アオギリを離れたクロの短短編。

1 / 1
モノトーンな日々

『モノトーン・ワールド』

 

 

 

 

◆クロ+シロ=?ハイイロ?◆

 

 

旧安久亭の洋館。

加納教授の手に渡ったその館の地下には巨大な研究施設が広がっていた。

その広さは喰種たちが身を潜めている東京の地下に網目状に広がる迷路にも繋がっているのではと思えるほどに。

 

安久黒奈の双子の妹、安久奈白は喰種捜査官の鈴屋什造との遭遇戦によって命を失われた。

 

まだ息のあるシロ~奈白~を彼女らを半喰種に変えた加納教授はこともなげにシロを見捨てた。

彼にとっては、実験サンプルの一つでしかなく、新たな実験材料~モルモット~さえいれば良い替えの利く存在でしかなかった。

 

それは、かつてより見て見ぬふりをしていた加納教授の本質が彼女にとって露になった瞬間でもある。

異様な外見と言える違う種類の昆虫のパーツ。

これらを組み合わせて作られた悪趣味な合成生物の模型。

結局はキメラ創造の欲求の怪物が彼の本質にであったと思い知らされた。

 

しかし、妹の奈白を亡くしてしまうこと、それは彼女~クロ~には全く受け入れられない。

己の分身とも言える存在~シロ~。

置き去りにすることなどできはずはない。

そして、クロ~黒奈~は加納の元から無言で去った。

 

「…………シロ……絶対このまま…………死なせない……」

 

意識が失われ、ぐったりしている奈白。

妹の命がみるみる失われていく。

 

黒奈は妹を優しく抱きしめた。

クロの腰のあたりから大きく大きく格子状に赫子を展開される。

巨大に広がる赫子の網によって二人は覆いつくされた。

それは、新たな胎動する揺り籠の如く、繭の如く。

 

 

そして双子は一人になった。

 

 


 

 

◆フロッピー◆

 

クロナは「アオギリの木」に属する喰種たちによって追われる身となった。

加納は「アオギリ」にいとも簡単に身を寄せた。

 

ただただ己の欲望を積み重ね続ける賽の河原。

積んでは崩し積んでは崩す永久機関。

自身の認識においての失敗作は廃棄するだけ。

アオギリの木は、そんな残骸をも糧に根を張り、枝を広げている。

 

そしてコントロールを受け付けないモルモット~クロナ~は彼にとっては、不出来な失敗作として認識された。

彼女に失敗作(フロッピー)という通称をつけ、廃棄物として見つけたら処分するように所属する喰種たちに通達がされていた。

 

しかし、追手たちは一向に彼女を捕捉することができなかった。

結局のところ残されたのは、彼らに放たれたはずの喰種たちの屍と食い荒らされた赫胞の残骸のみ。

 

「フロッピー」~クロ~の行方は如何とも掴めない。

 

 


 

◆聲◆

 

 

私は安久黒奈、通称クロで通っている。

あの日、鈴谷レイに殺された妹の奈白~シロ~を取り込んだ。

 

アオギリの所属する喰種たちの追手を返り討ちにして狩り続ける生活。

私は、人間を食べることへの忌避感から逃れるため、また、ある噂~喰種の共食いが齎す変化~を検証することを兼ねて狩った獲物(追手)を喰らい続けていた。

 

共食いすることによって獲物の「力」をも取り込むという噂話は以前から耳に入っていた。

そして、「私たちのお兄ちゃん」~加納の言うところの成功作~であるカネキケンも、喰種狩りの喰種だったのだから。

 

そんな日々を重ね続けたある日、私の体にある変化が起きた。

最初は気のせいだと思っていた。

しかし、腹部にできた小さな吹き出物がどんどん大きく広がっていく。

 

それに気が付いたときには、かなりはっきりしたモノがそこにあった。

シュミラクラ現象?

 

いや、違う。

 

シロと赫子を通して一つになってから、数多の喰種共を生贄として喰らい続けた結果生じた新たな何か!

 

それはどこかしら顔のように私には思えた。

 

そして、僅かだがそれが聞こえた。

「……ぃ………ぉ……………ゃ………」

 

 

こえ!コエ!声!!聲!!

シロが生きている。

私の中のシロ!!

 

 

赫子は意思を具現化する力があると、どこかで耳にしたことがある。

 

それは恐らく意思~魂~が宿る赫子。

 

そう、きっと双子の持つ親和性がシロの魂を赫子と結びついて共に私の中で再構成されて蘇りつつあるに違いない。

もう一度二人に戻ることもできるはず。

きっと、きっと……シロ…………。

 

 

 

 

 


 

 

 

◆オロチ◆

 

私は図らずもオロチ~西尾 錦~と加納の研究所から脱出する際に共闘した。

加納に私の中のシロをただの腫瘍化した皮膚のシュミラクラ、声と私の思っていたモノもただの体内でできたガスの排出現象の音にすぎないと断じた。

 

加納の力なら、もしかしたら何とかなるのでは!?と思っていた。

あの男に少しでも期待したのが馬鹿だった。

結局、ヤツの能力とは、その程度のものでしかなかったのだ。

 

 

違う道を探さなければならない。

 

 

オロチとは友好的かどうかは疑問なところがあるが現状少なくとも敵ではない。

別れ際、今後も情報を交換する約束を取り付け連絡先を交換した。

 

オロチは旧「あんてぃーく」残党である。

「アオギリの樹」と敵対し続けるということ、その対極にある集団との関りを持つことは、情報収集という点から充分に価値がある。

 

そして、彼(オロチ)を含めたアオギリとは違う喰種のコミュニティ……彼らは私たちの「お兄ちゃん」であるカネキケンと過去に繋がっていた。

もしかしたら、何か新しい希望の切っ掛け~情報~がそこにはあるかもしれない。

 

否、絶対何かある筈だ。




忘れたころに宿題提出;;;


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。