俺は、貴女が好き。
でも、貴女はアイツが好き。
だから俺は、アイツが嫌い。
でも、貴女が一番幸せなのは、
――――――アイツと一緒にいること。






※ニンテンドー発のSRPG【ファイアーエムブレム 封印の剣】の二次創作小説です。
作中登場人物【ゴンザレス】が主人公。
【ロイ】【リリーナ】と関連するSSです。

≪設定≫
・原作【ファイアーエムブレム封印の剣】本編中
・イリアルート設定
・ゴンザレス×リリーナ支援A会話後
・リリーナ→ロイの好意あり

※注意
・原作ネタバレ注意!
・多少の解釈違いがあるかもしれません

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【FE封印】たったひとつ、できること【ゴンザレス×リリーナSS】

重い荷物が、軍の拠点からどさりと運び出される音がした。

武器や防具の他にも、傷薬や食料など、行軍に必要な物品が次々に馬車に積載されていく。

ゴンザレスは、他の兵士たちと共に積荷を終え汗を拭った。

共に仕事した者たちから、お疲れ様、と声をかけられても、

「う…あ…。」

…と、上手く言葉を返せずに混乱するばかり。

そこへ、ひとりやってきた。

 

「ゴンザレス!」

リキア諸侯同盟オスティア侯爵家の公女・リリーナ。

山賊としてロイの率いるリキア同盟軍と出会った時に、彼女の言葉に心を動かされ、ゴンザレスはリキア同盟軍で戦う事を決めた。

自分自身の生き方を変えてくれた、所謂【人生の恩人】でもあるだろう。

そんな彼女に、彼はひとりの男性としての好意もあるのだろう。

彼女の姿を見るや否や、先程以上にしどろもどろになる。

「リ リーナ。」

「積荷を手伝ってくれていたのね。ありがとう。」

リリーナが彼に微笑みかけると、一気に頬が紅くなる。

「お、おれ…ちからしごと、できる。ほか…できない。」

「ひとつできる事があるだけでいいじゃない。私には重い荷物をこんなにたくさん積んだりできないもの。」

「リリーナ、おんな。これ、おとこ…やる。」

「うん。だから、【ありがとう】なのよ。」

「あり…がと。」

自身の理解力に自信のないゴンザレスだが、どうやら褒められている、しかも好きな人に、という事は解ったようで、ますます照れくさそうに頭を掻いた。

 

そこへ、もうひとりやってくる。

ロイだ。

リリーナ同様にリキア諸侯同盟の出身。

フェレ侯爵家の公子だが、今や同盟軍を率いる将軍でもある。

「リリーナ。こんなところにいたのかい?」

「ロイ!」

声をかけられたリリーナは、彼の元に駆け寄っていく。

「見て!もう荷造り終わったみたい!」

「すごい…もう積み終わったのか。」

ロイは、馬車に移し終わった荷物を眺め感心していた。

「うん、ゴンザレスも手伝ってくれたみたいよ。」

「ゴンザレスが?」

そう聞くと、ロイはゴンザレスの方に近づいていく。

「ありがとう、ゴンザレス。イリアは極寒の地だ。そこに向かうとなると、今までの行軍以上に食料や防寒具といった物品が必要になる。さぞ多くの荷物だっただろうに…助かったよ。」

ロイは、そう言ってゴンザレスに握手を求めた。

ゴンザレスは、その手を眺めた後、更に彼の顔を眺める。

 

おれは、コイツがきらいだ。

おれは、リリーナがすきだ。

でも、リリーナはコイツがすきだ。

すきなヤツの、すきなヤツは、きらい…?

すきなヤツの、すきなヤツは、すき…?

 

なかなか握手をしないゴンザレスを見て、ロイは少し首を傾げた。

「うぅ…。」

ゴンザレスは少し困ったような表情をした後、結局握手をしないまま、その場をとぼとぼと立ち去った。

「え…ゴンザレス?」

リリーナが呼び止めるも、振り返らずに去っていく。

「どうしたんだろう…?僕が何か、気に障ることでもしたのかな?」

ロイも、また少し困った表情をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日が経った。

リキア同盟軍は、イリア地方北東の山岳地帯まで行軍していた。

ここまで来ると、極寒の地と呼ばれるイリアの気候がロイ達にも牙を剥く。

【冬将軍】と称される激しいブリザード。

今までも決して順調とは言えない進軍ではあったが、今回はそれよりも更に歩みを止められてしまう。

そして、そんな状況下でも敵の攻撃の手は緩まない。

むしろ、この状況を好機とし、どんどん攻め立ててくる。

相手はベルン軍に加勢しているものの、元々はイリア地方が擁する天馬騎士団であるシグーネ隊。

当然、地形や気候といった環境においては完全に分が悪い相手。

ロイ達も、苦戦を強いられていた。

 

「くっ…!次から次へと…!」

ロイが剣を振るい、襲撃してくる天馬騎士団を撃退していく。

しかし、四方八方から飛来してくる相手と対峙するのは骨が折れる。

他の味方の援護もあり、辛うじて対応できている、といったところだ。

「おおおおおおおッ!」

ゴンザレスが、雄叫びを上げながら斧を振り回す。

我武者羅で乱暴な扱い方だが、かえってこの戦い方がハマっているのか、数をかけて攻撃してくる天馬騎士団をまとめて薙ぎ払っていく。

山賊として過ごしていたゴンザレスにとっては、多少の悪天候や慣れない環境なんてもろともしない。

力の限り、感覚のままに、斧を振り回し、敵を倒す。

「すごい!頼もしいよ、ゴンザレス!」

ロイが、ゴンザレスに声をかける。

しかし、ゴンザレスはまた、ロイに対して困った表情を見せては、言葉を返さずそっぽを向いた。

(まただ…。僕は一体、彼に何を…?)

ロイは、ゴンザレスの背中を見つめながら考える。

 

――――――その時だった。

ブリザードの威力が、更に増した。

猛烈に吹き込む突風に、ロイは体制を崩す。

「…しまった!」

その場で転倒し、剣を落としてしまう。

すぐに体制を立て直すが、こんな好機を相手が見逃すわけがない。

いまだと言わんばかりに、襲いかかってくる天馬騎士団。

「ロイ!危ない!!」

リリーナが叫ぶも、もう間に合わない。

(まずい…!やられる…!!)

ロイは思わず、目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――鈍い、槍が肉体に刺さる音がした。

でも、自分の肉体ではない。

辺りもこころなしか暗い。

何が起きたのか、と目を開けたロイの前に立っていたのは、ゴンザレスだった。

「ゴンザレス!?」

 

リリーナの叫びに咄嗟に反応し、駆け出し、

自然とロイを庇っていた。

「…うおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」

雄々しい叫びは、辺りに地響きを起こすぐらいの迫力だ。

刺された槍は、複数本だというにも関わらず、まるで倒れる気配すらない。

そしてその勢いのまま、斧を振るい、天馬騎士団を蹴散らした。

「ゴンザレス、ありがとう!助かったよ…!!」

ロイが駆け寄って声をかけるが、ゴンザレスに反応がない。

「ゴンザレス…?」

彼がもう一度声をかけた、その瞬間だった。

 

ドサッ、と、ゴンザレスはその場に倒れた。

意識を失い、すでに気絶しているようだった。

「ゴンザレス!!?」

それに気づいたリリーナが駆け寄ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リ リーナ…なんで、泣く?

ゴンザレスだって…どうして…泣いているの?

近づくななんて…そんな悲しいこと…言わないで。

 

私は――――――

 

あなたと一緒にいたいの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――!!」

ゴンザレスは、目を覚ました。

 

(いまのは…ゆめ…? そうか…おれ…アイツをかばって…。)

 

あの攻撃を受け反撃した後、失血で意識を失い、拠点に運ばれていたらしい。

すでに、傷は治療されている。

一命は取り留めたようだ。

 

「ゴンザレス!!」

様子を見に来たリリーナは、ゴンザレスが目を覚ましているのを見ると、一気に駆け寄って彼を抱き締めた。

「よかった…目が覚めたのね。」

「リリーナ…おれ…。」

リリーナに抱き締められ、顔が真っ赤になり、心拍数がどんどん上がる。

困惑してしどろもどろになる一方だ。

「よかった…。よかった…!!」

リリーナの目からは、涙が溢れていた。

「リリーナ…。」

「…ごめんね。でも、ゴンザレスが無事でよかった…!」

リリーナは涙を拭いながらそう言うが、ゴンザレスの表情はどんどん曇っていった。

「…すまん。」

彼は、ぼそりとそう呟いた。

「え…?なんで、ゴンザレスが謝るの?」

リリーナが聞くと、ゴンザレスは悲しそうにしながら言葉を続けた。

 

「おれ…またアンタ、泣かせた。おれ、アイツかばった。でも、アンタ……泣かせた。だから、うぅ…。」

「…どういうこと?ロイを庇ったのは、私のため…ってことなの?」

ゴンザレスはその問いかけに、コクリと頷いた。

「おれ…アイツ。ロイ…きらいだ。リリーナ、アイツといる。おれのしらない顔する…。リリーナ、アイツ、すき。前、言ってた。すきだと、そうなる。わかる。」

「ゴンザレス…。」

「アイツ、死んだら…リリーナ、つらい。おれ、前にも…アンタ泣かせた。いなくなる、つらい。いなくなると、アンタ泣く。すきな人、死ぬ。もっとつらい。リリーナ、もっと泣く。だから、まもった。おれ、できること…ひとつだけ。このデカいからだ、つかうことだけ…。」

ゴンザレスの言葉を聞いたリリーナは、またポロポロと目から涙が零れ落ちていた。

そしてまた、リリーナはゆっくりとゴンザレスを抱き締め、

 

「ありがとう…!その【ひとつだけ】が、どれだけ…!」

 

そう呟いた。

「リ リーナ。また泣く?すまん…おれ…。」

戸惑うゴンザレスに、リリーナは更に強く抱き締め、

「謝らないで。ゴンザレスは、何も悪くないんだから…。」

…と、言った。

「…?お、おれ、あたま悪い。よくわからない。」

困惑して首を傾げる彼に、リリーナはこう言った。

「約束して、ゴンザレス。たった【ひとつだけ】。貴方も、私にとって大事な人なの。だから…。」

 

 

 

 

――――――貴方も、死なないで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イリアでの戦いを終え、いよいよベルンへと向かう。

同盟軍はまた長旅に備えて、荷造りを始めていた。

イリアに向かう時と同じように、ゴンザレスはまた、積荷の手伝いに精を出していた。

「ゴンザレス!」

ロイが、ゴンザレスに声をかけた。

「ロイ。」

「傷はもう大丈夫なのかい?」

「だい じょうぶ…。」

「それはよかった…!今回も手伝ってくれてるんだね、ありがとう!僕も手伝うよ。」

ロイが、そう言って荷物に手を出そうとした瞬間、

「ダメだ。」

…と、ゴンザレスが制止した。

「え…?」

「これ、おれのしごと。アンタ、べつのしごと、ある。それ、だいじ。おれには、できない。」

「軍全体の、って事かな?」

「そ、そう。それ。」

ゴンザレスが強く頷く。

「そうか…わかった。じゃあ、ここは任せるよ、ありがとう。」

そう言ってロイが立ち去ろうとした、その時だった。

「ロイ…!」

ゴンザレスが、呼び止めた。

 

「リリーナ、泣かせるな。おれ、リリーナ、すき。リリーナ、アンタ、すき。だから、おれ…アンタ、まもる。リリーナ、泣かせない。」

ロイもまた、その言葉を聞いて、強く頷いた。


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