バカとテストと18禁っ! 作:てあ
問 以下の( )に入る言葉を書き込みなさい。
紅白の起源となった源氏と平氏の戦いは( )である。
姫路瑞希の答え
「壇ノ浦の戦い」
教師のコメント
正解です。
吉井明久の答え
「たけのこ派VSきのこ派」
教師のコメント
ちなみに私はたけのこ派です。
東雲日和の答え
「おしり派VSおっぱい派」
教師のコメント
後で職員室に来てください。
第一問 馬鹿は集う
僕は本当にここがFクラスなのかと思い、壊れかけのプレートをもう一度見る。二度見どころか三度見してもプレートには二年F組と書いてあった。
……どうやら本当にここがFクラスのようだ。
「はあ……勉強させる気があるのかな」
そもそもこっちは勉強する気なんて一切持ち合わせていないけど、この教室はあまりにも酷い。外からでも分かるボロボロ具合、長年使われてこなかった物置小屋みたいだ。見たことないけど。
気持ちを入れ替えるように頬を打ち、気合いを入れる。大丈夫、何度も練習してきたじゃないか。恐れることはない。如何に上手くクラスに馴染みこむかによって、僕の生活は一変するだけだ。失敗は許されないっ。
「こんにちは!」
勢いよく扉を開けて大声で挨拶をする。中には人がかなり集まっていた。
これが学年最底辺の生徒達か……惨めなものだな(自分のことは棚にあげるタイプ)
教室の中を見渡すと、酷いのが一目で分かる。壁には亀裂が走り、窓は割れていて通気性抜群、床は独特な匂いのする畳。とてもじゃないが勉強をするところには見えない。Fクラスの先輩方は本当にここで過ごしていたのだろうか。休み時間は教室ではなく廊下で過ごしていたという噂を聞いたことがあるが、もしかしたら事実かもしれない。少なくとも僕はこの教室よりも廊下のほうがマシだ。
教室の設備から目を逸らし、中にいた生徒達に目を向ける。何人かは何事かと僕の方を向いてくれていた。この手を逃すことはない。まずは僕が親しみやすい人だと思わせなければ。
「僕の名前は東雲日和といいます!イケメンを目指して日々修行中です!」
自分の自己紹介を始めると、勢いよく皆僕から目を逸らした。何でだ。昨日ネットで軽いジョークで上手く馴染もうって書いてあったからわざわざ考えてきたのに……逆効果だったかな?
『努力でイケメンになれたら苦労しないわ!』
『いや、やけに長いあの前髪をどかせばもしかしたら………』
『可哀そうに、現実と妄想の区別がついていないようだな』
何やらひそひそ声が聞こえるが。ここで怖気ついてはいけない。東雲日和、ここでやらねばいつやるんだ。
息を吸い込み、教室中に響き渡るように声を出す。
「実は昔、十八禁コーナーの番犬と呼ばれていた時期があります!」
『『『『『何だとっ!?』』』』』
今度はクラスの男子たちが一斉に立ち上がる。え、そんなに有名だったっけ。僕のあだ名。
『実在したのか。てっきり作り話だと思っていたぞ』
『確か十八禁コーナーの前でウロウロしていたのが番犬っぽかったからついたっていう』
『店主の目を盗んで幾度となく十八禁コーナーに入ろうとした伝説の小学生……噂は本当だったのか』
よく聞こえないけどバカにされてるのは分かる。あとであいつらシバこう。
「よう、今年も十八禁は絶好調だな」
「げ、雄二」
声のした方を向くと、僕の悪友である坂本雄二が教壇の上に立っていた。
どうやら先生が遅れているらしく、その間だけ教壇に立っているそうだ。去年と変わらない野性味たっぷりなその顔は、いつ見ても女の子を喰らおうとしている肉食動物にしか見えない。早く警察に捕まったほうが社会のためだと思う。さっさと動物園に戻れや。
それと、僕の名前は十八禁じゃないのに雄二はいつもそう呼んでくる。最初こそ直そうと思ったけど全く効果がなさそうだったから諦めた。
「雄二もFクラスだったんだね」
「まあな。ついでにこのクラスの最高成績者でもある」
最高成績者ってことは雄二はこのクラスの代表ってことか。最底辺クラスの代表なんて胸を張って言えることじゃないと思うんだけど、雄二にとっては誇れることらしい。僕とは少し感性が違うようだ。やっぱり僕は肉食動物とは相容れないらしい。ちなみに僕は肉食系でも草食系でもない、雑食系である。僕の守備範囲はサバンナの平原よりも広いのだ!
「それにしても……振り分け試験の前に自分はAクラスだと豪語していたお前が何でFクラスにいるんだろうな?」
「うっ、それはその、色々と事情があって」
「勉強もしないでテスト受けたら誰だってそうなるわな」
「違うんだ雄二。僕が悪いんじゃない。僕を本気にさせなかったテストが悪いんだ」
生まれてから僕は一回もテストで本気を出したことがない。今回も本気じゃなかったからテストの半分の半分の半分しか解けなかったんだ。しょうがないよね。
「はぁ……お前を本気にさせるテストなんてこの世には存在しないだろうな」
何を当然なことを。僕に解けない問題なんてあるわけがないじゃないか。
呆れるように溜息を吐く雄二。それを横目にクラスを見渡すと、流石に落ち着いたのかほとんどの人が席に座っていた。その中にいたとある男子生徒と目が合う。
「ムッツリーニ、おっはー」
「…………おはよう」
先ほどまでカメラを弄っていた手を止めてこちらを向いてきたのはムッツリ―ニこと土屋康太。
エロスをこよなく愛し、呼吸をするように盗撮を行う彼は僕がお世話になっているムッツリ商会の創設者でもある。保健体育だけはAクラス並みの実力があるんだけど他の教科はボロボロだ。保健体育への執着が少しでも他に回ればいいのになぁ。ちなみに僕が独断と偏見で勝手に作った将来が危ぶまれる生徒ランキング一位でもあり、いつか警察に捕まるのではないかと心配している。
ムッツリーニの肩を叩き、小さな声でアレのことを聞く。
「新作が入ったって聞いたけど」
「…………(コクリ)」
「へぇ、見せてくれるかい」
「…………今回は自信作(スッ)」
ムッツリーニは胸ポケットから何枚か写真を取り出して僕に見せてくる。
ふむ、春休みを挟んだからかバリエーションが豊富だな。確かにムッツリーニがいったように今回は良いものばかりだ。
その中から僕は目についたものを三枚抜き取る。
「この三枚で何円?」
「…………野口がニ人」
「買った!」
千円札を二枚渡し、写真をもらう。
一枚目は白いワンピース姿の秀吉。秀吉は自分から女の子の服を着ないからこれは演劇部で使ったのかな。これで麦わら帽子を被っていたら僕の命が危なかった。
次に買い物を楽しむ秀吉。おい待て、何故隣に明久がいるんだ。まさかアイツこの僕を差し置いてデートに誘いやがったな。あとで異端審問会に報告して血祭にしてやる。
そして最後にパジャマから制服に着替えている写真。なんかこれ僕も見た気がする。そういえば今日の朝登校中に秀吉のマンションに寄り道したとき、秀吉が着替えてるのが一階から見えたんだ。あれはすごい幸運だった。思い出しただけで熱いものが込み上げてくる。落ち着け、落ち着くんだ。冷静になれ。アイアムクールボーイだ。
……なんとか耐えきった。
でもあのアングルだとこんなに綺麗に撮れないはずなんだけど……なるほど、近くのマンションから盗撮したのか。なんて行動力なんだ。恐るべし、ムッツリーニ。
「む、誰の写真を見ておるのじゃ?」
「ふぃぁっ!?」
いつのまにか後ろにいた秀吉が覗きこんできた。
僕の幼馴染にして婚約者(妄想では)である秀吉は、男ばっかのこの教室では僕の生きる希望ともいえる。今の状況では絶望でしかないけど。
ちなみに何カ月か前に偶然手に入れてしまった彼のパンツは今現在僕のズボンのポケットの中に入っていたりする。なんというか返すタイミングを見失なったんだよねー。
いや、今はそんなこと考えてる場合じゃない。どうにかして誤魔化さないと。
口を開き、嘘のことを教える。
「こ、これはその。ゆ、雄二の写真であって決して秀吉の写真なんかじゃないんだ!」
「ほう……日和は雄二に興味があるのかの?」
「そっそうなんだよ。特に雄二の筋肉に興味があって、ちょっと見ていただけなんだ!」
「……す、すまん日和。俺にはソッチの趣味はなくてな」
「だあぁぁぁぁ!?違う!これは誤解なんだぁぁぁぁぁぁ!」
僕だって雄二なんか好きじゃない!どっちかっていうと秀吉のほうが可愛いから好きだし!
「……………」
「……………どうした秀吉」
腕に力を込めてグッとしている秀吉にムッツリーニが声をかける。確かに秀吉は何をしているんだろう。よく分かんないけどその二の腕白くて触り心地が良さそうだね。後で触らせてもらおう。
こうやってバカ騒ぎするのも久しぶりだ。去年は何度問題を起こして指導室に放り込まれたことか……。数え始めたらキリがない。でも、なんか足りない気がするけど……。
「……あ、確かに明久がいないな」
「ん?ああアイツならさっき鉄人と話してるのを見かけたが」
僕の呟きに、雄二が聞こえたみたいで明久のことを教えてくれた。
違和感の正体は僕の悪友の吉井明久だったか。
やっぱり明久がいるといないとではバカ騒ぎの規模がかなり変わるからね。雄二の言う通りだったら、もうすぐでここに着くかな。きっと明久はFクラスだろう。だって僕は明久以上のバカを見たことがないから。
「すみません、ちょっと遅れちゃいました♪」
突如、教室のドアが開き誰かが現れる。
「早く座れこのウジ虫野郎」
「……雄二何やってるの?」
狙ったかのように入ってきたのは明久だった。噂をすればなんとやらだね。
彼は童顔で僕よりも背が少し小さい。いつみてもバカっぽい顔してるよなぁ。これで昔はモテモテだったって聞くから信じられないよね。でも、ことあるごとに面白いことを起こしてくれるから一緒にいて楽しい。たまに僕が被害を受けることもあるけど。
「おはよう明久」
「日和もFクラスだったんだ。よろしくね」
僕がFクラスだと分かっていたような口調だったけど、気のせいだろう。友達を疑うのは恥ずべき行為だってメロスも言ってたし。……あ、そういえば明久から秘蔵コレクション②を借りてたけど、鉄人に燃やされたから謝らないと。
明久に近づき、そっと肩に手を置く。
「……君に謝らないといけないことがあるんだ」
「ん?どうしたの日和」
「明久から借りたエロ本……鉄人に燃やされちゃった☆」
「貴様ぁぁぁぁぁぁぁ!」
僕の謝罪を聞いた途端明久が僕に向けて拳を構える。
これはまずい、こいつ友達の僕を殺す気だ!
「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!」
「くっ!」
僕は横に飛ぶことで明久の拳から逃れる。
「えーっと、すみません。ちょっと通してぶべらぁっ!?」
明久の拳が僕の頬を横切ると同時に、何かがグシャッと壊れた音がした。
「「「「「あっ……………」」」」」
明久の拳は、たまたまそこに立っていた先生の顔面に埋まっていた。
明久の渾身の一撃は先生のメガネを壊すという不毛な結果に終わった。まあ、そのおかげで僕は生きてるから一応感謝の気持ちも兼ねてメガネはお墓に埋めておいた。成仏してくれ。
「どうも、朝からこのクラスに不安を抱いた担任の福原です。今年一年よろしくお願いします」
先ほどの件を無視して軽く自己紹介を始める先生。明久の拳を受けて生きてるなんてこの先生もタフだなぁ。
「皆さん、卓袱台と座布団は問題なく支給されているでしょうか?不備があれば遠慮なく申し出て下さい」
果たして先生の目にはこの教室の設備がどう見えてるんだろう。メガネがなくて見えないのかもしれないけど、まさかここがAクラスの教室に見えているのかな。それなら今すぐ眼科に行った方がいいと思う。
「せんせー、俺の座布団に綿がほとんど入ってないです!」
「あー、はい。我慢してください」
「先生、俺の卓袱台の足が折れています」
「木工用ボンドが支給されていますので、後で自分で直してください」
「センセ、窓が割れていて風が寒いんですけど」
「わかりました。ビニール袋とセロハンテープの支給を申請しておきましょう」
次々と質問していく男子生徒達をバッサバッサと無慈悲な現実で切り捨てる福原先生。
こんな悪環境じゃ勉強したくてもできないよ。
しょうがない、授業中はマンガでも読んで時間を潰すとするか……。
「質問は以上ですか?」
メガネをクイッとするアレをしようとするも、メガネがないことでそれも出来なかったようだ。照れを隠すように僕らかた確認を取ろうとする。それと先生、確かに質問の内容は異常だと思います。
「ないようなので、後の時間は自己紹介でもしてもらいましょうか。廊下側からお願いします」
教卓の上に手を置き、自己紹介を提案する先生。
僕の場合もう自己紹介しちゃったんだよね……。一年生のときならともかく二年生ではしないのかと思ってたよ。まあいい、ここはビシッと決めてクラスメートに好印象を植え付けさせたい。いかに自分を簡潔に表現するかがカギになるな。
「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる」
トップバッターは僕の恋人(願望)である秀吉。相変わらず可愛いなぁ。この見た目で男なんだから目を疑っちゃうよね。皆が女と誤解するのもしょうがないだろう。僕は子供のころ一緒にお風呂に入ったことがあるから彼が男だと確認している。
「このクラスには木下がいるのか」
「今日もかわいいな。お付き合いを前提に結婚したい」
隣の男子達がひそひそと喋り合っているのを耳に挟む。ま、秀吉は天使だからね。ファンがいてもおかしくはないだろう。でも、彼らはとてもかわいそうだ。だって秀吉は僕のお嫁さんなんだもん。
「おま、秀吉は俺の彼女だぞ。手をだすな」
「あ?恋愛に早いも遅いもねぇえだろうが」
…………うーん。現実が見えていないようだね。
「喧嘩売ってんのかゴラァ!?」
「喧嘩売ってんだよオラァ!?」
立ち上がり、殴り合いを始める名も知らない男子生徒二名。秀吉が自己紹介中だってことを忘れてるんじゃないだろうか。
「俺はぁ……一日中木下に踏まれたいんだよぉぉ!」
「俺だって……木下の靴下になりたいと何度願ったことか!」
拳が互いの顔面に入り、両者とも倒れる。だが、愛の力なのか分からないがすぐさま復帰し殴り合いを始める。
ああ……もう、そんな夢物語を語っていないでさっさと席に座れよ。大体、幼馴染の僕だって一日中踏まれたことなんてないのに。やっぱり秀吉の隣には純白で穢れのないこの僕こそが相応しい。そもそも秀吉でそんな妄想をしていること自体が許されない。
正義感に火が点いた僕は、立ち上がり二人に向かって叫ぶ。
「黙れお前達っ!下品な顔して秀吉に近づくんじゃない!」
「「お前にだけは言われたくない!」」
はあ!?僕が秀吉に卑しい気持ちを持ってるとでも思っているのか!?僕がそんなこと考えるわけがないだろう。そうだ、まずは優しく壊れないように触れていって最後には鳥の舞う楽園で秀吉と《
「ふんっ!」
卓袱台に頭を打ち付けることで、なんとか思考が冷静になる。あ、危なかったぁ……。
辺りを見渡すと、未だ男子二名が殴り合っているのが見えた。その周りには男子達が集まり完全に野次馬と化している。先生は止めないのかと思い、先生を見るも、何が起こっているのか分かっていない顔をしていた。そういえばメガネ壊したんだった、メガネがないと何も見えないのかな。
もう一度、視線を周りに向ける。雄二は卓袱台に肘をついて諦観。明久は見覚えのあるポニーテールが似合う女の子にエビ固めを決められている。ムッツリーニはその女の子のパンツを見ようとカメラを構えている。秀吉は呆れたような眼で僕らを見ている。かわいい。
くそっ、この状況じゃ助けは来ないな。仕方がない、僕が現実を見せることで止めさせるか……。
「むっ!」
「貴様……!」
一瞬の隙を突いて、二人の間に割り込む。水を差されたことで二人の顔に不満が見えるが気にしないでおく。
「二人とも、聞いてくれ」
「なんだ東雲、お前も戦うつもりか?もしそうだというならば容赦はしないぞ」
須川と呼ばれていた男子が、僕に対して疑問をぶつける。
「違うんだ。僕が言いたいのはそういうことじゃなくて――――」
「そういうことじゃなくて?」
「――――やっぱり、恋人っていうのは秀吉の幼馴染である僕が相応しいと思うんだ」
沈黙が、教室を覆う。
野次馬は静まり、須川くんじゃない方の男子生徒は絶望したような顔で床に膝を付いていた。そして、肝心の須川くんはというと……。
「バカめ!俺がお前を殺せば幼馴染ポジションは俺のものになるんだっ!」
須川くんが意味不明なことを叫びながら殴りかかってきた。どうやったらその考えに至るのかがとても気になる。
当然僕は応戦の構えをとり、須川くんと取っ組み合う。
「おらぁ!」
「くっ……!」
須川くんのボディーブローが僕の腕に炸裂する。
「……なかなかやるじゃないか」
「へっ、敵に褒められても……ん?なんかお前すげぇ良い匂いすんな」
不思議だ。何故か分からないが一刻でも早くコイツから離れたい。嫌悪感とか不快感が混じり合わさって最低な気分になってくる。
「……………」
「これは……イチゴのように甘く、時折姿を見せるリンゴの匂いが混ざり合ってぃうぉっ!?」
生理的危機に反応したのか僕の体は限界を超えて須川くんを投げ飛ばすことに成功した。あ、危ない。一瞬だけコイツにキスされる未来が見えた。
「…………土屋康太」
暴れまわっている僕達をよそに自己紹介が進む。あれはムッツリーニか。友達が危機に瀕しているのに助けるそぶりも見せないなんて、彼には血も涙もないのだろう。
「島田美波です。海外育ちで、日本語は会話はできるけど読み書きが苦手です」
次に立ち上がったのは先程まで明久にエビ固めを決めていた女の子、島田さんだ。
全身が凶器と同等の威力を持っていて、明久を締めてるのをよく見かける。趣味が明久を殴ることだと聞いたときは僕も思わず頷いてしまった。いやー良い音鳴るんだよね明久の頭って。頭の中空っぽだからかな。根は優しいんだけどツンデレが強すぎるのが残念なところだ。あ、胸もだったね―――ぅぉっとぉ!
どこからともなくシャーペンが飛んでくる。卓袱台をひっくり返すことでそれを防ぐ。声に出てたっぽい。
「……………チッ」
どうやら投げたのは島田さんのようだ。ははっ、やっぱりツンデレが強いなぁ。
「……………(ブシャァッ)」
島田さんがシャーペンを投げる動作の際にスカートの中が見えたらしく、ムッツリーニは血を流して倒れていた。血はあったらしい。
「……………後で絶対にコロス」
島田さんが僕を憎しげに睨む。あれは本当に僕を殺そうとしている目だ。
短いようで長かったなぁ……僕の人生。
「次、東雲くんですよ」
人生の走馬灯が脳内に流れ始めたところで、先生の声に呼び戻される。いつのまにか僕の番まで回ってきていたようだ。
「あ、東雲日和です。中学ではバスケをやっていて、ベンチのレギュラーとして頑張っていました。よろしくお願いします」
簡潔に自己紹介を終え、席に着く。どうせならもっとやれよと思うかもしれないがこのくらいで丁度いいのだ。不幸か幸いか僕の印象は皆の心に強く残っていただろうからね。こいつはヤベェ奴だっていう認識で。最悪のスタートダッシュだ。
他の生徒も自己紹介を終わらせ、次は明久の番となる。どんな自己紹介か楽しみだ。
「吉井明久です。僕の事は『ダーリン』って読んでください♪」
「「「「ダァァーーリィィィーーーーーーーン!!!」」」」
「―――失礼。忘れて下さい。とにかくよろしくお願いします」
顔を真っ青にして席に座り込む明久。バカめ、このクラスは正常な奴が集まるところじゃないんだぞ。そんなことしたらどうなるか分かっていただろうに……。
吐き気を堪えるように口を手で覆う明久をよそに、自己紹介は続く。
その後は特に目立った生徒はおらず、名前を告げるだけの単調な作業になっていた。
あ、須川くんは自己紹介ではなく如何に自分がモテるかについて語りだしたため他の男子生徒達に縛られて窓から捨てられていた。ここ三階だけど須川くん生きてるかな。死んでいたらお墓を作って埋めてあげよう。メガネと一緒に。
聞いてるのも面倒くさくなってきたためマンガでも読もうかと鞄の中を漁り始めたとき、突然ガラリと教室のドアが開いた。
目をやると、そこにはここまで走って来たのか胸に手を当てて息を切らせている女子生徒が立っていた。
「あの、遅れて、すいま、せん……」
「「「「えっ」」」」
Fクラスの男子達が驚きの声を上げる。もちろん僕もその一人だ。彼女が持つ豊満な果実に思わず声が漏れてしまった。ぜひとも揉ませてほしい。頼めば揉ましてくれるだろうか。
「丁度よかったです。今自己紹介をしているところなので姫路さんもお願いします」
「は、はい!あの、姫路瑞希といいます。よろしくお願いします………」
ぎこちない動きで僕らに頭を下げる。彼女は精一杯僕らに誠意をみせようと思ったのだろうが、僕らからだとどうしてもその大きい胸に目が吸い寄せられてしまう。ありがとう、姫路さんのおかげで僕らは喜びで胸おっぱいだ。間違えた。胸いっぱいだ。
「あの、なんでここにいるんですか?」
名も知らない男子生徒が手を上げて質問する。聞き方によっては失礼極まりない質問だが、それが僕らが抱いた共通の疑問だった。
彼女とは面識のない僕だが、噂についてはよく聞いたことがある。なんでもテストではいつも百点に近い点数を取り、容姿端麗で品行方正。教師からの覚えも良いという彼女がFクラスにいるというのは、はっきりいって異常事態だった。例えるならば雄二がブラをつけて登校してくるような異常事態。いや、雄二がブラつけてきてもあそんなに異常事態だと思わないな……。
「そ、その……振り分け試験の最中に高熱をだしてしまいまして……」
その言葉を聞いた僕らは『ああ、なるほど』とうなずく。
試験中の途中退席は無得点扱いになる。だから彼女はFクラスに配属されたのだろう。
いやちょっと待て、確か召喚される召喚獣の装備って振り分け試験の点数によって変化するんじゃなかったったけ。
……ということは、もしかしてだけど姫路さんの召喚獣って裸なんじゃ―――――――
「ブシャァァァァァァッ(鼻血が飛び出る音)」
「どうしたのじゃ日和よ!?」
秀吉が驚いた顔をして僕に近づいてくるのが見える。
し、しまった……。姫路さんのボインを想像するとは……なんて危険なことをしてしまったんだ。
「ひ…姫路の……裸……が………」
「……………!(ブシャアアアア)」
ムッツリーニも姫路さんの裸を想像したのか鼻血を出して倒れる音が聞こえる。
「ひ、秀吉………これを……」
ズボンのポケットからあるものを取り出し、秀吉に差し出す。
「日和……これは……?」
「君への……気持ちのつもりだ……」
綺麗に折りたためられたそれを受け取った秀吉を見て安心する。
「渡すに渡せなくて……遅くなったけど…………受け取ってくれるかい……?」
「もちろんじゃ……!お主から貰って喜ばないものなどないに決まっておろう……!」
そう答えると、秀吉はそれをゆっくりと広げる。
「そう言ってくれると……嬉しいよ……」
秀吉が掲げるように広げたそれは―――――
――――――――――――僕が数ヶ月前に偶然手に入れた秀吉のパンツだった。
無言で身体を蹴られた。痛い。