白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

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お待たせしました、次話です!

長くなりましたが、一応簡略化してこれですのでお許しください (汗

楽しんで頂けると幸いです!


第88話 Intermission of 110 Years Ago

 ___________

 

 ??? 視点

 ___________

 

 激突だが、ここで瀞霊廷を揺るがしたおよそ百年前の出来事の詳細を書き写そうと思う。

 

 それは一気に護廷十三隊の隊長格の約半数が行方を消失したことであり、詳細など省いてもかなり長くなるので付き合ってほしい。

 

 ある日のこと、当時の隊長たちは召集されては一番隊舎に集まっていた。

 

 それは十二番隊の前隊長である『曳舟桐生(ひきふねきりお)』の『昇進』と、新たな『隊長新任』宣言の為だった。

 

 一番隊の『山本元柳斎』と『雀部』。

 当時、二番隊隊長の『四楓院夜一』。

 三番隊隊長の『鳳橋楼十郎(ローズ)』。

 五番隊隊長の『平子真子』。

 六番隊隊長の『朽木銀嶺(ぎんれい)』。

 七番隊隊長の『愛川羅武(ラブ)』。

 九番隊隊長の『六車拳西』。

 

 そして当時から隊長を務めていた『京楽』、『浮竹』、『卯ノ花』もいた。

 

 当時、十二番隊副隊長の『猿柿ひよ里』も。

 

 尚、十番隊の『志波一心』は『面倒くさがって別件で立ち会う事が出来ない』と報告が上がり、十一番隊の『鬼厳城剣八(きがんじょうけんぱち)』に至っては集まりを真っ向から突っぱねていた。

 

「え、え~~~~と……お、お、遅くなってすみませ~ん?」

 

 そして新しく十二番隊隊長に新任した『浦原喜助』がオドオドした態度でへこへこしながら現れた。

 

 現在の彼からは程遠い当時の彼に、平子は『不安』を感じていた。

 

「……なんーかユッルい奴やなぁ。」

「人の事言えんの、平子?」

「うっさいわローズ。」

 

 「胸を張れ喜助! お前は隊長なのじゃぞ?!」

 

「そ、そ、そんなこと言われても────」

 

 「────早う入ってこんかい。

 

 「ア、ハイ。」

 

 なお余談だが山本元柳斎はとっとと隊長新任の儀を早く終わらせたい気分満々………………

 

 隊長という自覚をもてい(へこへこするな)!」

 

ヒャイ?!」

 

 ではなく、喜助のヘコヘコした態度が気にいらなかったらしいのか、夜一と同じくらいにイライラしていた。

 

 というのも山本元柳斎は教壇に上ることはもう無くなったが、浦原喜助は学院時代からよく様々な噂を愚痴る教師や夜一から聞いていた。

 

『学院では優秀』、『頭脳明晰』、『あの四楓院夜一が仕事以外でよく付き合う者』とよく聞くが、いざ権力や地位を持った他人や目上(師範)などの前に出ると極端な消極的性格へと変わる。

 

 夜一の推薦から始まって隊首試験(たいしゅしけん)を開こうにも、当の本人である浦原は時間に来ず、夜一が無理やり(物理的に)連れてきたり、嘘を付こうとして夜一に頭を叩かれ(殴られ)たりなどと、軽い雰囲気の()()()()ばかりの隊首試験(たいしゅしけん)だった。

 

 ぶっちゃげると、浦原の認識は『超が付くほど面倒くさくて扱いにくい天才児』だった。

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

「うちは認めへんでこの隠密機動(人殺し)ごときが『隊長』なんて! ほかのお前らもこないなへらへらしたぽっと出のフヌケに従いたくないやろが?! あ?!」

 

 その日、十二番隊の隊舎ではむしゃくしゃする気持ちでブチギレていたひよ里の叫び声が良~く響いていたそうな。

 

 それは前隊長の曳舟を母親のように慕っていた彼女の精一杯の『抗議』という名の駄々っ子ぶりだった。

 

 そしてこれでも尚ナヨナヨヘラヘラする浦原に、平子が『先輩隊長』として珍しく、真面目な助言をしたそうな。

 

『上に立つ者は下の者の気持ちは汲んでも顔色は(うかが)うな。 器があり、好きにすればおのずと人は付いて来る。』

 

 ある意味、『未来の隊長代理』などがやっていた好き勝手の前例と『浦原喜助(新任隊長)』はどこか似ていたかも知れない。

 

「ってお前は何勝手に覗いてんねん、()()。」

 

 ビィィィィ!

 

 その助言を残した後に、平子が一人になったと思えば、彼は空間を引き破って姿を隠していた『五番隊副隊長の藍染惣右介』の姿が現れた。

 

「……さすが隊長です。 いつからお気づきに?」

 

「お前が()()()()()()()()()からや。」

 

「そうですか。」

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 それから間もなく、浦原は盛大にやらかした。

 

 十二番隊の隊舎は研究所に変わり(魔改造され)、浦原は以前所属していた隠密機動が看守を務める『蛆虫の巣』の存在を(嫌がる)ひよ里に明かして彼女を連れていた。

 

 極秘事項だが、護廷十三隊に『休隊(きゅうたい)』や長期渡って復帰できなかった場合の『除籍(じょせき)』、そして任務中の『戦死』以外に『()()』というモノがある。

 

 この最後の『脱隊』を通告された隊士は全員、二番隊隊舎敷地内、(はば)三十間(およそ55メートル)の巨大な(ほり)のさらに奥にある『地下特別管理棟』へと()()()()される。

 

 早い話、『脱隊』とは実質上の『死ぬまで軟禁状態維持』を意味する。

 

 瀞霊廷(四十六室)にとっての『不適合者』、『危険分子』、『都合の悪い者』などが集められて隔離される場所。

 またの名を、『蛆虫の巣』。

 

 その中でも当時、浦原が隊長に成りたての頃で一人だけ『囚人』扱いされて牢屋に閉じ込められていた人物がいた。

 

「何の用だネ? 浦原喜助。」

 

 それは後に十二番隊隊長、技術開発局二代目局長となる『涅マユリ』だった。

 

 そして隊長と同時に局長である浦原と、()()()のひよ里と、()()()()()のマユリで『技術開発局』が創立された。

 

 ちなみにひよ里とのマユリの関係は会った直後から犬猿の仲だった。

 ……………………………………『せやかて名前にもう“猿”があるやんけ?!』とは言わない約束です。

 

「うっさいわアホォォォォォ!!!」

 

 ひよ里は母親と慕っていた『死神』に()()()()()だけでなく、『瀞霊廷』の裏事情の一片を知らされて『死神社会』にも失望した。

 

 そして『職場は違えど、志を同じくした仲間(同僚)』と思っていた者たちにでさえ『裏切られる(失望する)』まで、あと少しのことである。

 

 ………

 ……

 …

 

「ま、参った! 参ったから────!」

 

 ザシュ!

 シュパァァァァァァ!

 

「────それでも『戦士』やろ? 『戦士』が『負ける』言うたら『死ぬ』ことやで?」

 

 夜空の下で、とある隊舎では京都弁を喋る少年が命乞いをする隊士の首を跳ねた返り血の中で薄い笑みを糸目と共に浮かべていた。

 

 この()合の立会人らしき藍染が感心するような表情で満月が目立つ夜の下、この少年に話しかけた。

 

「素晴らしい。 『市丸ギン』、と言ったね? うち(五番隊)の三席はどうだった?」

 

「あかんわ、話にならへん過ぎて欠伸が思わず出そうやったわ。」

 

「そうか。」

 

 そんなドタバタとした日々から数年後、妙な噂が瀞霊廷内を出回り始める。

 

 

『流魂街の住人(魂魄)()()()()()()()()()()()』という、奇妙なモノだった。

 

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

「『原因不明』ってな~に~? ねぇ~、拳西ってば~!」

 

 当時の九番隊副隊長の『久南白(マシロ)』が興味本意のみ持った子供のように付きまとう。

 

「『原因不明』は『わからねぇ』ってことだ、マシロ。」

 

 流魂街の異変に九番隊の先遣隊が出た次の日、定時連絡が無かった為に隊長自らが出かけていた。

 

 ちなみにマシロ(副隊長)はただ勝手に付いてきた様子で、拳西は彼女をあしらっていた。

 

「それなら先遣隊の子たちを待てばいいじゃない、拳西のバカバカせっかちなバァ~カ。」

 

 ビキビキビキ!

 

「「「おおおおおお落ち着いてください隊長!」」」

「そうです! ()()()()()ではないですか?!」

 

 暴れそうな形相になる拳西(脳筋)を彼の部下が数人がかりで彼を止めて、ガスマスクを付けたアフロの男がなだめる言葉をかける。

 

 このアフロ男は当時の九番隊の五席、名を『東仙要』という。

 

「「「うわぁぁぁぁぁ!」」」

 

「ゴアァァァ!」

 

 そこに流魂街の住人らしきの叫び声と、虚の雄たけびが聞こえてきたことに拳西の部下たちは胸を撫で下ろす。

 

「お、虚か。」

 

「「「「(隊長が単純でよかった。)」」」」

 

 密かに上司(拳西)をディスる(?)部下たちが彼に続いて虚をサクッと片付ける。

 

 その時、その場に居合わせた流魂街のとある子供の目に、拳西の『69』の刺青が焼き付けられる。

 

 その子供の名は『檜佐木修兵』と言い、この出来事をきっかけに彼は護廷を目指すことになったとか。

 

 なお更に余談だが『九番隊の六車拳西』から『九』と『六』を取って『96』の筈だったのだが、刺青を彫る者にマシロが『“69”だよ!』と注文して、そうなってしまったのだとか。

 

 というか『何故よりにもよって彼女(副隊長)に頼んだ?』と部下たちはそう思いながら全く反省の色が見えないマシロに、説教をする拳西を呆れた目で見ていたとか。

 

「けんせーい! 先遣隊の子たち、死覇装脱いじゃったみたいだよ~! 酔っちゃったのかなぁ~?」

 

 マシロが見つけてきたのは、まるで『服だけを残しながら体が溶けたようすの死覇装』たちの有様だった。

 

 そんな拳西たちは『流魂街の住人』たちだけでなく、『死神』でさえも事件が巻き込んだことを中央に即報告。

 

 そして九番隊の憶測だが、その場にあった()()()()()()()()()()()発見したので文字通り、『魂魄が分解された』可能性のことも含め、技術局員の派遣要請を出した。

 

「というわけでひよ里さんお願いします♪」

「なんでや?!」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんスよ。 お願いします。」

「あ……か……ああああああ! くそったれ行ってやるわい! 必要経費、覚悟しぃや?!

「ハイハイ。」

 

 ニッコリとした浦原の、裏の無い言葉にひよ里は(頼ら)れて渋々(?)、出かける支度をせっせとする。

 

 これが浦原とひよ里の二人が『()()()()()()()、最後に交わす会話となりえることはチラチラと脳裏で『予想』をしていたとしても、まさかこうも急に訪れるとは浦原でさえも思っていなかった。

 

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

『緊急招集! 緊急招集! ()()()に異常事態! 九番隊の隊長及び副隊長の霊圧が消失!』

 

「ひよ里さんは?!」

「え? あ、もうずいぶん前に出かけ────局長?!」

 

 寝ていた浦原はすぐに近くの者にひよ里が既に出かけたことを聞いた瞬間、必要最低限のものを羽織って、技術局を脱兎のごとく飛び出た。

 

 ………

 ……

 …

 

 上記とほぼ同時刻、山本元柳斎は召集した隊長たちの中から現地派遣を命じた。

 

「三番隊の鳳橋楼十郎、五番隊の平子真子、そして七番隊の愛川羅武は現地へ向かえ!

 二番隊の四楓院夜一は別命があるまで待機! 

 六番隊の朽木銀嶺、八番隊の京楽春水、十三番隊の浮竹十四郎は瀞霊廷の守護! 

 四番隊は卯ノ花烈を含め、負傷者搬入に備えよ!」

 

「ボ、ボクも現地へ行かせてください!」

 

 息を切らせた浦原を見た山本元柳斎は彼の部下であるひよ里が現場へ向かったことは報告として受けていたので、心中を察していたが敢えて『総隊長』としての命令を出した。

 

「浦原喜助、別命あるまで『待機』じゃ。」

 

「そ、そんな────?!」

 

 ────ギィィィ。

 

 重苦しいドアが開き、向こう側には当時の鬼道衆総帥の握菱鉄裁(つかびしてっさい)と副鬼道長の有昭田鉢玄(うしょうだはちげん)が入ってくる。

 

「この二人にも現地へ向かってもらい────」

 

「────あー、それなんだけどね山じい? 鬼道衆のトップである二人を同時に向かわせるのはまずくないかな?」

 

「……………………フムゥ?」

 

「そこで僕から提案なんだけど、代わりにうちの副隊長を送るってのはどうかな?」

 

「え? 京楽、今から呼ぶのかい?」

 

「そだよ浮竹。 お~い! クシャミはしてないけど、ジャジャジャ~ン! リサちゃんおいで~!」

 

 そこにおさげっぽい髪形に眼鏡とミニスカタイプの死覇装を着た『矢胴丸リサ』が呆れた顔で『ヌッ』と隊首会(たいしゅかい)をのぞき込む。

 

「どれだけ古いねん。 というかそれ、どこから取ったん?」

 

 またもエセ英語を喋る『自称除霊師』が目撃したならばまたも『Oh! セクシーニンジャガール!』と叫んでいただろう。*1

 

『もしこの時に“自称除霊師”生まれていればの話』なのではツッコミはご遠慮ください。

 え? 『セクシーにはツッコめよ』?

 …………………………うん、気持ちはわかるとも。

 

「まぁまぁ。 で? 話はどこまで聞いた?」

「全部。」

「頼める?」

「当たり前。」

「じゃ、よろしく。」

 

 リサが『ビッ!』と無言のサムズアップをして、その場から消える。

 おそらくは現地へ向かったのだろう。

 

 京楽と『死神としてのリサ』、最後の会話である。

 

「……………………」

 

 悶々と考え込む浦原に京楽が小声で話しける。

 

「大丈夫、ひよ里ちゃんやリサちゃん……『部下を信じて待つ』ってのも隊長の仕事だよ。」

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 その午後、京楽は()()に出ていた。

 

「(んー、僕の気の所為かな。 藍染副隊長も()()()()隊舎にいたし────)」

 

「────あの!」

 

 京楽の前には幼く、小柄なメガネを掛けた少女が自分の胴体ほど大きくて分厚い本を持ちながら京楽を見上げていた。

 

「おや、どうしたんだい七緒ちゃん?」

 

「『伊勢七緒』、ですよ?! 子供扱いはしないでください!」

 

「うんうん、そうだね。 で、どうしたんだい七緒ちゃん?」

 

「ですから『伊勢七緒』と言っていますのに……」

 

 京楽は伊勢が抱えていた本を見ると察しをする。

 

「もしかして、リサちゃんを探しているのかい?」

 

「は、はい……今日も矢銅丸副隊長と一緒に本を読む約束をしていましたから。」

 

「……そっか。 リサちゃん、今はちょっと()()()()で出かけていてね?」

 

「そ、そうなんですか……」

 

 伊勢が明らかにしょんぼりとする。

 

「ああ?! だ、大丈夫だよ! ()()()()()()()()だろうからさ! きっとだ!」

 

 京楽はにこりと作り笑いをしながら伊勢の頭をなで、彼女は若干不服そうな、あるいは恥ずかしそうな顔をする。

 

 この時の京楽は確かにそう考えていたし、事が収まるまで待つ覚悟もしていた。

 

 だがまさか、次に再会できるまで百年以上経つとは想定していなかっただろう、いくら長命種である死神だったとしても。

 

 その二日後、『面会拒絶』を出した京楽が何か隠していると思い、リサに教えてもらった抜け道を使って、伊勢は声を殺しながら一人寂しく隊長室で鼻歌をしながら儚い笑みを浮かべてボ~っとする京楽の姿を目撃することとなる*2

 

 この日から伊勢は幼いながらもしっかり者と変わって副隊長になるべく研鑽をしたとか、していないとか。

 

「ただの偶然です! 確固たる証拠もないのに変な憶測はやめて頂けませんか?!」

 

 ソウイウコトニシテオキマショウ。

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

「どういう……ことやねん?!」

 

 真っ先に現地に駆け付けた平子はボロボロになって逃げていたひよ里を()から庇った際に、拳西特有の『69』の刺青が目に入った。

 

「仮面も霊圧も、虚そのものじゃあないか?!」

 

 次に駆け付けたローズやラブにリサも平子と同じように唖然としていた。

 

 そんな彼らに平子は注意をしながら(ひよ里を左手で抱えているために)片手で構えた刀を再度前に出す。

 

「俺にもわからん。 けど刀を抜け。 さっき感じた殺気はマジやったから、相手は()る気やで────って後ろやこのアホォォォォ!!!!」

 

 そんな三人に背後から襲ってきたのは虚化したマシロだった。

 

「縛道の九十九、『禁』!」

 

 突然の襲撃に平子たちは戸惑ったが、ハッチが急遽高度の鬼道で何とか拘束することに成功する。

 

「九十番台の詠唱破棄……さすが副鬼道長やな。」

 

 ボロボロで汗と荒い息遣いの平子が同じ状態のハッチに軽口を叩く。

 

()()()()無理してマス。」

 

「う?! ゴホッゴホッ!」

 

「んあ? なんやひよ里、風邪か?」

 

 ひよ里がせきをし始めたことに、緊張状態から解放されていく平子が軽口を続ける。

 

「ハッチぃ、このアホから治してくれ────?」

 

「────ンジ! あたを……はせ!」

 

 ザン!

 

 一瞬、何が起きたのか理解が追い付かないハッチ、ローズ、リサ、ラブの前でひよ里が()()()平子を切り裂いた。

 

 「■□■□■□■□!!!」

 

 耳をつんざくような、獣の雄たけびを『虚の仮面をつけたひよ里だったモノ』がその場で出す。

 

 それがきっかけだったように、皆の周りが急に暗闇に落ちる。

 

「な、なんだ?!」

「どうなっているんだ?!」

「「こんなアホなことがあるかぁぁぁぁぁ?!」」

 

 その中で()()()()()()が自由に動き回ってリサ、ローズ、ハッチ、ラブに深い傷を負わせてから暗闇が消えていく。

 

 そんな中、辛うじて()()()だけを頼りに意識を失う重傷を免れた平子がその男をにらむ。

 

「なんでや……なんでや?! 自分とこの隊長を裏切ったんか、()()!」

 

 これが東仙の()()()()()卍解、『清虫終式・(すずむしついしき・)閻魔蟋蟀(えんまこおろぎ)』だった。

 

「『裏切る』? いいえ、彼は忠実に従っていますよ?」

 

 後ろからくる声に平子が振り返ると藍染と、五番隊に新任した市丸ギンの姿があった。

 

「藍……染! やっぱし、お前か!」

 

「さすがは()()()()といったところですか。 ()を深い疑い()()から、自らの目が届く副隊長に任命しただけの事はある。」

 

「気付い……とったんか?」

 

「勿論。 だから逆に一定の距離を開けて監視した貴方を騙すのは容易かった。 

 それにお忘れですか? 隊長が『副隊長任命権(ふくたいちょうにんめいけん)』を行使する際、任命された隊士には『着任拒否権(ちゃくにんきょひけん)』があります。 

 もちろん、行使されるのは滅多にないので忘れがちなのは認めますが……ここで一つ、質問です。」

 

「……?」

 

 平子は混乱しそうになる思考に無理やり蓋をして制御しようと試みている間に、藍染の真意に当たりをつける為に考えを張り巡らす。

 

 だがその前に、考えがさらに藍染によって乱される。

 

「『何故こうもべらべら喋っているのだ?』と、考えたことありませんか?」

 

「?!」

 

 この『話し合い』が既に藍染の策略(時間稼ぎ)と平子が気付いた頃には彼の顔に虚の仮面が現れ、周りの倒れた者たちにも同じく虚の仮面が出現する。

 

「ぐあああああああああああああああああ?!」

 

「…し…………………ンジ。」

 

 苦しみの叫びを平子が上げ、虚化したひよ里が彼の名をかすかにだが呼ぶ。

 

「ほう? 虚化してもなお、理性を奥底に宿すとは……余程()()()()()()のだな────」

 

 ギィィィン!!!

 

 藍染は背後から来た僅かな()()()を感知して、斬りかかって来た浦原の刀を弾く。

 

「───流石は『元隠密機動』。 気配を消すのが()()ですね。」

 

「き……?」

 

「悪趣味な仮面スねぇ……『虚化』なんて、やるもんじゃないッスよ?」

 

 浦原は藍染から目を離さずにそう言うと、藍染が纏う空気がごく僅かに揺らぐ。

 

「フ…………フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ───」

 

 藍染の場違いな、心の底から来るような()()()乾いた笑いにその場にいた誰もが肝を冷やした。

 

「───破道の八十八、『飛竜撃賊震天雷砲(ひりゅうげきぞくしんてんらいほう)』!」

 

 そのあまりの異様さに、蒲原と同行していた鉄裁は詠唱破棄の特大鬼道を放つ。

 

「縛道の八十一、『断空』。」

 

 だがそれも藍染の詠唱破棄した()()()()によって塞がれ、藍染たちは姿を消す。

 

 いまだに苦しむ平子たちを助けようと浦原は『研究所ならばあるいは』と言い、鉄裁が禁術である『時間停止』と『空間転移』を使って()()()()()()()()()()()()()で場所を十二番隊の隊長室へ移す。

 

 そこで浦原は開発した『崩玉(ほうぎょく)』を使い、平子たちのさらなる虚化の解除を試みるために数時間ほどを費やす。

 

 だがその結果、解除はおろか、平子たちは殆ど虚の状態になったが辛うじて『()()()()()()()()()()()()』の保持にだけ()()し、一命を留めた。

 

 否、『彼らの命は留めた』と言って良いのだろうか?

 

『肉体』は『虚』。

『精神』は『死神』。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()浦原はこれを『失敗』と呼んで自分に失望した。

 

 そして彼の研究所に憲兵隊が雪崩込み、浦原と鉄裁は捕縛され、四十六室に容疑を言い渡される。

 

 容疑は『虚化の実験』。

 

 抗議をあげようにも発言許可は出されず、『十二番隊舎から虚化の痕跡(平子たち)発見』の報告が来たことにより事態は一気に悪化した。

 

 鉄裁は『禁術の行使』によりその『地位』と『特権』を剥奪(はくだつ)、即投獄。

 

 浦原は『禁忌事象研究と行使』で、霊力剥奪の上に現世への永久追放罪。

 

 上記を言い渡された後、『浦原の邪悪な実験の犠牲となった()()は即座に処理』と宣言された。

 

 鉄裁は即座に『特権の剥奪(鬼解門が閉じられる)』処置を受けとてもではないが鬼道が使えない状態()となった。

 

 そして二人がそれぞれの処置の為の搬入に入ると夜一が二人を救出し、そのまま彼らと夜一が既に連れ出した平子たちと共に現世へ逃げ果せた。

 

 これら全てが、『仮面の軍勢(ヴァイザード)』の誕生と、浦原達が現世に逃げるまで一通りの出来事である。

 

()きんかいクソハゲ真子ィィィィ!」

 

 バシィ!

 

「イデェェェェェェ?!」

 

 平子は顔にスリッパが当たった衝撃で瞬時に起きる。

 

「なに呑気に寝てんだ? 『これから』って時によぉ?」

 

 拳西の言葉で平子は周りの『仮面の軍勢(ヴァイザード)』たちを見渡す。

 

「…………………」

 

「どうかしたのか、真子?」

 

「あー、いや。 なんもあらへんわ。 ()()()()()()()を見とっただけや……いくで。」

 

 平子が立ち上がると、ほかの『仮面の軍勢(ヴァイザード)』たちが先に倉庫街を出る。

 

 その間、平子は自分の手を不思議そうに見てから、床に散らばったガラスの破片に反射した自分の姿を見る。

 

「………………なんやったんや、今の? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()? ……それとも、『虚』やから他の皆の記憶が共用する現象? ………………………………………………………………アホくさ。 浦原に世話ンなりすぎて深くものを考え過ぎになっとるわ、自分。」

 

 そう自分に言い聞かせながら、平子は倉庫を後にし、彼らは藍染たちの前に立ちはだかる。

*1
25話より

*2
41話と同じ仕草

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