短いですけど(汗
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チエ、三月 視点
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「ゼェ、ゼェ、ゼェ、ゼェ…………………………………ま、マジで死ぬかと思ったわ」
息を切らしていた三月の髪の毛を纏めていたバレッタから外れたのか、地面に項垂れていた彼女の髪は乱れていた。
「フム、あの者とは一度手合わせを願いたいな」
「お願いだからやめて?! 瀞霊廷が滅茶苦茶になっちゃうから!」
「だがあの者は『まだまだこれから』という発展途上にいるにもかかわらずあれだけの斬撃を────」
「
「分かった」
「じゃなくて! この騒動が終わった後で! 全部終わってから!」
「…分かった」
「い、今一瞬だけ躊躇しなかったチーちゃん?」
「…気の所為だ」
「今また躊躇したわよね?!」
二人は剣八に斬られる寸前、全力でその場を離脱した為方角や位置などを特に決めていなかった。
そして全力で緊急脱出をした為、三月の体中から汗が噴き出し、彼女は筋肉痛状態でもあった。
チエも珍しく汗を掻いていたが、これが冷や汗か別の理由かまでは分からなかった。
「それにしても、一体ここは何処だ?」
チエが周りを見渡すと、二人が着陸したのはどこかの和風屋敷の中庭だった。
「何この屋敷?
「私もさっぱりだ」
「もしかして、これが噂に聞く『四大貴族』の一つの屋敷なのかな?」
周りは塀に囲まれた、木造平屋の純和風建築の屋敷。
現代の日本では場所によってはさほど珍しい光景ではない。
瀞霊廷でなければ。
「ん? これは────」
「────チ、チーちゃん? って、うおいぃぃぃぃぃ?!」
チエがズカズカと近くにある屋敷へ近づくと、戸が開かれて中から
「貴方達は何者ですか?」
しかも護廷十三番隊隊長特有の白い羽織をした人物。
「(
「────勝手に上がったのは詫びよう。 だが少々手違いがあってな────」
『────どうした
チエが弁明している間、『烈』と呼ばれた女性の後からひょっこりとかなりの年配の男性が杖に頼りながら出て、姿を現す。
彼はサングラスをして、ほぼ禿げている かなり髪の毛が薄くなっていた頭でいわゆる『バーコード風』に髪がとかされていた。
「はて? 今日は患者の予定が無かったような気が────」
「────
「────右之助か?」
「ッ?!」
チエの声を聞いた瞬間、老人のサングラスの裏にある糸目が「カッ」と見開くのが見えて、彼の口があんぐりと開く。
「ぬあ?! あ、あ、あああああなたは────?!」
彼はプルプルと震える手でチエを指差す。
これに対してチエは困惑した顔をする。
「────少し見ない内に随分と老けたな、右之助?」
「右之助様のお知り合い合いですか────?」
老人が前へと倒れる瞬間、『烈』が彼の体を受け止める。
「────右之助様?!」
「え? どういう事、コレ?」
三月は突然の出来事と、思いも寄らなかった人物(達?)との接触にただ?マークを出し続けていた。
…………………
………………
……………
…………
………
……
…
「前回の小屋から随分と立派になったものだな、右之助?」
「へ、へぇ…………チ、チエ殿もお変わりなく…と言うか全然変わっておりませんね?」
場は屋敷内にある居間へと変わり、チエの向かいに座っている老人────『右之助』がヘコヘコと低い腰で、しかも敬語で
「まさか右之助様の旧知の方に会うとは…………人生、どんな出会いがあるか分かりませんねぇ?」
「ソ、ソ、ソウデスネー。 ハ、ハハハハハハハハ」
その彼の隣にニコニコとしていた女性に対して、三月は乾いた半笑いを上げる。
目の前の落ち着いた容姿で、言動共に静かで穏やかな女性の名は『烈』────フルネームを『
彼女は護廷十三隊の
その人と共に、気を失った右之助を看病し、気が付いた彼が真っ先に呼び出した家の者に「客人をもてなす準備をしろ!」と言い、居間で(出来るだけ)ゆっくりし始めた卯ノ花と三月に右之助がチエとの出会いを聞かれ、彼はチエの事を「古い、良き友人」と紹介した。
その後に右之助が三月の事を訪ね、チエは詳しい事は省き、「三月は自分の姉だ」と渋々説明した。
尚、ドヤ顔をした
そして唖然とする。
二人は師弟のような関係で、右之助は昔から様々な回道の使い方を研究していては『回道の仙人』と呼ばれる存在となっていた。
「(え? こんな人物、『
無理もなかった。
三月が覚えている限り、『原作』では回復手段が卯ノ花より上の存在となると
「しっかし………チエ殿はあの頃から
「そうか?」
「そうじゃよ…………ワシなんかもうヨボヨボの爺ちゃんじゃわい」
「私には、あの頃の気楽に生を楽しむ男のままだが?」
「フホッホ! 世辞はよしてくれ。 こんな老いたワシを褒めても何もならぬぞ?」
「それにしては右之助様は女性の裸をのぞ………失礼、『
「何を言うておるか、烈! あれは運動代わりの散歩じゃ!
半ギレ気味で右之助が抗議するが、次にチエが言う言葉でその態度が一転する。
「それに最近聞いたが、酒を飲む癖が抜けきっていないらしいな?」
「ンなッ?! チエ殿はそ、そ、それをどこで?! ……………ハッ?!」
チエの何ともない発言に慌てる右之助の横から黒い、漂う空気に彼は恐る恐る首を回すと実に良い笑顔のまま無言で右之助を見ていた卯ノ花がいた。
「(うわ。 こっわ。 マイとどっこいどっこいだわ)」
「チエさん。 後でその話を詳しく。 ッと、その前に」
卯ノ花はドス黒い空気を引っ込めて、チエと三月の二人をキリッとした顔で見る。
「先日、瀞霊廷に『旅禍』が侵入しようとした噂が出回っているのですが────」
「────な、なんじゃと?! チエ殿達が……『旅禍』?!」
卯ノ花の真剣な顔と言葉に戸惑う右之助。
これにチエは────
「────私はただ、ソウル・ソサエティを見に来ただけだが? 後は知人が居れば、挨拶をするといった方針だ」
「…………………」
気まずい空気になりつつある場に右之助が口を開ける。
「のぅ、烈よ。 この者達はワシが責任を持って視ておく。 じゃからワシに免じて黙っていてくれないかのぅ?」
「右之助様…………………」
頭を下げる右之助に卯ノ花が黙り込んだと思ったら、次は疑惑のジト目を彼に向ける。
「貴方もしや、彼女達の様な────」
「────断じて違う!」
「???」
「うわぁ」
頭を傾げるチエと、(物理的に)引く三月を右之助が見て更に慌てる。
「ち、違うからの?! そもそもワシの好みはネムちゃんの様なダイナマイトスタイルに際どい────」
「────あー、うん。 分かったから演説はやめてネ?♡」
力強く抗議する右之助が長~い話になりそうな雰囲気を三月が素早く遮る。
「どうした三月?」
「ん? 何が?」
「いや、苛立っているような気が────」
「────ううん? 全然♡」
「だが────」
「全然♪」
「そうか」
引きつく笑顔の三月でチエが察した………………
のではなく、本当に天然で納得したらしい。
「………………右之助様、私は護廷十三番隊の隊長ですよ?」
「承知の上じゃ、それに────」
右之助がちょいちょいと卯ノ花を手で呼び、彼女は耳を貸す。
彼が何か卯ノ花の耳元で、容易に聞こえない程の小声で何かを伝えると、彼女の目が驚愕に一瞬見開いてから笑みを浮かべる顔へと戻る。
「そうだったのですか」
「うむ。 言うなれば『サプライズ』、という奴じゃよ」
「良いでしょう…………ですが命が下された場合は『護廷十三隊』の者として動きます」
「十分じゃ。 と、言う訳で宜しくな二人共?」
「感謝する/ありがとう!」
右之助がニカッと笑い、チエと三月が同時に感謝する。
「ちなみにワシの事は『お爺ちゃん』か『お爺様』、或いは────」
「「『ジジイ』で十分だろ?/でしょ?」」
「ガクッ」
チエと三月の返答に項垂れる右之助。
そして────
「────さて、お話が纏まった所で先程の『酒癖』を────」
「────い゛?! か、勘弁しておくれ烈! 『酒は百薬の長』と言うではないか?!」
「右之助様の場合は毒です! 担当の医者である私の言う事は────!」
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カリン 視点
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カリンはイライラしながら崖の中腹辺りにある洞窟内で身を潜めていた。
『彼女』は本来、このように『暗躍』や『黒子役』活動などに適していない。
寧ろその逆で、活発に動くような事柄を好む。
とはいえ、必要があれば出来ない事も無いが………ストレスが半端ない程高まり続けてしまう。
そんな
「あれ? 夜一サンすか?」
入って来た下駄と帽子をかぶった男性を確認したカリンはニヤリと笑みを浮かべる。
「ちげぇよ、オレぁ────」
「────ッ」
ほぼ一瞬にしてカリンの背後に男は回り込み、彼女は自分の首筋に冷たい刃の感覚を感じる。
「誰ですか、あなた?」
「ハァ~…さっきも言いかけた通り、オレは『カリン』。 よろしくな、浦原商店の『店長』? ほ────
「………………」
下駄帽子の浦原は神妙な顔のまま動かずにいると、入り口から別の声が聞こえる。
「ぬ? 何じゃ喜助、もう来おったのか────って誰じゃ、お主?」
その場に現れた黒猫の夜一が目を細め、カリンを見る。
「ったく、毎度これじゃあな………オレは姉貴の……………マイの姉貴の『
カリンが未だに自身の首に当てられている斬魄刀が無いような、落ち着いた振る舞いで『ニッ』と笑顔を浮かべる。
「…………あなたもマイサンと
「んー、ちっと違うな。 オレは────」
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ツキミ 視点
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「…………………………」
ツキミは黙ったまま、またも偶然にも見かけた藍染を尾行しながら瀞霊廷内構造を覚えていった。
そしてとても目の前の常に笑みを絶やさない穏やかな性格、誰にでも分け隔てなく接する人柄、そして他の皆に慕われている青年がまさか『
それは、
「(ホンマ、出来過ぎて怖いぐらいやわ。 本性を観ていなかったら『天然ボケキャラ』として誘っている所やわ)」
彼の周りに慕われている姿はかつての
「(────ダメや。 今は現在に集中せなアカン時や)」
ツキミは頭を振って、余計な考えを断ち切る。
そして角を曲がって行った藍染の後を追うと────
「…………………………」
「────ッ~~~~~~~~~~~?!?!?!?!?」
両手で思わず叫びそうな口を無理矢理覆った。
完全に無表情で、感情が全く籠っていない藍染惣右介が彼女の顔を覗き込むようにジッと視線を下ろしていた。
ツキミはこれに気付き、血の気が引いていくのと込み上げる悲鳴の衝動を必死に抑え込み、耳朶でうるさく脈を打つ心臓の音に集中した。
「(何で? 何でやねん?!
「……………………………………」
「(ヒッ?!)」
藍染が手を彼女の顔目掛けてバッと素早く動かした事に思わず尻餅をつく。
これにより彼女はギリギリで手を躱すが、腰が抜けていたのか足が上手く言う事を聞かずにツキミは藍染を見上げる形になる。
「「……………………………………………………………………」」
沈黙が続く事数秒間、ツキミはある事に気付く。
「(何で周りの奴らは反応せえへんの?!)」
そう、周りの死神達は第三者からすれば奇妙な極まりない行動を
だが誰一人として
「……………………………気の所為か」
「?!」
さっきまで穏やかな好青年の声ではなく、ただ悠々と事務的な声のトーンで独り言のように呟いた声にツキミは驚いて、藍染はクルリと踵を返しながらその場を去る。
「(今のが…………『鏡花水月』の『完全催眠』……………なんか?)」
未だに小刻みに震える体が更に震え始め、ツキミは自分の体をギュッと抱き締める。
「(なんちゅう奴や。 アイツは今、
ツキミは
作者:ストック切れました&仕事の都合で投稿が明後日以降になるかも知れないです
ツキミ:((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
マイ:大丈夫~?
作者:顔真っ青で大丈夫じゃ無いと思う
マイ:そうね~、この頃冷えて来たからね~?
作者:だ、暖房の問題じゃないと思う……………藍染ってマジで怖い奴だから、好きだけど(キャラが)
マイ:え?
ツキミ:え?
作者:ん? ちょ、何で引いているの二人とも?