白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

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大変長らくお待たせいたしました、少々長めの次話です。

なるべく何度も読み返しては書き直したりなどをしましたが、上手く内容が伝わるかどうか不安です。 (汗

これほど自分の言語力の低さを呪ったことはございません。 (泣

そしていつもお読み頂き誠にありがとうございます、楽しんでいただければ幸いです。


第174話 Repeating Memories of Everybody

 ___________

 

 ??? 視点

 ___________

 

 時は丁度『三号』が黒いスーツ系の拘束衣を着た藍染を文字通りに食された直後に、白い死覇装姿の藍染の不意打ちによって胸を貫かれた直後へと戻る。

 

 各地で自分と似た容姿、あるいは戦い方をする体調や副隊長、そしては後に穿界門(せんかいもん)を通ってたどり着いた現世組が彼らの戦闘する相手の姿や、半壊と水没した空座町を戸惑いからか、物珍しさからか見ていた時に事態は急変し始めた。

 

 カシャン!

 

 金属がコンクリートに落ちる独特な音が『眼帯京楽』が()()()()『花天狂骨』から響く。

 

「あーらら。 もう終わりかな、こりゃ?」

 

『眼帯京楽』は戦いの最中だというのに、つい先ほどまで対峙していた京楽と浮竹から視線を自分の両手へ向けていた。

 

「『終わり』、だって? こちとら、やっと温まってきたのに?」

 

「そうだよぉ、良かったねぇ~?」

 

「その身体……」

 

 京楽の煽るような言葉に『眼帯京楽』は肩をすくめると、浮竹が『眼帯京楽』の身体と服が徐々にチリとなって大気に乗って消えていく。

 

「う~ん……仕方ないとはいえ、いざとなると不思議な感じだね~?」

 

 その様子は死神なら誰もが見知った光景と酷似していた。

 

 破面や、虚たちが斬魄刀で倒されて消えていく景色と。

 

 ザクッ!

 

「ウォォォォォォォォォォン!!!」

 

 口に咥えていた斬魄刀を地面に突き刺してから、悲しみか憂いが混ざった遠吠えが狛村と対峙していた狼が戦場に響き渡っていく。

 

 まるでそれが合図だったかのように、各々の者たちから緊張感と戦意が引いていき、『眼帯京楽』と同じくチリとなっていく。

 

「その様子だと、分かっていたことかな?」

 

「まぁねぇ。 僕たちは所詮、オリジナルの魂を引き継いだ()()さ。」

 

「『亡霊』、ねぇ……じゃあ僕や浮竹は『幽霊』になるのかな?」

 

「君たちは『()()』だよ。」

 

 そんな『眼帯京楽』に京楽はいつものひょうひょうとした態度で出状の問いを投げると意外な答えが『眼帯京楽』から返ってくる。

 

『亡霊』と『幻影』。

 この二つは最近では一緒くたにされることが多くなっているが根本的には別物である。

 

 例えを上げると『亡霊』とは『過去には在ったモノが現在ではないモノ』。

 

 それに対し『幻影』は『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』。

 

「俺たちが……幻影だと?」

 

「笑えない冗談……じゃないみたいだね、こりゃ。」

 

 浮竹はこの二つの違いを思い浮かべたのか目をわずかに見開き、京楽は『眼帯京楽』のこの返しが仕草とタイミングで()()()()()()()()()()()と察した。

 

「う~ん。 もうちょっと話したかったけど、もうそろそろだね……浮竹。」

 

『眼帯京楽』は消えていく自分の体から浮竹に視線を向ける。

 

「僕の知っている『浮竹十四郎』じゃないけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()。」

 

「ぁ……」

 

『眼帯京楽』は実に無邪気な、心の奥からのニッコリとした笑みになりながら足のつま先から頭部までがチリになり、風に沿って崩れ消えていく様を京楽と浮竹は見送った。

 

「……………………………………京楽────」

「────こいつぁ、色々と裏がありそうだ。 んじゃ、一護クンのところに行くか。」

 

「……ああ。」

 

 今さっき起こったことと、今の状況の整理をし始めながら歩きだす京楽の耳に浮竹の一言が何故か耳に残った。

 

「……やはり()の周りは、多くのことが起きるな。」

 

 その一言が耳を残しながら、京楽はガラリと変わった大気の質を不思議に思った。

 

「(何だいこれは? ()()()()()()()? ……とは違うね、こりゃ)」

 

 

 ___________

 

 黒崎一護 視点

 ___________

 

「やはり『気を許(油断)した瞬間』と『袖下からの不意打ち』を残してよかった。」

 

「………………………………………………」

 

 なんだ? 

 何が……何が起こったんだ?

 そう口にしたかった。

 

 だがなんとなく、この静けさを壊したくないと不意に自分は思っていたのか声を出す気にはならなかった。

 

 その……起きたことをありのまま言うと、『自分とチエを蹴り飛ばした黒藍染が三号とやらに駆け付けたと思ったら白藍染が来て黒藍染が食われた直後に白藍染が()()()()()()()で三号を突き刺して崩玉を抜き取った』、てか?

 

「俺も分からねぇよ……」

 

「なぜだ────?」

「────チエ?」

 

 チエが沈黙を破る。

 さっきの『三号』のような『なぜ』と言う質問を。

 

「うん? 君の質問は、何に対してだい?」

 

「何故、()()()()()()()()()()?」

 

「え?」

 

 驚きに視線を藍染から起き上がった馴染み(チエ)に向け、ここでやっと声を喉から出せたことがきっかけでそのまま言葉を俺は続けた。

 

「どういうことだ?」

 

「藍染はずっと前から、近くにいた。」

 

 藍染が目を細め、面白そうに息を吐き出す。

 

「ほぅ……『母上(三号)』でさえ気付かないように、慎重に慎重を重ねて用心していたつもりだが……」

 

「確かに、『気配』も『存在』も見事消えてはいた。 だが、『意思』までは消せる事は出来なかったな?」

 

「なるほど、確かにそれは盲点だった。」

 

 まさかチエ、『意思を感じた』と言っているのか?

 

「藍……染!」

 

「えっらいエグイ『鏡花水月』の使い方しおってからに……」

 

「黒崎君!」

 

 後ろから声がしてとっさに振り向くと重症の傷を負ったと思われる総隊長の爺さん(山本元柳斎)に肩を貸した浮竹さんや京楽さんに瀞霊廷の護廷、『仮面の軍勢(ヴァイザード)』、果てには空座町の人たちも来ていた。

 

「山本のじいさんに、平子! 井上まで?!」

 

「やはりここにたどり着くか。 流石は『主要人物』たちだ。」

 

 そんな顔の見知った皆が勢ぞろい、集まって来たというのにチエは見向きもせずただ藍染に話かけた。

 

「もう一度聞くぞ、藍染。 なぜ私や三月、一護たちに重国たちを止めなかった? 止めようと思えば、いつでも止められたはずだ。」

 

「『止める』、だと? ()()()()()からだ。」

 

 藍染がニヤリと笑みをこぼし、刀と崩玉を握った両手を左右へと広げる。

 

「これこそが私の望んでいた『想定』だからだ。 いや……正確にいうと、『結末』と呼ぶべきかな?」

 

 藍染は自分の持っていた崩玉をジッと見る。

 その行為だけで周りの人たちから伝わる、ピリピリとした緊張感がまた高まっていくのを肌で感じる。

 

 無理もない。 以前、藍染は崩玉を取り込んで(水色の言葉を借りるが)どチート級の能力を開花させた。

 

 それでも、あの時は俺の『無月』で何とかなったが……

 もし、この二個目の崩玉を取り込んだら────

 

「「「「「「────え。」」」」」」

 

 そう口にしたのは誰だろう?

 俺か?

 それとも浦原さんか?

 山本のじいさん?

 

 いや、恐らくはその場に居合わせていた殆んどの皆かもしれない。

 

 何せ────

 

 

 

 

 

 

 ────藍染は懐から()()()()()()を取り出したからだ。

 

「バ、バカな?! その崩玉は?!」

 

 しかも浦原さんが今までに見たことのない程に動揺していた。

 

 あの出した二つ目の崩玉に何かあるのか?

 

「よく一目でわかったな。 流石は作成者である浦原喜助。 そうだ。 これは私が作り、お前の崩玉を取り込ませた品だよ。」

 

「………………………………」

 

「何か言いたそうだね、諸君? 代弁すると『取り込んだはずの崩玉がどうしてまだ健在』、と言ったところか? 答えは至極単純、『()()()()()()()()()』と答えよう────」

 

 ────ヒュッ!

 

「え?! わ?! っとととと! 投げる前に一言、言って欲しいっス!」

 

 藍染が投げた二つの崩玉を浦原さんが珍しく本気で慌ててそれらを受け止める。

 

()()()()()()()()()。」

 

「どういう、意味じゃ?」

 

 応急処置は終えたといっても傷が痛むのか、山本のじいさんが問いを掛ける。

 

「何、そのままの意味さ。 死神は尸魂界から現世へと魂魄を生物として送り出し、死した魂を尸魂界へと導くことで魂魄の総量をは把握し、バランスを調整する。 だが崩玉があれば、その必要性は無くなるだろう。」 

 

『どういう意味だ?』

 

 そんな俺の疑問を持って顔に出ていたのが他に居たのか、藍染が肩をすくめるような体勢でまた口を開ける。

 

「質問系に変えると、『なぜ死神と虚は争うのか?』

 それは『虚が現世を荒らす悪しき霊体だから』? 違う。

『虚が人間の魂、近親者や霊力の強い者の魂を求める習性がある』から? その様で、根本的には違う。

 答えは、『死神に課せられた使命故に』だ。」

 

「それは違うぞ、藍染!」

 

 いつに増しても声デケェな、狛村さん。

 

「虚は強い執着を持ち、現世に留まり続けてしまった霊! 我ら死神の魂葬が間に合わず、不手際によって生まれてくる哀れな者たちの成れの果てだ!」

 

「そこだよ。 私が言いたいのは、狛村左陣。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?』 そう一人でも、君たちの中でそのような疑問を思わなかったことは無いのかい?」

 

「ぬ?」

 

 藍染の質問に誰もが黙り込んだ。

 恐らくは俺のように、『世界はそういうモノだから』と思ったのだろう。

 

「それも答えてあげよう。 それが意図的に『作られた世界の仕組み』だからだ。」

 

「それが、藍染サンの残した文の『BLEACH』と言う単語っスか?」

 

「そうだ。 その言葉は空想の書物で登場する作の題名で、この世界でのありとあらゆる事の基となった物だ。」

 

「さっきの、『闘争が終わる』と言う意味はどういう事や?」

 

「『尸魂界と現世に存在する魂魄の量を常に均等に』。 その理が『闘争』の原因だ。 死した者の魂魄を保護対象にする為死神たち自身、その魂魄量の対象となることから常に現世は死神の処理できる量を凌駕する。

 それ故に虚は絶えず生まれ、それを死神が鎮圧(事後処理)し、処理が追えずに虚は出現するといった『終わりのないイタチごっこ』が出来上がる。

 どうだい? 何か、間違っていることを言ったかね、諸君?」

 

「藍染惣右介、今ここにいる者たちは貴様の()()()()に耳は貸さん。」

 

「心外だよ、山本元柳斎重國。 

 確かに幻覚などを見せはしたが……私は何時、何処で嘘を『言った』?

 私は最初から今まで嘘は()()()言っていない。」

 

 そこから藍染は誰かが口を挟める前に、以下のことを口にし始めた。

 

「『朽木白夜が素直かどうかはどうでも良い。』 

『阿散井恋次は“順序”の邪魔だった。』

『黒崎一護が卍解を会得していた事は“想定内”だった。』

『朽木白夜から牽星箝(けんせいかん)を“預かっていた”。』

『“憧れ”など曖昧な物で、不確かな感情に過ぎず、“理解”から最も遠い。』

『浦原喜助が護廷十三隊の者たちと共に駆けつけるまでの時間を、黒崎一護たちに延々と崩玉、作成者である浦原喜助のこと、限界強度のことを語り続ける。』 

 流石に最後のこれは間に合わせる為に、私はワザと時間を見計らい、鬼道を行使したがね?*1

 

「まさか、貴方は私が『断空改』を使うのを見越していたと?」

 

「何を知れたことを、浦原喜助。 そうでなければ何故、私がわざわざ詠唱をしなければいけない? ああ、『断空』の重層展開は予想していたが、まさか改造を施すことは意外だったよ、それには敬意を表する。」

 

「まさか藍染、お主……あの時の、『全てが順調だ』という言葉は……」

 

「無論、君たちが拘束する動きと反膜(ネガシオン)のタイミングの事だよ四楓院夜一……まだまだ聞く耳を持たない者たちが居るようだね? 私はこれでも、君たちに『母上(三号)』の存在と忠告をそれとなく(ほの)めかしてきたのだが?

 例えば私が宣言した、『私()が天に立つ』や『初めから誰も()に立っていない』。 『誰も信用するな』、『世界の全てが敵だ。』*2

 これでも耳を貸さないというのなら、まだ私が嘘を言っていない例を挙げて欲しいかね?」

 

「「「「「………………」」」」」

 

 誰も、何も言えなかった。

 多分、ショックを受けていたんだと思う。

 

「沈黙は肯定とみなし、話を続けるとしよう。 とはいえ、次に話し始めるのは私が雛森君に言ったことに関係するだがね?」

 

「え? …………………………ぁ。」

 

 視線を集め始めた雛森は身をよじり、思い当たったような顔をする。

 

「そうだ。 『君の知る“藍染惣右介”など、()()()()()()()()()()()()()』。

 これも言葉通りの意味だ。」

 

「…………浮竹、僕……嫌な連想をしたんだけど?」

 

「俺もだ、京楽……」

 

 なんだ?

 浮竹さんたちの顔色が悪く────

 

「────そうだ。 ()()()()()()()()()()()()()。 私は『藍染惣右介』という役割(ロール)を課せられた存在でしかない。」

 

 藍染は周りを見渡してから言葉を続けた。

 

「そもそも、ここに居るほぼ全員がこれに値するがね。」

 

「なるほどネ。 それが『違和感』の正体だったカ。」

 

 心なしか、藍染は一瞬だけ俺に視線を送ったような気がしたが、涅マユリが言ったことで注意がそっちに向く。

 

「ん? 涅マユリ、君が感じていた『違和感』とは?」

 

「何、他愛ない事だヨ藍染惣右介。 私が感じていた違和感は()()()()()()()()()()()()()()()()()()ダ。 それをずっと私は物心ついたころから感じていたが、『もう一人の(マユリ)』と『やけに五月蠅いネム』と対峙してから、ある種の確信へと変わっタ。

 それは『()()()()()()()』という、本当に他愛のないことサ。」

 

「マユリ様、それは────」

「────ネム、黙れ。」

「……………………」

 

 ネムが何かを言いかけていたのを、マユリが彼女の名を呼んで黙らせるのを見て藍染は静かに見ていた。

 

「なるほど。 君は浦原喜助とは違う方向で、『何も信用していない』部類だったね。 ()()()も。 ショックだったかね?」

 

「まさカ。 どこぞの自称天才自信家(浦原喜助)ではあるまいし、第三者の視点から上に全てを見ているだけダ。 逆に私は逆に腑に落ちたことで安心感を覚えたヨ。 それで? さっき君が言った『望んだ結末』とはどういうことだネ?」

 

「現世、尸魂界、虚圏を含めた『三界』が、どれだけの年月を重ねてきたと思うかね? 推定や教科書では『誕生したのは今からおよそ100万年前』とされているが、実際にはせいぜい()()()()()だ。」

 

 周りの者たちは藍染の行ったことに、様々な反応を出す。

 

『ほウ?』と言いながら目を細めるマユリや浦原のような探究者たち。

『バカな!』と不定の声や表情と信じられない者たち。

『は?』、と呆ける者たち。

 

 そんな彼らを藍染は見て、空いていた左手で古ぼけた本(?)を取り出す。

 

「君たちの反応はご尤もなものだ。 安心したまえ、私ですら()()()()()()()を読んでも半信半疑だったのだから。」

 

「日記……だと? ……その『神隠し』を施したそれがか?」

 

「「「「「え?」」」」」

 

「『神隠し』……なるほど、君はそう『これ』を呼ぶのか。 確かにこれは伊勢家に代々受け継がれた『神剣(しんけん)八鏡剣(はっきょうけん)』の技術を応用した────」

「────どういうことか、説明してもらえないかい?

 

 

 ピリピリどころかトゲトゲしいまでの言葉を言いながら今までの比ではない圧力(プレッシャー)が京楽から発せられる。

 

「隊長? それに……伊勢家代々とは────?」

「────『神剣(しんけん)八鏡剣(はっきょうけん)』。 伊勢家が代々受け継いできた、祭事に用いる刃のない剣。 神と対峙し、神の力をその身に受け、八方へと振り撒く力があるとされている特殊な斬魄刀だ。」

 

 ギュ。

 

 京楽が力強く己の斬魄刀を拳が白くなるまで握りしめていた。

 

「藍染、君はどこからそれを聞いた?」

 

「無論、()()()()にだよ。」

 

 京楽がいつもかぶっている笑みの仮面はこれを聞き、一瞬にしてスンとした無表情なモノになり、藍染は手に持っていた古ぼけた日記をパラパラと懐かしむようにページをめくっていく。

 

「この日記は『神剣(しんけん)八鏡剣(はっきょうけん)』の刀身に施された『神の力を反射する』技術を用いて『存在』している……流石は稀代の天才たちの共同作品だ。」

 

 藍染の視線が向けられた浦原とマユリは互いを見て、自分へと指さす。

 

「とはいえ、それは私の予測の範疇に過ぎない。 少しだけ、()()をしようではないか? 簡略しつつも長くなると思うが許してほしい────」

 

 ────藍染が口にしたのはおおよそ『原作(BLEACH)』そのままの流れだった。

 

 昔虚に襲われた黒崎一護が朽木ルキアと会い、死神と虚や破面関連の出来事に巻き込まれていく物語(ストーリー)

 

 これらを一護は()の中で織姫やコンから聞いた内容とおおよそ一致していた*3

 

 そして藍染の話はユーハバッハ率いる『見えざる帝国』の滅却師軍団侵略へと続き、そのユーハバッハの最終目的が実は滅却師が返り咲くことではなく『霊王を取り込み現世、尸魂界、虚圏を分ける境界線を取り除いて全ての人間を死の恐怖から解放すること』。

 

 そのユーハバッハもやがては一護によって打倒され、残滓が消える『10年後の世界』へと至った。

 

「それのどこが『昔話』やねん?」

 

 そこにリサがジト目でドライな口調で口をはさむ。

 

「肝心なところはここからだよ、矢動丸リサ。 10年後、()()()()()はユーハバッハの残滓を取り込み、それによって世界は終わろうとしてしまった。」

 

『まさか』と思い、一護の胸はざわめく。

 

「とある少年?」

 

「死神、滅却師、虚の力を持った『黒崎一護』と、霊王の一部を取り込んで人間でありながら最も神に近い力を表現することができる『井上織姫』の間に生まれた『黒崎一勇(かずい)』だ。」

 

「はぇ?」

 

 織姫が気の抜けた声を出すが、藍染はそのまま喋っていく。

 

「より理解しやすくする為に現世、虚圏、尸魂界の『三界』は断界(だんがい)という海の中で浮かぶ島と考えてみたまえ。 そしてその『海』というのがまさに本来霊王が承る『天秤』の役割だ。 

 だが多種多様の血筋と力を受け継いだ『黒崎一勇』によってその天秤はやがて傾き、彼が望まぬとも『三界』は崩壊した。 だがこの時、『とあるモノ』が世界(箱庭)を創り直した。」

 

「あ。」

 

「どうした一護?」

 

 思わず口を開けた一護にチエが視線を移す。

 

「……………………まさか、あの()がそうなのか?」

 

 一護の脳裏に浮かんだのはかつて見た夢の内容。

 廃墟になったような空座町に、尸魂界で見た山、虚圏の砂漠らしきものが見えた夢。 *4

 

 これを見た藍染は憐れむような笑みを彼に向ける。

 

「そうか。 やはり思った通り君は私たちと違い、『コピー』ではなく『オリジナル』。 時が流れて『物語(ストーリー)の終盤』に近づけば近づくほど記憶の混在化が加速しているのか。」

 

「『オリジナル』……それは────」

「────さっきも言ったように、この世界は『BLEACH』を基にして作られた『箱庭』だ。 

『三界』は崩壊し、一度はすべてが無と帰り、やがて『三界』は完全に再現されてから物語(ストーリー)は再開される。

 それが、何度も繰り返され(ループし)ていると『前の藍染たち』はここ(日記)に書き残している。」

 

「「「「「……………………………………………………」」」」」

 

 誰もが耳を疑い、理解(或いは不定)しようと考えを巡らす。

 

「『前の藍染たち』は、その再現をしていたのが倒されて亡くなっていく者たちの霊子をある程度まで吸収し終えた『母上』……ここに横たわる女性の姿をした者だ。 それに気が付いた『前の藍染たち』は、様々なことをしてこの何度も繰り返され(ループす)る連鎖を終わらせようとしたがことごとく失敗し、『必ず無間に罰される』ことが判明する他に『物語(ストーリー)順序(イベント)』が避けて通れないモノとも残されている……………………問おう、君たちは一度も今まで起きた出来事がすんなりと解決したり、物事が自然と進んだことや都合の良い事が起きたことに疑問を感じなかったかい?」

 

「「「「「……………………………………………………」」」」」

 

「それらは『偶然』などではないよ? 例えば……」

 

 そこから藍染が次々に言ったのは以下のモノのような事例だった。

 

『黒崎一護が五歳の時に虚を見かけて、母親と共に()()襲われる』。

『両親から離れて暮らす井上昊は()()事故に会い、後に虚となって黒崎一護の前に現れる。』

『茶渡泰虎は()()ギター仲間から喋るインコを預けられ、ルキアと共にシュリーカーと対峙する。』

『石田雨竜は過去の遺恨に囚われて撒き餌を使い、井上織姫と茶渡泰虎が完現術者として()()覚醒する。』

『どれだけ強くなろうとも黒崎一護は朽木白哉と初の戦いで必ず鎖結(さけつ)魄睡(はくすい)を貫かれて()()敗れ、朽木ルキアは()()瀞霊廷に連れ戻される。』

『藍染が離反したことが判明し、護廷の隊長各が動いてもあと一歩と言うところで()()取り逃がしてしまう。』

『崩玉を取り込んだ藍染は他者を圧倒するも、“無月”を会得した黒崎一護には()()敗北する。』

 

()()』。 『()()』。 『()()』。 『()()』。 『()()』。 

 

「似つかわしくないっスよ、藍染サン。 それらの出来事をまるで、『運命(うんめい)』のように語るなんて。」

 

 藍染はまるでそれらが決定事項かのように話し続けていく中、一人の男性が異を唱える。

 

「そうだ。 これらは全て、どんなに世界が変わり、どんなに新たな生命を受け、どんな時空に存在しようとも……条件さえ合ってしまえば変えられない『宿命』だ。

かつての私(前の藍染)』は『何度も繰り返される箱庭内の物語(ストーリー)』という真実に気付き、これに抗い、敗北した。 それが、『()()の私』が記入した内容だ。」

 

「……………………どうしてそう言い切れる、藍染。」

 

「簡単なことだ、東仙要。 恐らく、『箱庭』の順序から離れ始めたのを機に目をつけて精神的に壊したかったのだろう。 その時から『藍染惣右介』としての記憶は受け継がれ、『自我』を保つために記入を再開している。

 そこから読み取れるのは『藍染惣右介』は何度も抗い、敗北し、世界は後に崩壊した。 ()()だ。

 だが、とある者たちの登場によって前例のない事が起きた。」

 

 ここで藍染はチエ、そして一護を見る。

 

「君が『虚に襲われて死ぬ運命』だった筈の黒崎真咲を『救った』ことだ。」

*1
31話より

*2
71話より

*3
141~143話より

*4
69話、122話より




『我々が知覚していることや考えていることを意識することは、我々自身の存在を意識することだ。』

-アリストテレス

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