白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

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何時も読んでくれている方達に感謝を!

少し短めですが、楽しんで頂けると幸いです!


第23話 助っ人(ウー)マン、召喚。の巻き

 ___________

 

 ??? 視点

 ___________

 

『大丈夫か、三月?』

 

 チエの気遣う念話に頬の汗を拭き取る三月はただサムズアップで彼女に返答しながら目の前の出来事を見直した。

 

 瀞霊廷と流魂街を区切る殺気石(せっきせき)には東西南北に四つの門があり、その一つの白道門(はくとうもん)の守護者の兕丹坊(じだんぼう)の声が辺りに響く。

 

「腰抜がすなよぉ、一気に行ぐどぉぉぉ!!!」

 

 そう言い、兕丹坊は白道門を一護達の為に一息に()()()()()()()()()

 

『あの門番は失格だな』

『チーちゃん、何時にも増してド直球過ぎ!』

『明らかな害意がない一護達だが、現代風に言うと“警備の者が勝手に不審者達の為にドアを開ける”と言う無責任な行為を奴は取ったのだぞ?』

『まぁ……それはそうなんだけどさぁ………』

 

 チエの指摘はごもっとである。

 そう感心している間、彼女と三月は姿と気配を消しながら開いた門を潜り、瀞霊廷の中へと一気に駆け抜ける。

 

「あぁ、こらあかん。 あかんわ」

 

 そして二人の前に白髪で糸目の京都弁を喋る男の声が聞こえた瞬間物陰へと潜む。

 

「門番は門を開ける為に居てんのとちゃうやろ? ましてや旅禍相手に」

 

「さ、三番隊隊長……い、市丸────」

 

 兕丹坊の前に立った糸目の三番隊隊長────『市丸ギン』の霊圧がほんの一瞬だけ膨れ上がり、何か重い物が地面に落ちると共に痛みに叫ぶ兕丹坊の声が響く。

 

「兕丹坊?! テメェ、何しやがる!」

 

 一護の声に市丸ギンが片眼を開けて彼をよく見てからニィーっと笑う。

 

「…………何って、門番が『負ける』っちゅう事は『死ぬ』意味やぞ?」

 

『流石に極端過ぎだと思う』

『そうか?』

『そうだよ』

 

 近くの物陰で潜む三月の言葉にチエが天然ツッコミで返す。

死神(多種)』と『人間(多種)』の価値観の違いに一護は怒っていた。

 

「ざけんなよ、テメェ!」

 

「へぇ、おもろい子や。 ボクが怖か無いんか?」

 

 「全ッッッッ然!!!」

 

「一護、よせ!」

 

 ギンに突っかかる(啖呵を切る)一護を夜一が怒鳴り、彼の名前を知ったギンの笑みが更に深くなる。

 

「尚更、君を通す訳には行かへんなぁ」

 

 ギンがゆったりとした足取りで一護から遠ざかるように歩くと、チエと三月は近くから物音がして見ると────

 

「(成程、こういう事があったのね。 何が『未確認情報』だ)」

 

 ────そこにはひっそりと阿散井恋次(六番隊副隊長)が立っていた。

 

 漫画にも彼がルキアの反応を見る為に、『未確認情報だが巨大な斬魄刀を持ったオレンジ色の髪をした旅禍が侵入した』という描写はあった。

 

 が、流石に本人がすぐそこにいるとは三月にも予想外────

 

『────凄い眉毛だな』

「『────フハ?!」』

 

「ッ!」

 

 チエの念話に三月が思わず外と内側両方で吹き出し、恋次は腰の斬魄刀をすぐ握ってチエ達のいる方向の物陰を睨む。

 

『何をやっているのだ、お前は?』

『今のは完っっっっっ璧にチーちゃんが悪い!』

『???』

『そこでボケるな────!』

 

「────誰だ?」

 

 チエと自分の口を手で塞いだ三月は忍び足で(チエも後を付き)その場から離れると────

 

「────『射殺せ、神槍』」

 

 ギンの始解と共に一護と兕丹坊が瀞霊廷内から流魂街に弾き出され、勢いよく閉まる門の向こう側からギンはヒラヒラと手を振りながら、別れの言葉を一護に掛けた。

 

 白道門が重い音で閉まり、ギンは踵を返してその場を去る。

 

 恋次は横目でこれを見ながらも手にかけた刀を動かさず、警戒すること数分。

 

「(この人は確か『原作』ではルキアの馴染みで、彼女を助けたいと思っている筈。 上手くやれば仲間に………いえ、やっぱり()()駄目ね)」

 

 確かに彼に上手く事情を話せばルキアを助ける為()()なら、一人でいる今が絶好のチャンスかも知れなかった。

 

 だが『原作』での彼の性格などを考えれば、良くも悪くも隠し事が苦手(出来ない)

 恐らくはイノシシの様に後先考えずにズカズカと例え一人でも行動を起こすだろう。

 

「(だから話しかけるのは『今』じゃない)」

 

 恋次が周りをキョロキョロと見てから警戒を解き、その場から離れ始める。

 

『……奴に話しかけないのか?』

 

 チエからの念話に三月が頭を横に振る。

 

 ソウル・ソサエティに乗り込む、浦原商店で集合する前に三月はチエに一通りの事を話し、方針を伝えていた。

 

『彼に接触するのはタイミングが肝心、“今”じゃないわ』

『分かった』

 

 そこで立ち去ろうとして瞬間、三月のインカムから浦原の声がした。

 

『もしもし、こちら“店長”。 “助手№2”、応答願います』

『帰ったらフ〇イデー等の入った異空間を消去するわ』

『ヤメテ、お願い! っと、冗談はここまでにしてそちらはどうですか?』

『上手く潜入出来たわ』

『了解ッス。 ではまた後で』

 

 さて、ここまで記入すれば既に察せると思うが浦原は一護御一行が『穿界門』に飛び込んだ直後に『曲光』と霊圧遮断型外套で自身を隠して追って来た。

 

 ちなみに三月の背負っていたデカイリュックも一種のカモフラージュの役割だった。

 

 (浦原)がソウル・ソサエティに来ている事はチエ達と、夜一、そして『穿界門』を()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 目立つ一護達が表でバタバタしている間に、浦原は夜一と共に思う存分に暗躍をする気満々。

 まるでチエと三月()の様に。

 

()()? こちら()()()。 井上昊を発見した』

『でかした!』

『“井上織姫”の居る所まで誘導して欲しいか?』

『出来ればそのまま彼の居場所と周辺を調べていて。 もし危機に落ちそうなら介入許可するわ』

『了』

 

「(良し! これで事が終わった後に井上兄弟を引き合わせられる!)」

 

 三月がグッとガッツポーズをする。

 

 先程念話を交わしたモノの名は『クルミ・()()()()()』。

 

 別の世界では三月の()()として振舞っている、彼女(三月)自身の別側面(人格)を具現化した()()*1

 

 先程の民家から白道門へと向かう間、三月が『この世界(BLEACH)』へのいわゆる『異世界渡航』して()()()()()()()()で過ごした年月から『魔力の代わりに霊子を代用する』実験を(誤作動しつつも)繰り返していた結果、ついに到達した結果の『産物』の一つ。

 

 これにより『この世界(BLEACH)』にはない『魔法』をある程度『修正力』の影響を軽減して行使できるようになった(先程から頻繁に使っていた念話もその一つの例)。

 

 当然、『改造魂魄』と称しているマイもクルミと似たようなものだが、あちら(マイ)は『この世界(BLEACH)』で浦原から入手した義骸にさらに手を加えてから別側面(人格)を注入した、『異世界同士』の『技』と『概念』の交ぜ合わせられた『互換品』に対して、クルミはいわゆる『純正品』であった。

 

 と言ってもまだまだ荒削りも良いところで、行使の際に霊子から魔力、そして偽装の為の逆方向への変換率は未だに試作段階の領域を出ていないのだが……

 

 まあ、変換しないよりは『負担』が遥かにマシなので彼女はこれで良しとして先程から力を蓄え直していた。

 

 何せ『鬼道』に加え、『魔法』や『魔術』が使えれば行動と作戦の範囲が広がるだけでなく、有利に事を進められる。

 

 筈。

 

『さて……………チーちゃん、周りの気配索敵頼んだわよ』

『分かった』

 

 チエ達が建物の陰に入ると三月は霊圧遮断外套を身に纏った姿を現し、右手に自ら傷を負わす。

 地面に血が滴るのを確認してから、彼女は目を瞑って()()を始める。

 

「『()に銀と鉄。 ()に石と契約の大公────』」

 

 三月の周りにそよ風が噴き出し、地面には『この世界(BLEACH)』で()()()()()()()()()()()()()()()

 

 その間も三月の詠唱は続いて、滴る血が地面と混ざり合い始め、蠢く。

 

「『────降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路(さんさろ)は循環せよ。

 閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 繰り返すつどに五度。

 ただ、満たされる(とき)を破却する

 ――――告げる。

 汝()の身は我が下に、我が命運は汝()の剣に。

 ()()の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ!

 誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者────』」

 

 眩い光が発しようとした瞬間、三月は奥歯を「ギリッ」と噛み締めながら血の出ている右手で拳を作り、光は輝度を徐々に下げていき三月の体がブレ、地面から出ていた光子が人の形を作り始める。

 

「────ッ…………『汝三大の言霊を纏う七天、

 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手()よ――――!』」

 

 やがて光子が数人分の真っ白の人影から()姿()()()()()()()()()()()

 

「………………あれ? 何処やねんここ?」

 

 ?マークを出し、八重歯の見える口で関西弁を喋る、活発そうな少女が周りを見渡す。

 

「あー……………雰囲気からしてまたメンドクセェ事じゃねぇの、『ツキミ』?」

 

 同じ少女をまるで青年化した、ボサボサのラフな恰好をした者が周りを見ながら頭をガリガリと掻きながら先程の関西弁少女────『ツキミ』に声をかける。

 

「成程、ボク達がこうやってほぼ勢揃い居るという事は『カリン』の言う通りかもしれませんね」

 

 ぬぼ~っと、ダルイ感じの顔とハネッ毛が目立つ少女が眼鏡を掛け直す。

 

「せや、『リカ』の言う通りや」

 

「皆、来てくれてありがとう。 取り敢えず、記憶を備え付け(インストールす)るから」

 

 そこで三月は新たに現れた三人(カリン、ツキミ、リカ)に背負っていたリュックから予備の霊圧遮断外套を羽織らせ、情報を直接脳内へと送る。

 

 三人(カリン、ツキミ、リカ)の意識に色んな景色や記録が意識を通って、終わると────

 

「ま、急にオレ等を『召喚』したのはこういう事か」

 

「『ソウル・ソサエティ』に『死神』に『虚』………興味深いですね、これは是非………フフ……

 

「へぇー! ホンマに時代劇みたいな所やないか!」

 

『カリン』が納得したように笑みを浮かべ、

『リカ』が眼鏡をキラリと光らせながら意味深で低い笑いを出し、

『ツキミ』が興味津々で、目をキラキラとさせながら近くの建物を触り────

 

『────さっきの霊圧は何だ?!』

『────こっちからだったぞ!』

『────まさか旅禍か?!』

 

 ────ドタドタとした足取りで次から次へと近くにいた死神達の声が聞こえてきて、チエが戻って来る。

 

「三月、今のは一体────……………おいなんだこの者達は?」

 

「「「「姉妹?」」」」

 

 チエのジト目問いに三月達が頭を傾げながら(疑問形で)答える。

 

「……………まずはここから離れるとしよう」

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 場は更に変わり、()()()()の隊舎裏でジト目のチエと苦笑いをする三月()の間に気まずい空気が流れていた。

 

『それで? どういう事だ、これは?』

 

 チエの少しトゲのある問いに三月が返答(弁解)する。

 

『瀞霊廷って広いでしょ? 私とあなたの二人だけじゃカバーしきれないと思ってさ?』

『だからと言って、チエ氏に何も言わずにボク達を呼ぶのは流石に駄目だと思います』

『“リカ”の言う通りや。 何や()()が珍しく僕等を呼んだ思ったら“霊界”でしかも土壇場やないか』

『ま、オレは別に構わねぇけどよ? 要するにオレ等はなるべくこの一連が“原作”よりこの“藍染”っつうド腐れ○○○(ピィー)野郎を弱体化しつつ、ベリー野郎達側を有利にするって事だろ?』

『“カリン”、その…………………“ベリー野郎”って誰?』

『あ? あのヒマワリ頭に決まってんだろ? オレンジ色の』

『『『…………………』』』

 

 カリンの言った事が概ねの方針に的を射ていたので三月は話を先に進めてカリン、リカ、ツキミの三人がその場から姿を消しながら別方向へと散る。

 

『しかしこの隊は妙だな。 “隊”と言うよりは“ゴロツキ”の集まりの雰囲気がする』

『あ、あながち間違っていないよ?』

 

 チエの視線に釣られ、隊舎の壁に大きく書いてある『十一』を見上げる。

 

『十一番隊』。

 何度斬られても絶対に倒れない『剣八』率いる『戦闘専門(戦闘狂)部隊』で『自称十三番隊最強』。

 そして以外にも斬術、及び白打、と言った物理的戦闘手段であれば上記の自称は伊達ではない程の実力を持つ者達が大勢いる。

 

 物理的戦闘手段のみに限定すればだが。

 

 何せ姿を曲光、そして霊圧を遮断しているだけで目の前の隊舎の中にいる者達はすぐ外で微小に漏れている霊圧に違和感も持たない程()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 

 そう思っている矢先に隊舎の屋根から誰かがチエ達のすぐそこに降り立つ。

 

「ん~? おっかしいな~」

 

「(え゛。 嘘)」

 

「(ほう、この小娘…………)」

 

 降り立った小柄でピンク色の髪の毛をした死神の少女はキョロキョロと見ながらその場をくるくると歩く。

 

 少女の後ろには補助輪的なモノが付いている斬魄刀を引きずっていた。

 

「どうした、やちる?」

 

「あ! 剣ちゃん!」

 

 更に出てきたのは髪の毛に鈴を取り付け、右目に眼帯と顔の左側には大きな傷を負った長身の男だった。

 

 この二人の男女こそ『十一番隊』の隊長と副隊長である。

 

 少女は『草鹿(くさじし)やちる』と言い、十一番隊副隊長の座を持つ程の実力者。

 

 そして男は『更木()()』、通称『剣ちゃん』(副隊長命名)。

 言わずとも十一番隊隊長である。

 

「あのね剣ちゃん、ここに誰かいるような気がするの」

 

「あぁ? 何処に?」

 

「そこ」

 

 やちるが周りを見る剣八に対して「ズビシッ!」と()()正確に存在自体を薄くして潜伏しているチエ達を指差す。

 

「(うおい?! 何でバレているのよぉぉぉぉぉ?!)」

 

「へぇー? やちる、ちょいとしゃがんでいろ────」

 

 ニィーッと笑みを浮かべる剣八に巨大な霊圧がビリビリと辺りに響く。

 

『────三月、飛ぶぞ!』

『言われなくても────!』

 

 ___________

 

 ツキミ 視点

 ___________

 

 場はまたも変わり、時も三月が『召喚』した者達が丁度散り散りになった直後まで遡る。

 

 その部屋の中にはとある人物が恋次にルキアの話をしていた。

 

「────重罪ではあるが、問題は事の運び方だ。 義骸の即時返却、破棄命令、通常の猶予期間が35日から25日への短縮、隊長格以外の死神への『双極(そうきょく)』の使用決断…………どれも異例のモノばかりだ」

 

 柔和な風貌で眼鏡をしている護廷十三隊隊長の白い羽織をした青年が恋次にそう語る。

 

「僕には、これが全て一つの意志によって動いているような気がしてならない」

 

 「(そらお前やろがぁ?!)」

 

 近くで存在を潜めていたツキミが思わず出しそうなツッコミをグッと堪え、心の中のみで全力で叫ぶ。

 

 ツキミはリカと同様に瀞霊廷内部を散策している内に恋次に話しかける藍染を見かけて尾行していた。

 

「待ってくれよ、藍染隊長! それって………どう言う────?」

 

 ドゴォン!

 

 少し離れた場所で爆音に恋次と藍染が同時に音の下方向を見る。

 

「この、霊圧は────」

 

「────やれやれ、十一番隊が闘志を抑えきれなかったかな?」

 

『隊長各位に通達! 只今より、緊急隊首会を召集!』

 

「(あっちの方角はチエと本体の行った場所………大丈夫やろか?)」

 

*1
作者の別作品、『天の刃待たれよ』より




マイ:あら~、他の皆も来てくれて嬉しいわ~

リカ:そうですね

カリン:やっと出番かよ! 待ちくたびれたぜ!

作者:Oh………これから騒がしくなる予感が………

チエ:もう手遅れだと思うが?

作者:心の友よ────グヘ?!

チエ:貴様の友になった覚えはない


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