白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

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勢いで書きました。

割と書けた事にびっくりしています。

……やはり誰もが休憩が必要という事か。 by作者


第31話 切なく散る花はいとをかし? の巻き

 ___________

 

 ??? 視点

 ___________

 

 場所は一護と恋次、そしてルキア達が逃げていた荒野の様な大地の上。

 

 そこでは一護達は追って来て斬魄刀を抜刀していた隊長を驚いた顔で見ていた。

 

「そこどいてくれへん?」

 

「断る」

 

 彼らが驚いていたのは市丸ギンにでは無く、彼と対峙していた()()()()()()()姿()

 

「た、隊長────」

 

「白哉、お前────」

 

「────()()()()()()()()?」

 

「ッ! 行くぞ、一護!」

 

「お、おう?!」

 

 白哉の言葉でハッとした恋次は一護の体を揺すり、共に逃走を再開する。

 

 斬魄刀を抜いた白哉に対して、市丸は微動だにせずただ何時もの笑みを浮かべていた。

 

「へぇー、意外やな。 そこまで義妹思いやなんて」

 

「…………………」

 

「『罪人』やで、あの子?」

 

「奴はソウル・ソサエティの法で裁かれる事となった。 故に、我々隊長格が()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「別にあの子は死ぬんやから、僕達が殺しても問題あらへんと思うけど?」

 

「ならん」

 

 白哉の答えが意外だったのか、市丸は笑いながらも糸目を開ける。

 

「……あかんなぁ。 それ、()()やで?」

 

 実はと言うと白哉は当初、一護がどれ程夜一の下で腕をたったの三日間で上げたのか気になっていて、果たして彼が()()()()()()()()()()()()足りる者か見定めるつもりで後を追った。

 

 それ故に白哉はギリギリの所まで一護の到着を待ち、彼が間に合いそうになければ自らが『双極』を止めるつもりであったが、結局一護は間に合い、その直後に予期せぬ『双極の破壊』が浮竹と京楽によって行われた。

 

 そして一護によって破壊された処刑場と、見知らぬ女性(カリン)に逃がされた一護達を白哉が追う中、突然後から来た市丸の『神槍』がルキアの捕縛というより『殺す』と言った攻撃を白哉が防いだ。

 

 白哉自身、意図していなかった介入だったが……

 

 不思議と悪い感じはしなかった。

 

 それに────

 

「────法の番人として『双極による処刑をされる罪人(朽木ルキア)』を、私情で罰する者を私は止めているに過ぎない」

 

 ────白哉には()()()()があった。

 

「なんや、素直やないなぁ」

 

「貴様に言われたくはない」

 

 ご尤もである。 By作者(キートン山田さんボイス)

 

 市丸の笑みが深くなる。

 

「どう思います、()()?」

 

「ッ?!」

 

 白哉は気付けば()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 自分の体を貫いていた刀身へと視線を移すと共にジワリと広がり始める痛みで冷静になりつつあった白夜の思考に()()()()()声が聞こえてきて、彼は自分の耳を疑った。

 

「どうでも良い事だよ、市丸」

 

「バカ…な。 (けい)は────」

 

 

 ___________

 

 一護、恋次、ルキア 視点

 ___________

 

 

 一護達は荒野の上を()()()()()走っていた。

 

「東仙隊長? どうして、ここに────まさか?!」

 

 東仙要が彼らの前に立ち塞がるまでは。

 

 一護達が双極の丘から瀞霊廷の外へと向かった方向は更木剣八とは反対の方角。

 

 そして彼の鎮圧に東仙は友人であると同時に七番隊隊長の『狛村左陣(こまむらさじん)』と、二人の副官の計四人で出向いていた筈。

 

 つまり意図していなければ()()()()()に出る事は無い。

 

 そこまで考えが辿った恋次が警戒する瞬間、周りが布のような物で覆われたと思えば次に見渡す景色は双極の丘の上だった。

 

「な?! ここは双極の丘?!」

 

「一瞬で、ここに戻ったというのか?!」

 

 急な出来事で驚く恋次と一護、そしてルキアの頭の中で勇音の声が響く。

 

『護廷十三隊各隊隊長、及び副隊長副隊長代理各位…そして旅禍の皆さん。 こちらは四番隊副隊長の虎徹勇音(こてついさね)です! 重症である日番谷隊長を治療中の卯ノ花隊長に代わり、これからお伝えする事は全て真実の事です!』

 

 そこから一護達の脳に直接情報が叩き込まれる。

 

 それらは護廷十三隊員達には信じがたい内容だった。

 

 四十六室全員の殺害と、彼らの()()を傀儡としていながら自分が死んだと偽装していた謀反者の『藍染隊長』、そして────

 

 

 

 

 ────彼の同胞である『市丸ギン』と『東仙要』。

 

 これを聞いた瞬間、恋次と共に一護が構えて彼らの横から声がする。

 

「朽木ルキアを置いて去りたまえ、阿散井君」

 

 それは恋次のかつての上司、藍染惣右介が何時もの()()()()()を浮かべながら歩いてくる姿だった。

 

 今では恐怖の対象の他ならなかったのだが。

 

「藍染……隊長……やはり生きて────一護、ルキアを頼む!」

 

 恋次が呆けている一護にルキアを託すとほぼ同時に()()()()()()の斬魄刀を防ぐ。

 

「な?! ()()()()()────?!」

 

「────ボーっとしていただけかよ恋次?! 何で()()()()()()()()()()『敵』に無反応なんだ────?!」

 

「────邪魔だよ、阿散井君」

 

 またも何時の間にか横を素通りする藍染に振り向かおうとした恋次。

 

 だがこの衝動で()()()()()()()体から血が吹き出して、彼の体が力無く地面へと倒れる。

 

「れ、恋次?!」

 

「バカ野郎! 前に出るんじゃねえ!」

 

 地面に伏せた恋次へと駆け出しそうになったルキアを、一護が彼女の首根っこを掴んで止める。

 

「黒崎一護君。 聞き入れてもらう事は無いと思うが……朽木ルキアを置いて、去りたまえ」

 

「ルキア、離れていろ────」

 

「────一護?」

 

 一護からは目視出来るほどの霊圧が膨れ上がるのを藍染と市丸は面白そうに眺めていた。

 

 不安になっていくルキアの前の一護はそのまま『斬月』を藍染達に向ける。

 

「『卍解』!」

 

卍解(ばんかい)』。

 それは死神として、頂点を極めた者のみに許される斬魄刀戦術の最終奥義とされている。

 そこに至る事が出来る者は数世代に一人と例えられて、彼ら彼女らは例外も無くソウル・ソサエティの歴史にその名を刻まれると言われている。

 

 一護の卍解開放の霊圧余波が藍染達を襲い、土煙が晴れると同時に一護は内心舌打ちを打つ。

 

「ほんま、恐ろしい子やわぁ」

 

「だが()()()()()()だよ」

 

 目の前の藍染達は鬼道で作られた壁の様な物で、一護の初撃を余裕で防いでいた。

 

 一護は卍型の鍔に柄頭に鎖の付いた漆黒の斬魄刀────『天鎖斬月(てんさざんげつ)』を構えると同時に、渾身の一太刀を藍染に目掛けて振るう。

 

「「なッ?!」」

 

 一護とルキアが驚愕する。

 

 藍染が文字通り『指一本』で一護の一撃を防いだと、彼とルキアが認識すると同時に一護の体から斬られた跡の血が吹き出す。

 

「うぅ────?!」

 

「おや、真っ二つにしたつもりだが────」

 

「────い、一護! 恋次!」

 

 ルキアが恋次同様、地面へと落ちていく一護を見て叫び、心の中に冷たい感じが広がって行く。

 

 これを見たのか気付いたのか、ルキアを見ていた市丸の顔はもがき苦しむ獲物を見る蛇の様な物だった。

 

「ああ。 それと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()────」

 

 カラン。

 

「────受け取ってくれるかな?」

 

 地面へと落ちて乾いた音を発する物を、ルキアは緊張と霊圧のあまりに満足に動けない体故、目線だけをそちらへと落とした。

 

義兄……様?

 

 ルキアの見ていた先は純白()()()髪留め。

 ()()()()にのみ着用を許された物、名を『牽星箝(けんせいかん)』と呼ぶ。

 

 それが今、()()()()()塗れて無造作に地面へと落ちていた。

 

「あ、ああ────」

 

 ルキアの心が暗い感情に塗り潰されて行きながらも、フラフラと無我夢中に歩み寄り始めた。

 

 目的の場所へとたどり着いたルキアは髪留めを手に取ると、市丸が口を開ける。

 

「言うた筈やで? 『()()()()()()』って。 ル・キ・アちゃん♪」

 

 虚ろな目のルキアが市丸を見上げる。

 

「せやから、周りの人等が()()()()亡くなるんやで?」

 

「ッ……」

 

「………ざ……けんな……」

 

「ん?」

 

 市丸と藍染が必死に立ち上がろうとしている一護の方を見る。

 

「ああ。 そう言えば、君には実力にそぐわぬ生命力があるんだったね。 でも、()()()()()()()()()()()()()()()。 もう休みたまえ」

 

「や、役目……だと?」

 

 困惑する一護を面白そうに見ている藍染が太陽の出ている空を見上げる。

 

「そうだね……()()話しておこうか────」

 

 そこから藍染は()()どころか、かなりの内容を話した。

 

 一護達が西流魂街に侵入してくる事は分かりきっていたので常にその近辺に注意を払い、部下である市丸が出向かえるように、各隊の配置に手を回していた事。

 

 自動防衛システムの瀞霊壁が下って一度旅禍に侵入されそうになった事により、内側に隊長格が警戒している所に侵入する方法は遮魂膜の強行突破。

 つまり流魂街に残された花火師、『志波空鶴』の花鶴大砲しかない事。

 

 この侵入方法の変更により、一護達は当初より派手な侵入と共に『隊長格が取り逃がす程の者』と言う認識で、瀞霊廷内の殆んどの死神達の注意が『実力者の旅禍達侵入』に集中する事。

 

 そしてそのお陰で隊長が()()()()()()()()としても、取り敢えずは旅禍の対処を優先されるので更に裏で動きやすくなった事。

 

 だがここで一護が疑問を藍染にぶつける。

 

「何で……俺たちが西流魂街から来るって、断言────?」

 

「────決まっているだろう? 西流魂街はかつて、浦原喜助の拠点だったからだよ。 故に彼の作る穿界門で、処刑の猶予時間内に侵入出来るのは西流魂街に自ずとなる」

 

「なん……だと?」

 

 藍染は笑みを崩さずに一護を見る。

 

「そうか。 ()()()()()()()()()()のか。 ならば教えよう────」

 

 藍染は呆けているルキアを無理矢理立たせて、彼女を破壊された双極の磔架の方へと歩かせながら説明を続ける。

 

「死神という種には『斬術』、『白打』、『歩法』、そして『鬼道』の戦闘方法がある。 だがそのどれもに『限界強度』というものが存在する。 どの能力もいずれは魂魄の『壁』に突き当り、成長が止まってしまう。 その『壁』が死神の『限界強度』だ」

 

 藍染は空から視線を一護に戻す。

 

「ならば『この “限界強度”を超える方法は無いのか?』というと、あるんだよ。 その()()()()()が死神の虚化だ────」

 

 一護の脳裏に浮かんだのは、自身が追い込まれた時に『斬月のおっさん』と共に出てきた『白い自分(一護)』だった。

 

 実はと言うと、『原作』と違って白哉と対峙していない一護はそれ以前より更木剣八と初めて相対して追い込まれた時に斬魄刀の始解に精神世界へと潜り込んでいた時に『白い自分(一護)』は『表』に出ていた。

 

 精神世界とは言え、現実世界の時間通過が『ゼロ』になる訳ではないので『白い自分(一護)』が出ていたのはほんの一瞬だけだが。

 

「この一つの仮説に行き届いた僕は色々と試したよ。 

 例えば虚に死神の力を関与したり、自らの霊圧を消す事が出来る虚。 

 触れるだけで斬魄刀を消す事ができ、死神と融合する能力を持つ虚。 

 等々という『失敗作』を次々とね」

 

 藍染のお眼鏡に叶わなかったのか、過去の実験を『失敗作』と彼は断言した。

 

「だがここで、ソウル・ソサエティの常識を超えた物質が話に出てくる。 その名も『崩玉』。 そして()()()()()()()()

 

 知り合いである『浦原喜助』と、先程の『実験内容』を聞いたルキアの意識がはっきりし始めた。

 

「(『触れるだけで斬魄刀を消す事ができ、死神と融合する能力を持つ虚』? それは……まるで、海燕殿の……)」

 

 何故なら『浦原喜助』ですら自らの作品を危険のあまりに破棄しようとしても出来なかった様な物が自分(ルキア)に埋め込まれていたからと藍染が言った。

 

「さて、そろそろ()()だ────」

 

 その時、力を温存していた一護がまたも愛染に飛び掛かる。

 

「『破道の────』」

 

 藍染が鬼道の術名を唱え終わる前に、新たな声がその場に響いた。

 

「『縛道の八十一・断空()』」

 

 藍染の鬼道を閉じ込めるように、白が掛かった半透明な壁が数枚出現し、突進していく一護を守る様に藍染の鬼道を防いだ。

 

「いで?!」

 

 あと一護は盛大に現れた壁に顔面を打った。

 

「流石は元十二番隊隊長、浦原喜助。 九十番台(黒棺)の鬼道を八十番台(断空)で止めるとは」

 

「いえいえ、正確には『断空』をベースに魔改造を施した『別の何か』ッス。 ウチには優秀な鬼道の天才と閃き(インスピレーション)を与えてくれる人材がいますから」

 

「君がこのタイミングで出てくるという事は、()()という事だろうな────」

 

「────あ────」

 

 藍染がルキアの体に腕を入れたと思った次の瞬間、彼の手の中には小さな玉が握られていて、尻餅をついたルキアの体には傷一つなかった様子だった。

 

「さて────ん?」

 

 藍染が手に中にある崩玉からルキアへと視線を戻すと、彼女の呆けた姿はそこにはもう無かった。

 

「怪我は………無いか?」

 

「────ぁ」

 

「ほぅ、まだそこまで動ける体だったとは意外だ」

 

 ルキアを抱えていたのはボロ雑巾のように満身創痍の白哉だった。

 

「ガフッ!」

 

「義兄様!」

 

 白哉が吐血し、ガクガクと笑っていた膝を遂に地面へとつけてしまう。

 

「だけど今ので精一杯の様だね、朽木白哉────」

 

 白哉の方へと歩き始める藍染の斬魄刀に手が添えられ、彼の首に斬魄刀が構えられる。

 

「────そこまでじゃ、藍染」

 

「筋一つ動かせば、即首を刎ねる」

 

 夜一と砕蜂が先程の『藍染謀反』報告を聞き、すぐに双極の丘へと()()された。

 

「成程。 懐かしい顔だね、四楓院夜一」

 

 そこで多少負傷しながらも護廷十三隊の隊長格が次々と現れ始め、藍染の部下の首にも斬魄刀が構えられた。

 

 東仙要は自身の副官である檜佐木修兵に。

 

「東仙! 何か弁明でもあるなら言ってみろ!」

 

「……」

 

 狛村の問いに東仙は何も答えなかった。

 

 市丸ギンは幼馴染の松本乱菊に。

 

「動かないで、ギン」

 

「ありゃりゃ、僕────」

 

「────お願い」

 

「……」

 

 乱菊の多少震える声に市丸も黙り込んだ。

 

「終わりじゃ、藍染」

 

「……………ふ」

 

 そこで藍染が場違いにも笑みを浮かべながら目を瞑り、鼻で笑った。

 

「…? 何が可笑しい」

 

「いや何────」

 

「「────ッ────」」

 

 スッと感情が全く籠っていない目を開けた藍染に対し、夜一と砕蜂が不可解な気持ちで身震いをする。

 

「────まったくもって、『()()()()調()()』と思っただけさ」

 

「ッ! 奴らから離れろ!」

 

 夜一が叫ぶと同時に砕蜂も間一髪で空から降って来た光の柱に藍染、市丸、東仙の三人が包まれた。

 

 光の柱の正体は虚の『反膜(ネガシオン)』。

 正確には大虚(メノスグランデ)が使う技で、光の中は外とは隔絶された異空間となる。

 

 そして異空間故に()()()()()()()()()()()()()()

 

 そう山本元柳斎が藍染達の捕縛を再度試みる死神達に説明する。

 

「降りてこい、東仙! 答えよ! 貴公は亡き友の為に……『正義』を貫く為に死神になったのではないのか?! 貴公の『正義』は何処に消えて失せたのだ?!」

 

 怒りを持ったまま、狛村が東仙へと叫ぶ。

 

「狛村。 私のこの眼に映るのは今も昔も同じ事。 ()()()()()()()()()()()()だ。 そして『正義』は常にそこに在り、私の歩む道こそが『正義』だ!」

 

「ッ! 東仙ッッッ!!!」

 

 狛村が東仙を睨むながら歯をむき出しにして、怒りを露わにする。

 

「藍染! 大虚(メノスグランデ)と手を組むとは、地にまで堕ちたか?!」

 

 浮竹が『信じられない』と言った様子で藍染に問う。

 

「『()()()()()()()』、だと?」

 

「「「「ッ」」」」

 

 ここで初めて藍染の表情が変わった事に、その場に居た死神達が息を吸い込む。

 

 藍染の顔が一瞬『怒り』に変わったと思いきや、次は『憂鬱』に似た物へと変わる。

 

「それは傲りが過ぎると言う物だぞ、浮竹。 始めから、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そうか」

 

「「「「ッ?!」」」」

 

 ここで新たな声に死神達がビックリする。

 

 一護とルキア以外。

 

「「チエさん?!/チエ?!」」

 

 ___________

 

 ??? 視点

 ___________

 

 藍染はこの新しい来訪者と()()()()に目を細める。

 

「ほぅ」

 

「嘘……ですよね? 悪い冗談ですよね?」

 

 光の柱に包まれた藍染におぼつかない足取りでチエと共に歩く。

 

「何か言って下さい! 藍染()()!」

 

 目を見開きながら涙を流す雛森と、無表情のチエが十歩程の所で歩みを止める。

 

 カランッ。

 

 少し離れた場所では乾いた音と共に地面に落ちる杖に視線を釣られた雀部が、両目を大きく見開き、口をポカンとしていた山本元柳斎にびっくりした。

 

 雀部が()()()見る表情だったからだ。

 

「ば、馬鹿な」

 

「え、丿字斎(えいじさい)先生?」

 

 どれ程ビックリしていたかと言うと、山本元柳斎をかつてのあだ名で雀部が呼ぶほど動揺させるモノだった。

 

「雛森君か。 悪いが、君の今見ているのも『私』だよ」

 

「そ、そんな! だって、藍染隊長は……藍染隊長は────!」

 

「────君の知る『藍染惣右介』など、()()()()()()()()()()()()()

 

「ッ!」

 

 雛森が息を飲み込み、両手で口を覆って静かに涙を流しながら体が震え出す。

 

 そんな様子の彼女に藍染は言葉を続ける。

 

「『憧れ』など曖昧な物で、不確かな感情に過ぎない。 故に『憧れ』は『理解』から最も遠い感情だよ、()()()

 

 そこでチエは自身の持っていた刀を鞘から抜き、水平に構える。

 

「何処の誰か分からないが、無駄だよ」

 

()()()()()()()()()()()()

 

 次の瞬間、風を切るような音と共に地面が爆発する。

 

「「ッ?!」」

 

 東仙が仏頂面から驚いた表情になり、市丸は両目を開けながら真剣な顔になる程の事が起きた。

 

「成程────」

 

 藍染は余裕の笑みのまま、自分の()()()眼鏡を手で取り、眼鏡をギリギリで斬った刀身を……と言うか刀の持ち主を見る。

 

「────『やってみなければ分からん』……か」

 

「………………」

 

 突き破った光の柱からチエが静かに刀を抜きとって、藍染とチエが互いを無言で見つめ合う。

 

「「………………………」」

 

 この沈黙を破ったのは藍染。

 彼は立っていた地面ごと浮き始めた事により、双極の丘に残された者達を見下ろす形へとなる。

 

「では宣言しよう、死神と旅禍の諸君。 これからは────」

 

 藍染が手で下ろした髪の毛をオールバックスタイルへと変える。

 

「────私()が天に立つ」

 

 藍染達が空間の裂け目に消えて行くのをチエと雛森以外の者達が見届ける。

 

「う……うああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「………………」

 

 泣きじゃくる雛森を、チエはただ無言で傍に歩き、自身の胸に抱き寄せていた。

 

 そんな中、一護は自分の傷の痛みを忘れるほど見入っていた。

 

 それは至極単純、チエに。

 

 明らかに異質な『()』に臆する事無く、立ち向かうその姿はかつての雨の日を彼に思い出させていた。

 

 そんな凄い奴を『小学生(幼少)の頃から知り合いである』という事を誇らしく思うと同時に、『()()()()()()()で何も出来なかった自分』を情けないと思った。

 

 夜一と浦原はチエを更に危険視した。

 大虚の『ネガシオン』は自分達が知りえる限り、誰一人として破った事の無い『完全離脱』の類。

 

「そんな物をいとも簡単に破った彼女は何者だ?」と夜一達だけでなく、過去に大虚と対峙した死神達は思った。

 

 等と言った感情や思惑が渦巻く中、場違いな陽気な態度の声が響く。

 

「いや~、おっつー!」




浦原:いや~、やっと出番ッス!

作者:……………

浦原:おやおや~? アタシが出た事に怒っていらっしゃる?

夜一:いや、こ奴は単純に寝不足で気を失っとるだけじゃ

浦原:目を開けながら?

夜一:お主もそうなる時あるじゃろう?
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