白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

39 / 193
第37話 (Mis)Understanding (前編)

 ___________

 

 ??? 視点

 ___________

 

 三席の平塚、四席の櫃宮、そして五席の田沼の三人が返り討ちに会った次の日の明朝、三人の容態は当初思われていたより軽傷な打撲だけだったらしく、朝一で退院出来た三人は平塚を先頭に、五番隊舎へと重い足取りで歩いていた。

 

「「……」」

 

 そこで自分達を見ては視線を逸らすか、嫌な物を見る目の他人の態度を横目で見ていた。

 人影が少なくなったところで三人の中で一番ガタイの良い平塚が口を開く。

 

「……なぁ、櫃宮に田沼……俺達って、何してんだろうな?」

 

「どういう事?」

 

 櫃宮は頭を傾げ、今度は田沼が喋る。

 

「単純な事だよ櫃宮さん。 僕達五番隊は、藍染隊ちょ────()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 とすれば『彼に最も近かった者達も謀反者か?』、もしくは『彼の事を疑わなかったのか?』という疑惑の眼で僕達は見られる────」

 

「────でも私達(五番隊)は無関係だって、それに…他の皆だって────!」

 

「────人は自分達の非を認めたがらない生き物なんだよ、櫃宮さん。 だから自分達より他人の、しかも言い返しにくい人物達を批判した方がずっと楽で簡単なんだ」

 

 田沼の説明で嫌な考えが櫃宮の頭を過ぎて、彼女は歩みを止める。

 

「そんな……そんな事って………」

 

「だから言ったろ? 『俺達って何してんだろうな?』って」

 

 この三人、実はルキアや阿散井や松本に市丸のように、流魂街で孤児同士が互いに身を寄せて空き家を転々と住んでいた頃からの付き合いだった。

 

 長い付き合いの櫃宮と田沼からすれば、憂鬱(弱気)な顔をしながら空を見る平塚はこれでたったの二度目。

 

 三人は物心がついた時から居た場所は北流魂街の70地区。

 お世辞にも良い所とも言えず、『原作』より幾分かマシな流魂街で、治安や死後の親族同士を引き合わせる死神もいればその逆も然り。

 死神の気配が全く無い流魂街の地区もある。 

 

 つまりは『原作通り』の地区もあれば、それ以上(以下)もある。

 

 そんな場所で子供三人。 

 生きる事が難しい環境で、小さい頃から既にガタイが良くて怖いもの知らずな平塚が二人を率いて、中でも頭の切れが良い田沼が参謀役で補佐、数年経つ頃には孤児グループのリーダー格になり、櫃宮は所謂幼少組の束ねる(姉御)役となった。

 

 平塚達の居た孤児グループが子供達のみで結成した割に大きくなり、日頃の行いやその地区では珍しい作物を育てるなどして目立ち過ぎた頃。

 彼らを良く思わなかった大人や青年グループ達が珍しく団結し、平塚達の空き家をある深夜に襲撃。

 見張りは交代直前に黙ら()され、出入口は全て外から封鎖した後に火が点けられた。

 

 結果、最初のパニックで窓から出ようとして者達から亡くなっ(撲殺され)て行き、田沼の掛け声で残った者達は一斉に一つのドアを無理矢理突き破り、蜘蛛の子を散らすように各々が逃げて行った。

 

 平塚達が息を切らして周りを見ると別の地区にまで逃げていたらしく、三人の周りには自分達以外誰もいなかった。

 

 その時、平塚は初めて先程のように憂鬱な表情で夜空を見ていたのが一度目。

 

 櫃宮と田沼はここで初めて、体格は一回り大きくて一度も泣く事や弱音を吐かなかった平塚が、まだ自分達とさほど変わらない年齢と、痩せ我慢してしまう精神を持っている事に気付く。

 

 最も、このような話は(地区にもよるが)流魂街では珍しくない、()()()()()()()である。

 

 そこから三人は死神を共に目指す事になり、幸か不幸か三人は何時も一緒に居る事が出来た。

 

 流魂街育ちの彼らも見習い時代は苦労したが、後に彼らは五番隊に無事苦労の末に入隊し、普段は死神業としてはオマケ程度の流魂街の見回りや住民である魂魄の面倒等を良く見たり解決する事で『良い死神達』と認知されて多少の有名人となる。

 

 そんな彼らが所属する五番隊の隊長は『謀反者』と認定。

 

 瀞霊廷ではまた昔の見習い時代のように軽蔑するような視線と噂話。

 そして新しく来た『臨時隊長代理』に挑発されて、得意としている筈の連携が効かないどころか瞬く間にコテンパンにやられた。

 

「「「(どのような面をして隊に戻ればいいのだ?)」」」

 

 そんな思いをしながら朝、隊舎に帰って来る彼らを入り口で待っていたのは────

 

 

 

 ────雛森副隊長と、『臨時隊長代理』のチエの二人だった。

 

 平塚が二人の前で止まり、口を開けて櫃宮が彼に続く。

 

「……何ですか?」

 

「あの……私達に何か────?」

 

「────今日からお前達に雛森副隊長の補佐を頼もうと思ってな」

 

「「…………………????」」

 

 平塚と櫃宮がチエに言葉に困惑する顔をして、田沼は罰が悪そうに地面へと視線を下す。

 

「………成程。 そういう事ですか」

 

「どういう事だ、田沼?」

 

「簡単な事だよ平塚君。 この人(渡辺さん)は隊長代理に就いて間もない。 なら普通は雛森副隊長から引き継ぎなどをするけど、今の五番隊にそんな余裕はハッキリ言ってない。 だったら五番隊で長く居た僕達も巻き込めば良い。 だけどすんなりとそれを受け入れる訳が無いから、僕達を『他の隊員達の前で完膚なきまでに叩き潰せば』…………要するに脅迫だよ────」

 

「────??? お前は何の事を言っているだ?」

 

 チエが?マークを出すのに田沼はニヒルな笑みを浮かべる。

 

「今更知らん振りですか?」

 

「確かにお前達三人は長らく隊に居た事もあるから頼み事をしたが、それだけでは無いぞ?」

 

「「「え?」」」

 

 田沼の皮肉たっぷりの言葉に帰って来たのは意外な、()()()()()()()だった。

 

「お前達三人だけ昨日、私に対して勇気を持って立ち向かう志が良かったからな。 ()()()()()()()()()()()()()()()()。 雛森副隊長と私を、手伝ってくれはしないか?」

 

「「ッ?!」」

 

 平塚と田沼が驚いている間、櫃宮は呆けている様な顔をして、雛森が口を開ける。

 

「その……三人が宜しければで良いのですけれど────」

 

「────良いですよ。 ね? 平塚君に田沼君?」

 

「え? あ、ああ……櫃宮が、それでいいのなら……」

 

「………」

 

 平塚が呆気に取られ、田沼は黙り込む。

 

「そうか。 詳しい話は隊首室でしよう」

 

 チエが踵を返して歩き、雛森がぺこりと頭を三人に下げてチエの後を追う。

 

「……………ねえ平塚君に田沼君? あの『臨時隊長代理』、仕草や表情は全然似ていないけど────」

 

「────うん、どことなく藍染()()に似ているね」

 

 それはかつて、藍染が三人に言った言葉だった。

 

「……俺達を『高く評価している』……か」

 

 先にも書いたように、三人は流魂街出身。

 

 彼らを見下さず、ちゃんと一人一人を個々と視ながら言葉にして初めて認めた死神は藍染隊長だった。

 

 そこから席官の三人は雛森がするような連絡や報告係に、隊長の補佐をする事となる。

 だがそれでも自分達を造作もなく倒した本人には苦手意識があり、他の五番隊の皆のように誰一人として出来れば顔を合わせたくは無かった人物であった。

 

 櫃宮が()()()()()()緊張(ビクビク)しながら五番隊の定時報告で隊首室の前に来ていた。

 

「渡辺さ────渡辺隊長()()はいらっしゃいますか?!」

 

 余りの緊張から平塚のように『渡辺さん』と呼びそうになるのを呼び直して、「(うわぁ、とうとうやっちゃった~!!!)」とテンパる櫃宮。

 

「櫃宮三席か、入れ」

 

 だが彼女の予想とは違い、帰ってくる声は何時ものチエだった。

 

「し、失礼します!」

 

 櫃宮がギクシャクした動きで扉を開けてから一度礼をして入ると、中には別々の束に纏められていた書類のを前にしたチエが一人だけいた。

 

「て、定時報告等を持って参りました!」

 

「そうか。 そこに置いてくれ」

 

 チエが部屋の中のローテーブルを指差して、櫃宮はガチガチのまま書類を置いて、興味本位からチエの読んでいた書類を見る。

 

「(あれは……五番隊の報告書や皆が見習い時代の書類? もしかして、これ全部私達────?)」

 

「────お前は」

 

 櫃宮の体がビクリとする。

 

 一瞬自分が盗み見していたのがバレたのかと思ったが……それとはまったく違うモノだった。

 

「お前は……私が怖いのか?」

 

「ッ」

 

 櫃宮が素早く息を吸い込み、冷や汗を掻く。

 

 だが彼女は未だに俯いたままで、目を合わせなかった。

 

 チエも書類から目を離していなかったので、気付かなかった。

 

「私が雛森以外の、五番隊の皆に怖がられているのは知っている。 敬遠されている事も……()()()()()()()()

 

 パサリと、書類の紙が動く乾いた音とチエの言葉が櫃宮の耳に届く。

 

「これで皆の能力が上昇するのならば私は構わなかったが、逆に低下するのであれば…………私としては………………………改善すべきだと、思う」

 

「ぇ」

 

 櫃宮が思わず顔を上げてチエの方を見ると、無表情なチエがいつの間にかしっかりと自分の顔見ていた事で先程の言葉が幻惑でも何でもなかった事に今更気付く。

 

 櫃宮からすれば、その姿のチエからは『恐い』と言うよりも、『迷い』に近い何かを感じた。

 

 昔、流魂街で大勢の子供の世話をした名残からの『直感』めいたものだった。

 確証も根拠も何ないものだったが……

 

「………………」

 

 自分をジッと見るチエに櫃宮は賭けに出て、思い切った事を言う。

 

「えっと……隊長()()は副隊長の事を『雛森』、と呼んでいますよね?」

 

「そうだ。 彼女が頼んだ事だからな」

 

「でしたら、隊の者達を名前で呼んでみたらどうですか? 『さん』付けや『君』付けなどして?」

 

「成程……定時報告ご苦労、()()()()────」

 

「────ぁ」

 

 チエが何とも無い様に言った事はそこにいた櫃宮からすれば、チエが素直に自分の提案を受け入れて即採用したのが意外だった。

 

 そこからチエは以前の書き写した様に五番隊の者達を全員間違える事無く名前で呼び始め、話を聞いたりしては考えを伝えたり、労いの一言を言ったり等をしていた。

 

 臨時隊長代理になって数日間だけではあるが、その変化は決して小さいものではなく、これ等が「あれ? なんか第一印象と違うな?」と言う思いに繋がる事となる。

 

 そして現在、そんなチエだからこそ無茶な訓練等に対して愚痴っても、五番隊の者達は悪口などを言う事を殆んどしなくなった。

 

「徹底しているねぇ~」

 

 京楽が面白可笑しく笑みを浮かべる。

 

「当たり前だ。 前にも言ったように、『任を任されたからには出来る事はやる』と」

 

……うちの隊長にも身習わせたいですね

 

「ちょ、七緒ちゃん?! 冗談はヨシコちゃんね?!」

 

 副官の言葉にギョッとする京楽。

 

「そうか。 なら今度、重國に話しておこうか?」

 

「ええ、是非お願いします」

 

「や、やめてくれよ二人共ぉ~? ねぇ~?」

 

 いよいよ山じい(重國)の名が出て来て、本気で冷や汗を流す京楽だった。

 

「あの京楽隊長を……さすが渡辺隊長です……」

 

「(うーん……やっぱりヒナモちゃんの笑顔良いな~)」

 

 最後は笑顔の雛森に対して、内心和む三月だった。

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

「………………」

 

「わ、渡辺隊長は迷惑でしたか?」

 

「何の事だ?」

 

「雛森副隊長は分かっていないな、チエは迷惑であればズバっと言うのだぞ? …………躊躇も無くな」

 

 時は上記とまだ同じ日で、場所は瀞霊廷内でもお店が並んでいる大道路をチエとルキア、そして雛森の()()が横並びで歩いていた。

 

 そう、()()()副隊長である雛森も一緒に居た。

 

「……そういえば朽木さんは渡辺隊長を、『隊長』と呼ばないんですね? 名前で……しかも呼び捨てなんですね?」

 

「ん? ああ、そうだな。  『現世での呼び方のままで良い』と、チエが言ったのでな」

 

 何処か刺々しい言い方をする雛森に、サラッと答えるルキア。

 

「……私も、出来れば名前で────」

 

「────どうした雛森?」

 

「ひゃ?! う、ううん! 何でもない!」

 

 何故この三人が共に歩いているかと言うと、ルキアは三月やチエ達に恩返しをしたかったのだが、皆の時間が合わない上にチエがあまりにも忙しかったので上手く言い出せなかった(ちなみに三月は時々不意打ちや奇襲して来るマユリやネムから逃げたりなどで忙しかった)。

 

 だが一護達と京楽達が来た事と、何より()()サボり魔である京楽が珍しく自分から『五番隊の面倒は僕()が見るから出かけてきなよぉ?』と申し出をしたのだ。

 

 これには副官である伊勢の眼鏡が顔からズリ落ちそうになる程の出来事で、彼女が思わず近くに居た一護達に『絶対に何か企んでいる隊長(京楽)を私と共に見張ってください』と頼み込むほど。

 

 余談ではあるが、このような事を他人同然である一護達にお願いする伊勢の行動に対して、決して少なくはないショックを京楽は受けていた模様。

 

『そんなに驚く事じゃないでしょ七緒ちゃん? 僕ってそんなに信用できないのかぁ?』

 

『ええ、出来ません』

 

『……………………そ、それに渡辺隊長()()ってロクに瀞霊廷内を出歩いていないんだろぉ? 周りを見に行っておいでよぉ?』

 

 即答の伊勢に顔を引きつかせる京楽がその流れのままチエに提案した。

 

『で、では! 不肖、自分(雛森)が志願しますッッ!』

 

『そうだな、では礼ついでに私も行くか』

 

『え』

 

 全力で嬉しくなりながら言う雛森と、元々案内をする気だったルキアもチエと行く事に固まる雛森。

 

『じゃ、じゃあ俺も────』

 

『────僕は阿散井君に手伝って貰いたいんだけどねぇ~?

 

『う゛』

 

 尚恋次も行きたがっていたのだが、生憎と彼は京楽に強く言わ(脅迫さ)れて五番隊舎に残る事に。

 

「(そう言えば去り際の奴の、『青春、青春。 良きかな良きかな~』はどういう事なのだろう?)」

 

 そんな事を思い出すチエの意識が雛森の言葉で現在()へと戻る。

 

「あ! 渡辺隊長、あそこにケーキ屋さんがありますよ!」

 

「ほう。 雛森も、甘いものが好きなのか?」

 

「『も』って……渡辺隊長も好きなんですか?」

 

「ああ。 それと私は名呼びでも構わんぞ?」

 

「え?! じゃ、じゃあその……チ……チ……『渡辺さん』で────」

 

「────おお! チエ、あそこに限定版白玉がまだ販売────!」

 

 グッ。

 

「ではあのケーキ屋さんに────!」

 

 グッ。

 

「「ん?/え?」」

 

 ルキアががっしりとチエの腕を掴んでそちらへと誘導しようとした同じ瞬間、雛森も同じくチエの腕を掴んで反対方向へと誘導しようとした。

 

「……ちょっと朽木さん?」

 

「雛森副隊長?」

 

 キョトンとするルキアに対して、ニッコリとする雛森の笑顔をチエが見ては思う。

 

「(何故だろう? 雛森の笑顔を全く『笑顔』として感じとれん)」

 

「先に近いケーキ屋さんから寄っても、白玉は逃げませんよ?」

 

 これに対してルキアはムッとする。

 

「何を言うか。 あの店の白玉ぜんざいは毎日二百個限定での販売で、何時もはこの時間帯までには売り切れる────!」

 

「(────と言うか、二人の引っ張る力が段々と強まっていくのは気のせいか?)」

 

 チエはかなりマイペースな態度で左右に引っ張られる腕&現在の状況を平然と受けていた。

 




作者:短くてすみません……良いキリの所だったので……

平子:この『チエ』って子、やっぱ色んな意味で怖いわー

ライダー(バカンス体):やはりお主もそう思うか!

平子:……何やこのゴツイおっさんは? 京楽の声まで似おってからに

作者:では次話を書きますのでまたお会いしましょう!

ひよ里:ちょっとまていこのクソ髭! 何勝手に人の菓子食べとんねん?!

作者:………………この部屋の費用が……………
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。