白と黒の世界は夢を見る   作:haru970

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次話です、少々長くなってしまいましたが楽しんで頂けると幸いです。

アンケートにご協力してくださる方たちに感謝を。

今なおも、目は通しております。


第94話 Wing Clipped Eagle

 ___________

 

 ??? 視点

 ___________

 

 護廷、そして『仮面の軍勢(ヴァイザード)』たちが再度、藍染の前に集結していた。

 

 この場で彼の最後の味方の市丸の姿はどこにも見えず、さきほどの藍染の『そろそろ時間だ』と言う言葉でその場から身を消していた。

 

「皆、気ぃ付けや。 相手は藍染、()()()()()()()()()()()や。」

 

「さすがは()()()()。 だが『警戒』をしようがしまいが、同じことだよ。

 

 

 

 

 

 

 現に、()()()()()()()()()()()()ではないですか?」

 

 藍染が丁度その時、周りを見渡してはひよ里を見て、彼女は彼の笑みがごく僅かに深くなったことを見逃さなかった。

 

 くすぶっていた怒りはすぐさま限界を突破し、彼女は虚化した上で自身の斬魄刀の『馘大蛇(くびきりおろち)』を、眼前にまで自ら近付いた藍染へと振るう。

 

 彼女の耳朶には自分のたぎる心拍音しか聞こえておらず、未だに()()()()()()()藍染を心底から憎んでいた。

 

「(もろたで藍染! 死ねぇぇぇ!!! )」

 

 彼女の『馘大蛇(くびきりおろち)』はそのノコギリのような見た目同様に『物を切る』のではなく、『斬りつけた物を強引に引き裂く』能力。

 

 それはある種の『世の(ことわり)』のように働き、『()()()()()()()()()()()()()』。

 

 ただし、能力を発動させるためには相手に直接触れなければ行けない上に、能力解放の形状では敵の攻撃を受け流すことなどの高等技術は出来ないので()()()リスクを負う。

 

「ッ。 ひよ里このアホンダラァァァ!」

 

 ブシャアァァァァァ!

 

 平子の怒鳴りと同時にひよ里が腕を振るうと、血が出る音が辺りに響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 血しぶきは、呆けるひよ里の肘から先を切り落とされた腕から出続けた。

 

「ぁ…………………………………………………は?」

 

 ひよ里の背後では、斬り落とされた自身の両腕と解放された斬魄刀が地上へと落ちていく。

 

「短気なのは()()()()()()()()()ね、猿柿『()』副隊長?」

 

「ッ。 ああああああああああ!

 

 未だに見下すような笑みをする藍染に背筋が凍るような感覚の中、ひよ里はとっさに蹴りを繰り出そうとして足も腕と同様に胴体から離れていくのを見る。

 

「ひよ里! (んなアホな?! ()()斬り落とされた?! ()()()『鏡花水月』か?!)」

 

 自分の四肢が欠損した事実に、脳がやっと追いついたかのような喪失感が襲ったひよ里が地上へと落ちていくのを、平子が彼女を抱きかかえてハッチのところへと移動する。

 

「し、シン────」

 

「────何も言うなひよ里、体力温存しぃ。 ハッチ、一護たちが戻れば織姫ちゃんの能力で何とかなるか? (この腕の中の感覚にひよ里の息遣い。 これは()()の類やない、ホンマもんのケガや。)」

 

「……ハイ。」

 

「じゃあそれ(一護が来る)まで彼女を頼む。」

 

「………………………ハイ。」

 

 ハッチがひよ里を平子から受け継いで、その場から彼らが離れてから藍染が口を開ける。

 

「いいのか? 有昭田(うしょうだ)鉢玄(はちげん)をここから離れさせて?」

 

「理解でけへんか、『信じる』ってことが? まぁしゃーないわな、仲間にすら見捨てられたお前にはのォ?」

 

()()()()()()? それは違うな。 彼らは忠実に私の指令に従っているだけだ。」

 

「なんや、『虚の王様気分』やっただけかいな。」

 

「そういう君こそ、『黒崎一護』たちに頼っているね?」

 

「アホ、『頼る』と『信じる』は違うことや。」

 

「違わないさ。 全ての生物は、より優れたモノを(信じ)る。 弱者は強者を頼り、強者さらなる強者を頼る。 

 そしてその頂点にいる者こそを『()』と()()()()()()()()()()()。」

 

「倒れろ、『逆撫(さかなで)』。」

 

 平子の斬魄刀は柄の先にリング状の持ち手が付き、刀身に穴が空いた形状へと変わる。

 

 その瞬間甘い霧状の何かがその場に充満して、藍染の認識する上下左右前後の方向と感覚が『逆さま』になる。

 

「相手の精神を支配する能力が自分だけの十八番(特権)と思っとったら大間違いやで、藍染。」

 

「なるほど、上下左右前後を『逆さま』にする能力か。 とすると────」

 

 ガィィィン!!!

 

「ッ?!」

 

 藍染が()()()()斬りかかった平子の左薙(ひだりなぎ)を、右薙(みぎなぎ)として防いでいた。

 

「『受ける攻撃も逆』、と言ったところかね?」

 

「不可能や! 上下左右前後、受けるダメージでさえもが逆さまになるのを瞬時に脳内で切り替えるなんて、強い奴ほど本能で対処────!」

 

 ザシュ!

 

 平子の背中に切口らしきものが現れてから、対なる痛みが平子を襲う。

 

「────グッ!」

 

「要するに『錯覚』だよ、君の能力は。 『五感と霊圧、全てを支配する』といった、私の能力からは程遠い。 ()()ればどうと言うことはない。」

 

 平子の背後へと移動していた藍染の前で、血しぶきらしきものが地上から見える。

 

 「藍染! 貴様ぁぁぁぁぁぁ!

 

 バリィン!

 

 遠くから狛村の怒り狂う叫びが聞こえると同時に、藍染の背後の空間が割れる。

 

 「『月牙天衝』!」

 

 割れた空間から現れたのは虚化しながら、藍染の背後(正確には首)を狙って己の技を放つ黒崎一護だった。

 

 

 ___________

 

 一護 視点

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 ズドゥゥゥゥ!!!

 

 藍染の背後に『月牙天衝』が当たる瞬間、緑色の結界らしきものが斬撃を弾いて(藍染)がニヤリとする。

 

「ッ。 (『月牙天衝』を塞がれた?!)」

 

「良い斬撃だ。 虚化したことも称賛に値する。 だが『狙い』が良くない。 『背後』、特に『背後の首位置』は生物にとって最大の自然的『死角』の一つ。 そんな場所に、何の対策も(ほどこ)さないと思ったかい?」

 

 ……確かにそうだ。

 

 クソ。 

 今更ながらに『通常の死角は強者であるほど死角では無い』と、昔言われた事を痛感するとは情けねぇ。

 

 

 尚その時の一護はまだ子供だった頃で、いつも一方的にチエにやられることにムカついたとある日の事。

 彼は登った木からチエを奇襲しようとし、見事な返り討ちにあったので上記を言われたときの一護の意識は朦朧としていたのでしっかりと覚えていなかったのは無理もなかったのを追記しよう。

 

 

「黒崎一護。 君は『何の為に』、私と戦う? 理由はもう無い筈だ。」

 

「なん……だと?」

 

「君が虚圏に出て来たのは『井上織姫を救う為』の筈。 そんな君がここにいるということは、彼女の無事は確保したのだろう────?」

 

 ガシ。

 

「────耳を貸すな、黒崎一護。」

 

 その場にいつの間にか着いたチエが俺の肩に手を置き、彼女の近くでは藍染をやつれた顔の雛森の二人が互いを無言で見ていた。

 

「………………………」

「(やっぱり帰ってきた……でも、チエさんが本当に()()()()()()()のはちょっと意外だな。 服装もいつの間にか変わっているし……)」

 

「今は強敵との戦いの最中(さなか)。 理由がどうであろうと、奴がお前の大切にするものを脅かしている存在に害を成そうとしているのは変わらない。」

 

 ザッ。

 

「その通りだ、少年よ。」

 

「狛村さん!」

 

「挑発や言葉で惑わすなどは口先達者な、(藍染)の専売特許。 呑み込まれてしまえば、気付かぬまま命さえも落としかねん。」

 

 ザッザッザッザッザッ!

 

 ここで『仮面の軍勢(ヴァイザード)』や護廷十三隊の隊長たちが次々と現れた。

 

「ワシたちは決して貴公に、奴の初解を見させはせぬ。」

 

「そうだ、俺たちがテメェを護る。 だからキツイのをかませろよ黒崎一護。」

 

「冬獅郎?!」

 

だから! 日番谷隊ch────」

 

「────頼むで、一護。」

 

 平子の言葉がきっかけとなり、日番谷が先に藍染に斬りかかる。

 

「はぁ~、せやかてなんで織姫ちゃんを連れてこなかってん一護? 彼女なら、多分俺らを全快状態にすぐ出来たのに。」

 

「あ、いや……その……」

 

 タジタジになる一護を平子が面白そうに見る。

 

「代わりに卯ノ花が付いて来たではないか?」

 

 そして彼の代わりにチエが答えた。

 

「ま、そうやな。 戦いの場に慣れとる卯ノ花さんを連れてきたのは正解や。 織姫ちゃんは優秀でええ子やけど、多分こないな場に慣れてへんからな。 ほな、俺ら(ヴァイザード)は先に行くで。」

 

 隊長たちに続いて、平子たちが藍染の方向で行われている攻防に突入する。

 

「気後れをするなよ、黒崎一護。」 

 

「砕蜂? ってかお前…その腕────」

 

「────我々は『死ぬ為』ではなく、『生きるため』に戦うのだ。 藍染の隙は『一瞬の一回だけ』と思えよ。」

 

 片腕を無くしたままの砕蜂がそう言い残し、一瞬チエの後ろに畏まる雛森を睨んでから目の前の戦いに加わる。

 

 

 このことに一護の胸にはわずかだが、『希望』が芽生え始めていた。

 

 

 

「ウソ、だろ。」

「そん、な…」

 

 

 だが時が経つに釣れて、徐々に変わる気持ちと連動しているかのような、嫌な汗が頬を伝った。

 

 冬獅郎が卍解をして藍染を狛村さんとラブさんの攻撃に挟み撃ちさせたと思いきや、藍染はデカい刀と棍棒を粉砕して、狛村さんの背後に出た大きな鎧侍を狛村さんごと斬った。

 

 それから間もなく、背後から攻撃したローズさんとラブさんを返り討ちにした。

 

 この一連は一瞬で、離れた場所から見ても一方的な圧倒で…………………言葉が出なかった。

 

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 市丸ギン 視点

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「あかん。 あかんわ。 お前たち全員、藍染隊長の事を()()()しとるわ。」

 

 市丸は少し離れた建物の屋上から、藍染が次々と護廷の隊長たちと『仮面の軍勢』たちを無力化していくのを、テレビのドキュメンタリーを見ているかのような『第三者』のように独り言を言い出す。

 

「あの人が『怖い』理由は『鏡花水月』があるからやない。 確かに恐ろしい能力やけど、それだけやったら『死んでも従わへん』そうな『破面』たちが何で『十刃』なんていう、一つの集団に成しえたと思てるん?」

 

 今度はリサの『鉄漿蜻蛉(はぐろとんぼ)』を片手で受け止め、藍染はそれごとリサを振り回して拳西とマシロを吹き飛ばす。

 

「(そないなバカな?! 『鉄漿蜻蛉(はぐろとんぼ)』を『片手で受け止めた』なんて?!)」

 

 リサの『鉄漿蜻蛉(はぐろとんぼ)』は『相手が能力使用者より隠している部分があればあるほど威力が増す』という、なんともリサらしい能力だった。

 

 一見すると虚相手などするには物足りなく感じるかもしれないが、この『能力使用者より隠している部分』と言うのはリサ本人が指定出来るものである。

 

 例えば『自分(リサ)より肌を隠している』や、『自分(リサ)が知らないことを知っている』と、かなり応用が効くもの。

 

 だがもちろん制限(弱点)はあるのだが、それはまた別の時に追記しようと思う。

 

「ガッ?!」

 

 そして『鉄漿蜻蛉(はぐろとんぼ)』の持ち主であるリサを藍染が無力化する。

 

「藍染サンが『怖い』のはひとえに『圧倒的な力』や。 

『警戒』? 

『用心』? 

 小さい。 考えのスケールが小さいわ。

『空が落ちてくる』とか、『大地が避ける』というような『不運と立ち向かう覚悟』をして()()()()()()と言ったところや。」

 

 ここで市丸の笑顔が大きくなる。

 

「ほぉら見てみぃ。 藍染()()も呆れすぎて()()()()やないか? ♪」

 

 

 ___________

 

 ??? 視点

 ___________

 

 

 狛村、ラブ、ローズ、マシロ、拳西、リサたちが倒されたところから、一護たちの前で奇妙な場が出来上がり、戦いは更に混沌化していった。

 

「死ね、()()!」

 

「離れていろ、桃に一護!」

 

 ドン!

 

「きゃ?!」

 

「待てよ! あんたら、何やってんだよ?!」

 

 味方同士が突然、一護たちの目の前で刃や技を交え始めた。

 

 ()()()()()()()()

 

 どんなに叫ぼうとも、誰も一護たちの声に気付いた様子はなく、ただ殺しあいを始めた。

 

 このような状況、一護や雛森か他の第三者からとしても『恐怖』か『悪夢』の対象でしかないだろう。

 

()()、覚悟!」

 

 ギィン!

 

「なんで、どうして?! どうしてなのシロちゃん?! やめてよ?!」

 

「邪魔だ、()()────!」

「────やめて────!」

 「────()()!!!」

 

 砕蜂が突然分身を出し、チエに襲い掛かった隙を狙った日番谷を雛森が斬魄刀代わりにありったけの霊圧を込めた果物ナイフで何とか防いでいた。

 

 彼女(雛森)を『()()』と呼びながら。

 

「桃、私から離れていろ────!」

 

「────分身を『見世物』と呼ぶか! ならばその『見世物』とやらで止めを刺してやろう! 『弐撃決殺(にげきけっさつ)』!」

 

 ガシ!

 

「ッ!」

 

「(今は攻撃を止めるしかないか。)」

 

 砕蜂が突然バカにされたような返しを口にして、チエは『雀蜂(すずめばち)』を装着した彼女の腕を右手で掴んで無理やり攻撃を阻止する。

 

 パキパキパキパキパキ!

 

 チエの下半身が雛森をあしらった日番谷によって氷漬けにされていく。

 

「ぬ?! (これは日番谷の────?)」

 

「────シロちゃん! みんな!」

 

 ガシ!

 ズ、ズズ。

 

「来るな、桃────!」

 

 今度は背後から来た『花天狂骨(かてんきょうこつ)』を左手でつかみ、その際抉り斬られた手の平から血が刃を滴る。

 

「────迂闊だねぇ~、氷に影が出来ちゃっているよぉ~?」

 

「京楽さん?! 皆────?!」

 

「────これで終わりだ、()()────!」

 

────やめてぇぇぇぇぇぇぇぇ!

 

 雛森は両手と下半身を塞がれたチエに突撃していく日番谷の前に出る。

 

 だが────

 

 ドスドスドスッ!

 

「グッ!」

 

「え?! どうして?! なんで?!

 

 ────雛森は横へと退けられて、刃が次々とめり込む音がする。

 

 一護は少し離れた場所で、隊長や地上の副隊長や『仮面の軍勢』たちに次々と深手を負わせる藍染を警戒して動けなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や、やった!」

「やりおった! 隊長たちがやりおった!」

「ついに()()()やった!」

 

「フゥー。 一時はどうなるか思ったけど……あとは市丸だけや。」

 

 周りから歓声と、重症で出血する平子がホッとする声は一護と雛森に聞こえてくる。

 

 いまだに呆気に取られていた彼らからすれば、それらは『喜び叫ぶ、狂人たち』としか受け取れなかった。

 

「あ……あ……ああああああ────」

 

 みるみると顔色がひどくなっていく雛森の声に、一護の張りつめていた心に『怒り』が一気に膨らんで、『激怒』へと変わる。

 

 テメェらは! 一体なにをしてんだよぉぉぉぉぉぉぉ?!

 

 「────()()ぉぉぉぉ! いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 一護の怒りの大声と雛森の悲痛にも満ちた叫びに、その場にいた護廷の隊長たちと『仮面の軍勢(ヴァイザード)』がハッとする。

 

「な?! なんで、渡辺の野郎が?! それに雛森も?! い、市丸の野郎はどこに────?!」

 

 「────なんで?! シロちゃん、みんな! ねぇどうして?! 答えてよぉぉぉぉぉ!!!」

 

 「ち、違う! 俺は確かに、藍染を……………………市丸と────!」

 

「────気に……病むな……日番谷。」

 

 雛森の泣き叫ぶ姿と、自分を力の入っていない手で叩く彼女に日番谷は混乱していて、チエの小さな声に誰も気づかなかった。

 

「バカな?! 私は確かに、藍染の気を逸らせて────!」

「こ、これがまさか、『鏡花水月』────?!」

 

 ザァァァァァ!

 

 そしてその時、ほぼ一瞬で日番谷、砕蜂、京楽たちが、自分等の状態に気付いたかのように力なく地上へと落ちていく。

 

()()()()()、藍染?! ()()()()()()()()()使()()()()()んや?!」

 

 周りの者たちの状態を見て、平子が叫ぶ。

 

()()()()? なんとも滑稽な質問だよ。 逆の発想は君たちには無かったのかい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()?」

 

 藍染のこの言葉と、彼の更に深くなった笑み。

 

 この二つの事だけで、その場でまだ戦う気力と立っていた者たちの動揺を剥き出しに、あるいは強引に藍染は引き出していた。

 

 彼らからすれば今現在だけでなく、過去に起こったことの全てが『果たして真か嘘なのか?』という動揺を走らせ、ほとんどは自身たちの成し遂げた事でさえも疑うような(一瞬だけとはいえ)『疑心暗鬼』へ変えさせた。

 

 ザッ!

 

 そしてその『一瞬だけ』が、藍染には十分過ぎた。

 

 彼は雛森を除いて残った護廷や『仮面の軍勢(ヴァイザード)』たちを更に斬って、戦闘続行不可の状態へと陥る。

 

()()()()()()。 君たちはそこで悔いながら、地べたを這いつくばっていればいい。」

 

 ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!

 

 離れたその場所からでも感じる熱気を放つ炎の柱が空高く舞い上がる。

 

 ドゴッ!

 

「グッ………………フッ……………」

 

 衝撃音と共に、黒い塊が藍染の近くの地上に落ちて、苦しむような音を出す。

 

「ほぉ。 さすがは護廷十三隊の総隊長。 ()()()()()の被害を、こうも抑えるとは。」

 

 その黒い塊は、重傷を負った山本元柳斎だった。

 

 

 ___________

 

 山本元柳斎重國 視点

 ___________

 

 時は丁度、山本元柳斎が破面の少年相手をマシロと拳西から引き継いだ時期に戻る。

 

「ああああああああ?」

 

「(『流刃若火(りゅうじんじゃっか)』の炎が消えたじゃと? いや、こ奴が()()()のか。) フンっ!!!」

 

 ドゴッ!

 

「アグッ?!」

 

 そこでは、『流刃若火(りゅうじんじゃっか)』の炎が突然消えたことによって一瞬動きが止まった山本元柳斎に襲い掛かろうとした破面の少年が顔面に、掌底打(しょうてう)ちがめり込む。

 

「アグラァァァァァァァァ…………」

 

「フォッフォ、ワシの隙を突こうなど…あと千年は出直してこい。」

 

 彼が相手を(地面で痛がりながらゴロゴロと)していた破面の少年は『ワンダーワイス・マルジェラ』。

 

 彼は藍染が山本元柳斎の『流刃若火』を()()()ためだけに、新たに生み出した『人口破面』。

 

『流刃若火』が通用しないと悟った山本元柳斎はすぐに白打に戦法を変えると、ワンダーワイスはあらかじめ用意していかのように『滅火皇子(エスティンギル)』に帰刃する。

 

「ほぉ、『れすれくしおん(帰刃)』と言う奴かえ────?」

 

 ドゴン!

 

「────グァ?!」

 

 伊達に二千年も生きている彼はワンダーワイスに反撃もさせず、ただひたすらに子供のような破面を即座に()す。

 

 老人の彼は子供とはいえ、敵対者(それも殺しにかかってきた相手)であれば容赦なく粉砕するのが今の『山本元柳斎重國』。

 

『原作』とは()()()()違う彼は、ここでワンダーワイスの遺体に異変が起きたのを感づいた。

 

「(ぬ? 奴の体が膨らんできただと? それにこの熱気………………………………………まさか────!)」

 

 どんな能力であっても『()()()()()()()()()()()()()()

 

 それは鬼道であっても、斬魄刀の能力であっても、『世の理』が周知の事実。

 ならワンダーワイスの『消した』炎はどこへ行ったのか?

 

 ここで山本元柳斎が考えたのは『炎を封じる』だけの能力ではなく、『炎を溜め込む』という可能性。

 

 つまり、今のワンダーワイスは暴発寸前。

 

 そして『爆薬』は山本元柳斎が今まで使った『流刃若火(りゅうじんじゃっか)』の恐らく()()

 

 かつて、山本元柳斎は『流刃若火(りゅうじんじゃっか)』を全力で使ったことがある。

 それは千年も前の話で、滅却師たちとの戦争だった。

 

 その時、彼は若さゆえの過ちでその場一帯全てを()()()させてしまったことがある。

 

 敵味方の区別なく死神も、滅却師も、霊圧の余波で来ていた虚も巻き込まれ、灰も残さなかったほどの威力だった。

 

 バッ!

 

 それを思い出した山本元柳斎は自らの体でワンダーワイスの死骸を覆うかのように身を投げ出す。

 

 ────ズッ!

 

 巨大な炎の柱がその時天高く舞い、黒焦げ&重症の山本元柳斎が藍染たちがいる場へと転び出された現在()に至る。

 

 

 ___________

 

 ??? 視点

 ___________

 

「グッ………………フッ……………」

 

「ほぉ。 さすがは護廷十三隊の総隊長。 ()()()()()の被害を、こうも抑えるとは。」

 

 黒い塊である、重傷の山本元柳斎は浅い息をしながら自分を見下ろしていた藍染を見上げていた。

 

 両腕だけでなく、体の前半部分の皮膚は血がにじんだ場所は赤黒く焼けていた。 

 もしくは皮膚がボロボロと剥がれて行き、未だにムキムキである筋肉の表面が露出していた。

 

 もともと長かったヒゲは焼けて、どこかサングラスを取った亀〇人にも似てはなくもなかった。

 

 ドラ〇ンボー〇がもし『残酷な描写を明確に見せていれば』の話だが。

 

「貴方がその身を挺して抑え込んでいなければ、君たちの張った結界などを消し飛ばすだけどころか、この町にいる貴方の部下や友人たちを含めた数倍モノの規模の大地が灰か砂へと化していたでしょう。」

 

「………………………」

 

 それはつまり『(藍染の)予想通り』とでも言いたいことに、山本元柳斎は黙り込んだ。

 

 ザッザッザッザッ。

 

「貴方だけは今この場で、止めを刺しましょう。」

 

 シュラン。

 ガシィ!

 

 藍染が刀を抜くと同時に、山本元柳斎が近付いた彼の足を痛々しい手で力強く掴んで笑みを浮かべる。

 

 以前京楽に見せた、『利用出来るモノは全て利用する』と言った時の腹黒い物だった。*1

 

「待っておったぞ。 貴様がその手自らでワシに止めを刺そうとするこの瞬間を。 破道の九十六、『一刀火葬(いっとうかそう)』!」

 

 その瞬間、山本元柳斎の腕を媒体に打刀の切っ先から物打までの部分のように見える巨大な炎が空高く舞う。

 

 それはどこか、チエがスターク相手に使った『刀剣火葬(とうけんかそう)』の巨大版に似ていた。*2

 

「……く! (まさか、敵の術中で焼け焦げた体を逆手にとって禁術の媒体に使うとは────)」

 

 その中から、初めて()()()()()飛び出た藍染が山本元柳斎の事を侮っていたことを若干後悔していた。

 

 「『月牙────』」

 

 そんな彼の頭上から、虚化した一護が『斬月』を間髪入れずに振るう。

 

 「『────天衝』!!!」

 

 ズッ!

 

 藍染の体に一護の刃が通り、血が更に藍染から飛び出た。

*1
36話より

*2
83話より




作者:次話書きに行きます。

一角:テメェ、最近そればっかだな。

作者:リアルでいろいろとありまして若干テンション低めなだけです

弓親:『テンション低めなだけ』って……そこは美しく『アンニュイな気分』と言ったほうが良いんじゃないかな?

作者:うるさいよルルーシュ

一角/弓親:…………………………………………誰それ?

作者:それかルカと呼べばいいのか?

一角:だから誰だよそれ?

弓親:この僕の事だ。 よほど美しい方たちだろうね?

作者:独裁者ナルシストに女っぽい男。

一角:ぶわっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!

弓親:……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………咲き狂え、『瑠璃色孔雀』。
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