興奮の余りどこかミスってそう(震え)
Prologue:幻想郷へLET'S GO!!
「はぁ……」
【楽園の素敵な巫女】博麗霊夢は、おもむろにため息を吐いた。それに反応する金髪の女性が一人。
「霊夢、ため息はつくものじゃないわ。幸せが逃げてしまうじゃない」
「うるさいわね、紫」
霊夢は、彼女自身が紫と呼んだ女性に対し悪態をつく。
八雲紫。「境界を操る程度の能力」という神にも近い強力な能力を持ち、幻想郷の誕生や管理に尽力している神出鬼没のスキマ妖怪。
ただ、霊夢に言わせれば、紫はお節介が過ぎるのだ。すぐ何処からとも無く現れ、要りもしない助言を与えてくる。
そもそも紫は妖怪、己は人間。幾ら二人が「幻想郷の管理」と言う目的においての意志が一致しているとは言っても、余りに立場が違いすぎる。その二人が深く関わってしまうと、幻想郷に良くない影響が起こる可能性がある。霊夢が紫に育てられている以上、既に手遅れかもしれないが。
「てか、あんたは妖怪じゃない。神社に来てんじゃないわよ、それとも退治されたいの?」
遠回しに神社に来ないよう忠告しても、紫は飄々とした態度を崩さない。それどころか、この状況を楽しんでいる気配すら感じる。
「あら、相変わらず冷たいわね。育ての親だというのに」
「……」
イラッとして思わず御札を投げるも、歯牙にもかけない紫。
余裕綽々な姿を見て更にイライラが募っていく。
「はぁ……全く。んで、何の用よ」
「何がかしら?」
「とぼけんじゃないわよ。幾らあんたでも用が無いのに来るほど暇じゃないでしょ。……まさか本当に?」
「えぇ、霊夢と会いたくなっちゃって」
呆れたと言わんばかりに白い目を向ける。氷の様に冷たい視線に、流石の紫も少しばかりたじろぐ。
「はっ、そんな訳ないでしょうが?あんたが私と会いたい?笑わせないでよ。……じゃあ、用がないならあんたに聞きたいことがあるんだけど」
「霊夢が私に何か聞くなんて珍しいわね、一体どうしたの?」
「今日、嫌な予感がするのよね……いや、完全に嫌な予感って訳じゃない気がするんだけど」
なかなか要領を得ない霊夢の話を聞き、怪訝な顔を向ける紫。
ただ、それでも『何か』が起きるということは伝わった。
「それは……『博麗の巫女』としての勘ってことでいいのよね?」
「うん」
「それは、マズイわね──ッ!?」
瞬間、霊夢と紫は察知する。神が操る力──神力を。
霊夢は神をその身に降ろせるが故に。紫は神に等しい程の凄まじい力を持つが故に。
気づくことが出来た。だが、これは……
「本当に神力、なの?」
「えぇ、恐らくは。──行ってくるわね、神力の発生地点に」
「ちょっ、紫!私も連れて……」
言い切る前にスキマを開き、その場から消えてしまう紫。
「チッ……あんのスキマ妖怪!!」
霊夢は思う。あれ程莫大な量の神力を出すのは、生半可な神では出来ない所業だ。
下手すると、紫や己より圧倒的に強い存在かもしれない。
「クソっ……死ぬんじゃないわよ」
確かに紫は霊夢にとって過保護でうざい妖怪であるが、それでも決して死んで欲しいという訳では無い。
かの神力の発生源となった存在が、幻想郷や紫に敵愾心を持っていないようにと、霊夢は祈った。
「アリスが行ってから、30年か……」
自室にて、俺はそう呟いた。この30年間、魔界では特別な出来事は無かった。だが、その平穏な日々にも終わりを告げる時が来た。
それは何故か。それは、幻想郷に住むアリスからこんな連絡が来たからである。
──博麗の巫女が代替わりした。新しい巫女は、名を博麗霊夢というと。
これを聞いた瞬間、遂に来たか!と感動したものだ。
そして俺は、どのようにして幻想郷に行こうかと考え始めた。
何の理由も無く幻想郷に行きたいと言っても、当然却下されるに決まっている。自由に動き回るには、余りにも魔界の神という立場は重すぎた。
だが、幻想郷に行けなかったこのもどかしさから、遂に解放される時が来たのだ。
そう、魔界人達を説得するに足る理由を発見することにより!
さぁ、そうと決まったら善は急げだ。早速夢子の部屋へと向かおう。夢子ちゃんさえ納得させられれば実質勝ちだからな。ルイズは……まぁ何とかなるでしょ(適当)
ゆめエモ~ン、幻想郷行ってきていい?
「え?幻想郷ですか?………………良いですよ」
ファッ!!??え、ちょ、軽くない?どうしちゃったの?
「それが、今までなら止めていたのですが……ルイズから、“夢子さん、少し心配しすぎではないですか?神綺様は最強なのですから、何もそこまでする必要はないでしょう”と言われてしまいましたので……」
ルイズぅぅぅぅぅ!お前ってやつはァ!ホント最高だぜありがとう!
いやー、理由を用意したのは無駄になっちまったが、まぁ細かいことはいいか!
「そうか、ありがとな。──ただ、魔界に侵略者が来た時が困るな……」
「侵略者など!私が退治いたしますので……」
うーん、夢子は強いんだがなぁ。流石にへカーティアレベルとかが来ちゃったら勝てないだろうからねぇ。
「そうだな……じゃあこれを置いていこうか」
そう言いながら俺が懐から取り出したのは携帯電話の形をした物体。ただ携帯電話と違うのが、ボタンが二つになっていること。
「あの……これは一体なんでしょうか?」
「これは通話装置だ。右の青いボタンを押せば、私と通話出来るようになっている。──そして、左の赤いボタンは、通報機能だ。これを押したら、即座に私に連絡が来るようになっている。もし魔界が危険になったらこれを押すといい。……私に迷惑がーとかは考えなくて良いからな。魔界が消えてしまう方が私は悲しいんだから」
「──はい」
「あともう一つ渡しておこう。これはルイズ用だ」
二つあればまぁ大丈夫だろう。
……いつからかね。俺にとって、魔界が大事な存在になったのは。
全く、創った当時はここまで愛おしくなるなんてこれっぽっちも思ってなかったのにな。人生(神生?)は分からんものよ。
「後は……大丈夫か?……すまん夢子、迷惑をかけるな」
「そのような事、神綺様が考える必要はありません。そもそも私達を見捨てたとしても、神綺様に文句を言う訳がありませんので。……ですから、気にしないでください。私は、神綺様に託されただけで幸せなんですから」
この子ホントに人間が出来ている……(歓喜)
なんで俺からこんな良い子が創られたんでしょうね、わけがわからないよ。
「そうか。困ったことがあったら遠慮せずに言え。──じゃあ、またな」
「行ってらっしゃいませ」
恭しく礼をする彼女に背を向けながら、唱える。
「
「【
俺の眼前の空間が捻じ曲がる。やけにあっさりした別れだが、いずれまた会う以上、しんみりする方が嫌だろう。彼女にとっても、俺にとっても。
数秒後、既に俺の姿はそこには無かった。
………
……
…
「ルイズは、知らないから言えるのよ」
「私だって神綺様の行動を妨げたくないに決まってる」
「それでも言うのは、
「あの時の悲劇を、覚えているから」
一面青い湖に、世界を覆う蒼穹。
それが、俺がこの世界に来て一番最初に見た景色だった。
そして、周りに漂う妖精。
「きゅうにでてきた!」
「きゃー!」
「にげろー!」
あっ……逃げちゃった。
って、妖精が居る湖か……ってことは、ここは霧の湖かな?霧が出てないし紅魔館が無いから一瞬分からなかったぜ。
と、空間が歪む気配がした。その方向を向くと、そこにはかつて夢中になっていた原作で見慣れたスキマが一つと、その中からこちらを覗き込む女性が。
「貴女は誰?名前は?」
「人に名を尋ねるならまず自分から名乗るべきじゃないか?……と言いたいところだが、唐突に現れた私を警戒するのは分かる。──私の名前は神綺。魔界から来た一般人だ」
「魔界?……あぁ、アリスと同じ出身なのね。私は八雲紫。ここ幻想郷を管理する、妖怪の賢者よ」
おっほー!生ゆかりん!生ゆかりん!あぁ、お麗しい……。原作の胡散臭さも健在だァ!流石、儚月抄が出るまで最強クラスのキャラと言われていただけはあるぜ!
「なるほど……じゃあ、ここで暮らすにはどうすれば良いんだ?」
「とりあえず、博麗神社に行きましょう。『博麗の巫女』と呼ばれる人間がそこには居るわ。彼女に許可を貰ってからね」
「分かった。じゃあ、連れてってくれ」
紫は“うふふ”と扇子で口元を隠しながら笑い、スキマから手招きしてくる。
導かれるままにスキマの中に入ると、視界が急激に変化する。
「ここが博麗神社よ」
着くの速すぎ!待って、心の準備がまだ……!
「霊夢~、帰ったわよー」
「あー、生きてたのね。……んで、そいつ誰?」
ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!
【2021年4月24日 日間ランキング55位達成!】
皆さんの応援のおかげです!本当にありがとうございます!
正直旧作というマイナー作品メインのこの小説が入れると思ってなかった……(戦慄)
いつも評価や感想、お気に入り登録してくれる方もありがとうございます!
これからも拙作をよろしくお願いします!
★実績達成!
『創造』の一部情報が解禁されました!
0:魔界神とステータス的な何か。から確認可能です!