呪術界最強は石世界でも最強です。 作:石化して土に埋まりたい人
木々に刻まれた目印を頼りに川を降っていく。生活面とかその他色々、便利だからという理由で川のそばに住居を構えているのだろう。今は何月だろうか。少し肌寒いし、周りに漂う湿り気、勢いが良い川の流れ、所々ある水溜りからして雨季。五月か六月が相当かな。まぁ3700年経ってれば、四季なんてものは少し狂ってるかもしれないけれど、大体はあってるんじゃないだろうか。
「お、家だ」
簡易的なツリーハウス。樹齢何百年かわからないしっかりとした樹に寄り添うようにして作られたそれ。これを一から作ったのか、凄いなぁと感心する。知識があってもそれを実行する体力と気力がなきゃ無理な話だ。
軽く跳んで家の中にお邪魔する。梯子があったが、まぁ俺の身体能力の前には無意味だ。身体の調子は石化前から変わってないようだしな。
「服〜、サングラス〜はないか、包帯? っぽいのは、うんあるね」
重畳、重畳。元から用意していたのだろう、二種類ある。白と茶色。白はあまり好きではないが、まぁ仕方なし。流石に着色までしようとは思わないからね。面倒だし。
袖を通す。造りが比較的簡単だからかわからないが見た目がどう見ても和服。というか浴衣。実家を思い出すなー、今世の家は“五条悟”にしては普通の一般家庭と言えるだろうけど、一応旅館経営をしてる一家である。古くからあるものだから家も大きいし、それなりに他の事業もしてる為にお金持ち。教師という職に就いてるものの、仕送りの額が額なのでお金は湯水の様にあった。今じゃもう意味のないものだから、使っておけば良かったなーなんて。将来の為にって貯めとくんじゃなかった。
いやともかく、実家に帰れば和服だったのだ。旅館の手伝いとか強制的にされるからな、長期休みの日でも実家には帰らなかった思い出。だから懐かしいなー思い出すなーってわけでして。
くるりと一回転。ふむ、鏡はないが似合っているに違いない。何せ五条悟、似合わないわけがない。紐をしっかりと結び、包帯っぽいのを目に巻きつける。目を怪我したわけでも、厨二病というわけでもないがまぁ隠しててほうが落ち着くというかなんというか。
ま、目隠しして髪の毛が逆立っていたとしても違和感はない。寧ろなんか近づいたなって感じだ。
というかなんで目隠ししただけで髪の毛逆立つかねー、サラサラヘアーなのに……不思議だ。
「さて、この家の主人にご挨拶かな」
どこにいるかはわからないけど、まぁこの家で待っていれば会えるだろうな。探しに行くのも手ではあるけれど、どうしようかな。
ん、あ、あー、帰って来たな。噂をすれば影という奴だね。目隠しがちゃんと機能しているのを確認してから立ち上がる。裸足のままツリーハウスの外側へ出れば、森の向こうから一人の人間が出て来た。緑色と白色の逆立った髪に、赤色の瞳、そして石化した人間特有のヒビ。千空に間違いないな。
「よっと」
梯子を降りるのが面倒なので跳躍して地面に降り立つ。此方を驚いた様に見ていた彼は何を思ったのは口角を上げている。うーん? 面白いことでもあっただろうか、なんて内心疑問に思いながら片手を上げた。
「お疲れサマンサー! 千空」
「クク。遅いお目覚めで、五条先生」
ありゃ認知されてましたか。意外や意外、まぁそうでなければ俺なんて放置されてるだろうな。
「僕の事知ってたんだ。意外だね」
「あ゛? そりゃぁ所属してた部活の顧問だったじゃねぇか。備品申請するときとか名前書くからな、覚えてただけだ」
「ん? 何部なの? 君」
「科学部、ちなみに部長」
「……そんなのあったっけ」
「あったわ! 普通にあったわ!! 学生が薬品使う部活を放置してる時点で薄々わかってはいたが、やっぱ顧問になってた事自体覚えてなかったな、テメー!」
「あー、いや覚えてるよ。うん、覚えてる。ほら、千空のこと覚えてたでしょ? ね?」
「……はぁ、もう良い。どうせこの世界じゃ意味のねぇ事だしな。テメーが100億%他人に興味ねぇのは知ってたからな、今更なんとも思わねぇ」
「そんな事はないよ。僕は教師だ、少なくとも生徒の名前は全員知っている」
「知ってる“だけ”だろ」
耳を小指で穿りながら此方を見る千空の言葉には答えず、ただ微笑んでみせた。解釈は君に任せるよという意味を込めてみたのだが理解したのか否なのか、それでと千空は続けた。
「大樹はどうだった」
「ん? あぁ、大木大樹ね! 僕の横で寝てた子。まだ眠ったままだったよ、起きてはいるだろうけどね」
「んな事聞いてるわけじゃねぇよ」
「……表面はザラザラだった。ここに来るまで様々な人に出会ったけど、彼程手触りの悪いものはなかったさ。これで良い?」
「上出来」
そう彼は笑って、首をコキリと鳴らした。欲しい答えを言えた様だ、彼は持っていた枝をツリーハウスの側にある焚火の跡に置いては振り返った。
「さて、改めて自己紹介でもするか?」
「イイねー! じゃぁ僕からいこっかなー。僕は五条悟、気軽に悟くんって呼んでくれて良いよ」
「俺は石神千空。ま、この世界じゃ名字なんて意味ないが……クク、五条先生に対してだけは意味あるな」
「えっいやいや、意味ないなら呼んでよ! ね? ねっ?」
「別に礼儀知らずじゃないからな。流石に年上の人間を呼び捨て、ましてや君付けなんてできねぇよ」
「って言いながら笑いを堪えてるの見えてるからね???? そんな事一ミリも思ってないでしょ??」
全く失礼な人間だよ。いや俺もそんなところあるからさ、別に咎めはしないし、こんな世界じゃ年上も年下も関係ないしな。ただ、学校なんていう枠組みがなくなったのに相変わらず先生呼びしてくれるのには少し嬉しいけど。
まぁいいや、と笑う。肩を竦めて、俺は聞きたいことを言の葉に乗せた。
「君と大樹って友達でしょ? なんで僕を隣に置いたのさ」
急にぶち込んだ質問。焚火の為に枝を整えていた千空は一度手を止め、此方をちらりと見てからまた作業を再開した。
「置いた、とは? 元からそこに居たとは考えねぇのか?」
「僕が寝てた下、藁が敷いてあった。元から居たならそんなことする必要ないだろう? そのまま隣に藁を敷いて、大樹を置けばいい。彼ならわかる、友人は大切にすべき存在だ。でも僕は君からすれば、ただの先生。君の優先順位上位に入らなさそうだ、だから不思議に思って」
「ハッ、なんだそういう事かよ。んなら至って単純な事だ。テメーが洞窟の近くにいた、ついでってわけだ」
「ハイ嘘〜。そんなあからさまな嘘吐くぐらいなら、グッドルッキングガイに惚れたからって言われた方がマシだぜ」
「一応聞くが、そのグッドルッキングガイは誰だ」
「僕だけど?」
え? 何を当たり前のことを言ってらっしゃる。君も顔が整ってるし声も良いイケメンではあるけれど、こちとら“五条悟”である。ブランド物が服着て歩いているようなものだし、俺が言うならばこの身体を指す以外にないからね。
あ、まさか千空ってば自分の事グッドルッキングガイだと思ってらっしゃる? グッドルッキングではあるけど、ガイではないよねー。知らんけど。
「……今わかった。テメー、超絶面倒くせぇ性格してんな」
「今更〜」
「生憎、五条先生とここまで話すのは初めてなんでな。今更でもなんでもないんだわ」
そう言ってはため息を吐く千空。麻紐と木を組み合わせて作ったのだろう、簡易火起こし器を組み立て始める。そして、火種用だろう小さく裂いた乾いた繊維を側に置いた。
「それで、僕を君の言う“ついでに起こそう”と思った理由、話してくれるのかな?」
「……はぁ。年度始め、一度だけ科学部に来た事あるだろ。急に来たテメーに驚いて部員が薬品をぶちまけた、覚えてるか?」
年度始めって事は俺が科学部の顧問に任命されたって知った日ぐらいだろうか。あの時は色々手続きとか他の作業もあったので、挨拶は後でいいかと後回しにしてたのは覚えている。んで数日後かな、ふと思い出して活動日なのを確認して理科室の扉を開けたんだった。お疲れサマンサー、なんて言って。
「思い出した。そんなこともあったねー」
「それからテメーは一度も来なかったがな、まぁその時が衝撃的過ぎて忘れたくとも忘れられねぇんだわ」
「え? なんで? 僕の美貌に??」
「……そのナルシストはどうにかなんねぇのか」
「僕が僕である限り、無理だね」
“五条悟”にナルシスト傾向があったのは明白なので、俺がどう思っていようがそういう行動をしたくなるのだ。まぁ俺だってこの顔はヤベェなと思ってるから、本当の俺の感想を言ってもナルシストにはなる。仕方ないね、“五条悟”だからね。
「で、だ。その薬品は確実にテメーに触れたはずだった。なのにテメーは平然として大丈夫? なんて呑気に部員に声かけてやがる。ククク、面白れぇよな?」
いや何が?
「その部員が扱っていたのは塩酸だ。正しくは塩化水素酸。少しでも皮膚に触れれば火傷待った無しな超絶ヤベェ薬品だぞ」
「いや、流石に希釈したものじゃないの? そこまでやばいのだったら取り締まりされそうだけど?」
少しでも扱いを間違っただけで危険を及ぼす薬品などは絶対に法が敷かれてるはずだ。アルコールランプでさえ教師が見てる側でないと生徒は使えない。酸なんて以ての外。彼らが簡単に手に入る酸なんて炭酸ぐらいだろうな。
「まぁな。塩酸は劇物指定薬だ。原液、もしくは10%以上の製剤が“毒物及び劇物取締法”によって指定されている。このストーンワールドならいざ知らず、石化前じゃお縄行きだ。だから学校じゃうすーく希釈したモンを使ってるっつーわけだが……まぁその部員は希釈したものから抽出して元に戻せるかみてぇな実験でもしてたんだろうよ。ククク、塩酸をチョイスしたのは謎で仕方ねえがな。配分間違って水溶液からただの気体に戻ってみろ、危ねぇのはテメーの命だってーのに」
「危ないなら止めれば良いのに」
「危なくなる前には止めてる」
「危機管理〜」
あるのかないのかはっきりしてー。
「そんな危ねぇ薬品だがな、うすーく希釈してたとしても軽く火傷ぐらいはする。服を通してならそこまでだろうが、皮膚に直接となると違う。零しそうになったビーカーをキャッチして、中身が溢れた。当然ビーカーを持ってたテメーの皮膚は大惨事、になりかけたわけだが。何も起こらずに床に滑り落ちた。不思議だな?」
「それは不思議だねー。それで?」
「んで、床が少し溶けた。不思議だな?」
「それは不思議だねー。それで?」
「……」
そんな回りくどいこと言わなくても良いのに、この子は俺の事にどこまで踏み込んで良いのか測りかねている。知的探究心が強くとも、人の心を理解していないわけでもないのか。ある一点において天才と呼ばれる人達はどこかしら欠点でもありそうだけど……そうだな、この子はコミュニケーション能力が少し欠如してるぐらいか。全然欠点じゃないね、やり直し。
俺が同じ言葉を二回繰り返した事に腹が立ったのか否なのか、彼は息を吐いては頭を乱暴に掻いた。
「あ゛ー、ふとした合間にその現象について考えてたんだが、一向に答えが出ねぇ。状況証拠も少ないしな。だからテメーが洞窟の近くにいた時、その事を思い出した。わからないなら直接聞けば良い。それにテメーの身長やいた場所、大樹との復活の差で他にヒントが得られるかもしれねぇからな」
摩擦熱によって火種が出来上がる。まだまだ小さい炎だが、慣れているのか軽く息を吹き炎を大きくしていく。そしてそのまま薪のそばに起いては、消さないよう、しかし風を送るよう仰ぎ出した。
パチパチ、小さく火が爆ぜる。
「OK、千空の言い分は理解したよ」
彼は俺の能力を見たいのだろう。俺はあまり覚えてないがその挨拶しに行った時に無意識に無下限を使ったのかもしれない。普段は切ってはいるが、危ないと本能的に思えば発動するようにはしているからな。千空にそんな場面見られてたとは思ってなかったけど。
さて、どう説明しようか。科学っ子な彼にとって呪術云々はファンタジーだしな。まぁ俺の眼が正しければ、この世界の人間は無意識に呪力を持っていてコントロールしてるからファンタジーでなく現実としてあるんだが……あぁこれ一応呪霊が生まれない理由な? みんなが皆、呪術師並みに呪力を運用してる。気がついてないだけでね。だから呪霊が生まれないのかーなんて思ったけど、それはともかく。
呪力云々は伏せようか。変に自覚されちゃったら困るし。
「答えは超簡単だよ、千空」
ピッと人差し指を顔の横で立てながら笑顔を作る。なんて事ないように言う為に。
「僕はね、超能力者なんだ」
……。
…………。
………………。
「流石の僕も何か言ってくれないと困るんだけど」
「……あ゛ー、いや、元からだとは思ってたがやっぱ頭イカレてんのかと思ってな、ビビりまくってた」
「辛辣!!」
まぁ、そう言う反応するとは薄々わかってたし、別に良いし。
肩を落として千空の隣に座る。胡座をかきたいがたぶん隣にいる彼の膝に当たるだろうから両足を立てて体育座りをした。脚長いなという独り言は聞こえなかった事にしよう、当たり前ですのでね。
「まぁ人類石化なんてファンタジーな現象が起きてんだ。石化前にそんな人間がいても驚きはしねぇよ」
「じゃぁなんで僕の頭がイカレてるなんて結論になったの」
「そりゃぁ俺の所感だ」
「僕、君に何かしたっけな?」
何もしてないよな、うん、多分。
「まぁいいや。じゃぁ能力の説明をしようか。科学特化の君と違って哲学的な話になるけど、良いかい?」
「少しは齧ってる。話せ」
「はいはい。簡単に説明すると“アキレスと亀”が僕の能力だ」
「あ゛ー、亀が先に走り出してるとアキレスがいくら速くとも追いつけねぇって奴か。確か古代ギリシャの哲学者が唱えた奴だな」
「流石千空! 良く知ってるね!」
俺なんて調べるまで何のことかわからなかったっていうのに。まぁアキレスのことは知ってたから題名でどういうものなのかはある程度推測できるけど。
古代ギリシャの哲学者ゼノンは様々なパラドックスを唱えているがその中で一番有名なのがアキレスと亀。まぁウサギと亀みたいな……あれは追い越してるな、違うか。
ギリシャの中で一番の俊足であるアキレスとノロマな亀が駆けっこをするというシチュエーションで、ハンデとして数メートル先にいた亀が走り出し、その後をアキレスが追うが一生追い越すことは無いという哲学。
いや何言ってんだ? ってなるだろ? 俺もなった。今でもちょっと意味わからんけど、哲学なのでほーんそうなんだぁで何となく受け入れればいい。曖昧なぐらいが丁度良いんだ、俺だってこの能力も曖昧にしか理解してないからな。見えてる情報が多過ぎて無意識に処理してるぐらいだし、多分本当に理解しようとすれば俺は使えなくなりそうだ。“五条悟”は知らないけど。
「その後に生まれた人が否定してるけど、ともかくその哲学者が説明したかったのは無限のパラドックス。僕はそれを操れる……ってもそこまで汎用度高いわけじゃないけど」
そう言って俺は左手を差し出した。手をパーにして触ってご覧と右手の人差し指で差してみれば、怪訝そうな表情をしながら手を出してくれる。わぁ素直。
「言葉で言ってもわからないことあるでしょ。だから体験してもらおうと思って」
優しいでしょ、僕。
なんて笑ってみせれば、百聞は一見にしかずってかとニヒルに笑ってみせる千空。高校生には思えない表情ですね。
そうして彼が同じように手をパーにして俺の手に触ろうとする。けどそれは一向に届くことなく停滞していた。
「触れ、られねぇな……壁に阻まれてるってわけじゃねぇ、僅かな弾力が指先から感じる。無限、操る……あ゛ー、なるほどなァ。ここに“アキレスと亀”ができてるってわけか」
「そーゆこと♪」
千空が理解したところで無限を無くし、手を離す。流石に彼をこの世界での漏湖にしたくないので、恋人繋ぎ♡ はやらない。あれ、ただ単にふざけて相手を見下してますっていう振りだからな。千空相手にしても仕方がない。そもそも俺は彼の事は尊敬しているし。
ともかくだ。
「言うなれば、この世界どこにでも“無限”がある。それを僕は引っ張ってきているだけさ」
「ほーん、随分と面白れぇ能力だな。ククク、そーいうのは嫌いじゃねぇ。限界があるよりも無限の可能性の方が唆られるからな」
「お気に召したようで何より」
どうやら千空先生にとって無限は唆られる対象らしいです。決して無下限じゃないよ、ここ重要。
「ま、これで僕が薬品を被らなかった理由はわかったでしょ」
「まぁな。おありがてぇ解説どーも」
「どういたしまして!」
にぱーっと笑うと呆れたように視線を焚火へと戻す。最初は小さな火種だったそれらは充分に炎と言えるほどに成長していた。焼かれて折れていく枝達がパキパキと悲鳴を上げている。
「ところで千空」
「あ゛、なんだ?」
「ついでにもう一つ質問、良い?」
「おーどうぞ。こちとらテメーのプライベートな部分に踏み込んだんだ、ひとつふたつと言わずに質問しまくりやがれ」
「わぉ太っ腹♡ 惚れちゃいそう♡」
「気持ち悪ぃ声出すな」
理不尽♡
「千空はさ、僕の能力に疑問を持ってそれを解消したくて僕を起こしたんでしょ?」
「あ゛ぁそうだな。おかげでどうやって超能力者が生まれるんだっつー新しい疑問もできたがな」
「それは考えちゃダメでしょ、僕のこれが手品の類い以外のならね」
「テメーのそれは手品じゃねぇよ。自慢じゃねぇがテレビに出るような奴の手品は見りゃ大抵タネはわかるからな、けどテメーのは全くわからなかった。自信持てよ」
「自信というより事実なんだけど」
というかタネも仕掛けもございませんなパフォーマンスだったのに、そんな事見てたのか。俺そんな器用じゃないからな? そもそも掌合わせでどうやって反発させ合うんだって話だけど。双方に磁石でも仕込んだか?
「でもこれで僕の能力については疑問無くなったよね。そうなると僕はどうすれば良い?」
俺が復活させられた理由は俺の能力を千空が疑問に思った為なのと、実験の為。同じぐらいの身長、同じ環境下でどちらが先に目覚めるかという比較実験の結果を身を以って提示する為だ。まぁあの洞窟から近かった俺の方が先に目覚めたが、それはさておき。
ついでに起こそうと思うなら何かしら役目を押し付けようと思うはずだ。大樹なら友達ということもあるだろうけど、その体力を求めて。なら俺は? 疑問以外の何を求めて俺をあの場所へ置いたのだろう。
「クククッ、そりゃテメー、俺の手伝いに決まってんだろ。この石世界でテメーと俺二人きり、俺一人じゃできなかったこともテメーがいればできる事が増えるからな。人手は多い方が良い」
……そーいう事を聞いてるんじゃないんだけどなぁ……まぁいいや、これ以上聞いても仕方がない。何より彼の時間を取ってしまっている。今は俺が納得するために時間を割いているが、今この話している時間だって何かしたいはずだ。
「うーん、OK。そういうことにしておこうかな」
よっこらせと立ち上がる。久しぶりの和服って言っても擬きではあるけど、洋服と違い乱れやすいそれを整えて千空に向き直る。もう辺りは暗くなってきてるな、なんて頭の片隅で思いながら。
「じゃぁ千空、僕の最初の仕事はなにかな?」
例え“ついで”としても俺を起こしてくれたんだ。恩返しぐらいはするから安心してほしい。恩を仇で返す気はないぜ。
「流石五条先生、話が早ぇ。クク、このストーンワールドで記念すべきテメーの初仕事は———」
まぁこうして俺の石世界での生活が始まったってわけだ。
ドクスト小説増えて♡