白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

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大変お待たせ致しました、次話です。

オリ設定、独自解釈、ご都合主義三人衆がたんまりと満載しております。
ご注意くださいますようお願い申し上げます。

いつもお読み頂き誠にありがとうございます、楽しんでいただければ幸いです。

5/20/22 22:00
誤字修正いたしました。


第178話 もしものifが混ざり合ったPossibilitiesの終結 1

 ___________

 

 黒崎一護 視点

 ___________

 

「……………………………………………………」

 

 周りは地鳴り以外、静かだった。

 

 誰もがスタスタと歩いてその場を離れていくチエの背中姿を、ひと際大きな建物の瓦礫の角を曲がるまで目で追っていた。

 

 多分、他のやつらはタツキに答えたアイツの言ったことにショックを受けたのだろう。

 

『どうにか、ならねぇのかよ?! アイツら達なら、なんとかさぁ?!』

『あいつらでは無理だな。 世界の崩壊はもう始まってしまっている。』

 

 そう様々な隊長や破面に滅却師たちが勢ぞろいいたのに『無理』と断言したことを。

 

「“残された時間を────”」

「“────思うがまま過ごせば良い”、か……」

 

 誰かが互いの言葉の続きを言い、何人かは蒲原さんや涅マユリを見る。

 

 それが果たして現況の打破からの期待からか、何かにすがりたいが為か、あるいは視線が隣人に釣られたのか。

 俺にはよくわからなかった。

 

 さっきから、どこかで引っ掛かりを感じさせる違和感の正体を探ろうとしていた。

 

「……え? ()()?」

 

 浦原さんからいつものおちゃらけた態度と口調はなく、純粋に呆気に取られ────

 

「(────てか “アタシ”じゃなくて“ボク”って今、言わなかったか?)」

 

「お主の事じゃ。 何かあってもおかしくは────」

「────え? 流石に『霊王が楔として機能しているから世界の崩壊進行を防いでいた』という仮説が見事外れたのでかなり動揺している上にいつもは暴力的で短期で人前では気丈に振舞う夜一さんからの過大評価はちょっとボク的には内心的に嬉しいですけど────?!

 

 「誰が暴力的じゃ?!」

 

 急に早口になった浦原さんを夜一さんが襟を掴んで身体を持ち上げる。

 

「(…………あっちが浦原さんの素なのか。 いや、それよりもだ。)」

 

「いや。 前提が変わっているだけで、浦原君の仮説は大方合っているよ。」

 

 ここで突然、藍染が横たわったまま口を開いて注目を集める。

 

「えらいこっぴどくやられたのぉ、藍染?」

 

「僕をソウスケと呼んでくれ、平子()()。」

 

「さ、“さん”付け……やと?」

 

 平子の皮肉めいた言葉に藍染────『ソウスケ』の腰の低い(畏まった)態度にびっくりするが、一護は自分の考えに耽っていた。

 

「(何だ、俺は何に引っかかっている?)」

 

「あぇ?」

 

「あらま。 こらびっくりやわ。 五番隊の隊長やってた頃によう似てますなぁ~。」

 

 このような事態でも平常運転でまったく表情を変えず、相変わらずの薄笑いを市丸ギンが浮かべる。

 

「そうかい? ……君がそういうのならそうなんだろうね。」

 

「そっちが“素”なんやねぇ~?」

 

「ボクは良い演技者を見習ったからね……」

 

「では“ソウスケ”とやら。 さっきの言葉から推測するとあの『(三号)』が霊王の代わりをしていたと言いたいのかネ?」

 

「そう考えれば、辻褄が合うだろう?」

 

「藍染惣右介……いや、惣右介(ソウスケ)じゃったか?」

 

「総隊長……」

 

「師匠の言ったように、『時間を思うままに過ごせ』と行動するのならお主の知っていることを喋ってもらおうかの?」

 

「(そうだ。 あいつは“思うままに過ごせ” と言った、違和感はそれか?)」

 

「……そうだね。 もうこの際だ、語るとしよう。 僕の……(過去の藍染)たちが一人で抗った記録を。」

 

 そこで一護は何気にソウスケ(藍染)へと話しかけた山本元柳斎に視線を移すとハッとしたような表情に変わる。

 

「あいつ────!」

 

 そう怒るような声を自分に言い聞かせ、一護は立ち上がって地面に落ちていた刀たちを拾い上げてから走る。

 

 

 


 

 ___________

 

 ??? 視点

 ___________

 

『戦争』。

 

 それは既に様々な『競争』という形で自然界にあったが、『人類』と後に呼ばれる獣がある日を境に『知恵』とそれに伴う『技術』を身に付けたことによって『競争』が『戦争』へと激化した。

 

 理由が『人類という種の存命』から『種の存命』へと変わり、やがて()()()理由をつけては『戦争』を人類は続けた。

 

 それが自分たちの『信仰』や『宗教』であれ。

『巨悪』と定めたモノに対してであれ。

『自国の領土拡大』という、彼ら自身が設定した『(国境)』の為であれ。

 異なる意見や才での『異端』であれ。

 あるいは『保身』の為の『虐殺』であれ。

 

 人類は増殖と総減を繰り返しながら、あるいは繰り返すために『戦争』を続けてきた。

 

 無限とも呼ばれる闘争を彼らは続けた。

 

 もし彼らの住む『地球』を一つの生命体と称するのなら、人類はさながら地球を蝕む『菌』である。

 

 そして第三者の視点で地球での出来事を見ていると仮定すれば、ここに来て疑問が浮かび上がるだろう。

 

『どうすれば戦争は終わる?』

 

 それもそう。

 (地球)の資源も『無限』ではなく『有限』と()()()()()()()

 

 ならば────

 

 

 


 

 ___________

 

 『渡辺』チエ 視点

 ___________

 

「ッ。」

 

 チエは頬にチクチクとする感覚に意識をすると、砂や土まみれの地面に前のめりに倒れていた状態に気が付く。

 

「(…………………………………………歩いていた時に、気を失いかけていたか。)」

 

 彼女はボーっとさきほどから微睡へと誘う意識と鉛のように重い身体に気合と力を入れて起き上がらせようとする。

 

 意識ははっきりとするものの、軋む身体の指が僅かに動く程度だった。

 

「(動け。 私にはまだ、『黒幕(元凶)を倒せ』と頼まれたことが残っている。 動け。)」

 

 ザ、ザザ。 ザザザザ。

 

 チエの身体に痛みが生じ、徐々に腕と手が身体を起き上がらせる為に地面の上を滑っていく。

 

「((三号)の思惑で()()()()()()()とはいえ、この身体はここまでヤワでは無い筈。)」

 

 グ、グググググ。

 

 やがて位置についた腕の筋肉に、脳からの信号がタイムラグ付きで届いたかのように重苦しく震えながら頭部と上半身を起き上がらせていく。

 

「ぁ。」

 

 身体を起き上がらせ、ここで彼女は呆気に取られた()を出す。

 

「(神具()を持ってくるのを忘れてしまった。)」

 

 いつ如何なる時も持ち歩き、彼女の半身とも呼べるもの。

 さっきソウスケ(藍染)と対峙して初めて手放したからか、今更ながらそのことに気付く。

 

 このことに気が抜けてしまい、彼女の上半身はまたも地面へと落ちていく。

 

「(不甲斐ない────)」

 

 ────ドッ。

 

「………………………………………………?」

 

 彼女はまた瞼を閉じかけたが、予想していた地面と衝突する感覚ではないことにゆっくりと目を開ける。

 

 左右の腕に妙な感覚を感じ、そちらに目を向けるとニカッと笑っていた一護の顔があった。

 

「よ。 二度目だな?」

 

「……………………………………」

 

 反対側を見ると────

 

「────やっぱ自分一人で何かしようってか?」

 

 今度は日番谷がいた。

 

 本来(133cm)の彼ならばチエ(160㎝)の腕を支えることなどを到底できない芸当であるが、今の彼は幾分か能力的にも身長的にも成長していた。

 

「ほい。 これ、忘れているぜ?」

 

 一護が手に持っていたのは二本の刀、チエが『神具』と呼んでいたもの。

 

「……………………………………………………」

 

 チエは口を開けるが声が出なかった。

 

「いや、“何で”って聞かれてもな? 強いて言うなら、お前が嘘をつかない性格だからか?」

 

 まるでチエが言いたかった『何故』という問いに答えるような一護をチエは?マークを頭上から出す。

 

「ん? また“何で”って……お前自身が言ったんじゃねぇか? “あいつらでは無理だ”って。 つーことはよ? ()()()()()()()()()ってことじゃね?」

 

「……………………………………………………………………………………」

 

 ここでチエがキョトンとするような表情になる。

 

「10年間、一緒にいたのは伊達じゃねぇぜ? てか冬獅郎が先に動いていたのにはびっくりだな。」

 

「どういう意味だよ、そりゃ?」

 

 颯爽と日番谷は呼び捨てにされたことより、指摘された内容のほうが大事の様子であった。

 

「で? オレたちに何か手伝えることはあるか?」

 

「結局お前もチエの為に来たんじゃねぇか冬獅郎。」

 

「るせぇよ、黒崎。 で? 何をするつもりだったんだ?」

 

「…………………………………………私は穿()()()を通るつもりだった。」

 

 チエは何とも言えない感覚が胸の奥に生まれるが、戸惑うことなく上記の言葉をする。

 

「「え?」」

 

 そして今度は日番谷と一護が呆気に取られるがチエは言葉を続ける。

 

「無論、さっき皆が居た近くの物ではない。 ここがかつての空座町の一部ならば、浦原商店の地下にあるものが健在ならばそれを使う。」

 

「成程、それならば私の出番ですな。」

 

 「「うおわぁぁぁぁぁ?!」」

 

 いつの間にか気配もなく背後に立っていた鉄裁に日番谷と一護が裏返った声を出しながら体をビクッ!と跳ねさせる。

 

「それに確かに姿かたちは違えど、ここは空座町。 そして浦原商店はすぐそこですぞ。」

 

「案内してくれ、鉄裁殿。」

 

「お前、何でびっくりしねぇんだ?」

 

 チエは日番谷をジーっと見てから口を開けた。

 

「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………わぁ。」 ←棒読み

 

 「白々しいんだよ! 何だよその下手糞な演技は?! 朽木(大根役者)か?!」

 

 余談であるが、その時白哉はクシャミを必死に止めたそうな。

 

 

 ___________

 

 ??? 視点

 ___________

 

 

 上記から数分ほど歩いた先には明らかに外側だけが老化した浦原商店らしき建物。

 そして壊れて車体中がさび付いた軽トラックを横通り、中に入ると地下へと続く梯子。

 

「さすがは店長! 半壊し、水没してもお店が健在とは────!」

 

 ドシッ!

 

 「────のわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」

 

「早く行け。」

 

「……………………おい黒崎。」

 

「んだよ冬獅郎?」

 

「普通は蹴落とす前に声をかけねぇか?」

 

「ああ。」

 

「本当にチエちゃんって朽木さんに似ているね!」

 

「でも、今のはあの人が悪いとと思います。」

 

「で、ナチュラルに井上と……………………ええっと、メロンp────」

 「────雛森です────!」

「────“雛森”も付いて来たんだな?」

 

 ここでの『浦原商店』らしき場所に歩いている間、一護が言うようにいつの間にか付いて来た織姫と雛森。

 

 そして二人はチエの治療をし、彼女は鉄裁を蹴られるまで回復していた。

 

「だって黒崎君、急に走り出すんだもん。」

 

「私はシロちゃんが走って────」

 「────ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」

 

 雛森の声をかき消すかのように日番谷が叫ぶ。

 

「「「(“シロちゃん”……)」」」

 

 だがチエ、一護、織姫の三人には既に聞こえていた。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 まずは女性陣、そして男性陣が梯子を下りると鉄裁がすでに穿界門を設置していたことを見る。

 

「「うわぁ…………」」

 

 これを見た日番谷と雛森は純粋に(冤罪とはいえ)追放された者たちが所持していたことに感動した。

 何せ穿界門は普通、技術開発局が数十名でやっと作るもの故に。

 

うわぁ…………」

 

 逆に一護の脳裏に浮かんだのは今でははるか過去の出来事のような慌ただしい『ルキア奪還作戦』だった。

 

「なんだか、懐かしいね?」

 

 僅か一年と少し前の事だったが、織姫も一種の感動に浸っていた。

 

「……………………………………そうだな。 鉄裁殿、()()()()?」

 

「ええ、()()()()()()とも。 ()()()()私は案内しました」

 

「そうか。」

 

「(え?)」

 

 チエと鉄裁の、意味深いような会話に雛森は頭を傾げる。

 

「では! 不肖ながらもこの握菱鉄裁! 穿界門を起動します!」

 

 ゴォォォォォォ!!!

 

「………………」

 

 感動を堪能する間もないまま、チエは横目で彼を見ると暑苦しいサムズアップをする鉄裁がいた。

 

「……さらばだ。」

 

「え? あ、おい!」

 

「あ、私も!」

 

「ったく! 突っ張りすぎだぜ! 世話のかかる!」

 

 それを最後にチエは穿界門を一護、織姫、日番谷と共に通る。

 

 雛森だけが鉄裁の容体に気付き、足を止めていた。

 

 ボト。

 

「う、腕が?! お、お、落ち────?!」

「────む、これは失敬。」

 

 鉄裁のサムズアップをしていた右腕の関節が()()()()()

 

「むぅ。 やはり義骸の限界ですな。」

 

「や、やっぱり! 今すぐ穿界門の起動を────!」

「────それはできません。 恐らく今止めれば、彼たちが目指す出口も消えてしまいますでしょう。」

 

 雛森が見たのはだんだんとヒビが入り、割れていく鉄裁の顔に浮かんだ清々しい笑顔だった。

 

「かつては鬼道衆総帥と呼ばれたこの老骨の最後が、“世界の崩壊を止めた”とあれば満足です。」

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

「おい、渡辺! どこかに行くんだろ?!」

 

 穿界門を通った一護たちは、断界の中でそわそわしながら何時でも走れる心持をしていた。

 

「ああ。」

 

「“ああ”、じゃねぇよ?!」

 

「そうだよ、あの煙列車が来ちゃうよ!」

 

 チエはなんと、通った先で立ったまま移動をしていなかった。

 

 そんな彼女に一護たちは焦る理由を────

 

 『────コォォォォォォォォォォ!!!』

 

「「うわぁぁぁぁぁ?!」」

 

 一護と織姫が拘流の中で叫ぶ。

 

「来やがった!」

 

 日番谷も叫ぶ。

 

「来たか。」

 

 チエはいつも通りの口調で迫ってくる拘突(こうとつ)を見た。

 

「やべぇよ! 早く行こうぜ!」

 

 チエの肩を一護がつかんで無理やり移動させようとした。

 

「問題ない。」

 

「アリだ、バカ!」

 

「蟻? どこにだ?」

 

 「そっちじゃねぇぇぇぇ────!!!」

 

 『────コォォォォォォォォォォ!!!』

 

「────あああああああああああああああああ?!?!?!」

 

 必死になりながらも無理やりチエを移動しようとした一護は眼前にまで迫った拘突を前に叫んだ。

 

「『止まれ。』」

 

 !!!』

 

 耳をつんざくような音とともに、拘突が止まる。

 

 その様子と音はさながら急ブレーキをかけた列車だった。

 

「「「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………え。」」」

 

「『反転。』」

 

 放心していた一護たちの目の前で拘突はぐにゃりと粘土のように形を変えていき、次第にツンツンとウニの触覚のような固定した煙部分にチエは平然と足を乗せ、手で鷲掴みにして()()

 

「よし、乗れ。」

 

 「ハァァァァァァァァァァァァァァァァ?!」

 

 一護は叫んだ!

 

「????????????????????

 

 日番谷は目を白黒させた!

 

「あ、こう見ると可愛い!」

 

 織姫は拘突を褒めた!

 

 ………………………………褒めた?

 

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

「チエ。」

 

「なんだ?」

 

「先に言ってくれ。 寿命、縮んだぞ。 普通に。」

 

「“穿界門を通る”といった時点で察せ。」

 

 無理。

 

 容姿とともに軌道を変えた拘突に乗りながら一護が抗議を上げる。

 

「ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ。」

 

「えっと……元気出して日番谷くん?」

 

 二人の後ろには落ち込んだままブツブツと独り言を続ける危ない様子の日番谷を織姫が慰めようとしていた。

 

「大体『拘突』って死神がどうこう出来るものじゃない筈だろ? 何やったんだよお前?」

 

「??? 『止まれ』と言ってから『反転しろ』と言っただけだぞ? あと私は自分が“死神だ”といった覚えはないぞ」

 

全ッッッッッッッッッッ然、説明になっていねぇよ!!!

 

「文句を言う前に霊力を注げ。」

 

人の話聞けよ!」 ←お前が言うな

 

「この速度ではたどり着く前に道が崩壊してしまう。」

 

「え?」

 

 チエが後ろを見たことに一護が振り返ると────

 

「────なんだ…………ありゃ?」

 

『無』。

 

 一言で『それ』を呼ぶのなら上記の言葉が一番しっくりくるだろう。

 

 一護たちが乗っていた拘突が通ったことで拘流の中に出来た道が文字通りの『無』に呑まれていった。

 

「あれは『原初の宇宙』へと世界を戻している。 恐らく私たちを異物として認知した自動システムが働いたのだろう。」

 

「……………………呑まれたらどうなる?」

 

「存在が消える。」

 

 「ウオォォォォォ!!! どうやって霊力を注ぎ込むんだぁぁぁぁぁ?!」

 

「落ち着け黒崎! 霊力操作をしろ!」

 

「無茶言うなよ?! こちとらほぼOTJの死神代行だぞ?!」

 

「兄妹そろって朽木は何やってたんだよ?!」

 

「あ。 出来た。」

 

「マジか井上?! どどどどどどどどうやってだ?!」

 

「え? だから体の中を『ギュ~』として、『ポン!』と出す?」

 

「よし! まったく参考にならねぇ!」 ←だからお前が言うな

 

「早くしろ黒崎! お前だけだぞ!」

 

 日番谷が見たのは急激に追いついてくる『無』。

 

「ええと、ええと、ええと、ええと、ええと、ええと、ええと!!!」

 

 何を思ったのか、一護は自分の身体を漁りだす。

 

 コテン。

 

 その動作でポケットから出たのはドクロ模様の入った死神代行証だった。

 

「……………………あ。」

 

「何をしている黒崎?!」

 

 それを一護がジッと見ては刀を突き刺すように構えた。

 

「すまねぇ、浮竹さん────!!!」

 

 一護が思い浮かべたのは別世界と思われる記憶で、その時自分の身から溢れ出た力*1

 

 ────バキン!

 

『上手く操作出来ないのなら制限された状態から解放すれば良い』と思った彼は即座に行動に出ていた。

 

 ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!

 

 視界一面を埋め尽くす眩い光が『無』を押し戻すかのように、垂れ流しになる力を受け取った拘突のスピードがグンと跳ね上がり、『無』を引き離していく。

 

「く、黒崎……()()、なんだ?」

 

「ほわぁ~……綺麗。」

 

 一護の見た目は豹変していた。

 黒く、長髪になった髪の毛をした頭上に円盤。 背中に翼と、どこか『天使』を連想させる、織姫が思わずうっとりするような外見となっていた。

 

「これ、は…………………………」

 

 一護は自らの体から溢れる力に覚えがあった。

 

「『無月』に、似ている……」

 

『最後の月牙天衝・無月』。

 あの頃のように力が溢れていた。

 

 ただしあの時とは違い、『戦う力を失う』絶望感がなかった分、全能感が増していた。

 

「(ああ……これを藍染────ソウスケは感じていたんだな。)」

 

『原作』での一護は無意識ながらも滅却師の『静血装(ブルート・ヴェーネ)』を使っていた。

 

 それも『原作』での彼はキルゲと対峙し、内なる滅却師の血が覚醒したのがかなり遅かった。

 

 だが、()()()()()()()()()()()()

 

 そして、『原作』でもこのような現象は『()()()()があれば起こりえる』と言う言も僅かにだが『共鳴』という描写で在った。

 

 ここに、ソウスケが言っていた『条件さえ合ってしまえば変えられない“宿命”』が幸か不幸か意外な形で表れていた。

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

「ぬ…………………………ぐ…………………………貴方が、付き合う必要はないのですぞ?!」

 

 未だに穿界門を起動していた鉄裁が汗をだらだらと流し、苦しみながら同じく汗を滝のように流す雛森に声をかける。

 

「いい……え! 私にできることを! しているだけです!」

 

 彼女は少しでも鉄裁の負担が減るように自分も穿界門の維持に霊力を注いでいた。

 

「私一人の……犠牲で事が足りるのならッ! ……貴方が付き合う必要はない、のです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ~。 どいつもこいつもバカ過ぎて、呆れを通して怒りまで湧き上がるヨ。」

 

 そんな二人に場違いな口調をした声が聞こえてくる。

*1
143話、144話より




五番隊の隊花:『馬酔木』
 
花言葉に含まれる合言葉には『犠牲』と『危険』。


ピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコ────バキッ! ←様々なフラグ回収で折れるフラグ

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