白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

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い、勢いが止まらなかったッッッ!!!!


第41話 扉の向こうは

 ___________

 

 ??? 視点

 ___________

 

「「ぎゃあああああああ!」」

 

「えええい、足を止めないかネ?! 君達()ただ話を(解剖)したいだけだというのニ!」

 

 その少し後、三月とクルミは全力疾走でマユリとネムから逃げていた。

 

 

 

 時は少し遡り、女湯を堪能した三月達がチエと雛森達と共に女性更衣室の入り口を出るとまたもや扉があった事に違和感を若干持っていたが、そのまま二つ目の扉を開けると────

 

 「────やぁ、いらっしゃイ♪ 私の研究室へようこソ! 私は君達を大歓迎するヨ!」

 

 ────そこはマユリの研究室へと繋がっていて、これ以上かつてない程のニッコリ(歪んだ)笑顔のマユリが立っていた。

 歯と目がキラキラと光っているような勢いだった。

 

 だが彼女達(三月とクルミ)にとってもう完璧にジャンルがホラー以外のなんでもない。

 

「「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」」

 

 最近、彼にしつこく追われていた三月と通常は落ち着いている様子が特徴のクルミでさえも『恐怖対象』に相対するかのように叫んだ。

 

「おー、先日ぶりですねぇ」

 

「ちょ、リカ?! お前、こんな奴と会っていたんか?!」

 

 驚愕するツキミにリカが答える。

 

「何を言っているのですツキミ。 彼ほどの理解者は稀ですよ?」

 

「マジかテメェ」

 

「『本気』と書いて『本気(マジ)』です。 ブイ」

 

 カリンの問いに対して、リカにしては珍しいジョークの混じった返事と(ブカブカの袖の中から)手でブイサインをしながら返した。

 

「……えーと……私達は、どう────?」

 

「────大丈夫です雛森副隊長。 ()()マユリ様はあの二人(三月とクルミ)にしか興味は御座いませんから」

 

「そうか」

 

 ネムの淡々とした説明に納得するチエの前ではマユリがずんずんと三月とクルミの二人に迫っていた。

 

「さァ! 私に見せたまエ────!」

 

 マユリがググイーッと迫る。

 

「────何も無い所から物を出す術ヲ! 滅却師に似た技ヲ! (ちまた)で噂になっている『天馬』とやらヲ!」

 

 マユリが一行ごとに大量の冷や汗を掻く二人(三月とクルミ)にどんどん迫る。

 

さァ(今すぐ) さァ(今すぐ)!! さァ(今すぐ)!!!

 

 今度の迫り具合で普段は化粧で隠れているマユリの眉毛と地毛が見えるほど。

 

 子供が無邪気に玩具売り場に放たれた様子そのものである。

 

 そして二人(三月とクルミ)はさっきお風呂から出たばかりにも関わらず、既に汗だく状態。

 

「「あ、いや、え~~~~~~~~~と」」

 

 何時もより狂気に満ちた表情と目をするマユリの迫力にしどろもどろになる金髪少女二人(三月とクルミ)

 

「何、時間はたっぷりとあるサ! ささ、何も躊躇する事は無いヨ♪ 私の研究室へ────

 

「「────フンッ────!」」

 

ドゴガシャン!

 

 

「────あ! 待て、逃げるな貴様ラッ! 来い、ネム!」

 

 三月&クルミは横にある更衣室の壁を文字通り突き破り、上記に記した通りに全力疾走でマユリと彼に続くネムから逃げていった。

 

「……………あんなに嬉しそうな涅隊長、私初めて見たわ」

 

「私もです……」

 

 ポカンとする松本に、目を見開いた伊勢が一言の感想を上げる。

 

「もう…ストーカーじゃね、『アレ』?」

 

「鳥肌が立ってんねんけど、僕。(バイキンマンの真似、頼まなくてホンマ正解やったわぁ~)」

 

 呆れるカリンに今度はツキミが続く。

 

「うーん、ボクと喋っている時よりも生き生きと楽しそうにしていますねぇー。 (流石()()()()()』)」

 

「え、えーと────?」

 

「────気にするだけ無駄だ、雛森」

 

 リカの一言に困る雛森、そして平然と『無事』を伝える(?)チエ。

 

 因みにチエの脳裏に浮かぶのは別の変人(蒲原)の姿だった。

 

「うーん、やっぱ『姉妹』と言われても……しっくり来ないわねぇ?」

 

 松本がチエを横目で見ながら問いかける。

 

「まぁ、()()()()()()()()()からな」

 

「ふぅーん……やっぱさっき、風呂場で三月ちゃんが言っていたように『()()()()』なの?」

 

「そうだ」

 

「………………」

 

『事情持ち』と聞いて一瞬織姫の目がチラッとチエの方を見る。

 

 ここでの説明はチエが以前、自分なりの考えと解釈などで茶渡や織姫にしたようなものをアレンジしたモノだった。

 

『義兄』の事は省いていたが。*1

 

「あ、私はこっちですので」

 

「あ。 じゃあまたね、『()()()()()』!」

 

 元気よく別れを告げる織姫に伊勢の顔が引きつる。

 

「あの……………出来れば……別の────」

 

「────あ、そっか! またね、『伊勢ちゃん』!」

 

「………………………………ハァ~…………はい、また」

 

 夜なのに眩しい太陽の様な織姫の満面の笑顔に、伊勢は諦めた溜息を出してから別方向へと歩き、松本が織姫に抱き着く。

 

「やるじゃん貴方、あんな堅物相手に押し勝つなんて?! 気に入ったわ!」

 

「え? えへへへへ~」

 

「……あかん。 こいつら見てたらマイの事を思い出してまうわ」

 

「ああ。 同感だぜツキミ」

 

「「もげろ」」

 

 ツキミとカリン(滑走路組)はじゃれる松本と織姫(ボインボイン組)をジト目で見ながら歩く。

 

 

 

 京楽は銭湯から出ては帰り道を一人で歩く中、鼻歌を歌っていた。

 

「♪~」

 

「隊長!」

 

「ん~? って、七緒ちゃんか」

 

 後ろから同じく銭湯から出て来たらしい伊勢が京楽に追い付く。

 

「隊長、あの『隊長代理』────!」

 

「────女の子なんでしょ? 知っているよぉ? 何せ男性更衣室で脱ぎ始めて、偶然来た黒崎一護のおかげで間一髪のところで分かった事だからね。 いや~、皆の慌てようは傑作だったよぉ? 若いねぇ~」

 

「…………………」

 

「ん? どうしたんだい七緒ちゃん?」

 

「……()()()()、最低です」

 

「…ハハハ、これは手厳しいね。 でも大丈夫だよ、七緒ちゃんが考えているような事は無いさ」

 

 伊勢の本気で軽蔑する視線に対し京楽は乾いた笑いを上げ、弁解する。

 

「………………隊長、何かありました?」

 

「ん~? どうしてそう思うんだい?」

 

「隊長がそのように笑う時は『何かあった時だけ』ですので」

 

 伊勢の脳裏に浮かぶのはおぼろげに覚えている『何時か(100年前)の京楽』と、読書仲間(前副隊長)が消えた昔の出来事だった。

 

「…………ん~、ちょっと思う所があっただけさ。 さてと! 家の者達相手に話を僕と合わせてくれるかな、七緒ちゃん? 今日、僕は飲んでもいないし、珍しく隊長っぽい事をしていただけ────」

 

「────その前に、隊長の耳に入れておきたい事があります」

 

「……何だい、七緒ちゃん?」

 

「あの金髪の者達と、噂の『隊長代理』との関係についてです」

 

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

「摩訶不思議ちゃん達や~イ? どぉこぉかぁナァァァァァ(出ておいデェェェェェェ)~?」

 

(スイーツに釣られた)ネムと逸れたマユリは皿のように見開いた目で周りを見ながら、夜の静けさに埋まっている瀞霊廷内で先の『藍染惣右介の謀反』騒動で最も被害が多かった区の中を彷徨っていた。

 

 カツーン。

 

 耳をつんざくような、極小音がマユリの真後ろからして、彼は『グリン』と、首()()を180度回す。

 

 顔の昇天しそうな顔がこの現象と共に更に『ホラー感』を上昇させていた。

 

 もう化け物である。

 

 否。 既にある意味『化け物』だったので、『()()』になるか?

 

ふひゃはははははははははははははハ(見つけたミツケタミつけタミツケた見つけタ)!」

 

 マユリは体制をそのままで瞬歩を使い、(体の向きから見て)後方へと瞬く間に消えていく。

 

 マユリの歓喜(狂気)に満ちた笑い声がその場から去って数分後、瓦礫に埋もれた所で場違いな錆びたドラム缶とオレンジが入っていたようなデザインの段ボール箱へと景色が変わる。

 

「「…………………………………………………………………………フゥ~~~~」」

 

 先程のドラム缶と段ボールの中から、三月とクルミが安息の溜息を出しながら姿を現す。

 

「災難だったな」

 

 「「ぎゃ────ムグゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ?!」」

 

 いつの間にか近くの瓦礫に腰を下ろしていたチエの声に叫びそうになるのを必死に二人は我慢する。

 

「どうした二人とも?」

 

 「もおぉぉぉぉぉぉぉ!!! 居るなら『居る』って一言先に行ってよぉぉぉぉ?!」

 

 「危うく心臓発作が起きるところでした」

 

 小声でチエに怒る三月と、何時もの調子が戻りつつあるクルミにチエが困惑の目を向ける。

 

「なぜ小声なのだ?」

 

 「「あいつ(マユリ)に聞こえたら嫌じゃん」」

 

 チエが目を閉じる。

 

「……心配しなくても、奴は今日のところは諦めたみたいだぞ? ……この方角は右之助の屋敷だな」

 

「げ、最悪」

 

「右之助さんが戻っていれば良いけど────ってチエは何をやっているのです?」

 

 クルミの指摘と視線に三月が釣られて見ると、チエは宙を手探りで何を探しているかのように手を振っていた。

 

 第三者からすると『頭がおかしい人』の動作である。

 

「いや……()()()()()()()のだが────」

 

「────え? そう? でも私────」

 

 ビリッ

 

 紙が破れるような音と共に空中に歪みが生じる。

 

「「え」」

 

「あった」

 

 ビィィィィィィィィィィッ!!!

 

 今度は紙が破れる音というよりも、薄いプラスチック、又はキャンバスシーツが引き裂かれる音が鳴り、丁度人が通れる大きさになるまでチエが()()引っ張る。

 

「これは……『空間隙(くうかんげき)』? 三月、『この世界(BLEACH)』にもこのようなモノが有るとは聞いてな────」

 

「────()()()()

 

「ん?」

 

 チエが三月を見ると、呆気に取られたような表情になっていた。

 

「私は、()()()()

 

「……『本体』、どうします? ()()()()ようですが、()()()()()()()

 

「……そうね、ここは慎重に────って、ちょっとぉぉぉぉぉぉぉぉ?!」

 

 三月が迷っている内にチエはさっさと『穴』の中へズカズカと歩いて行く。

 

「クルミは何かあった時の為にここで待機! 私との『パス』に異常を感知したらプランBに移行していて!」

 

「了」

 

 それを最後に三月がチエの後を追い、穴の中へと入る。

*1
第21話




マユリ:貴様! 話が違うではないカ?!

作者:く、首ぃぃぃぃ! こ、呼吸がッッッ!

ネム:このお茶と菓子美味しいですね

作者:ギブギブギブギブギブギブギブギブギブ! 和んでないで助けて!

ネム:無理ですね

マユリ:せめてこの奇妙な空間の解析をさせロ!

作者:ダメ!

マユリ:ならばあの二人の空間に同行させロ!

作者:ぜっっっっっっっっっっっっっっっっったいにアカン!!!

マユリ:……………………ここに丁度試作中の超人薬があるのだが非検体がなかなか集まらなくてネ。 志願者がここにいて良かったヨ

作者:……

マユリ:おや、だんまりかイ?

リカ:恐らくは『NOだ!』と言いたいのですけれど、マユちゃん相手だから躊躇っているのでは?

マユリ:ふむ。 やはりリックンもそう思うかイ?

作者:ちょ、あだ名呼び同士────というかお前、どっちの味方やねん?!

リカ:今も昔も『自分の』味方ですが?

作者:Sh〇t。

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