もうすでにご存じかも知れませんがタイトルを変更いたしました。
ご迷惑をおかけしますが、何とぞご了承下さいますようお願い申し上げます。
いつもお読み頂き誠にありがとうございます、楽しんでいただければ幸いです。
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黒崎一護 視点
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「(理不尽なこともあったけど)良い文化祭だったな。」
一護は文化祭が徐々に宴モードへと変わっていく様子を教室の窓から見下ろす。
校庭の屋台はいまだに存続しており、逆に夜になったことで
「(お? パ二-二たちじゃねぇか。)」
その中で目立つ
ちなみに彼は何度か『メイド&バトラー喫茶』に突入を試みたのだが明らかな下心満載の視線を女子たちに向けていたことで追放やんわりとアネットたちに投げ出されていた。
「(無理もねぇか。 追い出されるときに叫んだ『アレ』はねぇよ。)」
その『アレ』とはドルドーニがアネットたちに弁解しようとしたセリフ。
『何故だ?! 吾輩はただ花を愛でたいだけだ!』
『その“愛でたい”に触ることが含まれているのでアウトです。』
『失敬な?! “触りたい”などと
『なら先ほど私の腰へと伸ばした手は何だったと言うのです?』
『フ……野に咲く花を手に取ってみたいと────』
『────“良い男”を装っていますがアウトですね。』
以上が
そんなことを考えていた一護に後ろから声がかかってくる。
「君が思いに耽っている顔は穏やかだね。」
「え?!」
ここで聞く筈のない声に一護が振り返ると、いまだにやつれた様子の────
「あ、あいz────ムグッ?!」
「シー。 僕の名はマクシミリアン。 気軽に“マックス”と呼んでくれたまえ。」
「(いやいやいやいやいや! 髪の毛を青色に染めてサングラス着用だけでもアウトなのに名前で決定的じゃねぇか?! 嫌というほど声が似ているし不思議と見た目が似合うけどよ?!)」
ソウスケ自称“マクシミリアン”を見て口を塞がれた一護は内心でツッコミを入れる。
「ブハッ! あ、アンタはここに居て良いのかよ?! 監視付きの謹慎処分の筈だろうが?! てか、何気にもっとやつれていないか?」
「アハハハハ……平子君たち五番隊が出しているものがねぇ……」
「五番隊って……確かクッキーを出していなかったか?」
“
「フ. そのクッキーが問題なんだ…………………………『
「え゛。」
一護が声を出すとまるで彼の考えていることを肯定するかのように、ソウスケが苦笑いをしながら四角いフレームの眼鏡を懐から出す。
「うっわぁ……」
「しかもやちる君がね? 変装した僕を見てまるで段取りを見計らったかのように、手の中で持っていたクッキーを割ってから“私たちが天に立つ”と笑顔で宣言したんだ。」
「…………………………」
一護は複雑な表情を浮かべ、口端をヒキつかせる。
明らかにやちると平子の行動は以前に見た光景を元にしていたからだ。
「まぁ……自業自得だと割り切っていたものの、次に気が付けば身体をイチネに揺られていたからね。 さすがに立ったまま気を失うとは思わなかったよ、ハッハッハ。」
「(それってもう、あれじゃね? 『
ソウスケは笑いこそしたものの、一護からすれば上記の出来事はソウスケにとってトラウマ化していたかのように感じた。
「おとう────
“マクシミリアン”の後を追うかのように浴衣を身に着けたイチネが『お父さん』呼びから『お兄ちゃん』へと切り替えながらキツネのお面を頭につけ、屋台で得た戦利品らしきものを両腕で抱えながらトテトテと近づく。
「お、おお……すげぇな、イチネ?」
「すごいのはお
「フォッフォ。 孫の為ならばなんてことは無いのぉ~!」
イチネの言ったことに照れる青いほっかむりを被った老人が愉快そうに笑いながら八番隊のちらし寿司丼が髭にくっ付かないように工夫をしながら食べていた様子に一護は絶句した。
「…………………………」
「ん? どうした黒崎一護? 生まれたばかりの赤子のようにポヤ~ンとして?」
「ぽや~ん!♪」
「しかも今度は壁に手を付けて項垂れていますね?」
「もうどこからどうツッコんだものか迷っているだけだ……」
「「苦労する
「誰の所為だと思っているんだよ?」
「儂は知らんのぉ~。」
「………………………………良いのかそれで?
「だって儂、飽きたんだも~~~ん!」
「爺さんが“だもん”なんて言うなよ、気持ち
「イチネぇ~、お主のちc────兄が儂を虐めて来るのじゃが~。 うわ~ん。」
「お兄ちゃん! メッ!」
「なんでだよ?! つか俺か?! 俺なのか?!」
ポン。
一護は手を肩に置かれて振り向くと
いや、それは同じ苦を経験した者の目だった。
『同志よ、気にすることは無い。』
『同志でもなんでもねぇよ!』
『その気持ちはわかるとも。 何しろ彼が姉さんと僕たちが住むところに通い、始めて僕の描いていた“山本元柳斎重國”という人物像とはかけ離れていたことが判明したからね。』
『お前もかよ……って、何勝手にシレっと
『Ha,ha,ha。』
「のぉのぉイチネ~。 二人が何か
「お兄ちゃんたち、メッ!」
「(……………………なんで俺が叱られるんだ?)」
理不尽なことに?マークを一護は頭上に出し、背後から知恵の声が聞こえてきた。
「一護とイチネとソウス────」
「────マクシミリアンです、姉さん。 もしくは“マックス”とでも。」
「そうか。 それと、そっちは『名も知らぬ死神』だったな。」
「おおおお! まさか師匠がそのようなお召し物を着るとはのぅ……」
「きれい~!」
「そうか。」
「(ほっかむりの意味が無くね────ん????)」
フッサ、フッサ、フッサ。
一護は自分の足を何かが撫でるような感覚がして思わず下を見るとフサフサの大きな尻尾が左右に振られている際に自分の足に当たっていたことに気付く。
無論、尻尾の持ち主は隣の女性。
「それでね、それでね! マックスお兄ちゃんもぬいぐるみをしゃてきでとってくれたんだよー!」
「そうか。 イチネが世話になるな。」
「いえいえ、僕自身も楽しんでいるので。」
「そうか。 イチネ、楽しいか?」
「うん!」
「よかったな。」
「えへへへへ~♪」
イチネと喋る彼女の表情こそ澄ましているものの、ふさふさな尻尾は揺れ続けていた。
「涅マユリに感謝をせねばならないのぉ。」
「ハハハハ。」
「お星さまみに行こお母さ────お姉ちゃん!」
「いいぞ。」
「じゃあ、おんぶー!」
「わかった。」
「わーい!」
チエがイチネを抱き上げ、そのままワイワイと騒ぐ教室を後にするのを一護が放心しながら見送る。
「……黒崎一護。」
「お、おおう?」
急にソウスケが自分をフルネームで呼んだことに戸惑いが若干声に出てしまう。
「姉さんの後を追わなくてもいいのかい?」
「てかよ? ずっと前から疑問に思っていたし、この際だから聞くけどよ? イチネは俺と同じ感じでチエを姉呼ばわりしているのは分かるけど、アンタのその『姉さん』ってのはどういうことだ?」
「そうじゃ。 ずっと孫と師匠に会うために通っていても、儂のその質問にお主は答えておらんではないか!」
「(イチネはアンタの孫でも何でもないんだけどな。)」
「ん? 未だに答えが見つからないのか……長くなるが、二人は聞きたいかね?」
「「手短く。」」
「……一言で表すと、『敬意』だ。」
「『敬意』?」
「うぅぅぅむ……」
一護はさらに?マークを出す反面、山本元柳斎は何か思い当たったのか髭を撫でながら考え込むような音を出す。
「ああ、それとなぜ僕が後を追うのか追わないのか問いをしたのは単純だ。 姉さんはどこか元気がなかったからね、君ならば彼女を元気付けることが出来ると思ったからだ。 『星を見たい』とイチネが言っていたから、二人はおそらく屋上だ。」
「そ、そうか。」
一護がそのままソウスケの横を通り、屋上へと通じる階段の方向に歩き出すとソウスケがさらに声を彼へとかける。
「それとその耳、獅子かね? 君にお似合いだよ。 まるで────」
ビュン!
一護は恥ずかしみとソウスケの言葉の続きから逃げるように陸上部顔負けなほどの速度でその場から走り去った。
故に、ソウスケの言葉を聞くのはほっかむりを被った山本元柳斎のみだった。
「────君の信念を表しているかのようだ……って、何もそこまで急いであとを追う必要はないだろうに……」
「ではどういう意味じゃ? 儂はてっきり、奴の身の近くに
「確かにその線も含んでいることは肯定しますが、知っていますか? 獅子には小さいながらも群れを成す習性があり、敵から群れを守る為に必ず一体が先人切って先頭に立つことを?」
「なるほどの~……
「出ないんじゃないですかね?」
「……貴様は今、何を思い浮かべておる?」
「貴方は背中に甲羅を背負う気はございませんか?」
「????????????」
それだと何某漫画の仙人になってしまいますよ?
…………
………
……
…
一護は慣れた足取りで空座一校の屋上を目指しながら外の様子を通路の中から見下ろしていた。
外の校庭には簡易ステージのようなモノが立っており、昼の間は学生のバンドや楽器に覚えのある猛者たちなどが演奏していたが、今は別のモノを出していた。
『ハ〜ヒフ〜ヘホ~!』
『出たな、サイキンマン! この俺が相手だ!』
「ブフッ?!」
一護が見聞きしたのは被り物をした浮竹とマユリ(+ネム)が対峙するかのような光景とスピーカーから流れる声。
『私を破滅することは出来ないと何度言えばわかるのかネ?! 私は“菌”! どこにでもいるのだヨ!』
『そうだとも! 滅亡することはできなくとも、君の浸食を一時的に止めることはできる! 食らえ! 浄化ぁぁぁぁぁぁ! ブゥゥゥゥゥゥメラン!』
浮竹が出したのは大きな二振りの歯ブラシ。
それを両手にとり、マユリへと投げると回転しながらマユリとネムにそれらがくっつく。
『グワ?! ま、まだまダー!』
『次はこれだ! 浄化ぁぁぁぁぁぁ! ビィィィィィィィィィィィム!』
『グアァァァァァ?! お、おのれ真・ケンコウ! 覚えていロォォォォォ!』
『さぁ、君たちも忘れるな! 歯磨き、手洗い、うがいは健康を保つ基本だ!』
「…………………………………………………………………………………………」
一護は絶句したまま歩みを再開し、階段を登って屋上へと続くドアノブに手を伸ばすと向こう側からイチネとチエの話声が彼の耳へと届く。
『ねぇお母さん、何それ?』
『これか? これは“にっき”と言うものだ。』
『耳と尻尾触っていい?』
『いいぞ……………………イチネ。』
『ん~?』
『お前は、
『……』
ピタリと一護の動きが止まる。
チエの疑問はご尤もなはずなのに、身近にいた一護でさえそれを疑問として持たずにただ目の当たりとして受けていた。
『お前は自分を“イチネ”と名乗り、私たちに親しみを込めながら呼び名をつけ、懐いている。 だが、肝心のお前は自分のことを何も語っていない。』
『…………………………う~~~~ん?
「(いやいや、そんな簡単に────)」
『そうか、悪かったな。』
バァン!
「────ってそんな簡単に信じて良いのかよ?!」
一護は思わずドアを開けてそう叫ぶ。
「一護か。」
「あ、お父さんだ!」
「俺は子供を作った覚えはねぇ!」
「お母さん、なんかお父さん変だよ?」
「そうだな。」
「聞けよ。」
「あ! お兄ちゃんたちもつれてくるー!」
イチネはそう言いながらチエの股の上から一護の横を素通りして階段をさっさと降りていく。
「まるで昔の一護のようだ。」
「え゛? 俺、あそこまでワケ分かんなかったか?」
「そうだが? ……………………どうした一護? 頭を壁か何かに打ったか?」
「打ちたい気分だが打ってねぇよ。」
「そうか。」
チエは夜になり、星が出始めた空を座りながら静かに見上げ、一護は何となく彼女の隣に座って同じく夜空を見上げる。
「「……………………………………」」
特に二人の間に会話はなかったが、二人は別にそれを不満に感じることは無い様子だった。
「(……………………こうやって静かに星を見るのって何年ぶりだろ?)」
「一護。 なぜここに来た?」
「んあ? 何でって……なんかお前が元気なさそうだったって聞いたから。」
「“元気がない”、か……………………………………」
「「………………………………………………」」
またも地上から来る背景音以外、静けさが屋上を支配する。
チエは膝を抱え、一護は胡座を掻く。
「一護は……」
「ん?」
「一護は、私が怖くないのか?」
「全然?」
「不気味ではないのか?」
「全然。」
「もし……………………もし私が『私』でなくなってもか?」
「????」
「私は……私は『バケモノ』だ。 死した者の
「…………………………」
「今は『にっき』を書いているが……………………皆とは生きる
「…………………………」
一護は何も言わず、ただチエの言葉を待つ。
「私は………………私は
「…………………………」
「私は眠ってしまえば、夢を見ることは無いが
「…………………………」
「ゆえに私は『にっき』を書いて、記録を取っている。 だが………………もし、私が何かの拍子で『バケモノ』として周りを害しようと動いてしまえば────」
「────そん時は、俺が出るよ。」
チエは、未だに夜空を見上げる一護にここで顔を向けた。
「…………………………そうか。 お前に討たれるのであれば、私は────」
「────あ? アホかお前?」
「あ、アホだと?」
ここでチエはキョトンとした表情をするが、一護は見上げたままだったので気付かないまま言を告げる。
「当然、お前の前に出て、ぶん殴って、正気に戻すに決まっているだろうが?」
「……だが、変わった私を放置すれば……」
「お前は、そうそう変わらねぇよ。 多分。」
「そこで言い切らないのがお前らしいな。」
「だって昔からお前、場に流されるがままとかでも頼まれたこととか、周りの奴らが危なくなると全力で動くところとかは変わらねぇだろ?」
「…………………………………………」
「それに、三月に言いにくい事とかならこうやって話したいときはいつでも歓迎するぜ?」
「……物好きだな一護は。」
一護はニカっとした笑みをチエに向ける。
「
「そうか────」
────ポスン。
次の瞬間、チエは倒れるように頭を一護の肩に預ける。
「うおおおお?!」
「ならば、少しの間だけでいい………………弟らしく、肩を貸してくれ。 一ヶ月も眠らないのは…………………………『今の私』には流石に堪える。」
そう言いながら、チエの瞼はゆっくりと閉じて行く。
「……………………私が、目を覚ましたら………………『にっき』を見せてくれ………………」
「………………………………………………その肝心の日記はどこにある?」
「私の…………懐だ。」
「え?! オイちょっと待て! 寝る前に渡せ!」
「…………………………クゥ。」
「おいいいいいいいいいい?!」
一護は一瞬、彼女を無理やり起こすかどうか迷ったが、彼女の寝顔が余りにも平和そうだったことに、今度は猛烈な眠気が今まで緊張感で起きていた彼を襲う。
「………………あ、やべ。 こいつの寝顔を見ていたら俺も……フワァ……………………」
パチ。
一護が欠伸をするとチエが目を覚ます。
「お、おお? 早かったな? あ! 日記、日記、に────!」
「────。」
一護が慌て、チエが何かを独り言のように口にする。
「え?」
「覚えて……いる。 思い……出せる?」
「え────ぐおぇ?」
次の瞬間、チエが一護を抱きしめて顔を彼の胸に埋めながらしゃくりあげる。
「お前は……『黒崎一護』!
ここは、『空座町』の『空座一校の屋上』!
私は……
私は、『渡辺チエ』だッッッッッッッッッ!」
「おい────?」
「────うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
とうとう自分を力強く抱きしめながら泣き出したチエを、一護は双子の妹たちのようにあやす。
彼には、今の彼女は遊子や夏梨たちが泣き虫だった幼い頃と同じく感じられた。
イチネ:お兄ちゃ~~~ん! お母さんたちのところにいこう!
ソウスケ:そうかそうか。 ところで手に持っているのは何かね?
イチネ:お母さんのにっき~!
ソウスケ:そうかそうか、ちょっと見ても良いかね? ……ナニコレ? よ、読めない……
イチネ:んー、『(自称)姉に見習って、『ばかんす』を気ままに取ってみた。 「アンタ何やってんのよぉぉぉ?!」』だってー!
ソウスケ:……ナニソレ?
イチネ:う~ん、でも今は『白と黒の世界は夢を見る』だよー!