【小説版バンドリ布教会01】という企画の参加作品そのニです。よろしくお願いします。

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リミットなんてぶち壊して!

 ──ライブをやろう。

 

 それを最初に言ったのは誰であったか。それは多分、蔵ベンケー殿だった気もする。

 私達「Poppin`Party」 ──通称ポピパの全員揃って初めてのライブであった学園祭ライブを終えた後に蔵ベンケー殿が師匠の次なるステージとして言ったと思う。

 それについてはウチを含めみんな肯定的で、それについてのすんなりと話は進んだ筈だ。

 

「むむむ……」

 

 そしてそのライブの前日の夜の二十一時頃、ウチはアパートの自室で唸っていた。

 目の前にはつい最近買い換えたスマホ。そこに映るのはメッセージアプリの「家族」と記されたグループに載せられた一枚の写真と一言のメッセージ。

 

「『もうすぐ出発します』か……。むむむ、姉上め……何故来るのだ……」

 

 そしてその写真には一人の女性が駅をバックにピースしている姿。

 

 ──牛込ゆり。それがその女性の名前で、ウチがライブをすると告げたら直ぐに観に行くと返信してきた姉の名前。顔も良く文武両道で、今は地元の学校で生徒会長もしているという戦国の世でなら姫の様な存在。

 

 別に、姉上が来ること自体はいいのだ。……いや、ベースを買うために極貧生活をしているというのがバレたらまずいからよくはないのか?

 ……まぁ、それはそれとしてだ。姉上が来ることは構わないのは本当だ。ウチが上京する時に賛成してくれたのも姉上だし、正直な話ウチも久しぶりに姉上と会いたい。

 

「うむむ……」

 

 では何故悩むのか? それは単純にウチが上京する前、姉上に宣言してまったある言葉のせいだ。

 

 ──ウチが上京したらニッポンイチのバンドになって姉上に演奏を聴かせてやる!

 

「あーーー! なんであんな見栄を張っちゃったんだろう……。ウチのバカ……」

 

 ……別に、ポピパの演奏が加入したことを後悔するほどにどうしようもなく下手という訳ではない。そうではないのだが、今のポピパがニッポンイチかと問われれば今はそうではない。

 それでもあんな見栄を張ってしまった手前、恥ずかしい演奏などは出来ない。

 

「ぬぅ……やはり恐るべきガールズバンド戦国時代……」

 

 そう呟きながら、少し前に敵情視察で観に行ったライブハウスでのライブを思い返す。実力派と名高いバンドや幼馴染みで組んだらしいバンド、挙句の果てにはとんでもないお金持ちをバックに持つバンドや芸能事務所からプロデュースされたアイドルバンドまで。

 この近辺でさっと思いつくのでさえこれだけいるのだから、目標となるニッポンイチともなればいかほどか、想像するだけで果てしなく感じる。

 

 だがそれでも、それがウチらポピパがニッポンイチになれないかと言われれば、それも違う。今が例え無理でもポピパは必ずニッポンイチになれると思っている。いや、してみせる。

 

「んー……。んー……? ん?」

 

 そこまで考えてふと、なら別にそれはそれでよいのでは無いかと思った。

 ウチはもちろんのこと頑張ってる。師匠も最近は忍法を使わなくなったが少しづつ明るく、そして演奏も明らかに上手になってきた。

 うさぎ殿とパン屋殿はすごい。ウチにはほぼ一日中楽器を触れる集中力も、朝はパン屋の手伝いをして学校に行きそれから練習をするなんて体力もないから。

 そして蔵ベンケー殿は、多分一番頑張ってる。ポピパのマネージャーとして動きつつも、きっと触ったことすらないであろうキーボードを今では引ける様に仕上げてきたのだから。

 

「…………」

 

 そして思い出すのは暫く前の練習終わりの日、忘れ物をしたウチがこっそり覗いてしまったのは、蔵ベンケー殿が一人泣きながら練習を続けている姿。

 

 ──いい、この事は黙ってて。私がこんな姿を見せてたら格好がつかないもの。

 

 ウチに気付いてすぐに涙を拭い、そんなことを言う蔵ベンケー殿に、ウチは結局何も言えずにただ頷いたのを覚えている。

 

 だから、そんな蔵ベンケー殿の頑張りが報われて欲しい。結局、ウチはそんなに頭は良くないから難しい事はわからない。故に、この思いを演奏に乗せるしかない。

 

「……うむ!」

 

 そうだ、悩む必要などない。例え今のポピパが誰もが認めるニッポンイチではないにしても、最高の演奏をして聴いた人を夢中に出来れば、その時だけはポピパはニッポンイチなのだ。

 

 それならウチがするべきなのは沢山頑張った仲間を全力で支えることのみ。ウチの支えを得たポピパならば、限界なんて壊して行けるのだから。

 

「……そうと決まれば再び練習再開! あっ、その前に……」

 

 そうして再び練習しようとベースを手に取ろうと思ったが、その前に姉上にメッセージを送るのを忘れていた。

 

「……これで、よしっと! ……わっ! 姉上既読はや!」

 

 パシャリと、ウチとベースを自撮りしてメッセージと共に送る。

 

 ──最高の演奏をするから期待しててね!

 

 そのメッセージにも一瞬で既読がつき、姉上からワクワクしているような動物のスタンプを送られたのに驚きつつ苦笑して、ウチは改めてベースを手に取る。

 

 ──そして、夜遅くまで練習をしてしまい、翌日の集合時間ギリギリに到着し、蔵ベンケー殿に怒られるのだが、それはまた別のお話。


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