魔法少女リリカルなのは~傲慢と呼ばれた男の物語~ 作:xxxSUZAKU
楽しんでくれたらうれしいです。
主人公は長生きしてるので原作知識をほとんど忘れている設定です。
二人の男が言い争っている。一人は、老齢な男。もう一人は、若い男だ。老人が若いのに食って掛かっている。ああ、あの老人は昔の自分だ。
「なんでわざわざ死ぬとわかっている場所へ、教え子を送らねばならぬのだ!冗談じゃない。作戦の撤回を要求する!」
「あなたが中将とはいえこれ以上の蛮行、許されませぬぞ!この作戦は陸海軍大本営作戦本部にてすでに決められたこと。これに異を唱えるは重大なる統帥権干犯ですぞ!」
これは夢なのだろうか。昔の俺を見ている。あれは、理不尽な作戦に対して軍令部に抗議しに出向いた場面だ。結局統帥権の名をだされ、作戦を止めることはできなかった。あれのせいで次の世代を担う若い士官が大勢死んだ。自分の教え子も多くいた。死地へ赴き、全員が死んだ。
夢なのなら早く目覚めてほしい。なにも変えられなかった無力な自分をもう見たくないのだ。
ピピピ、ピピピ、ピピピ・・・
起床を知らせるアラームが鳴り響き、俺はあまり心地の良くない目覚めを果たした。まったく嫌な夢だった。どうしてまた、こんなときに思い出すのだろうか。
俺はベットから起き上がり、すぐそばのカーテンを開けた。朝日が目にしみる。うん、いい朝だ。
「よう、我が主様よ。うなされてたみたいだな。」
机の上から声が聞こえた。そこにはシンプルな銀細工のペンダントが置かれていた。
「やあ、シルヴィス。久しぶりだね、君が起きるのは半年ぶりかい。」
「ふむ、我は寝ることが好きだからな。それはお前様も知っておろうて。」
こいつは”遊炎の夜伯 シルヴィス”。俺の契約者で、腐れ縁の相棒。ほとんど寝ていて滅多に起きてこない。本人曰く、寝ることが好きなのだそうだ。超のつく気まぐれやで本当にタチが悪いのだが、いざとなったらとても頼りになる最高のダチなのだ。
「昔の夢を見ていた。作戦の中止を具申したときのだ。」
「ああ、あれか。お前様よ、まだあれを引きずっておるのか。あれはお前様のせいじゃなかろうて。あの時代と、あの時代に権力を握っていた人間のせいだろうが。」
「確かにそうだが、なにも変えることができなかった。そのせいで、未来ある多くの人間が死んでいった・・・。」
そう、変えることができていれば大勢の命が救われたのだ。だが、結局のところ開戦を止めることすらもできなかった。
煙管盆に立てかけていた煙管を手に取り、葉を入れて火をつける。
「おいおい、いくら落ち着かんとはいえ朝から煙草とは感心せぬな我が主様よ。」
「うるせー。たまには朝から吸わせろや。あー、落ち着く。」
今じゃ、煙管は天然記念物ものだ。羅宇屋も姿を消して、手入れがこの上なく面倒だ。葉っぱも「小粋」以外は煙管用は消えてしまった。今度外国産の「宝船」を買おうかな。
「クッ、まあいい。今は平和な時代だ。過去のことはちと忘れて、今を楽しむべきだぞ。そう一人でなんでも背負おうとするな、お前様よ。」
「ああ、そうだな・・・。」
「フン。我はまた寝ることにする。お前様は早くせねば、学校に遅刻するぞ。」
「いけね、こんな時間だ。ありがとなシルヴィス。おかげで元気でた。」
そうだ。くよくよしてちゃいけない。さーて、切り替えて今日一日も頑張らなくては!
俺は朝食と学校に持っていく弁当の準備をはじめた。
この世界に来たのは幕末の動乱期だった。世間は開国派と尊王攘夷派の真っ二つに分かれ対立ていた。やがて明治になり、廃藩置県や四民開放、学制などのさまざまな政策を新政府は展開していった。そこで、ある土地が海鳴市に改名されるとき俺は確信した。
この世界は「リリカルなのは」の世界だと。
随分と長いこと生きていたせいか、俺自身すっかり原作知識は忘れていた。まあ忘れていてもとくに支障があるわけでもない。とにかく、いろんなことがあってかれこれ60年が過ぎた。そして今年が原作開始の年であった・・・。
二年前、俺は子供の姿となり、私立聖祥大付属小学校に入学した。もちろん、原作に関わるためだ。それに、絶世の美少女たちも目にしたいからな!べ、べつにロリコンではない。断じて、絶対!
家は学校に徒歩で通える範囲にある。一軒家で、俺はそこで一人暮らしをしているのだが・・・。ふつうの子供が一人暮らしをしているのはどう見てもおかしい。なので、認識阻害の魔法をかけて誤魔化しているのだ。
学校の制服に着替え、カバンに今日授業がある教科の教科書をつめる。準備が完了し、俺は勢いよく家を飛び出した。
教室に着くと、元気いっぱいな声が響いている。うん、子供は元気なのが一番いい。自分の椅子に座り、机の中に教科書などを入れていく。すると、女の子が三人俺に近づいてきた。
「おはよー梓くん!」
「おはよう梓。今日の小テストはアンタに勝つわよっ!」
「おはよう、梓君。昨日貸した本はおもしろかった?」
「おー、おはよう。なのは、アリサ、すずか。今日も元気そうだな。」
この三人こそ、聖祥の三女神こと高町なのはと、アリサ・バニングスと月村すずかである。三人とは一年生の頃からの友達だ。アリサは勉強で俺とよく張り合ってきて、すずかとはよく本の話をする。ちなみに昨日借りたのは今大人気のとあるライトノベルだ。
「アリサ、残念ながら今回も僕が勝たせてもらう。すずか、あれ面白かったぞ。主人公の不幸っぷりが。」
「にゃはは、相変わらずアリサちゃんと梓くんはバチバチしてるね。」
なのはさん、別に俺はバチバチしたいわけじゃありませんのことよ。アリサが勝手に対抗心燃やしてつっかかってくるだけだ!
キーンコーン、カーンコーン
「おっと、予鈴がなったな。ほらほら、席着けお前ら。」
「そうだね。梓くん!また後でね。」
「むうー、後で吠え面かかせてやる!覚悟しなさい!」
「また後でね、梓君。続き貸してあげるね。」
まったく。女は三人そろえば姦しいというが、まさにその通りだな。なのはもアリサも、すずかぐらいに落ち着いて欲しいものよな。
教室に担任が入ってきた。さあ、本格的に学校の始まりだ!
~昼休み~
「むう~、今日も勝てなかった!ほんとに悔しいっ!」
「まあまあ、アリサちゃん。今日は引き分けなんだから負けてはいないよ、ね。」
ぷりぷり怒っているアリサをすずかがなだめている。引き分けなんだし、いいじゃないかまったく。俺たちいつもの4人は屋上にきていた。ここで弁当を食べる、それがいつしか習慣になっていた。ここは風通しが良く、この季節は空気がポカポカしていて気持ちがいいのだ。ちなみに弁当は、ツヤツヤの白米、豚肉とナスの梅醤油炒め、から揚げ、アスパラのベーコン巻きだ。
「にゃはは、アリサちゃんは明確に勝たないと気が済まないんだよ梓くん。はあ~、将来か~。アリサちゃんとすずかちゃんは結構決まってるんだよね。」
「うちはお父さんもお母さんも会社経営だし、いっぱい勉強して跡を継がなきゃ。」
「わたしは機械系が好きだから、工学系の専門職がいいと思っているんだけど。」
へー、まだ小学生なのにずいぶんと具体的な将来を決めてるんだな~。・・・ほんとに小学生か?
「なのはは、喫茶翠屋の二代目じゃない。」
「うーん、それも将来のビジョンの一つではあるけど・・・。やりたいことは、なにかある気がするんだけど、まだそれがなにかはっきりしないんだ。」
やっぱりこいつら、本当に小学生か?具体的な将来なんて高校生でもなかなか決まってないぞ。
「別に急がなくたっていいんじゃないかな。」
「梓くん?」
「いまどきの高校生だって、具体的な将来は決まってないよ。人の人生は長く、世界は果てしなく広い。なのははなのはらしく、ゆっくり歩いていけばいいんだよ。肩の力を抜いていこう。」
「そういう梓はどうなのよ。アンタは将来は決めてんの?」
「うーん、これといったことは決めてないな。時間はたっぷりあるし。」
そう、時間はたっぷりある。永遠にも等しい長い時間が。職業全制覇だって夢じゃない。
「そういえば梓君って、軍人もの好きだったよね。自衛隊とかどうかな?」
「あ~、自衛隊に入るくらいなら王立海軍にはいるかな。」
「王立海軍って、イギリスの海軍のこと?」
「すずか、よく知ってんじゃん。そうそう、イギリス海軍のこと。」
「アンタ、自分の国の軍隊じゃなくてなんでほかの国の軍隊選ぶのよ。」
「イギリス海軍は日本海軍のお手本になった海軍だ。格式、伝統、その他もろもろ一番なんだ。守るだけなんて甘っちょろい考えの自衛隊なんて入ってたまるか。」
先の大戦を経験したものにとって守るだけなんて甘いにもほどがある。もはやこの国は、国防の意識が低下している。
「うーん、のんびり考えても大丈夫かな?私、特技も取り柄もなし・・・。」
「バカチン!自分からそういうこと言うんじゃないの!」
「そうだよ、なのはちゃんにしかできないこと、きっとあるよ。」
たしかにそうなんだけどね。アリサさん、食べ物を粗末にしたらだめですよ。
「というかっ、アタシよりも理数の成績はいいじゃないのよ。それで取り柄がないとか、どの口が言ってんのかな!」
なのはに飛び込んだアリサがなのはの頬をつまんでいる。やわらかそうだなぁ~。
「うにゃ~!、それでも私文系苦手だし、体育も苦手だよ~!」
アリサの行動にすずかはオロオロしている。まあ、アリサもそこら辺のさじ加減は分かっているだろうし問題ないだろ。
こんなちょっと騒がしく、それでいて穏やかな日々。みんな笑っていて、楽しい気持ちになる日々。願わくば、こんな日々が永遠と続いてほしい。
いかがだったでしょうか。
次回、またお会いしましょう。