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一護、チエ、ルキア 視点
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「ね、
一護の部屋にルキアが入った瞬間、コン(ぬいぐるみの体)が彼女の
が、ルキアは彼の平べったい頭を空中で鷲掴みにし、床へと叩きつけてから足で踏みつける。
「お前も相変わらずだな、コン。」
「グヘ、グヘへへ。
どこか
その間にコンをチエが抱き上げて、彼を自分の頭の上に乗せる。
「フ~ム。 こうしてはっきりと見るこの部屋も久しぶりだ! 『
ここでルキアの言う『
「変な言い方するなよ。」
ただし聞き方次第では意味深な事に聞こえなくもない。
「このベッドも中々良いな。」
「人の部屋に入ってすぐ勝手に人のベッドに座んなよ。」
「お! この押入れがよさそうだな!」
彼女が次に目を付けていたのは『原作』では大変お世話になった
「無視すんなよ。 というか『よさそう』って、何にだ?」
「??? もちろん、私の寝床にだが?」
「……」
そして普通ならここで何かを言う一護だが、彼はドア越しからでも聞こえてくる声達に気を取られ、そっちに聞き耳を立てていた。
『あの子とお兄ちゃん、どういう関係なのかな、お父さん?』
『よくぞ聞いた遊子! 聞こえた内容によるとそれは勿論、男と女の────』
『────ンフフフ~。 一護もお年頃だからしょうがないとして、
『どああああああ! 今の無し! 無しだから
『お前ら二人に母さんもそろって、一兄の部屋の前で何しているの?』
『あら夏梨ちゃん、おかえりなさい。 一護がね? チエちゃん達とは違う女の子を連れ帰ってきたのよぉ?』
「(夏梨も居るのかよ。)」
『女の子なら小学ん時とかに連れ帰った時ことあったじゃん。』
『なんだと?! お父さん、そんな話は聞いたことが無いぞ?!』
『だから、たつきちゃんとか、三月姉ちゃんとか。 というか遊子まで何を…』
『その二人とは違うの、夏梨ちゃん! お兄ちゃんとすごく親しいのは親しいんだけど、こう……………………もっと………………『
遊子の言葉で一護の頭の中で蘇りそうになったのは、いつかのケガをしたチエが(少なくとも当時は)『包帯』と思っていたサラシをほどく姿。
一護は上記の雑念を手で払いながらドアへとズンズン向かう。
『その線で行くとたつきちゃんもチエ姉ちゃんも高校入ってからエロい体になって来てるよ? 後者はよく隠しているけど。』
『マジで?! か、夏梨! そ、その話を詳しくお父さんに聞かせ────!』
『────あ・な・た?』
『ヒィィィィィィ?! ぼ、墓穴を掘っちまったぁぁぁぁ?!』
『バカオヤジが。』
ついに一護は我慢できずにドアを勢いよく開けて、すぐ部屋の外にいた
「そういう話は、本人が聞けねえところで勝手にやれぇぇぇぇ!」
「きゃあああ! ごめんなさい、お兄ちゃ~ん!」
「あらあら、ごめんなさいねぇ一護? ちょっと家の裏に行ってくるから
「い、一護! 夏梨に遊子、頼む! お父さんの事務所の引き出しの中身を出して燃やし────あああああああああああ?!」
ドタドタと逃げる遊子、そしてどこか
「…はぁ~…」
「相変わらずスゴイ家族だな! …………………………特にお前の母君の真咲が。」
「おふくろはともかく、他の奴らもか?」
「そうだぞ一護?」
「そっか……って、それは良いからとっとと『
「それは────」
「「────
「────教えてやろう。」
一護の部屋の電球カバーを外して彼の天井からひょっこりと弓親、乱菊、一角、恋次が姿を現す。
「うおい、ちょっと待てい! 人の部屋に何してんだ?!」
「いや、せっかくだから『
「何をだ。」
乱菊に対し、一角がこめかみと頭に青筋を浮かべる。
新たに登場した
「ぼく、まいさんのしゅぎょうもうやだ。」
────以前、空座町に帰還した一護に見せた幼稚化した言語で、ブルブルと震えながら自分の乗っているチエの頭の後ろに隠れて、『原作』とは大幅に違った行動をとっていた。*2
「(よほどマイにしごかれたな。)」
そこで『原作』同様にルキアたちが『
「つまり仮面を外した虚が『死神』の力を、前もって有った虚の力を同時に手に入れたのが『破面』だ。 今までは数も少なく『未完成』だったが、『崩玉』を持った藍染により『成体』、つまりは『完全体』が生まれてこの間お前が対峙した二体がその例だそうだ。 解かるか?」
いつもの
そこにはタヌキかウサギなのかデフォルメ化した『なにか』が書かれていた。
「相変わらず下手くそな絵で、それさえ無けりゃ俺はもっと分かると思うけどな。」
バシン!
ルキアがスケッチブックを一護の顔面に放り投げると同時に、恋次が言葉を付け加える。
「当初、ソウル・ソサエティは藍染対策準備を進めていたんだ。
「……私にそういう報せは来なかったのはなぜだ?」
チエの問いに気まずい空気が流れ、恋次が頭を掻きながら答える。
「……あー、山本総隊長がよ? 『じゃ、ワシも現世に行くぞい!』って興奮しだして、雀部副隊長とのケンカになってな? やっと落ち着いたところで折り合いの為についたのが先遣隊として、お前らをよく知っているルキアが選ばれて────」
「────ち、違うぞ! 実力で選ばれたのだ────!」
「────で、動ける奴らの中でルキアと近しい
「…………………………………それで他の者は?」
チエがキョロキョロと一護の部屋を物珍しそうに見ていた弓親と乱菊を指さす。
「まぁ、『一角が行くなら僕も!』って弓親さんが言って、乱菊さんが『私もー!』って言い出して、日番谷隊長が引率として仕方なく来た感じだ。」
「「まるで遠足気分だな。」」
チエと一護が同じジト目&トーン&言葉&タイミングでツッコむ。
「ともかくだ。」
そこで乱菊の開けた窓から日番谷が入ってくる。
ちなみに窓の位置は一護の家の真正面、二階である。
「「普通にドアから入れ。」」
そしてまたもハモる一護&チエ。
一護は
「お前は藍染に狙われている、黒崎一護。」
「あ。 一人だけ天井裏に潜むのを断固拒否した、乗りの悪い日番谷隊長だ。」
日番谷を『隊長』呼ばわりしながら彼をディスる
「窓が開くまでずっと外だったんすか? それ駄目っすよ、『銀髪小学生』なんて超目立つ────」
「────乱菊、阿散井……これが終わったら二人とも覚えておけよ?」
怒りで爆発寸前の日番谷が深呼吸をして、一護達に現状の説明を続ける。
「ただそんじょそこらの虚の仮面を剥がしただけじゃあ大したものは出来ねぇ。 本気で戦争を吹っかけてくるのなら以前、お前が追い払った
「その言い分じゃ、まるで
「────そうだ。
「な?! アレが雑兵なのか?!」
余談だがチエの頭上には以前、三月に無理やり一緒に見た(見せられた?)何某アニメ映画の
その間にも日番谷は、そのギリアンより上の『アジューカス』、ギリアンより上位種で知能が高く、いわゆる『ギリアンのまとめ役』の説明を簡単にした。
そして最後に『ヴァストローデ』。
『最上級の
数は虚の生息地である
それを聞いた一護は静かに汗を流す。
もし本当にそうだとしたら、藍染はとんでもない化け物たちを
更に完璧に余談ではあるが今クロサキ医院のダイニングでは畏まりながら根掘り葉掘り、一護との関係を聞かれてもはぐらかす
場面は一護の部屋に戻り、恋次や乱菊がそこら辺のモノを漁っていた。
「オイ、お前らいつ帰るんだ?」
「あ? なに言ってんだお前? 帰らねぇぞ? 少なくとも破面との戦いが終わるまでな。」
「『終わるまで』って……寝るとことかはどうするつもりなんだ?」
一護の問いに恋次、乱菊、一角、そして弓親が
「そんな目で見ても俺のとこは無理だかんな、こんな大人数。」
「いや、俺らが見てんのは『隊長代理』の方だからな?」
「ん?」
ここでコンを慰めていたチエが注目されていたのに気付く。
「?????」
「いやいや、アンタ…
チエの?マークに恋次が疑問気味に聞く。
これも無理もなかった。 なにせそれはチエ自身が企画していたことではなく、三月たちが裏から手を回していたからにすぎなかった。
もしあのまま瀞霊廷に居続けるとしたら、これから起きうるであろう襲撃などの
…………………あとは
「………………………………そう言えばそうだったな。 少し待っていろ。」
長い沈黙の後、チエは全く慣れていない動作で出した携帯をいじり始めた。
「チエ、さかさまだぞ。」
「ん。 悪いなルキア。 何せ使い慣れていないものだからな。」
「私に貸せ。 どうせ三月を呼ぶのだろう?」
「ああ。 任せる。」
そのやり取りは『機械に不慣れなお婆ちゃんを見ているのを我慢出来なかった孫に機械を譲る』シーンそのものだった。
「…………出ないぞ?」
「ではマイに電話をかけてくれ。」
チエの携帯で今度はマイにルキアが掛ける。
「……もしもし、私だ。 いや詐欺ではないぞ? ……いやチエが不慣れだったので電話を借り────…………………は?」
ここでルキアが固まり、顔が『カァー』っと赤くなる。
「いや……忘れたわけでは……だが、答えなければならないか? どうしてもか? ……わ、分かった! だから最初の質問でいい! ……そ、そ、そ、その日はお前をか……か……か……『母様』と呼んだ日だ。」
「「「ブフ?!」」」
もう今にでも爆発しそうな真っ赤になりモジモジとするルキアの言葉に、周りの何人かが吹き出す。
「こ、これでいいか?! よし! 良いな?! 実は現世に、私と数名が派遣されて住居に少し困っているのだ! …数?」
ルキアがニマニマとして自分を見ている人たちを見渡す。
「い、今のは忘れろ! というか何人、世話になる?!」
「場所はどこ~?」
「アパートだ!」
「んじゃ、私は織姫んとこに泊めてもらうわ!」
「『もらうわ!』って、井上にはもう聞いたのかよ?」
「まだだけどあの子ならイヤって言わないでしょ♡」
乱菊の答えに一護が違和感を持って質問すると案の定、彼の思っていた理不尽な答えが返ってくる。
「日番谷隊長はどうします?」
「勝手にやってるから気にすんな。」
「恋次たちはどうするのだ?」
「俺はちょっと浦原のとこに行ってくる。 ちょいと聞きたいこともあるしな。」
「???」
恋次がジッとルキアを見て、ルキアは?マークを逆に飛ばす。
「僕達も日番谷隊長に見習って、自分たちで探すとするよ。」
「ああ、元より俺らは知り合いの世話になる気はねぇ。
「……という訳で恐らくゼロだ……む、そうか? わかった。」
ルキアが電話を切ってチエに携帯を渡すと────
「『母様』だってぇ~?」
「『母様』との電話はどうだったぁ~?」
「────だから忘れろ!」
────やっと落ち着いたと思った矢先に、乱菊と恋次がまたも赤くなりつつあるルキアをからかう。
「なぁ、今思ったんだけどよ? 電話越しで信じてもらえなかったら、そのまま直接会いに行けば良かったんじゃねえか?」
「……………………………………………………あ。」
一護の
そうしている内に死神たちは各々が空座町へと出かける。
見送る一護とルキアとチエとやっと質問攻めから解放された雛森を残して。
「……ルキア。 そう言えばお前はどこで泊まる気だ?」
「??? 無論、
「アホかテメェは?!」
「何故だ?!」
「(今晩の献立は何だろう?)」
騒ぐ一護とルキアをそばに、チエが夕日暮れの、オレンジ色に染まりつつある空を見上げながらマイペースにそう思っていた。
「えっと…あの二人は止めなくていいんですかチエさん?」
「……ん? ああ、あの二人のじゃれあい方だ。 気にするな。」
「ハァ、そうですか…」
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??? 視点
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場所はどこかの謁見の間の部屋に移り、片膝を床についていたウルキオラとヤミーを見下ろしていた一人の男が悠然と椅子に腰かけていた。
その男の手前では様々な人影。
「おかえり、ウルキオラ。 見せてくれ。 『現世』で見聞き、そして感じた事を。」
「はい、藍染様。」
他者を自然と垂れ流しの霊圧のみで周りを黙らせる圧を与えていたのは白い服装に変え、椅子に座っていた藍染惣右介だった。
ウルキオラはそのまま自分の左目を自らの手でくりぬいて、それを砕く。
チリと化した目が風に乗ったようにそこら中に散漫して、その場にいた者たちにウルキオラとヤミーが一護達と相対した景色などが直接、頭の中に流れこんでくる。
「……………………クク。」
そこにお通や状態のような静けさが目立つ部屋の中で、誰かがほくそ笑む。
「ク……ククク……………ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!」
否。
それは愉快な笑いへと化す。
藍染がいる場でそんな事をすれば、誰であっても制裁の対象になりかねないというのに。
笑いの元がその
「ハーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!」
まるで
圧倒的強者の余裕の笑みを何時も浮かべている藍染が『
この事実はその場に居合わせたどの人物にとっても奇怪なこと、または『圧倒的な畏怖』と感じることしか出来なかった。
誰もが息を潜みながら動揺する中、やがて藍染の笑いが少しずつ収まっていく。
「クックック……成程。 『黒崎一護は我々の
「はい。」
「は!
そこで声を出して突っかかってきたのは端正な顔立ちに、水色のリーゼント風の髪をした『破面』の男性。
どこからどう見ても(言動を含めて)一昔前の不良の格好をした彼の名は『グリムジョー・ジャガージャック』。
「それにヤミー! そんなにボロボロにやられても『殺しませんでした』が、『殺せませんでした』にしか聞こえねぇぜ、オイ?!」
「……グリムジョー、テメェ今のをちゃんと視ていなかったのかよ? 俺がやられたのはゲタと黒い女と金髪チビだ。」
「もっとストレートに言わなきゃ分かんねえか? 俺ならそいつらまとめて殺すっつってんだよ!」
グリムジョーと闇の間にバチバチと火花が飛ぶどころか、ピリピリとした空気と殺気が飛び散って充満する。
そこにウルキオラが言と物理的に体を挟む。
「グリムジョー。 藍染様が警戒されていたのは
「それを俺は『温い』って言ってんだよ! このままそいつが、俺らに盾ついたら────?!」
「────その時は俺が殺す。 文句はあるか?」
珍しく言葉使いがきつくなったウルキオラに対して、グリムジョーが黙り込む。
「それで構わないよ、ウルキオラ。
「ありがとうございます。」
ウルキオラが藍染に首を垂れる。
………
……
…
「さっきはぎょうさん笑っていましたねぇ、藍染隊長?」
「聞こえていたのかい、ギン?」
部屋で崩玉を眺めていた藍染の後ろからきたギンの声に彼が反応する。
「そりゃあ、あれだけ
「いや?」
そこで藍染がクルリとギンに振り向き、ギンの心は体と共に冷たくなってギョッとするのを抑えて、いつもの
「どうしたんだい、ギン?」
「いや……藍染隊長がそこまで
ギンが見た藍染の笑顔が『おぞましい』、というだけでは済まされなかったモノだった。
それは『狂気』、『愉悦』、『快楽』というようなモノ達がすべて、コンクリートミキサーにブチ込まれてじっくりと混ぜられてから数年越しに出てきたような、この世とは思えない表情と目をしていた。
実際、藍染のそばに付いてからかなりの年数も居て、藍染の数々のしでかした業を直に見てきたギンでさえも『純粋な畏怖』から身震いを止められなかったほどである。
「そうかい? 私が笑うことにそんなにも驚くことか? ……クククククク……」
何時も冷静沈着な藍染がこれほど感じていた感情をそのまま外に出すのはギンにもとっては初めてだった。
故に聞かれずにはいられなかった。
「そこまで愉快になったんは何なんですか?」
「いやなに、何てことはないさギン。 ああ、それとグリムジョーには後で私の部屋に来てくれと伝えてくれるかな? ククククク………………」
グリムジョーが部屋を訪れるまで藍染はただただクツクツとした笑いをその日、続けた。
いつも読んでくれている方たちに感謝を、誠にありがとうございます。