楽しんで頂ければ幸いです!
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??? 視点
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ここで時間を少しだけ巻き戻そうと思う。
それは丁度、虚夜宮の天蓋の屋上で織姫が助けを求めた時。*1
「■■■■■■■!!!」
『黒崎一護』だったモノが、この世とも思えない咆哮を虚圏の月に向かって出し、ウルキオラは即座に『
ズン!
すると対抗するかのように『黒崎一護』が紫色の虚閃を出して、それが『
ドゴォ!
爆風の中から体中にケガを負ったウルキオラが飛び出てくる。
「バカな、今のは紛れもない『虚閃』。 いくら似せたところで────」
ヒュッ!
ウルキオラは背後へと回った『黒崎一護』に振り返ろうとして────
ガシッ。
ブッツン。
「────あり、えん!」
────腕を『黒崎一護』に力ずくでもぎ取られた。
「────。 ────。」
「……………あれが、黒崎……………くん?」
「
「え? (あれ? 今、何か聞こえたような…どこから?)」
その場にいた織姫、雨竜、ウルキオラ、そしてクルミらしい青年女性が空中で立っていた『黒崎一護』を見上げる。
ウルキオラに抉られた胸からは仮面紋が伸びていて、手足はウルキオラのように細長く、獣を思わせ、肌も雪のように真っ白、そして髪の毛が腰まで長く伸びていた。
虚の仮面もしていたのは言うまでもないが、今まで見た仮面のデザインではない上に、角も二つ生えていた。
ズズズズズズ!
ウルキオラが失った腕がみるみると生え直す。
巨大虚などでよく見る特徴の『超速再生』である。
ただし、『破面』になると引き換えに大半の者たちはこの機能を完全に失う。
現に今の藍染の下にいる破面の中でもウルキオラ
ズアァァァ!
ウルキオラの両手の間に、黄色い槍のようなものが作成される。
「『
「────■■■■■!」
バシュゥゥゥ!
ザン!
矢を投擲する構えにウルキオラが入り、『黒崎一護』が一瞬で眼前に近づいて矢じりを握りつぶしながら、一太刀を入れる。
「今……のは………
今まで有効な攻撃が入らなかったウルキオラの
深手を負ったウルキオラはそのまま下へと落ちて天蓋の屋上に衝突した後、身動き一つしなかった。
「た、倒した? ……
ドン。
キィィィィィィィィィ!!!
ウルキオラの顔を踏みながら、特大の虚閃の霊圧が『黒崎一護』の角の間に溜め込まれる。
「────。 ────。」
「(まただ……これは……黒崎君?)」
「なるほど、『容赦なし』か。 なんとも
織姫が困惑する間、ウルキオラは納得したようなことを口にする。
ドッッッッ!!!
『黒崎一護』の巨大な虚閃はそのまま虚夜宮の天蓋を突き破り、中でいまだに戦っていた者たちや負傷者の治療をしていた四番隊、『破面落ち』、強いては観戦に飽きてザエルアポロの研究所を漁っていたマユリたちでさえも(一瞬だけとはいえ)注目の的となった。
巻き起こった土煙の中、左腕と下半身すべてを失ったウルキオラが織姫たちの近くをゴロゴロと転び飛んでくる。
「すごい……圧倒的じゃないか────ってやめろ黒崎君! 彼はもう戦えない!」
雨竜が思わず見とれていた中、『黒崎一護』は『斬月』で上記の状態のウルキオラの顔面へと突き出す。
そのあまりにも無慈悲な行動に出たことに、あの常時冷静沈着である雨竜が慌てて制止の声を出すほど。
ドッ。
その瞬間『黒崎一護』の動きは止まり、織姫たちの背中に氷が落とされたような冷たい感覚が体の中から湧き出る。
「な……んだ、これは?」
「(これは……なんです?)」
「な、なに? なにこれ?」
嫌な汗が噴き出すクルミらしい青年女性と雨竜、そして体が震え始める織姫。
いや。
震えているのは震えていたが、
かすかな地鳴りが響きながら、虚夜宮が。
「────。 ────。」
キィィィィィィィィィィン!
ドウ!!!
『黒崎一護』は間髪入れずに、特大の虚閃をとある方向へ撃ち出してから咆哮をまた出す。
「■■■■■■■!!!」
そして彼はその場から消えた。
向かったのは地鳴りがしていた方向、先ほどの虚閃を撃った場所。
「「「……え?」」」
「おい、お前たち────」
「────うおおぉぉぉぉぉぉぉ?!」
「────うきゃぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」
「────あっちゃばがぁぁぁ?!」
雨竜たちはポカンとしていたが、『死体状態のフリ』をしていたウルキオラの声にびっくりする。
「何を呆けている? 追うぞ。」
「お、『追う』って────」
「────奴の向かった先には
「ああ、何かあるな。」
足が生え戻ったカリンが近くに来てウルキオラを担ぐ。
「うし、行くぞお前ら。」
…………………
………………
……………
…………
………
……
…
織姫たちは瀕死のウルキオラと一緒に『そこ』へと到着した。
キィン!
火花が散る。
ガガガガ!
ズサァァァァァ。
砂で出来た地面が揺れて、死神や破面に滅却師よりも素早い跳躍を、二つの影が交差しながら衝突していた。
「────。 ────。」
「ハァァァァ!」
先ほどウルキオラを一方的に蹂躙していた『黒崎一護』が、ボロボロの服を着たチエと交戦していた。
だが二人は織姫たちがその場に居合わせたことに気付いた様子はなく、ただ互いを攻撃する。
「…………………あの女、ただモノではないな。」
「「え?」」
ウルキオラの言ったことに雨竜と織姫が彼を見て、視線をチエへと辿る。
その間、かすかな声を織姫は拾う。
「ま モる。 おレが タ すける。」
それを小さな声で、マントラかのように『黒崎一護』が先ほどからずっと言っていることに、織姫が今更ながらに気付いた。
「ぁ……(私の……所為なの? 私が『助けて』なんて言ったから……頼っちゃったから……)」
グサァ!
「クッ!」
チエのお腹に『黒崎一護』の斬魄刀が突き刺さる。
グッ!
チエが自分に突き刺さった『斬月』を手で掴んだ。
「ッ?!」
キィィィィィィィィィィ!
『黒崎一護』は抜けなくなった『斬月』に対し、角の間に霊圧が集まる。
「またあの虚閃だ!」
「ッ! く、黒崎君待って!」
「カリン!」
「オウよ!」
ガシッ!
「
「「「「「?!」」」」」
「
チエがなんと霊圧を集めていた角を両手で直に掴んで、
「ガァァァァァァ!」
「オォォォォォォォ!!!」
バキン!
ボォン!!!
何かが割れる音の直後に、『黒崎一護』が溜め込んでいた虚閃の暴発に戦っていた二人が包まれる。
「「黒崎!/君!」」
織姫たちの方向に吹き飛ばされた『黒崎一護』は頭から仮面が完全に取れていて、気を失いながらクルミらしい青年女性が受け止める。
「意外と重いですね。」
ボン!
ギュゴォォォォォォ!!!
一護の体が真っ白な『虚っぽいモノ』から『人間の肌色』へと戻り、胸の
「『超速再生』……か。」
ガバァ!
ウルキオラの言葉に反応したかのように、混乱した一護が起き上がって自分の体を見下ろす。
「ぬぉ?! お、俺……胸を抉られたハズ……生きている? なんで? え?」
「黒崎君!」
「い、いの────?」
ポヨン。
「────ぶえ?!」
織姫は一護の頭をギュ~っと力いっぱいに抱く。
ギュウゥゥゥゥゥ。
これによって泣き始める彼女の胸部が彼の顔半分を覆い、一護は変な声を出した。
「ふ、ふぇ~~~~~~~~~~ん!」
「ようやく目が覚めたんだね、黒崎。」
一護が呆れたような目をした雨竜を見る。
片腕が無くなった雨竜を。
「石田?! お前、その腕────?!」
「────鎮痛剤と止血剤はもう打ってあるから死にはしないさ。 あとは井上さんに治して貰えば元通りだ。」
「うわぁ~~~~~~~~ん!」
「そ、そうか……って井上! いい加減に俺を放せ!」
気まずい一護は赤くなりながらも抗議を上げる。
まさかそのまま織姫を押し退けることを彼がするわけにもいかないので。
「いやだぁ~~~~~!」
「ようやくか。 今も昔も世話が焼けるな一護は。」
収まり始める土煙の中から、チエの声と
「お、おおう。 チエ────かっ?!」
「ん? どうしたんだいくろ────ろぉぉぉぉ?!」
一護の素っ頓狂になった声と真っ赤になった顔の視線を雨竜がたどると、彼も同じように真っ赤になりながら変な声を出して固まる。
「ひぐ……えぐ……どうしたの二人────へ?」
ついに織姫も見ては、彼女も目が点となって固まる。
「井上、そこまでに…………………ん? 固まってどうした、皆?」
ここで爆発によって巻き上がった砂煙が晴れ始め、チエの全裸らしい影が露わになり始めたことが判明した。
これはもちろん今までの戦いや、バラガンの『
なお余談(かも)だがチエのBホルダーとサラシにパンツも例外なく吹き飛んでいたので文字通り、全裸だった(『黒崎一護』や『ソレスタリアス』や自ら付けられた傷からの流れ出る血以外)。
「???? 私の顔に、何かついているのか?」
「人間は妙だな。 別に
「「「────するわボケェェェェェェ!!!」」」
「ぬ?」
耳まで真っ赤になったカリン、雨竜、一護がウルキオラにツッコむ。
「「「────服ぅぅぅぅぅ!!!」」」
「むぐ。」
上記と同じく真っ赤になった織姫とクルミがそれぞれの余った(脱いでも構わない?)服を脱いで、チエに無理やりそれらを素早く着させた。
「えっと、治療してから私のブラウスにスカート……は恥ずかしいから────」
「────くるm────
「────斬魄刀を取れ、黒崎一護。」
「「「「ッ?!」」」」
ウルキオラはみるみると一護たちの前で、なくした腕と下半身を生え戻して自らの足で立ち上がる。
「お前……でも────」
「────決着はまだついていない。 それに『見た目が
ウルキオラの新しく生えた部位は確かに細く、今にでも折れそうな枯れた木の枝みたいに貧相なものだった。
「戦ってやれ、一護。」
「チ────ッ。」
一護がチエのほうを見ると彼女からすぐに目を離す。
空座高校の茶色いブラウス、白のワイシャツ、そして黒の
「……
「知ったことか。」
一護は黙り、左腕はだらりと下したまま『斬月』を
「貴様、どういうことだ?」
「対等じゃねえ奴に、俺が全力を出すワケにもいかねぇだろ。 今でもフェアじゃねえけどよ、『左足と腕を斬り落とせ』なんていったら後で何を言われるか分かんねぇからやめているだけだ。」
一護が一瞬チラッと未だに織姫と急成長したクルミ(?)、そしてカリンまでもがどうやってチエの服を整えるか苦戦していたのを横目で見る。
一護の目線先を察した雨竜が、ため息交じりに頭を掻く。
「本当に面倒くさいな、黒崎君は。」
「ほっとけ石田、お前ほどじゃねぇし。」
何か言いたげな雨竜だったが、ぐっと彼は我慢した。
「……なるほど。 ではいくぞ、『黒崎一護』。」
「来い、『ウルキオラ・シファー』。」
ピリピリとした緊張感が一気にその場を支配して、織姫たちもがジッと固まって、息を潜めた。
ゴッ!
「「…………………………………………………………………」」
『一瞬』。
文字通りに『一瞬の出来事』だった。
ウルキオラは『
これに一護は『斬月』を、殆ど直感で前へと突き出す。
ウルキオラと一護の得物が互いに掠っては相手に抉り込む。
「グォォ!」
「ヌグゥゥ!」
『斬月』はウルキオラの胸に。
『
「…………クソ。 腕が……」
「ウルキオラ……やっぱり、テメェ……」
ウルキオラの名誉惜しそうな独り言に一護が確信する。
『ウルキオラはもうじき底をつく生命力や気力を使ってまで、体を再生して自分に挑んだ』ことに。
腕は『
そこまでの力でさえも失っていたのだ。
「分からねぇ……分からねぇよ! なんでだ、ウルキオラ?!」
一護は、サラサラと体から砂のようなものが落ちていくウルキオラに叫ぶ。
「貴様の知ったことか……敢えて言うのならば、
『“心”というものが知りたかっただけ』と、
「それって……………もしかして『悔しさ』じゃない?」
織姫の言葉に、ウルキオラは目を見開いて彼女を見る。
「……………………なんだと? どういうことだ、女?」
「だって……あなたはそんな体になってまで、自分の『不愉快さ』の為だけに命を使ってまで、黒崎君に挑んだから………………」
ウルキオラは自分の手を興味津々にマジマジと見ながら、それを自分のぽっかりと空いた
「………………なるほど、『悔しい』………か。 そうか、これが────」
サァァァァァ。
ついにウルキオラの残った身体がチリになって、虚圏の風に乗りながら散った。
「「「「「………………………………」」」」」
そこにいた誰もが言葉をなくし、沈黙が支配する。
「……◆◆◆◆◆。」
いや。
チエだけは何かを言ったらしいが、そこにいた誰もが聞き慣れない、または聞こえない言語のような不思議なモノだった。
『私! ふっかーつ!』
そしてそのしんみりとした空気は遠くから聞こえた元気かつ陽気な声でぶち壊された。
………
……
…
上記から少し時間は遡り、戦闘の観戦に飽きてきたマユリたちは、ザエルアポロの研究所から
「ン?」
「どうかしたのですかマユちゃん?」
ガッシャガッシャガッシャガッシャガッシャガッシャガッシャ。
後ろではマユリが
ちなみに『涅印ステッカー』で指定されていないモノはマユリがまだ移動していなところだけだった。
「いやネ、少々
ゴゴゴゴゴゴゴ。
マユリが『ソレ』を押し込むと隠し扉が本棚の後ろから現れる。
「ほほぉ、『隠し研究所』の中でさらに『隠し通路』ですか。 いよいよバイオハザー〇ですねぇー。」
「なんだね、それハ?」
「『スイートホー〇』をベースにしたプレス〇ゲーム。」
「………………私が言うのもなんだが、リックンはたまにワケの分からないことを口にするネ────」
「「────だがそれがいい!」」
同時に同じことを言った二人は
「「ほう。」」
二人がたどり着いたのはまるで脈を打っているかのような、
部屋の中心には、青く光る『光の
常人ならばその部屋を不気味がっていたかも知れないが、リカとマユリはただ目を光らせていた。
「「ほうほうほう。」」
新しいおもちゃ屋に入店した子供の表情そのものだった。
「例えると、『心臓部の中』かネ?」
「うーん……もしくは『エンジン』……とか?」
「どちらにせよ、持ち帰るものだネ♪」
「ですよねー。 こっちに配線ありまーす。」
「よし、
「あいさー。」
リカは長い袖をぶんぶんとマユリに振るうと、マユリが『首を斬れ!』ジェスチャーをして、リカは形だけの敬礼をしてから無理やり杖を使って配線を引き抜く。
次第に部屋の壁が脈を打つのが遅くなっていき、光の塊はその場から飛来して天井をすり抜ける。
「「ア?!」」
マユリとリカがイタズラを目撃された子供のような、『落胆』と『驚愕』が混ざったような顔をする。
「…………飛んだね。」
「うーん、やはりこの部屋をそのままにして解析すればよかったかもしれン。」
「……戻ろっかマユちゃん?」
「そうだね、『
上記の
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ぶはぁ?! ウェッホエホ、ゴホォォォォォォ!! スーハー、スーハー、スーハー……」
ハイライトの消えかかった目に生気が戻り、呼吸が止まっていた肺の中の淀んだ空気に入れ替えるように息を吐いては吸う。
ムクリとその人物は起き上がり、ぺたぺたと自分の顔や頭、体を確認するかのようにくまなく触った後に、ガッツポーズを取りながら叫ぶ。
「私! ふっかーつ!」
『三月』、復活である。
作者:次話書いてきます。
リカ:少し早いペースですね?
作者:頑張っているけど不安だから勢いで。
リカ:なるほど、わかりませんね。
作者:お前が聞いたんやろが?!