「んで、そいつ誰?」
れっ、れれれれれ霊夢さん!?
ちょっ、目の前に主人公様が、あぁ──
「彼女はお客さんよ。……例のね」
「ふぅん、まぁいいや。とりあえず中に入って」
掃除の手を止めた霊夢に案内されて入ったのは、博麗神社の境内。
“適当に座って”と言われ、畳の上に静かに腰を下ろす。
手際よく用意されたお茶を啜りながら、彼女の話を聞く。
「それで、名前は何よ?」
「神綺と言う。魔界から来たただの人間だ」
「はぁ……はぁ?アレだけの神力を出せる人間が居る訳……ちょっと待って、しんきって名前、どう書くの?」
「ふむ……神に綺麗の綺と書いて、神綺だ」
「……マジかぁ」
なんか露骨に落胆されたんだけど、なぜ?
「霊夢、何か知ってるの?」
「知ってるも何も、魔界の創造神じゃない、神綺って。先々代の巫女の日記に書いてあったわよ……物凄い嘘つきね」
あっ、先々代って靈夢かな?日記書く様なマメな性格だったんだね。もう少し大雑把なタイプだと思ってた。
「知らなかったなんて言わせないわよ。アレだけの神力を発していたんだもの」
「うふふ、知らなかったわ」
「あぁ。私も知らなかったな」
「なんで本人が知らないのよ!!……あーもう!こいつら!」
地団駄を踏んでぷりぷり怒る霊夢を見ていると、ちょっと楽しくなってきたが自重しよう。……ていうか神力って何だ?まぁ字面からして神が持つ力~とかそういう感じなんだろうけど。
「それじゃ少し真面目な話に戻ろう。──私は、ここに……幻想郷に住んで良いのか?」
「え?あー、別に良いんじゃない?幻想郷を滅ぼそうとしなければね。──私としては、強い力を持つ存在が幻想郷に居るだけで、面倒が起きる可能性が高くなるからやめてほしいけど」
「そうね。幻想郷は全てを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ」
お、ゆかりんの名言だ。尚、幻想郷に受け入れられなかった総統娘の天人さん……w
好き勝手やりすぎたからね、仕方ないね。
俺も美しく残酷にこの大地より往ね!されないように気をつけないと(戒め)
「うむ、ありがたい」
「でも、衣食住の保証はしないわよ。それだけの力を持ってるなら問題無いと思うけど」
「それは流石に分かってるさ。……ふふっ」
つい楽しくなって、笑みがこぼれてしまう。それを見て、怪しげな顔をする霊夢が更に面白く。笑いが止まらなくなってしまった。
「ハハハハハハ!」
「なーに急に笑ってんのよ……気持ち悪いわね」
「凄い笑い様ね」
「いや、なんだ……こうやって普通に話せる相手が魔界には居なかったもんでな。──楽しくなってきちまった」
ついつい声が弾んでしまうのを抑えきれない。霊夢は自分の茶を飲み干し、机の上に置いた。紫はまだスキマの中に居る。なぜ出てこないのか。
「へー、じゃこの世界は良いんじゃない?自分勝手なやつが多いし、神だからって敬うのなんてそれこそ殆ど居ないしね」
「まぁ霊夢とか巫女なのに神を敬ってないしね」
大体あんたのせいよ、と言うことによる口撃を見事にスルーする紫。
扇子で口元を隠しながら、相変わらず胡散臭い笑みを浮かべている。
「……じゃあ、そろそろ良いかしら?私も結界のチェックを手伝わないといけないしね」
「あんた、まさか藍に任せてるの?冬眠してないのに。……うーわ、藍カワイソー」
「あぁ。私は大丈夫だ。──二人とも、ありがとな」
「良いけど、今回は特例だからね。──次に来る時は、お賽銭を奉納すること!分かった?」
「了解した。次は持ってくるとしよう。では、またな」
あぁ、楽しかった。これからもっと様々な原作キャラと会うのか。楽しみだけど、俺の心臓持つかな……。
神綺が去ったのを確認して、霊夢はふぅっと息を吐いた。
「全く、紫。来るなら来ると言いなさいよ。驚いたじゃない」
「ごめんなさいね。でも霊夢、楽しそうだったわよ?」
は?何言ってんだこいつの目は節穴なのかと霊夢は思い──
「すごいウキウキしてて、いつもと違う雰囲気だったし」
「……」
「途中から当たりが強くなったのも気が合うと思ったからでしょ?」
「…………」
「それに、やけに懇切丁寧に説明してたわね」
「………………」
「挙句の果てには“またね”と言われた時のあの笑顔!あぁ、博麗の巫女としては失格だと、私の立場だとそう言わないといけないんだろうけど!育て親としてはとても嬉し……ちょっ、霊夢?」
霊夢は幽鬼の様にふらふらと立ち上がり、紫の方に近づく。
こいつだけは殺さないとダメだと、そう言わんばかりに。
「ね、ねぇ霊夢?顔が怖いわよ?ほら、笑顔笑顔」
「……」
「わ、私、笑顔って大事だと思うの?ね、ね、笑いましょ?ほら~にっこり!」
そう言いながら慌ててスキマで逃げようとする紫を捕まえる
「──問答無用!」
その日、博麗神社付近から女性の叫び声が聞こえたという。
一人の人間が他の者の制止を振り切って神社に近づくと、そこにはボロ雑巾の様に倒れているスキマ妖怪が居た。
その人間は、人里に住む他の人間たちにこう言ったそうだ。
──博麗の巫女が、あの悪名高いスキマ妖怪を退治したと。
二人が、そんな漫才を繰り広げていた頃。
魔法の森に存在するとある民家に置いて、これまた二人の魔女が、楽しく魔法談義をしていた。
魔法の森は、幻想郷の中でも余り人妖が寄り付かない場所。何故なら、幻覚を見せる茸がそこら辺に生えているからだ。
だが、その茸は、魔法使いにとっては魔力を増強させてくれるものであるが故に、ここで暮らす魔法使いは多い。
そんな魔法の森に住む彼女らもまた、魔法が好きであることは言うまでもないだろう。
「アリスー、これはどうするんだ?」
と言ったのは霧雨魔理沙という名を持つ少女。人間でありながら魔法を使う、種族でない『魔法使い』だ。金糸の様な髪を揺らしながら魔法を学ぶ様は、どこか小動物を思わせる可愛らしさがある。
「えっと、これは──」
そう答えるのはアリス。彼女は、適切な手段を以て『魔法使い』という種族へと至った元人間である。少女というには大人びた雰囲気を持つ彼女は、魔理沙に魔法のアドバイスをしている最中であった。
「魔法陣のこの部分」
「おう」
「ここを繋げてると、魔力の循環が上手く行かないから……」
「あ、ホントだ」
「ここをちょっと改良すれば……よし、出来た」
「おぉ!サンキュー!」
魔理沙からの純粋無垢な好意を受け、少しばかり気恥しくなってしまう。
そもそもアリスは彼女に何も教える必要はないのだ。かつて敗北を喫した者とよく似た相手に教える必要なんて、これっぽっちも。
それでも教えているのは、気紛れか。それとも別の何かか。
「そういえばさー」
「え?何?」
魔理沙の唐突な話題転換に困惑するアリス。
「アリスって、魔界ってとこ出身なのか?」
その困惑が、驚愕に変わったのはほんの一瞬だった。アリスは直ぐに平静を取り戻し、聞き返す。
「……どうやって知ったの?」
「いんや、あのスキマ妖怪が言ってたんだよ。だけど、あいつって信用ならないよなと思って、じゃあ本人に聞けば良いと思った訳さ」
「……なるほどね。──確かにその通りよ。私は魔界出身の元人間現魔法使いね」
アリスは落胆した。魔界出身等と言われたら、普通の人間は距離を置くだろう。だが、彼女は忘れていた。魔理沙は、普通の人間という枠に収まる常識人では無いことを。
「へぇ……じゃあ、魔界にしかない魔法とかって何かあるのか!?魔界って言う名前からして、魔法とか凄そうなんだが」
「……へ?」
魔理沙は、魔法バカである。幼い頃に、魔法に憧れて実家を飛び出したくらいには。負けず嫌いなのに、他人に教えを乞うくらいには。
魔界ですらも、魔理沙にとっては好奇の対象でしか無かった。
あっけらかんとした魔理沙の態度に、呆れながらも口角がつり上がる。
「ふふ、そうね……魔界は良いところよ。少しばかり退屈だけど、血の気があるやつらもいっぱい居るし、魔理沙なら楽しめるかもね」
「おー、なんか凄そうな所だな……」
「それに、強い魔法使いも沢山居るわよ。一人だけ私より圧倒的に強い方も居るし」
自分とかなり力の差があるアリス。その彼女より圧倒的に強いと言われる存在を知り、魔理沙は身震いする。
「アリスより圧倒的に強い?なんて名前だ?」
「……神綺。私の母親よ」
「へぇ……は、母親?まじか……母親居たのか」
「別にそこまでおかしいことじゃ無くない?」
「そう言われれば確かにそうだが……」
なんか違和感を覚えるんだよな、と魔理沙。
「あ、ちなみに母さんは魔界を創った神ね」
「は!?世界を創った神を母親に持つとかまじかよ……」
「ついでに言うと、『魔法』という概念を創ったのも母さんよ」
「……ちょっと、情報の整理が追いつかないぜ」
やれやれ、と首を横に振って理解出来ていないことを伝える。
ふぅ、とため息一つ。魔法使いたるもの、精神を安定させることは必須の能力だ。
「すまん、落ち着いた」
「じゃあ続けるわよ。──だから、正確に言ったら魔法使いじゃないのよね、母さんは。だって魔法を使わない方が強いもの。ただ持つ力が大きすぎて、魔法で戦っても強いだけなのよね」
「それは……無茶苦茶だな。会ってみたいような、みたくないような」
敵に回したくないな、と魔理沙は憂う。
と、ふと時計を見る。
「ん、そろそろ帰らないとな」
「ちゃんと帰れるの?」
「おいおい、普通の魔法使い様を舐めるなよ、アリス。当然帰れるに決まってるだろ」
「分かった。──気をつけてね」
魔理沙が帰った後、アリスは一人。部屋の中で本を開く。
ペンを取り、さらさらと何かを書いていく。
数分後、書き終わったかと思うと、表紙を一撫でし机の引き出しの中へとしまった。
彼女が何を書いたのか、それは彼女以外、誰も知らない。
次回は旧作キャラとかの解説をそれぞれの話に入れて投稿するから少し遅れるかもしれません……