バカとテストと18禁っ!   作:てあ

3 / 3
問 以下の問いに答えよ

都市の人口が少なく、郊外の人口が増加する現象とは何か。

姫路瑞希の答え
「ドーナツ化現象」

教師のコメント
よくできました。過疎過密についてもよく勉強していて先生は嬉しいです。

吉井明久
「ドーナツ現象」

教師コメント
美味しそうな現象ですね。化を忘れないように気をつけましょう。

東雲日和
「生理現象」

教師コメント
現象をつければいいものではありません。

土屋康太
「生理現象」

教師のコメント
君もですか。




第二問 地獄を見た変態

 

 

 

 吉井明久side

 

 

 

 姫路さんの裸を想像して鼻血を出してた変態二名は仲良く床に沈んでいた。初対面(たぶん)の女の子の裸を想像するなんてとんでもない奴らだ。いつか街中で警察に捕まるのではないかと思う。マジで。

 

「ど、どうしたんですか!?もしかして私のせいで……!?」

 

 突然鼻血を出した二人を見てあたふたと慌てる姫路さん。その動作だけで胸が揺れる。確かにこれはかなりの破壊力だ……!

 

「大丈夫だよ姫路さん。いつものことだから」

 

「それはそれで大丈夫じゃない気がしますが………」

 

 ムッツリーニは今日二回目の血花火?だけどこれくらいじゃ死なないはずだ。

 歴代最高記録はムッツリーニが十七回、日和が十二回だった気がするし、まだまだ余裕である。

 

 

「姫路さん。席に座ってください。まだ自己紹介がすんでいない人がいますので」

 

  時間が押しているのか時計を見た先生が僕の肩を叩きながら言う。

 

  ……先生、メガネしていないから分からないんだろうけどそれ僕です。

 呼ばれた当人である姫路さんはきょとんと首を傾げている。そういえば先生のメガネ粉砕事件のときに姫路さんはいなかったっけ。後で説明してあげないと。すべては日和が悪かったということを。

 

 姫路さんは首を傾げた後、またあたふたし始めた。なんというか見ていて飽きないな。

 

 申し訳なさそうな顔をして、姫路さんが僕に近寄ってくる。

 

「吉井くん、席ってどこに座ればいいんでしょうか……?」

 

「席は基本的に自由だよ。空いてるところに好きに座ってね」

 

 席が自由なことに驚く姫路さん。僕も最初聞いたときにはびっくりしたけど今はもう慣れてる。というか慣れるしかない。

 それと、男子達が隣の席を空けようと周りの人と殴り合いをし始めた。姫路さんと隣になりたいからって今からじゃ間に合わないのに……。

 

「そ、それじゃあ…………」

 

 姫路さんはFクラスの男子達の熱い視線を浴びながら僕と雄二の隣の席に向かう。

 これはまずい!

 

「「「「死ねぇぇっ!」」」」

 

 姫路さんが席に着いたと同時に投げられるカッターやシャーペンの応酬。

 

「くっ、日和バリアーーーッ!」

 

 とっさに床に沈んでいた日和を盾にして体を守る。ごめん日和、君のことは忘れない!

 

「ムッツリーニバリアーーーッ!」

 

 雄二はムッツリーニを盾にして身を防いだようだ。幸運なことにムッツリーニにはあの凶器の嵐が一つも当たらなかった。僕も日和の状態を確認するが目立った損傷はない。良かった、目を覚ましたら右腕がないなんて状況になったら僕が殺されかねないからね。

 

「「「「ちっ、外したか……」」」」

 

 憎しげに僕らを睨む男子達。このクラスやばい。

 

「坂本くん、君が自己紹介最後の一人ですよ」

 

 目の前で殺人未遂が起きたのに気づいていないのか先生は平然とした口調で雄二を呼ぶ。

 このクラスもヤバいけど先生もヤバい。

 

 雄二は意識のない日和を肩に抱えたまま、教壇に上がる。そして、日和をゴミ箱に投げ捨てた。綺麗に弧を描いた日和は頭からゴミ箱に突っ込む。友達への扱いがひどいと思う。雄二にとって日和はゴミに等しいのだろうか。それを見た秀吉の身体が一瞬跳ねたのも気になるけど。

 

 教卓に手を着いて、雄二が口を開く。

 

「Fクラス代表の坂本だ。俺のことは好きなように呼んでくれ」

 

 クズ野郎と呼んでもいいのだろうか。

 

「さて、皆に聞きたいことがある」

 

 床に座る僕達を見下ろしながら、雄二はゆっくりと問いかける。間を取るのが上手いせいか、僕らは雄二に釘付けになる。全員が自分のほうを向いたのを確認した後、雄二の目線は教室内の各所に移り出す。

 

 

 かび臭い教室。

 

 

 古く汚れた座布団

 

 

 薄汚れた卓袱台。

 

 

 ゴミ箱に頭を突っ込んだまま動かない男子生徒。 

 

 

 雄二の視線の先を僕らもつられて見てしまう。これは、あまりにもひどい。

 

「Aクラスは冷房完備の上、座席はリクライニングシートらしいが―――――――」

 

 一呼吸おいて、静かに告げる。

 

「―――――――不満はないか?」

 

 

『大ありじゃぁっ!!』

 

 

 爆発する叫び声。

 

「だろう?俺だってこの現状は大いに不満だ。代表として問題意識を抱いている」

 

『そうだそうだ!」

 

『いくら学費が安いからと言って、この設備はあんまりだ!』

 

『そもそもAクラスだって同じ学費だろ?差が大きすぎる!』

 

 それぞれが心の底で思っていたことをぶちまける。

 

「みんなの意見はもっともだ。そこで代表としての提案なんだが――――――」

 

 雄二はもったいつけるように間を開けてから、自信に満ち溢れた顔で、

 

 

「―――――――FクラスはAクラスに『試験召喚戦争』を仕掛けようと思う!」

 

 

 

 学力最底辺の僕らにとんでもないことを提案した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Aクラスへの宣戦布告、そして勝利することによって得られる設備の交換権を使ってこのオンボロ教室から脱却するのが雄二の作戦なんだろう。

 

 

 しかし、それを実現させることは学力最低辺のFクラスにとって不可能に近い。

 当然、現実味のない作戦に不満の声が上がるが、雄二は片手を上げることでそれを制する。

 

「大丈夫だ。俺達なら必ずAクラスに勝つことができる。いや、勝たせてみせる」

 

 雄二は自信満々にそう言い切るが、僕には雄二の考えがまったく理解できない。

 そもそも、AクラスとFクラスには天と地の程の戦力差がある。それを覆すのは、どうやったって無理なはずだ。まだ少しの間しかこのクラスにいないけど、このクラスの連中の頭の悪さは十分に分かっていた。せいぜい使える人材は僕と姫路さんと、それと一つの科目に特化したムッツリーニぐらいだろう。戦力も質も違う。

 

「安心しろ。俺が勝てると断言できる根拠を今から説明してやる」

 

 野性味満点の八重歯を見せながら、雄二が壇上から僕らを見下ろす。

 

「おいムッツリーニ。畳に顔をつけて姫路のスカートを覗いてないで前に来い」

 

「……………!(ブンブン)」

 

「は、はわっ」

 

 いつのまにか復活を果たしていたムッツリーニが、必死になって否定のポーズをとる。姫路さんがスカートの裾を押さえて遠ざかると、ムッツリーニは残念そうな顔をしながら壇上に立ちあがった。

 

 僕はムッツリーニが覗きなんてしていないと信じたかったが、顔についた畳の跡を見て『こいつやりやがったな』と思ってしまった。裏切られた気分だ。後でパンツの色を教えてもらおう。やっぱり清楚な白色だろうか。いや、もしかしたら大人な黒色かもしれないな。

 

「こいつの名前は土屋康太。またの名を寡黙なる性識者(ムッツリーニ)ともいう」

 

「…………!!(ブンブン)」

 

『ムッツリーニだと……!』

 

『嘘だろ、アイツがあの……?』

 

『だが見ろ。あそこまで明らかな覗きの証拠を未だに隠そうとしているぞ……』

 

『ああ。ムッツリの名に恥じない姿だ』

 

 顔にある畳の跡を隠そうとしている姿はとても哀れに思えてくる。

 やはりムッツリーニはどこまでもムッツリスケベだ。

 

「それに、姫路もいる」

 

「えっ、私ですか?」

 

「ああ、ウチの主戦力だからな。よろしく頼むぞ」

 

『そうだ、俺達には姫路さんがいるんだった』

 

『彼女ならAクラスにも引けを取らない』

 

『あの豊満な果実を一揉みさせてくれるのならばどんな敵をも打ち倒そう』

 

 最後のやつは欲望が駄々洩れしてるが、かすかに希望が見えたのは事実だろう。

 

「木下秀吉だっている」

 

『確か演劇部のホープの……』

 

『ああ、アイツ木下優子の……』

 

『最近胸が急成長してるって噂が流れてる奴か……』

 

 学力では姉の木下さんに届かないけど、その分演劇で活躍している。何度か練習に付き合ったことがあったけど、いつも圧巻の演技に驚かされた。

 

「ついでに東雲日和もついてくる」

 

 お子様セットのおもちゃみたいなノリで呼ばれた彼は、ゴミ箱に頭を突っ込んで意識を失っていた。まさかこんな状態で紹介されることになるとは微塵も思っていなかっただろう。たぶん皆からはゴミ箱の人として認識されたと思う、

 

『おお、十八禁コーナーの番犬か!俺の盾役としては期待できそうだな』

 

『パンツをはくのは恥ずべき行為だとノーパン主義を唱えていた……』

 

『店員の目を盗んで十八禁コーナーに何度も侵入しようとした伝説の小学生……噂本物だったか』

 

 意識を失ってるからか、皆からの反応が遠慮ない。まあ、付き合いが少ない皆からしたら日和は変人にしか見えないだろう。僕は知っている。付き合いが長くても彼は変人にしか見えないことを。

 

「校内の女子全員から嫌悪されているというアイツなら、女子に対するこれ以上ない戦力といえるだろう」

 

 ゴミ箱から日和を出そうと引っ張る雄二だが、上手くハマっていてなかなか取り出せない。

 雄二が勢いをつけて引っ張ると、ゴミと共に吹き飛ばされ壇上に着地した。後頭部から。

 

「俺も全力を尽くすから安心しろ」

 

『ふむ。確かに、なんだかやってくれそうだな』

 

『坂本って、小学生の頃は神童とか呼ばれていなかったか?』

 

『俺も聞いたことがある。姫路と同じで坂本も体調不良だったのか』

 

『Aクラスレベルが二人もいるってことだな!』

 

 

 気がつけば、クラスの士気は確実に上がっていた。皆がやる気に満ちた顔をしていて、僕も熱い何かが込み上げてくる。

 

 

「それに、吉井明久だっている」

 

 

 

 

  ……シン

 

 

 

 

 

 そして、一気に下がる。

 

 

 

 

 

 ……あれ、僕ってそんなに有名じゃない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東雲日和side

 

 

 

 

 

「あれ……?ここはどこだ……?」

 

 気づいたら、僕は森の中を歩いていた。

 緑が生い茂っていて、とても気持ちが穏やかになってくる。舞い散る花弁も今は鬱陶しくは感じず、むしろ爽快な気分になってくる。

 

「むむぅ……?さっきまでFクラスの教室にいたはずなんだけど……」

 

 後ろを振り向くと、そこには大きな川が流れていた。花弁が川に落ちてきて流れてくる光景はとても幻想的で思わず感嘆の溜息が零れてしまう。これで秀吉が流れてきたらもっと最高なんだけどな。

 

『おーい、東雲ー』

 

 川の向こう側の岸から僕を呼ぶ声が聞こえる。今の声は……確か須川くんの声だった気がする。

 

 声がした対岸をよく見ると白装束を着た須川くんが手を振っていた。三階から落ちたけど生きてたらしい、意外とタフだな。

 

「どうしたの須川くーん」

 

 僕も手を振りながら応える。

 

『はやくこっちにこいよぉー、こっちはいいところだぞー』

 

 須川くんは満面の笑みを浮かべて僕を呼ぶ。須川くんは簡単そうに言うけど、どうやってそっちにいけばいいんだろう。まさか川を泳いで渡れってか?僕は泳げないから無理だ。沈むのは得意だけどね。だから泳いでいくのは却下。それ以外に方法があるとすれば……。

 

「そこに船ってあったりするー?」

 

『船か?それなら近くにあるが』

 

 お、ラッキー。

 

「それに乗ってこっちにきてくれるかなー」

 

『分かった。そこで待ってろよー』

 

 そういって須川くんの姿が見えなくなる。船を取りにいったのかな。……というか須川くん船運転できるのか?他に人がいてその人に手伝ってもらっているのかもしれない。そうだったらあとでお礼をしておこう。

 

 待つこと数分。少し眠くなってきたころにどこからともなく波の音が聞こえてきて、音のする方を向くと巨大な船が川を突っ切って来ていた。

 

「お、やっと来……え?」

 

 髑髏のマークが書かれたボロボロの帆、船の先端にも骸骨が飾り付けられており、船上には青白い肌のゾンビが複数……ひぃぃっ!?ちょっと待ってあれって幽霊船じゃん!さっきから不思議な場所だなって思ってたけどここ三途の川だわ!

 え、僕死んだの!?処女のまま死んだのか!?まだ秀吉と《自主規制(ピー)》や《自主規制(ピー)》なこともしていないのに!?マジかよ、こんなことになるくらいなら強引にでも《自主規制(ピー)》しておけば良かった……!

 

『ほら、早く登ってこいよ』

 

 船の先端に乗っていた須川くんがロープを垂らしてくる。心遣いは嬉しいけどそれは地獄への片道切符なんだよなぁ……!

 

 心と葛藤しながら、僕は須川くんに向かって叫ぶ。

 

「ごめん須川くん、僕はまだそっちには行きたくないっ!」

 

 叫び終わると同時に須川くんに背を向けて走り出す。須川くん死んでたのか……。というか須川くん先生のメガネつけてたよね。メガネに命ってあったんだ。いやいや、それよりも早く逃げないと!

 

『はっはっは、遠慮するなって東雲。俺達は歓迎するぞ。なあメガネ』

 

『メガッメガメガメガーネ(もちろんさ、彼にはお世話になったからね)』

 

 聞こえない、僕にはメガネが喋ってる声なんて聞こえないっ!

 

 幽霊船は岸に乗り上げてそのまま森の中を滑ってくる。なんでもありだな地獄っていうのは!

 

 だけど、流石に木を薙ぎ倒しながら滑ることは出来ないらしく、船は木々の手前で止まった。

 

 よ、良かった。あの速度だと追いつかれそうだったけど、足で追いかけてくるのならまだ勝機はある。

 

 そんな希望を胸に秘め、後ろをチラッと見るとそこには――――――

 

 

『てめぇ待てやゴラァ!』

 

 

 ―――――――暴走族のような恰好をした須川くんとゾンビたちがバイクに乗って僕を追いかけて来ていた。

 

 

「はぁ!?」

 

 僕もこれには驚いて声が出てしまう。まるで某世紀末救世主のような恰好だね。ていうかゾンビまで追いかけてくる必要性が見当たらない。そもそも豊かな森の中を走る暴走族って凄く噛み合わないんだよ!雰囲気が台無しだ!

 

『ヒャッハー!地獄は最高だぜぇ!可愛い女の子もいるし、自由に遊べるしよぉ!』

 

「……可愛い女の子か。確かにそれはそれで興味が―――はっ!違う、僕には秀吉が必要なんだ!秀吉のいない地獄なんて興味がないはずなんだ!」

 

 自分に言い聞かせるように言葉を吐く。

 

「そ、そんなことより早く逃げないと――――」

 

 

 ――――――あれ?そもそも僕はどこ逃げればいいんだ!?まずい、このままじゃ捕まってしまう……なんかすごい既視感(デジャヴ)だな。今朝もこんなことがあった気がする。ってそんな場合じゃないんだよバカ野郎!走れ走れ走れ!とにかく走れ!頼む神様仏様、僕にこいつらから逃げ切るための力を!

 

「……………っ!?」

 

『な、なんだあの光は!?』

 

『メガァーーー!?(目がぁーーー!?)』

 

 必死の逃走劇を繰り広げる僕の体から、突如として光が漏れだす。あ、ありがとう神様!

 

 背には白い翼が生え、いつのまにか僕は空を飛んでいた。行ける、今の僕ならこの地獄から脱出できる!

 

「うおおおおおおお!!」

 

『ま、待て!俺を一人にしないでくれ!メガネと地獄なんて嫌だぁーーー!』

 

『メガッネ、メガネンネェーーー!(こっちだって、願い下げだわぁーーー!)』

 

 

 

 遥か下から聞こえる叫び声は、悲痛の感情に満ちていて僕は思わず涙が零れそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。