そしてジン太は思わず口を開けてみていた光景の感想をしていた。

 

「貴方に言われると複雑な気分よ」

 

 マイはと言うと頭から真っ二つに斬られるのは逃れていたものの、二の腕から失くしていた右腕をいつもの笑みのまま左手で抑えていた。

 

「ねぇ、『()()』?」

 

 そんなマイが見ていたのは彼女とほぼ瓜二つの顔をした女性。

 

「あら? 貴方も別側面とは言え、同じ存在でしょう? え~っと……『マイ』? だっけ?」

 

「(とりあえずは、時間稼ぎね。) う~ん、一緒にされても困るわぁ~。 私は貴方とは『違う』から現に襲われているのだし~?」

 

 マイが『三号』と呼んだ女性は妖艶な笑みを面白そうに浮かべる。

 

 マイからもぎ取った右腕を持ち上げて、口づけをしながら。

 

「そうね。 今の『貴方』はロジックエラーを起こし(暴走し)ているのは明白。 ただちに初期化し、再起動しなさい。 もしくは『私』と同調しすれば楽になるわ」

 

 マイはここで初めて笑みをしていた顔がむずむずした。

 

「…………『貴方と同調すれば楽になる』、か…………確かに魅力的よねぇ~」

 

 ここで『三号』がにっこりとした、人当たりのいい笑顔をしながら握手するかのように手を出す。

 

「ええ、そうよ。 人間風に言えばギブ&テイクよ。 貴方の理論ミスは取り除かれ、私は()()を果たす」

 

 マイは左手を右腕から離す。

 

 恐る恐ると上げたそれをマイは────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────『三号』へ中指だけを立てた拳を向ける。

 

だが断るわ。 英語の発音を記憶し直して、出直して来なさい、このクソビッチが♪」

 

 ゴォォォォォォ!!!

 

 そこでタイミングを見計らっていたかのように黒腔(ガルガンタ)穿界門(せんかいもん)を組み合わせた歪みが彼女たちの頭上に開き、死神たちと純破面たちや虚が降り注ぐ。

 

 これを『三号』は見上げ、マイは満足そうに後方へと飛ぶ。

 

「穿て、『厳霊丸』!」

「ぶっ潰せ、『五形頭』!」

「面を上げろ、『侘助』!」

「奔れ、『凍雲』!」

「弾け、『飛梅』!」

「『狒狒王蛇尾丸』!」

「舞え、『袖白雪』!」

 

 雀部、大前田、吉良、勇音、雛森、恋次、ルキア。

 

「刈れ、『風死』!」

「唸れ、『灰猫』!」

「延びろ、『鬼灯丸』!」

「裂き狂え、『瑠璃色孔雀』!」

「『捩花水(ねじかすい)』!」

 

 檜佐木、松本、一角、弓親、海燕などといった死神たちだけではなく、帰刃したアパッチたち破面や義理案(小)もいた。

 

 文字通り雪崩のような人(?)波を前に三号の妖艶な笑みとは裏腹に彼女は『ガリッ』っと歯を持っていたマイの腕に食い込ませていた。

*1
119、120話より




『乱装天傀』:
無数の糸状に縒り合せた霊子の束を動かない箇所に接続し、己の身体を強制的に動かす、滅却師の超高等技術。
簡略化すると、『自分で自分を操り人形にする』。
使用者の霊力と、意識が続く限り。






藍染:『どこから母上は出てきた』って? では聞くがいつ、私が鏡花水月を使っていないと錯覚していた? あと何気に新しい章らしいね?

作者:………………

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