呪術界最強は石世界でも最強です。   作:石化して土に埋まりたい人

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 この世に生まれて自分の姿を見てからずっと首を傾げてきた。何故自分は生まれ落ちたのだろう、何故自分は生きているのだろう、何故自分は余りある力を持って生まれてしまったのだろう。

 余所者が聞けば、あぁ鬱という奴ねとなんだか全く見当違いな納得をして放っておかれるそれは、自分にとっては極自然な疑問だったのだ。だって知っている。俺はこの姿を知っている。文字通り生まれる前から“知っていた”のだ。

 きっと“前世”と呼ばれるこの記憶の中にある友人に“今世”の名前を言えば、“いやww おまっww 流石にそれはないww キャラと同じ名前とかねぇわーw”と笑われ、“今世”の容姿を見せれば、“……は? いやいや、は? 成り代わ、いやガワだけだろ? そっくりさんてだけだって知ってる”なんて宣い、最後に“今世”の力を見せれば、“成り代わり確定デース!! ありがとうございました!! ネタ提供アザース!!”って言いながら駆け回る事だろう。そうして生まれ変わった先を言えば、“いやいやいや! その姿と力を持ってて呪霊もなんもない現代!? 呪術師も御三家の姿形もない!? 一般家庭だって!? カーッ! 幸せになれよ!”と本人でもないのに幸せを願ってくれる。まぁ、この身体の友人達は今世にはいないのだけど。

 ここまで言えばわかるだろうけど、成り代わり転生トリップという奴だ。そして成り変わった先は呪術廻戦というノリに乗ってる漫画の人気キャラ“五条悟”であり、転生トリップ先は呪霊や呪術師の呪もない何も変哲もない世界、現代日本。

 

「(うーん、可笑しいよねぇ)」

 

 生まれてこの方二十五年、未だに首を傾げ続けている。

 だって“五条悟”だ。本家本元呪術廻戦では最強と自他共に認めるキャラ。主人公ではないながら、その存在は呪術界にとって重要なものであり文字通りチートキャラである。いやいや強キャラは必用だけど言い過ぎだってとか思った人は一回読んでほしい。チートです。ただまぁ最初っから居るチートキャラって後々来るインフレの波によってチートというより強いってだけになったりするけど、そこはそれ。連載時点ではまだまだ最強であった。

 そんなキャラにだ、成り代わり。昨今で盛んな二次創作界隈では成り代わりという奴は大抵その世界にいるか、別漫画の世界へ飛ばされるものだけど、俺の場合“現代日本”。ほら? 可笑しいだろ。

 現代日本を舞台にした何かという事もあったが、一番の候補であるこの身体が本来いる世界の“呪術廻戦”は生まれて数日で候補から外した。いやだって“呪霊”がいない。負の感情から生まれるそれらは人間がいる限り生まれてくるはずなのに、二十五年間全く見てない。見えないという事はない、この身には無下限呪術があるし、眼には六眼がある。寧ろ見えなきゃおかしいのに、見えない。つまりいない。

 じゃぁどこか? それがわからない。そもそも現代日本というのは一から舞台の設定をしなくても良い為に物語を書きやすいものだし、この世には星の数ほど作品がある。つまりわからない。お手上げである。

 

「(強キャラを配置するならそれなりの難易度にしなくちゃならない。“ただの”現代日本なんて緩々だ、ヌルゲーだ)」

 

 本家本元を意識して教師資格を取ってみて働いてはいるけど、呪術専門ではない普通の高校だ。日本中を飛び回る事もなく、殆ど校舎の中にいるか机に向かってるインドアな職業。まぁ仕事の量は半端ないが、自分が生まれ持った脳の処理能力を活かせばできないことではない。つまらないけど。

 

「五条先生」

 

 ふと呼ばれる。仕事がひと段落して休憩がてら机に突っ伏していたけど、何か用があるらしい。眠たいなーと欠伸を零しながら、何です? と問えば、血管が浮き出る音がした。おや怒ってらっしゃる? ちらりと見れば、教頭先生。あらまぁ頭の硬いお爺ちゃんになり掛けのおっさんじゃないの。

 

「次の中間で出すテスト問題なんですが」

「えっ、何? 不備でもありました? というかなんで教頭先生が見てるの? それって学年毎の担当が居るはずじゃ」

「最終チェックは私がするんですよ、五条先生。で、です。なんですか? この問題」

 

 と言われて指差された先にあった問題。長方形の用紙にある一番右下、生徒達が最後に解くであろうそれを指した理由が分からなくて首を傾げた。さらりと髪が傾く。おっとサングラスが落ちそう。

 

「……それが?」

「それが!? 高校生が解くような問題ではないのを記載しないでくださいと言っているんですよ! 調べてみればこれ、超難関の大学入試の過去問ですよね? まだ高校一年生が解けるようなものじゃありませんよ!」

 

 あー、なるほど。テスト範囲以外の問題を出すなよって事ね、OK把握。

 

「いやいや、別に解けとは言ってませんよ。ほら、問題部分に書いてあるでしょう? “サービス問題”だって。その問題以外で100点取れるように配分してますから、大丈夫ですって」

 

 それに。

 

「もしその問題が解けるような子がいれば、天才という奴でしょう?よかったですね、我が校から凄いのが生まれるかもしれない」

 

 高校一年生なんてものはまだまだ将来の事を見据えたりしない。高校二年で少し考え、高三になってから進学先を決める。それでもほとんどは進学したその先を見ていないのだから、まぁ何も考えてないよね。

 で、だ。そんな高校一年生で超難関大学の入試問題を解ける生徒がいたら? それは間違いなく天才だろう。努力する類いのね。頭が良くなければ努力したってわかるものもわからないし、頭良くても努力しないと知識は身に付かない。つまり、サービス問題と銘打った神童探しである。

 べ、別に枠が空いたからって適当に目についた問題を当てはめたわけじゃないからね!

 

「それで教頭先生」

 

 何が問題なんです?

 なんて和かに笑いながらそう言うと、一応納得したのか渋々退がっていった。その程度の事で糾弾しようするなんて甘過ぎる。いくら俺が嫌いだからと、何でもかんでも難癖つけ過ぎだ。あーやだやだ、“五条悟”がイケメンなのは俺の所為じゃないってのに。

 因みに今の俺の姿は所謂高専時代の五条悟ってところだ。流石に高専の制服ではなく、真っ黒なスーツだが、丸いサングラスと相まって輩にしか見えない。最初に赴任してきたときに学校の空気が乱れると言われたが、日光に弱いんですと適当な理由をつけて躱した。嘘ではない、割と眩しく見える。それに俺みたいな生徒は何人かいた。まぁどこにでも一定数はいるよね、仕方なし。

 くぁともう一度欠伸をする。もうデスクでするような仕事はないし、後は帰って寝るか。サービス残業はしたくないしな。

 教頭先生が元の定位置に戻ったのを確認して立ち上がる。黒いリュックサックの中にパソコンやら筆箱やらなんやら入れてから、椅子を戻した。教頭先生の怒った声をBGMに、お疲れ様っしたーなんて言いながら職員室を出た。途端にドタバタと目の前を生徒達が通っていく。

 

「中庭で大木が小川に告るらしいぜ!」

「お前はどっちに賭けた?俺は失敗!」

「俺も!」

 

 なるほど、告白。そりゃ一大事件だ。青春だねー、良いねー。でも。

 

「廊下は走らないでねー!」

「「「はぁい!」」」

 

 と言いつつ走るんだから意味のない忠告だ。ま、今回は見逃してあげよう。走らないで歩いて告白の一大シーンを見逃したってなると悔しさしかないだろうから。

 にしても小川ね。小川杠だったかな。可愛い子なのには間違いない。元気で器量も良く、優しい印象を受けた。きっとあの子に焦がれてる子も多いんじゃなかろうか。そんなマドンナ的存在が告白されようとしてるんだ、野次馬根性も勃発するもんだ。

 

「……どうせ暇だし、僕もお邪魔しちゃおうかな♡ なん……て、えっ?」

 

 突然地平線の彼方から発した緑色の光線。超常の現象だと理解し、あれを浴びてはいけないと本能が危険を知らせたときには。

 

 何も感じなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はーー!!!! いつもは要らないからって無下限切ってるんじゃなかったー! これだから俺は!! いやだって言い訳させてもらうといっつも無限を纏っていたら、いざと言う時に誰かが俺の肩を叩こうとして触れなかったら不自然じゃん!? 仕方ないじゃん! いやそもそも触れさせないけどさー! いや、反転術式は使えるよ? 使えるけど常時発動はなーと考えてただけ。日に焼けるのが嫌な時は発動してたりするけど、それはそれ。

 いやー、生まれてから二十五年間。なんで“五条悟”が何も無い現代に生まれたのだろうかって考えてたんだけど、何も無いわけじゃなかったね。始まってなかっただけでしたわ。

 あの緑色の光線、見た事はある。無料だからとアニメ第一話だけ見た、呪術廻戦と同じ雑誌に連載しているDr.STONEという漫画。ある日突然、人類全てが石化してから3700年過ぎた後から始まる原始世界でのクラフト生活。どこのマインクラフトだって言いたくなるようなそれが、この世界だったようだ。

 いやー世界は狭いねー。主人公っぽい白菜頭は見たことあるわ。俺が勤めてる高校の生徒だわ。なーんで気がつかなかったのだろう。呪術廻戦でもあんな特徴的な髪型いなかったからな??? 重力に逆らい過ぎて、科学ってよりファンタジー。

 さーて、何考えて過ごそうか。何せ3700年。百年しか寿命がない人間にしてみれば気の遠くなる年月。歴史上、空白になるであろうこの期間中、何も考えずに過ごせばいつ復活できるかわからない。多分ずっと考えていれば主人公が目覚める年を基準に誤差五年ぐらいで復活できるはずだ、多分。

 いや俺ってば科学とかより文学担当なんでー! 無下限だってそういう類いだしな!

 いや無下限は哲学か……まぁいいいや、とりあえず素数でも考えようか。綺麗に割れない数字、だったかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………飽きた。

 いやだって飽きるでしょ! 何か考えてなくちゃなーと思いつつ途中からスマホに入ってた歌を思い出して歌ってたぐらいだわ! 歌詞わからなくなっていつの間にか終わらない歌になってたけど! 声に出せないから歌ってると言いづらいけどさー! いやーもう素数とか関数とか、なんか色々思い出して復習してたけど飽きるね。俺元々勉強好きではないし、今世の頭の出来が良すぎただけだからな。反転術式のお陰で脳をフルで使えるし、まぁいやほとんど無下限呪術に持っていかれるんだけどそれはともかく。

 途中から飽きてしまったから体内に巡り続ける呪力をこう溜め込めないかなーと試行錯誤してた。身体が石化してるからかわからないけど、呪力が外に出ずに体内に居続けるんだよな。このままだとガス抜きしてないのにガスが送られ続けてる状態だからどうにかしないとなーと思ってたら、いつの日か外に流すことが出来ましたね。穴でも空いたんだろうか、何かが割れる音がしたけど。

 

 ———パキッ。

 

 ほら。

 

「(ほら?)」

 

 パキパキと何かが割れ、そして崩れる音がする。そんな音が耳の中に反響する度に、徐々に五感が取り戻されつつあった。

 あれ? これ復活パターン? なんか早くない? 気のせいと思いつつ、動けるようになった手足に感動しながら起き上がった。最後に顔あたりを覆っていた石が外れて、甲高い音を出しながら地面に落ちた。

 

「あっ、あ、あー。うん、話せるねぇ」

 

 目蓋の裏から入ってくる光、聞こえてくる自分の声、喉、ざらりとした感触、草木の匂い。味覚はまだわからないけど、それでも五感を取り戻したのだと理解した。

 軽く伸びをする。徐々に光に慣れてきた目を開ければ、見えてきた石壁。

 

「……洞窟?」

 

 思わず後ろを見る。行き止まりがあるね。横を見た。石化した人間が転がっている……不気味だ、ってあれ?

 

「大木大樹じゃないの」

 

 凄い体勢で固まってらっしゃるけど、告白は上手くいったのだろうか。それよりあれだけ離れていた俺と彼が隣同士って可笑しな話……いや、あれ、もしかして。

 座った状態から立ち上がる。真っ裸だけど、確認しなくちゃならないことがあった。無駄に考えすぎて肝心のことを忘れがちだけど、一応覚えている。この場所は奇跡の洞窟。ぴちょんと少量ながらに垂れ流される液体に晒しておけば、石化解除を早めれるかもしれない場所。その確証の為の実験に主人公は友人をここまで運んだはず。なんで俺まで、なんて考えはしない。起こったことを過ぎてからとやかく言っても仕方ないしな。

 何千年振りに歩いたからか覚束ない足をどうにか動かして、光がやってきている外に向かう。見え過ぎる目に直接入ってきたそれらを無限で防ぎながら、辺りを見渡せば生い茂る木々。そのまま近くの目立つ木に視線を動かせば。

 

「あった」

 

 傷がある。

 自然に出来たものじゃない。熊が爪研ぎのためにつけたものでもない。人間がナイフか何かで付けた傷にそっくりだ。

 間違いない。Dr.STONEの主人公、千空が起きている。

 

「これは……予想外、かな」

 

 いやはやまさか、主人公とその親友の真ん中に起きるとは。それにあの洞窟にいた意味もわからない。元からいたのだろうか、それとも千空が運んだのだろうか。いや俺って190センチ以上はあるんだけどな、身長。日本人にしては高過ぎる方だよな、髪色も相まって外国人だと思われてたし。よく見ろ、俺は顔が平たい族だぞ。

 ともかく、ここでとやかく考えていても仕方がない。この傷を目印に移動するか。

 

「(詳しい事は本人に聞けばいいしね)」

 

 それにしても眩しいわ。サングラスか布が欲しい。

 

 

 




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