"走り始めたばかりのキミに"の作詞のお話

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走り始めたばかりのキミへ(仮)

「沙綾ちゃん曲作ろうよ!」

 

 まだ2人しか揃っていない時間帯に、沙綾は香澄からお誘いを受けていた。

 チュンチュンと雀がなく声が聞こえる、爽やかな朝。快晴と言うにふさわしい天気の元で、Poppin’Partyは蔵で練習来ることになっていた。

 そんな中で、キラキラとした目をしながら香澄は沙綾に話しかける、

 

 ーーいきなり、一体、どういうことなんだろう。

 言っている意味は分かるが、意図が読めない沙綾は、香澄の提案に首を傾げた。

 とてもキラキラとした瞳で、純粋で、ほんのりと頬を紅潮させながら、興奮冷めやらぬと言った感じで、香澄は沙綾に詰寄っている。

 沙綾が曲作りの意図を聞くと、香澄は答える。

 

 なんでも、香澄を含めた4人は1人1曲づつ曲を作っているらしかった。作詞こそ香澄だったが、イメージや曲調、粗方のメロディ等を作り、みんなで共有。アレンジや言葉回しを考えて、完成させているという。

 

「沙綾ちゃんも、やってみない?」

 

 ーー新曲かー。沙綾はそう呟いた。

 やってみることには、異論はない。実際、前に居たバンドでもそれっぽいことはしていたし、興味もある。

 ただ、ただ。どう言ったテーマにしよう……?

 曲作りを承諾し、とりあえずノートを開いた沙綾は悩んでいた。

 心境とか、今の状況とかを書けばいいのかな……?それとも、過去の辛かった事とかを書けばいいのかな……? 香澄ちゃん達に出会った事とか……?

 アイデアが浮かんでは消え、泡沫のようだ。色々悩んでいく。難しそうに悩んでいる顔をした沙綾を見て、香澄はついつい声をかける。

 

「沙綾ちゃん、()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 意識しているのかは分からない。だが、奇しくもあの時、"Yes! BanG_Dream!"の歌詞で悩んでいた香澄に、沙綾が声をかけた言葉と同じだった。

 当時は会って話したりしていないが、そのことを思い出す。机の上に刻まれた言葉を思い出して、ふふっと笑いが込上げる。

 なんだか、考え過ぎているのが馬鹿らしくなった。考え過ぎるのではなく、今の私の思うことを、そのまま歌詞にしていこうと、沙綾は決めた。

 

 星に導かれて、沙綾が思い出したこと。出会い、育めたことーー。

 つらいことや悲しい事があっても、音楽(キズナ)を信じることーー。

 始まった全てを離さないで。走り続けたいと思ったこと。ーー。

 

 沙綾は、清らかな情熱を持ってノートに歌詞を書き綴っていく。自分の思った事や、夢を書き綴っていく。バンド練習をして、新曲を作ることを伝えて、個人練習をして、時々歌詞とイメージをつづっていった。

 メロディで分からないことがあったら、みんなに相談した。あくまでやっていたのはドラムだったし、スコアは読めても細かい感性の所は教えを請いたかった。

 香澄ちゃんに、りみりんに。たえちゃんと有咲に相談する度に、夢を、情熱を共有している気がした。自分の中の情熱と、向き合い直している気がした。

 

 ーー完成、したかもしれない。

 

 ちょうど、世界史の勉強中だった。沙綾は取り急ぎ5人で作ったSNSのグループに歌詞を送り、荷物をまとめる。

 今日は、これから蔵でのバンド練習がある日だった。ドラムスティックを持ち、歌詞ノートを持ち自室から走り始める。

 ただ蔵に行きたい一心で走っていると、気がついたらもう蔵だった。どうやら、一息もつつかずに走ってきてしまったらしい。我ながら夢中だなと、沙綾はおかしくなった。

 

 蔵に駆け上がると、もう既に4人は居た。何故かたい焼きを全員頬張っており、りみとたえ、有咲は頭から食べ、香澄はシッポから食べていた。養殖物ではなく、天然物のようだった。

 

「沙綾ちゃん、おはよう! ……はい! たい焼き買ってきたんだー」

 

 挨拶と共に、香澄からたい焼きを受け取る。先程まで歌詞を書いていた時の自分との温度差に、またもやおかしくなってしまった。

 ちょっとだけ笑いながらも、たい焼きを受け取りシッポからかじりつく。

 

「沙綾。トークで送ってくれた、例の新曲についてなんだけど」

 

 まず先に食べ終わっていた有咲が問う。沙綾は、たい焼きを一気に押し込み、ノートを取りだし開いた。

 

「えっと、説明するね。……私、この新曲は"Poppin’Party全員の曲にしたい"んだ」

 

 イメージを説明する。

 

「夢を共有するって事は、悲しい事とか辛いことも一緒に共有するってことになっちゃう。自分だけだとどうしようもないこととか、届かない思いを抱くことだってあると思う。けど、けどね」

 

 胸に手を当てる。自分の伝えたい事、共有したい事を一つ一つ言葉として沙綾は紡ぐ。

 

「そんなの、何度だって乗り越えればいい。何度でもサヨナラして、走り続ければいいって、"Poppin’Party"に出会えて思ったんだ」

 

 ーー眩しい。4人はそんな感想を抱いていた。

 

 仲間との絆だとか、夢だとかそういったキラキラだした物が、伝播している気がした。

 果てしなく続くこの道に、全員で一つだけ決めたいことがあった。変わらなく、続いていくものがあった。止まらない事があった。

 4人には決めたことがあった。か弱い星だったとしても、いつか輝く明星になると決めたことがあった。音楽(キズナ)を奏で続けるということ。

 

「走り始めたばかりの私達の歌。決意する歌。そんな歌に、したいなって思ったんだ」

 

 伝わった。4人に、沙綾の気持ちが伝わった。

 

「……なるほどね。じゃあ書いてある通り、私は最初の部分をもらおうかな」

「ぐすっ……。了解っす。自分はその次を貰うっす」

「承知した。うちは、2番の最初だな」

「最後は私だね」

 

 SNSでは、"ちょっとだけ、みんなに歌詞を考えて欲しい!"というふうに伝えてあった。

 4人が顔を合わせるように、沙綾のノートを覗き込む。沙綾が言った"Poppin’Party全員の曲"を完成させるべく、あーだこーだと話し合いをするつもりだった。

 

「……沙綾ちゃんも! 曲のこと、もっと色々教えて!」

 

 香澄が沙綾を手招いた。始まりのそのまた始まりに。沙綾は、香澄に誘われるように、Poppin’Partyの輪の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 


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