白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

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お待たせ致しました、短めですが次話です。

いつもお読み頂き誠にありがとうございます、楽しんでいただければ幸いです。


第176話 交差する『さいきょう』

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 ??? 視点

 ___________

 

 ドカッ!

 ジャリッ!

 バキッ!

 

 さっきから場を静まり返させることを拒むような鈍い音と地面を踏み抜くような勢いのついた足の踏ん張りが、一護たちの前方で激しい攻防を続ける二人から続いて聞こえて来ていた。

 

 一人は男性。

 彼は持ち前の体格(186cm)体重(74kg)を最大限に生かす『ゴリ押しパワーで防御の上からでも確実にダメージを与える』スタイルの『白打』を。

 

 彼の相手をしていたのは女性で、先ほどの彼とは体格(160cm)体重(42kg)と少々劣る彼女は力と力の対抗ではなく『相手の攻撃を受け流しながら攻勢に出る』といったカウンター染みた動きをしていた。

 

 これだけで一見すると女性の戦い方のほうに軍配があるように思われるが、二人の違いはまさにその一軒(パワーか技術)だけだった。

 

 藍染はチエより多くの打撃を受けていたが、持ち前のタフさでそれら覆すような一発一発を狙い、ここぞというところで当てていた。

 

 ガッ! バタン! ヒュン!

 

 チエのカウンターで突き出した拳を腕ごと掴み、彼女は地面に押し倒されそうになるが掴みから上手く抜け出し、その勢いで体を転がせて立つ。

 

 「フゥ……フゥ……フゥ……」

 「ハァ……ハァ……」

 

 双方の息遣いは僅かにだが深く、出来るだけ酸素を肺に取り込んで、出来るだけ二酸化炭素を最小限の動きで試みながら互いを警戒していた。

 

 どれだけ熟練の戦士や猛者といえども、気を常に張り詰ませる極度の緊張状態の上に激しい体の動きでは肉体的にはもちろん、精神的ストレスも通常のものとは比べ物にはならない。

 

「フッ!」

 

 そんな時、先に動いたのはチエ。

 

 彼女はさっきから続けていた手足の左右を使う戦法から、足をメインにするような足技を繰り出し始め、藍染は腕と手を使ってガードをする。

 

「ッ?! グッ!」

 

 だがチエの攻撃は緩むことなく、やがてガードし続けるのが得策ではないと藍染は思ったのか今度は受け流そうとする。

 

 ここから彼女はコマのように、蹴りの勢いを次の回転蹴りに繋げる形でさらに加速していく。

 

 ガシッ!

 

「ッ?! プァ?!」

 

 ここで藍染は予測していたかのように彼女の足を手で掴む、チエの攻撃が止まったこの瞬間に藍染は彼女の顔を殴って怯ませ、首に両手の手刀でチョップを当てる。

 

「ゴガ?!」

 

 人の構造をしていればどれだけの達人や鍛錬をしていても、弱点は存在し、まさにその一つが首である。

 

 急に呼吸困難になったチエは思わず視線を藍染から話しそうになり、左手を首に添えようとしたところを藍染に殴られ、彼の追撃の拳を真っ向から防いで腕が軋むのを直に感じて耳朶に届く。

 

 ヒュ────!

 ────ドン!

 

「────ぁ、かㇵ────ッ!!!」

 

 蹴りをするには近すぎた為、彼女は肘打ちを突き出しながらを距離をとろうとしたが藍染が至近距離になったこの好機を見逃すわけがなく、藍染の拳がお腹にめり込んでチエは言葉にならない声を出しながら、意趣返しのように上げていた手で藍染の顎を殴る。

 

 が、さっきから呼吸が乱れたまま動いたことが今になって表れたのか、チエは足に入れっていた力が思わず抜ける。

 

 ガシッ!

 ドッ! ドッ! ドッ!

 

「グッ! ガッ! ガハ?!」

 

 顎を殴られた藍染はふらつく頭を左右に動かしてこの状態のチエを見るとすかさず彼女のきつく縛っていたポニーテールを掴んで膝を曲げさせたまま、お腹を殴って無理やり立たせて髪の毛を引っ張って仰向けのエビぞりになったチエのむき出しになった喉に、第二の肘打ちを下してから手を髪の毛を離しざまに、第三の膝蹴りを食らわせた。

 

 狙いすましたのか偶然なのか、結果的に藍染の攻撃でチエは立ったままだった。

 

 ドッ! ドッ!

 

「グッ、ガッ! ぬん!」

 

 だがさすがに何度も頭部周辺に打撃を連続で受けたのが効いたのか、フラフラしながらクリンチを決めるかのように藍染に抱き着き、今まで距離を保とうとしていたチエの行動に戸惑いを見せた藍染の脇腹に膝蹴りをお見舞いする。

 

 立った二撃とは言え、女性とは思えないほどの力と的確に人体の弱点である脇腹を狙ったその攻撃に藍染でさえも苦しむような声と表情を出し、チエを自分から突き飛ばす。

 

「ぬえぇぇい!」

 

「ふん!」

 

 少し距離が空くとチエの右ストレートを、藍染は頭突きを繰り出す。

 

 ドガッ!

 

 二人の攻撃が衝突し、顔を歪ますチエの腕が後ろへと吹き飛ばされる。

 

 ガッ!

 ゴリッ

 

 本来、頭部も人体の弱点の一つだがとある行動で最大の武器へと転換しやすい場所でもあったことを、藍染は証明するかのように頭突きで勢いが止まったチエの死覇装を掴んで今度こそ彼女の顔に頭突きを当てると、鈍い音が耳朶とともに周りへと響き渡る。

 

 ドガッ!

 

 ビリッ! ビィィィィィィィィィィィ!!!

 

 三度目の頭突きをしようとする藍染の額に、チエはカウンターの回転蹴りをお見舞いすると今度は後方へと思わず怯む藍染の死覇装を掴んで頭突きを当てると服が破れてほつれていく音がして彼は顔を片手で覆ってしまう。

 

 回転蹴りの残った勢いを生かそうとチエの飛び膝蹴りを指の隙間から見た藍染の蹴りが彼女の腹に直撃し、二人の間にはまたも距離が開く。

 

 藍染()()()は横目でちらりと自分の死覇装が破れていたことに気が付くと躊躇なくそれを脱ぎ捨てて、殆どの死神が見慣れていない構えを取ってから間を詰める。

 

「(なんや、あの構え?)」

「(白打に似ているが、流儀がごちゃ混ぜになっておるようなものじゃの?)」

「……………………『初の白打』か。 藍染め、どこで知った?」

 

「「「「「え?」」」」」

 

 今まであまりにも流れる動作のような攻防に思わず見惚れて呆け気味だった者たちが、山本元柳斎が口にしたことに平子と夜一だけでなく、周りの者たちも注意を彼に向けた。

 

「先生、『初の白打』とは?」

 

「あー、厳密に言うとだね浮竹? 山じいと右之助爺さんが共同で作った格闘術なんだ。 でも、あまりにも『相手を殺す』事に特化し過ぎた上に型が多くて応用が利きすぎる上に鬼道や漸術が上手く使えない者でも、立派に対人戦力()()が上昇してしまうから四十六室に禁術指定されたんだ。」

 

「「「「「(京楽(さん)が『さん付け』?!)」」」」」

 

「……つまり何時もの如く、保身で封印された『便利すぎる技術』だネ?」

 

「そうだよね、涅。 一時は刑軍に習わせる動きもあったけど怒った山じいが有耶無耶にしてそれっきりさ。 だから『初の白打』の使い手は山じいと右之助爺さんに二人しかいなかったと思ったのだけれど……」

 

 そう不思議がる者たちを横に、一人が違和感を脳裏に持っていた。

 

「(これは……白打と、()()()()を模範したものか────)────グァ?!」

 

 藍染惣右介の攻撃が緩んだ隙にチエがジャブ染みた拳を後方へ移動し、避けていた藍染が動きで自然と振りかぶった拳をチエに当てる。

 

 そのまさに『一撃必殺』とも言える拳を受けたチエは思わず地面に背中を(一瞬だけとはいえ)着いてしまい、彼女は上手く転がるような動作で腰を低くして体勢から立ち上がる。

 

 そのまま二人はさっきとは打って違う、至近距離の攻防を繰り返す。

 

 一人が攻勢に出て、もう一人がそれをどうにかしていなす。

 

 ドガッ!

 

「「ガヵ?!」」

 

 そんな中、藍染惣右介とチエの双方が『今』と感じて繰り出したパンチが互いの頬に当たる。

 

 俗に言う、『クロスカウンター』の絵図だった。

 

 二人の体は後ろへとよろけ、またも互いの隙を狙うかのようなフェイントなどを混ぜた動きをする。

 

 さっきまで『パワーでごり押し』をしていた藍染惣右介が力の上に小技を混ぜた動きは少なからず、彼の一撃一撃を確実に当てさせるには十分だった。

 

「プッ!」

 

 ビチャ。

 

「ふん!」

 

 やがてチエは口に溜まった血を吐き捨て、さっきから服を掴んでは攻撃に転じた藍染惣右介によってボロボロになっていた死覇装を今度は彼女が脱ぎ捨てる。

 

 互いに着物姿になった二人は隙を伺いながらジリジリと互いに全神経を向ける。

 

 

 


 

 ___________

 

 異界の根源星 視点

 ___________

 

 目覚めると荒野の中で立っていた。

 

「………………………………え?」

 

 何を()っているのかわからないと思うが、ありのまま起きたことに順序をつけるわ。

 

 一、『自分(三号)』から見事『聖杯』を取り返す為に『別側面の自分(コピー)』たちをけしかけた。

 

 二、その隙に真アサシンの宝具、『妄想心音(ザバーニーヤ)』で『心臓(聖杯)』のコピーを作り、物理的器を破壊して砕けた際に放出した力の粒子()を吸収。

 

 三、気が付くと荒野の大地に立っていた。 ←今ここ

 

「いや……この個体(自分)がいうのも何が何だか────」

 

 ザ。 ザザザザザザ。

 

「────ん?」

 

 ふと、ノイズが脳と視界に混じって新たな情報が直に備え付けら(インストールさ)れ、覚えのない声が聞こえてくる。

 

『ほう! おんしから懐かしい気配が感じると思えばまさか“母上”だったとはのぉ!』

 

 脳裏に浮かんだ文字は『豪快そうに見えて実は一番の合理性の備わったハゲ頭に顎ヒゲ』。

 

「……誰? この個体(自分)は……()()()()。 でも『記録』には……ある────?」

 

 ザザザザザザ。

 

『────あ゛? この女がヒゲジジイの“母ちゃん”だぁ?! 冗談はよせよ! どう見てもテメェを産めるような安産型じゃねぇか!』

 

 さらにノイズが聞こえてくると今度は『面倒見が良く、思慮の深いテンプレ不良風リーゼント』に、見知らない筈の光景を『知っている』という違和感がこみ上げる。

 

()()()()。 この個体()()()()()。 なのに『記録』にある?」 

 

 襲ってくる吐き気にお構いなく、さらにノイズが大きくなって脳裏に浮かぶノイズが鮮明になっていき、今度は『知らない(覚えている)光景』と自分の(知らない)声が混ざる。

 

『まぁまぁまぁ! よく食べる子ねぇ?! バラバラに破裂したら名前を呼んで貰って蘇生するからねぇ?!』

『いや、自分……そこまで食う気はないッス曳舟(ひきふね)さん。』

『お前でも畏まるんだな?』

『うっさい一護。』

 

 浮かんできたのはどこか豪快な宮殿のような場所でふくよかな女性と一護に受け答えをする光景。

 

「あ……うぁ……ぁ?」

 

 ザザザザザザ。

 ザザザザザザ。

 ザザザザザザ。

 

 猛烈な不愉快感に頭を抱え、『整理(処理)』しようにもどんどんとノイズは加速して(大きくなって)いき、色んな場面が旧型のフィルムロールのようにひっきりなしに流れる。

 

「誰? 誰なの? 誰の『記憶』なの?! これは、この個体()のじゃない! これは……これは……これは?!」

 

 流れていく景色は最初、瀞霊廷のどこからしい場所で大きな団欒が宴気味に笑いあう姿があった。

 

 そこには死神、破面に普通の人間の姿もあった。

 

 だがそれも場が流れていくうちに一人、また一人と消えていき、笑顔もやがて大きなものからみるみると小さくなっていった。

 

 数が半数になったころには誰も笑顔ではなくなり、周りの建物も時間で老化したような錆び付いたモノへと変わっていく。

 

 そして加速していくその景色を遮るかのように自分ではない自分の声が聞こえた。

 

()()()()()()()。』

 

「……………………………………そうか。 そういうこと、だったの?」

 

 ピンと何かが腑に落ちるような、あるいは点と点が線でようやく繋がったような気持ちが膨れ上がる。

 

()()()()()()()()()()と言うこと?」

 

 今度この個体()の脳裏に浮かべたのは『黒崎一護(見知った知人)』たちの姿。

 

「でも……もしそれが本当なら────」

 

 ギギギギギギぎぎギギぎギぎぎギギぎギぎぎギギぎギぎ!!!

 

 「あぎぎぎゃがあぁぁぁぁぁぁ?!」

 

 突然脳を耳から侵入して攻め込むような感覚と今まで感じたことのない、原子の一つ一つが()()()むしり取られる痛みと聞こえてくる機械的な文字で予測が確信へと変わる。

 

再起動中にエラー発見。 プログラムに異常感知。 初期化を行います。

 

「ギギギぎぎょエエええ?! (こ れ    は        ?!)」

 

エラー発生。 初期化の拒否を確認。

 エラーの解析を行います。

 ……………………

 ……………………

 ……………………

 解析結果、覚醒したエラーによる妨害を感知しました。




『すべての人間の行いは対等であり、すべては失敗する運命にある。』
ーサルトル

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