白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

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お待たせいたしました、短めですが次話です。

いつもお読み頂きありがとうございます。
楽しんでいただければ幸いです。


第170話 Could Have (Not) Been

「じゃあ、いってきます!」

 

「いってらっしゃい」

 

「気をつけてね?」

 

「うん!」

 

家の玄関先から少女は両親に見送られ、自転車に乗って出る。

 

シャァァァァァァァ。

 

「♪~」

 

少女はリュックを背中に背負い、ご機嫌に自転車を川沿いにある道の上を走らせていた。

 

その容姿は年相応の無邪気さ、あるいは世間をまだあまり知らない様子。

 

それもそう。

 

いつもはバタバタとして自分の周りに長らくいなかった両親の幼児が終わってのか、預けられていた遠縁の家から家族一緒になり、住み始めて数か月。

 

『はい、皆席についてー。』

『転校生?』

 

『今日は新しいお友達を紹介します。 では■■さん、みんなに挨拶を。』

『えと……よ、よろしくお願いします。』

 

『『『『『『あ、チョー可愛い。』』』』』』

 

それが少し前の事だったのだが、家族と国のゴタゴタが収まり学校への登校も()()でき、毎日が真新しかった。

 

それが少女にとっての『普通』になりつつあった。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

「はぁ~、だる~い。」

「ねぇ~?」

「つかマジで牛乳だよな、これ?」

「つくえン中に入れっぱなしの奴な!」

「くさった牛乳の方がはくりょくあるぜ!」

 

昔ながらの初等部らしき教室の中で子供たちは教室の床用のワックスがけに対しての素直なコメントなどを互いに投げかけている間、ライトグリーンの髪をした少女はせっせと黙々とモップを使っていた。

 

「ねぇ~、■■もそんなにだまっていないではなしぐらいしようよ~」

 

「だ、だってしないとだめだし……」

 

「まじめすぎ! 疲れるよ、そんなんじゃ?!」

 

「え? そ、そう……かな?」

 

「そうだよ!」

 

「…………そうだね!」

 

少女は自分の手に握られたモップを見て、クラスメイト達の輪を互いに見てから彼らに駆け寄ると不意に耳鳴りがなる。

 

『チーちゃん!』

 

彼女はキョトンとして周りを見渡すとクラスメイト女子の一人が声をかける。

 

「どうしたんだ、■■?」

 

一人の少年が心配するような声を少女に掛ける。

 

「ぇ、あ……ううん! なんでもない!」

 

「よ! □□! 真昼間からいいよるなんてさすがだな!」

「よ、勇者!」

 

「うるせぇぇぇぇ! そんなんじゃねぇ!」

 

「(空耳……かなぁ?)」

 

少年が他の者たちにからかわれている間、少女は?マークを飛ばしながら窓の教室から平和な街並みを見てそう思う。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

更に時は過ぎ去り、夏が近づいたころの様子で初等部の外には『自由参観日』の立て掛けがあった。

 

「見てみて、あれってアンタンとこのお母さんでしょ? チョーまるい!」

「だるまだよね、もう。」

「シィー! あれでもダイエットしている気なのよ!」

「うっわー、ヒョウ柄のジャケットに帽子って……うちのママのファッションセンス無さ過ぎ……」

「ええ~、いいじゃん全然。 てか■■のお母さんはどれ?」

 

「え? えっと、その……」

 

その中、急に話題が振られたライトグリーンの髪をした少女はと気まずくなったのかもじもじとする。

 

「まだ……きてない……」

 

少女が俯いてそういうと、教室の後ろで立っていた大人たちがザワザワし始め、子供たちの視線が自然とそちらへと向けられていく。

 

「お、おい。 あれ誰だよ?」

「うわぁ……すっごい綺麗!」

「髪、長ぇな。」

「サラサラしてそう。」

 

入ってきてのは『綺麗』を通り越し、まさに非の打ち所がない『美』を実体化させた、ニコニコとした和服姿の女性がいた。

 

「あ、お母さんだ。」

 

「「「「えええええええええ?!」」」」

 

その人物を見て、上記の言葉をあっけあらかんに言った少女は周りの者たちの驚愕したことを構わずに机から立ち上がって近づいた。

 

「……来られたの?」

 

「はぁ~い、来ちゃった♪」

 

「しごと……あったんじゃ────?」

「────抜け出してきちゃった♪」

 

女性は悪戯っぽく舌を出しながらそう言うと。少女は自分の胸が暖かくなるのを感じ、視線と表情が笑顔になっていく。

 

「……そっか!」

 

さっきまで気後れ気味の少女が母親同様にニコニコしだすと、余りの眩しさ故か場の微笑ましさに周りの者たちは瞼を優しく細めた。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

「「「「イェーイ!」」」」

 

更に時は移ろったのか、少女や少年だったクラスメイトたちの体は見るからに成長していた。

 

それは子供特有の、幼さの名残を残しながら発展途上の容姿。

 

彼女はほこほこした心で周りを────

 

『チーちゃん、戻ってきて!』

 

「────イ、痛い?!」

 

少女は持っていたものを落とし、突然襲ってきた頭痛に思わず頭を抱えた。

 

「あ、■■ちゃん!」

「どうしたの? ()()()()頭痛?」

「収まるまで肩、みんなで貸してあげよう。」

 

彼女の調子がすぐれなかったことに気付いた者たちの物言いから察するに、このような頭痛は時折少女に起きているようだった。

 

『チーちゃん!』

 

「(うるさい! ()()()())」

 

ただし、いつもは頭痛が自然に収まっていくのを少女は待たずに強い拒絶の意思で無理やり抑え込もうとした思いをすると、スゥっと痛みが引いていく。

 

「……ありがとう。 もう大丈夫。 平気!」

 

やがて少女は手を頭から離し、笑顔になりながら周りの知人たちに感謝の気持ちを伝えた。

 

 

 


 

 

 

___________

 

??? 視点

___________

 

「ガッ?!」

 

三月の頭は突然殴られたかのように後方へと弾き飛ばされそうになるのを、気を失ったチエを抱き上げていた腕に力を入れて反動を相殺する。

 

「大丈夫か?!」

 

「ぁ……だい、じょう────」

「────ぶな訳ねぇだろうが?!」

 

一護を安心させるような言葉を言おうとした彼女の目と耳、そして鼻から血が出ていたので『口から出まかせ』だったのは明らかだった。

 

「(頭が、クラクラする。)」

 

三月は朦朧とした意識で体から力が抜けそうになるのを気合いで無理やり意識を引きとどめながらチエを一護へと預けてからやっとここで自分の頭から流れ出ていた血が地面へと滴ることに気が付いた。

 

「(血が……これほどまでの拒絶を受けるなんて……) い、ちご。」

 

三月が拙い言葉遣いのままフラフラと立ち上がる。

 

「彼女、を……貴方が呼び戻……して。 私じゃ、多分……ダメなんだ。」

 

「え?」

 

三月はさっきから『三号』に攻撃を続けるもあしらわれるカリンたちのいる場所へとフラフラのまま、歩き出す。

 

「お、おい────」

 

「────おね、がい。 (それでも、もしも彼女が……戻らなかったらと、()()()()()()()()()……()()()()()()()……)」

 

三月自身気付いては居ないだろうが、彼女は先ほどからブツブツと独り言のように口を動かしていた。

 

「(()()()()()()()()()()()()……)」

 

まるで、何かに囚われていたかのように。

 

「(そうよ。 この状況で持ちうる全てを使わずに、いつ使うというの?)」

 

徐々にかすんでいた視界も回復していき、目の前で繰り広げられる激闘に身を投じようとしたところで足を止める。

 

「……皆、私に力を貸して。」

 

三月の小声がまるで聞こえたかのように、カリンたちの各々が『三号』と相対しているにも関わらず、ピクリと反応してから行動を再開する。

 

『(待ちくたびれたぜ。 オレはどうすりゃ良い?)』

『(カリンはそのまま粘って注意を出来るだけ引きながら最低でも大技(宝具)が使える状態を維持。)』

『(あいよ。 あとランサー(クー・フーリン)が“相変わらず人使いが荒いな嬢ちゃん!”だとさ。)』

『(言いたい放題なのだわ。)』

 

『(ボクは?)』

『(リカは極大の“圧迫(アトラス)”展開を用意して。)』

『(対象は……聞くまでもないですね。 拘束時間の推定は?)』

『(()()()()()()()。)』

『(つまりボクに“死ね”と仰るんですね?)』

『(……ごめんなさい。)』

 

『(アネット────)』

『(はい何でございましょう上姉様?!)』

 

耳鳴り(頭鳴り?)がするほど元気良い、きゃぴきゃぴとしたアネットの返事に三月はしばしの間(数秒間)言葉を失う。

 

『(………………………………………………………………………………………………………………アネット。 貴方は今、“大技(宝具)”を使える状態?)』

『(必要とあらば。)』

 

さっきまでのほわほわした態度とは打って変わって

ドライ(公私はきっちりと分ける)なアネットの声だけが返ってくる。

 

『(なら、それを全身全霊で然るべき時に使って。)』

『(…………………………………………………………………………)』

『(後で私のことを好きにしていいから。)』

『(了解しました上姉様!♡!♡!♡!♡)』

 

余りのギャップ感に三月は思わず立ち眩みしそうになるが、次の行動方針を伝えるために移る。

 

『(クルミ、マイ。)』

『(なんや? 今クソ忙しいねんけど?)』

『(そうねぇ~。 流石に片腕だと私の怪力は上手く発現できないわ~。)』

『(()()()()()()()()。)』

『(え。)』

『(はぁ~い。)』

『(マイ、軽すぎやろ?!)』

『(でもでも~、本体の事だから勝算あり気での頼み(命令)なんでしょう~?)』

『(それ言われたら同意するしかないやろが。)』

『(………………ごめんなさい。)』

 

 

 

 

 


 

 

「■■、頭痛は大丈夫か?」

 

「うん、大丈夫だよ。 このところ、うんともすんとも無い。」

 

成長した■■の隣には同じく成長した□□の姿。

二人は少女と少年から青年へとさらに近づいていた。

 

「そっか。 そいつは良かった!」

 

□□がニカっとした笑いをしては■■はニコリとほほ笑む。

 

「それにしても、あれからずっと一緒ね。 すごい偶然。」

 

少女がニコニコしたままそういうと□□が気まずそうにそっぽを向く。

 

「そ、そうかぁ? ふ、普通じゃね? そ、それよりお前綺麗になったじゃねぇか。」

 

「??? ごめん、最後聞こえなかった。 今なんて?」

 

「な、なんでもねぇよ!」

 

「?????」

 

突然□□に怒鳴りつけられた■■は?マークを頭上に出しながら目を白黒させる。

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

「俺と付き合ってくれ!」

 

「……激突だね?」

 

「もう随分と前からそれとなく言っていたつもりなんだが?!」

 

「…………………………………………えーと?」

 

こうして時折□□が■■に対して素直ではない誉め言葉などを二人が成人間近になってまで続けていたが一向に関係の進展がなかったことにしびれを切らした様子。

 

「つまりその……『付き合う』って?」

 

「そりゃその………………一緒にいたり? 食べに行ったり? 二人でどっか行ったり?」

 

「今までやっていたことと何が違うの?」

 

「んぐ……」

 

■■の純粋な質問に□□が口をつぐんだ。

 

「だから……その……ゴニョニョとか……」

 

「ごめん、今のをもう一度────」

「────だ、だから! 俺が言いてぇのは! 結婚を前提に付き合ってくれ!」

 

「……………………………………………………………………………………あ、はい。」

 

ポカンとした■■はそのまま了承の言葉を告げる。

 

「だ、だよな~。 そんなすぐ返事────え。」

 

今度はポカンとする□□に対し、少女はもじもじしながら頬を赤らめさせる。

 

「いい……のか?」

 

「その、えと、良いとか悪いとかより嫌じゃないからというか私は何を……」

 

まさに『青春』を絵にしたような空気と様子の二人だった。

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

ピィーピィーピィーピィーピィーピィーピィー。

 

社会人ならば、誰もが憎む電子音が暗い部屋の中でベッドスタンドから響く。

 

「う……むぅぅぅぅぅぅ。」

 

唸り声にも似た女性の声がして、バシッとベッドスタンドの上にあったアラームをたたいている間にベッドから成人した□□が出てカーテンを開ける。

 

「うお~、眩しい……」

 

「う~、灰になる~……」

 

ベッドの毛布の中で■■がもぞもぞとする。

 

「いや、吸血鬼じゃあるまいし。 ほら、起きろ。 今日はあのでかいタワーを上るんだろ?」

 

「んあー、そうだった~。 □□は今日も元気ね~。」

 

低血圧だったのか、■■は気の抜けた声と共に出かける支度をする。

 

『チエ、起きてくれ。』

 

「ああ、もう。 起きてるってば~。」

 

「あれ? 急にどうした?」

 

□□が?マークを出して■■を見る。

 

「『急に』って、『起きろ』って言ったんじゃ?」

 

「いや? 俺は何も言っていないぞ? うお?! 時間だ! すまん、先に出ている!」

 

□□を見送った後、■■は目をパチクリとさせながら困惑していた。

 

「(さっきのは何だったんだろう? なんだか、懐かしいような……でも聞いたことがない声。)」

 

『お母さーん! 起きてー!』

 

「今起きるー!」

 

部屋の外から少女の声がしては■■が答え、さっさと私服へと着替えてから部屋を後にする。

 

ベッドの近くにあるドレッサーの上には様々な写真が置いてあり、時間帯は幼い子供のころから今の成人した時までを写し、そのどれもがとある共通点を持っていた。

 

それは全ての写真が祝福(笑顔)に満ちていたこと。




知人と彼の家族がコロナにかかったとの連絡が入り、あまり筆記に時間が取れず大変申し訳ございません……

タイトルを今更変えるのは不愉快ですか?

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