流星のロックマン Arrange The Original 3   作:悲傷

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またしばらくの間、更新は止まると思います。
それでも戻ってくるつもりなので、その時はお付き合いください。


第45話.今日。それはくだらない一日だった

 その後、ジャックたちはスバルたちと合流して、場所を変えた。ジャックたちに、電波人間3組に月男、元ジャミンガー軍団10人と、人数が大渋滞しているのが理由だ。目的地のホテル前に着いたら、アイの父親である滑田イサムまで出てきたのだから、さらに人口密度が増した。

 

「つまり、二つも事件が起こっていたということだね」

「うん、そうなるね。またロックマンに救って貰っちゃったね。ありがとう、スバルくん」

「いや、別にそんなつもりじゃ……」

 

 滑田親子の目の前で、星河スバルは顔を赤くして俯いていた。ドリル女たちと行動を共にしていたこともあり、どうやら正体を誤魔化せなくなったらしい。

 

「なに俯いてんのよ。胸を張りなさいよ、胸を!」

「ルナちゃんの言う通りですよ。スバルくんはルナちゃんたちを守ったんですから!」

 

 ドリル女の隣で、モードがピョンピョンと飛び跳ねている。

 

「いや、さっきも言ったけれど。僕たちが着いた時には終わってたよ」

「俺っちたちでもないチョキ」

「ないプク」

 

 ガキと蟹が勝手に「うんうん」と頷ている。

 

「じゃあ、誰が私たちを助けたっていうのよ」

「オックスと……ゴン太と言ったかの? そこの2人ではないか?」

「そうじゃな。燃え跡のようなものが合ったしの」

 

 クラウンというウィザードと、クローヌとかいう幽霊の予想は、当然のものと言えるだろう。あの場で炎を扱える者など、オックスぐらいしかいないのだから。そう、彼らが知らない一人を除いては。

 

「う~ん、俺たち電波変換はしたことねえぞ」

「ブロロ、あの窮地の中で、覚醒でもしたのか?」

「じゃあゴン太くんたちで決まりだね。ありがとう!」

「お、おう。アイちゃんを守れて、男として誇らしいぜ!」

 

 ゴン太とオックスの頭の悪さに救われた。これで話は流れてくれるだろう。

 

「後はこの人たちの処遇ね」

 

 ドリル女の言葉で、多数の視線が一か所に集まった。金田たちがビクリと背筋を伸ばした。

 

「た、頼む。見逃してくれ。もう響ミソラを襲ったりなんてしねえから……」

「当たり前のことだろ!」

 

 スバルが明らかに苛立ちを見せていた。

 

「そもそも、アイと、アイの友達を傷つけたあなた達を許すわけないだろ。もうサテラポリスには通報してある」

「そ、そんな……」

 

 それはジャックにとっても同じだった。さっさとこの場から立ち去る必要性が出てきた。どうしようかと考えていると、この場を乱すやつがしゃしゃり出てきた。

 

「YOYOYO! お前、敏腕マネージャーなんだってな!」

「ヒッ!」

 

 皆をかき分けて、ムーン・ディザスターが前に出てきた。そして、とんでもないことを口にした。

 

「お前、俺のマネージャーになれYO!」

「……は?」

 

 これは金田のみならず、この場にいた全員の言葉だった。

 

「さっき、あいつらから響ミソラの曲を紹介してもらったYO! すっごく良い曲だったYO! なので決めたYO! 俺様、響ミソラを超えるスターになるYO!」

 

 多分、全員の頭の中が真っ白になったと思う。少なくとも、ジャックはそうだった。

 

「ってことで、お前は俺のマネージャーだYO! そしてお前ら、音楽について詳しいだろうYO!」

 

 と、金田に組した者たちを指さした。

 

「え、はい」

「曲作ったことはあるけど……」

「ドラムなら自信ある……」

「私はギター……」

 

 彼らがたどたどしく答えると、ムーン・ディザスターは一人で勝手にテンションを上げていった。

 

「いえい、決まり! ここにチーム、ムーン・ディザスターの誕生だYO! 一緒に、響ミソラを超えてやろうYO! そういう勝負なら、俺たち仲間だYO!」

 

 響ミソラを超える。この一言で、彼らに熱が入ったらしい。

 

「そうか、そういう形で復讐できるのか!」

「私たちで、響ミソラに勝つ!」

「ギャフンと言わせてやりたいぜ!」

「俺やるよ!」

 

 一人、おどおどしているのは金田だけだ。

 

「いや、お前ら。勝手に決め……」

「チーム、ムーン・ディザスター!」

 

 ムーン・ディザスターが叫ぶと、歓声が上がった。金田の意思など、もう誰も聞いていなかった。

 もちろん、ジャックたちは置いてけぼりだ。

 

「ドリル女、良いのかよ、これ?」

「私に訊かれても、困るわよ……」

 

 その後、チーム、ムーン・ディザスターが響ミソラを超えることはなかったものの、一部界隈でカルト的人気を誇ることになるのだが、それはまた別の話である。

 

◇

 

「あ~……しんどい」

「お疲れ様、ジャック」

 

 現在、ジャックはドリル女と共にウェーブライナーに乗っていた。スバルはキザマロから「体育館のピアノから多数の電波ウイルスが見つかった」と報告を受けて、そっちに向かった。ゴン太は滑田親子のところに泊まっていくらしい。ムーン・ディザスターは、クラウン・サンダー、キャンサー・バブルと共にどこかへと出かけて行った。響ミソラについて、色々と教わると言っていたが、どうでも良い。

 幸いなことと言えば、サテラポリスが来る前に帰宅できたことくらいだろう。

 

「お疲れ様じゃねえよ。よくも散々突き合わせてくれたな」

「まあ良いじゃない。アイちゃんたちを助けることができたんだし。色々と丸く収まったじゃない」

「いや、何も良いことなんて……」

 

 ここで今回の事を振り返ってみる。アイの本来の依頼だった問題は解決したし、ムーン・ディザスターたちは争うどころか友人になった。もう一つの事件があった物の、そいつらは無事に逮捕できた。

 

「……いや、良く収まったのか?」

「そうよ、これもルナルナ団の奮闘の成果よ」

 

 いや、ドリル女は何もしてないだろ。という言葉を飲み込んだ。

 

「まあ、良かったな。これでお前の票が増えるんだろ?」

「ああ、今回は生徒会長選挙とは関係ないわよ。純粋に、アイちゃんの手助けをしに行っただけよ」

「え、そうなのか?」

 

 てっきり、学校の生徒の誰かからの依頼なのかと思っていた。だが違ったらしい。

 

「じゃあお前……何も得してなくねえか?」

「え、なぜ?」

 

 心底不思議そうな顔だった。

 

「アイちゃんたちを助けられた。ブラザーにだってなってくれたのよ。ジャックもブラザーバンドを結んで貰えば良かったじゃない」

 

 ドリル女とスバルは、アイとブラザーになっていたが、当然ジャックは断った。

 

「いらねえよ、ブラザーなんて……」

「どうして? アイちゃんは凄くいい子よ」

 

 確かに、良い奴だとは思う。男の趣味は最悪ではあるが……。だがそういう意味ではないのだ。

 

「ねえジャック。嬉しくない? 自分が何かをして、誰かが幸せになってくれたら」

「分からねえよ……それ」

「え……?」

 

 気づくと、自分の気持ちを吐露していた。

 

「なんで、他人のためにそこまでするんだよ。結局、得をするのは他人で、お前じゃねえだろ。今回、お前は怪我しそうになったんだぞ。ジャミンガーに襲われて、怖い思いまでして……なのになんで……」

 

 そう、割に合わない。必死に頑張って、得をするのは他人。自分に利益がない行動をとる理由が、ジャックにはさっぱり分からないのだ。それなのに、ドリル女はとんでもない言葉を口にした。

 

「う~ん……確かに怖かったけれど……それは仕方のないことじゃないかしら?」

「は?」

 

 仕方がない。今、この女はそう言った。

 

「だって、襲われたことは予想できなかったことじゃない。道を歩いていたら、怖い目に合う確率なんて常にあるわ。今回はたまたま運が悪かっただけの話よ」

「たまたまって……」

 

 そんなことで済まされるような話ではない。

 

「じゃあなんだ、お前……他人が助かるなら、自分が死んでもいいっていうのかよ!」

「いえ、それは無理よ」

「……だ、だよな」

 

 流石にそんな聖人、いるわけがない。

 

「でもね、自分が危険な目に合うかもしれない。そんな理由で他人や……ましてや友達を助けない。そんな冷たい人に、私はなりたくないわ。少なくとも、そんな人には誰も……ゴン太もキザマロも……スバルくんも……ついて来てはくれないと思うわ。それこそ、生徒会長なんて夢のまた夢よ」

 

 スバルの名前を呼ぶ時だけ、なんか声色が違った気がする。

 

「だから、私は人助けを続けるし、止めるつもりもないわ。そして私に憧れて、同じようなことをしてくれる人が増えたのなら……それって、素敵な事じゃないかしら?」

 

 馬鹿げてる。それがジャックの感想だった。

 

「分からねえ、俺には分からねえよ……」

「ジャックだって、クインティア先生が困っていたら、助けるでしょ」

「当たり前だろ、姉弟だぞ」

「その気持ちを少しだけ。ほんの少しだけ他人にも使ってあげるの。簡単な事よ」

「無理だろ、そんなの……」

 

 姉と他人を、どうやったら同列に扱えるのだろうか。できるわけがない。

 

「でも、今日のあなたは私を助けてくれたじゃない」

「お前が無理矢理突き合せたんだろ」

「違うわよ。手、引っ張ってくれたでしょ」

「え? あ……」

 

 逃げる時に、ドリル女の手を掴んだことを思い出した。

 

「ありがとう。頼もしかったわよ」

「……おう」

 

 なぜだろう、目を逸らしてしまった。

 

「ね、お礼を言われると嬉しいでしょ。他人を助けるって、素敵だと思わないかしら?」

「……そう、か?」

「もう、素直じゃないわね」

 

 そんな会話をしているうちにコダマタウンに着いた。辺りはもう暗くなっていた。

 

「さあ、降りましょ」

「ああ……」

 

 ドリル女に続いて、ようやくコダマタウンの地面に降りた。これでやっと帰れる。解放される。という気持ちは、簡単に裏切られた。

 

「あ、委員長、ジャック!」

 

 声をかけられたのだ。ウェーブライナーの乗り場近くに、二人の人影があった。

 

「……スバル?」

 

 一人は星河スバルだった。隣にいたのはカードショップの南国。隣にはサーフもいる。

 

「あら、珍しい組み合わせね」

「学校での用事が終わって帰ろうとしてたら、ちょうど南国さんに会ったんだ」

 

 どうやら、体育館のピアノに巣くっていたウイルスたちは、無事に退治したらしい。

 

「スバルくんから、良いカード的なものの相談を受けていてね」

 

 南国が説明している間に、スバルはジャックにカード差し出した。

 

「はい、あげるよ」

「え……?」

「南国さんから聞いたよ。接近戦用のバトルカードが欲しいんだって」

「え、お前……本当に覚えていたのかよ!」

 

 南国に尋ねると、奇麗なサムズアップを返された。

 

「もちろん的な。特に今日初めて来てくれた、お客さんだからね」

「どんな客も、俺たちの波に乗せる。それがBIGWAVEだぜ!」

 

 サーフが隣で同じくサムズアップをしていた。この乗りはどうにも苦手だ。

 

「というか、ジャック。早く受け取ったら?」

「え、あ、ああ、ありがとう」

 

 思わずお礼を言ってしまった。カードには大きな鎌を持った、黒いウイルスが描かれていた。

 

「デスサイズ。鎌で斬りかかるのも良いけれど、自分と相手との間で鎌を回転させることで、盾代わりに使うこともできるんだ」

「そんな効果もあるのか……」

「俺はシンプルに使いやすい、エレキスラッシュとかで良いんじゃねえかって言ったんだがな……」

 

 スバルの隣にウォーロックが出てきた。だがスバルは首を横に振った。

 

「あれは接近戦に自信がある人向けだよ。苦手な人は、敵に近づかれないような立ち回りをした方が良いと思ったんだ」

「さっすがスバルくん。センスの塊的な!」

「ほんと、俺たちもウカウカしてられねえぜ」

 

 バトルカード専門ショップで営んでいる南国とサーフが褒めるということは、やはりスバルのセンスは本物らしい。

 

「どう、使えそう?」

「……ああ、使ってみる。いや、使いこなしてやるよ」

「その意気だよ。じゃあ、僕はそろそろ帰るね」

「私も、お父様とお母様を心配させるわけにはいかないしね」

「じゃあ、気をつけて的な」

「……ああ」

 

 先ほどまでの井戸端会議が嘘かのように、あっさりと全員別れた。ドリル女はマンションの方へ、スバルと南国は並んで公園の方へと歩いて行った。それを見送って、ジャックも帰路についた。

 

「……ほんと、今日は色々あったな」

 

 面倒な店員と関わってしまい、ドリル女に連行され、見知らぬ人への助力に突き合わされ、リゾート地で事件に巻き込まれ……。

 

「いや、ロクな事起きてねえじゃん。楽しいこと一つもねえじゃん!」

『そうだぜ、ジャック』

 

 ハンターVGの中から、コーヴァスが話しかけてきた。

 

『こちとら、何の利益にもならねえことに付き合わされて、はたはた迷惑だったぜ』

「ああ、そうだな。良いことなんて何もない日だったな」

『本当にそう思ってんのか?』

「え?」

 

 するとコーヴァスはハンターVGの中か出てきて、こう告げた。

 

「お前、悪い一日ではなかったって、顔してるぜ」

「……え?」

 

 言葉を失った。自分は今、そんな腑抜けた顔をしていたのか。

 そんなわけはない。だって今日は、嫌な事しかなかった日ではないか。

 

「あのドリル女たちを置いて逃げるどころか、助けてるしよ」

「いや、あれは……」

 

 そう、見捨てれば良かったのだ。しょせん、友達でも何でもないのだから。

 

「なあジャック……」

 

 コーヴァスはグイッと、その鋭い嘴と目を近づけてきた。

 

「お前、忘れてねえよな。俺たちの本当の目的を……」

 

 するとどうだろう。すっとジャックの顔から、動揺が消えた。

 

「ああ、分かってるよ、コーヴァス」

 

 そう、あの日誓ったのだ、姉と。

 

「忘れてねえよ……忘れられねえよ、絶対に……」

 

 そのために行動しているのだ。そのためだけに、自分たちはあるのだ。

 

「安心してくれ、コーヴァス」

 

 だから少年は手に持ったカードを……スバルがくれたバトルカードを地面に叩きつけた。

 

「俺はお前を裏切ったりなんてしない。力を貸してくれ」

「おう、それを聞いて安心したぜ」

 

 変わらない。少年の目的は変わらない。

 

「ジャック。俺たちはあいつらとは違うだろ。他人のため? バカのすることだよ」

「その通りだ。俺は、俺のやりたいことをする」

 

 空を見上げる。そこにある赤い星は、ただ瞬いていた。禍々しく、まるでジャックに語り掛けるかのように。

 

「俺が……俺の成し遂げたいことは……」

 

 空に向かって少年は手を伸ばした。もうすぐ叶うのだ。自分は姉と共にある。

 それが自分の……。




〇ジャミンガー
 電波ウイルスと電波変換した人間の、成れの果て。
 ウィザードと電波変換した電波人間と比べると、戦闘能力は大きく劣る。しかし、電波ウイルスよりかは強く、また知性もあるため、侮れない戦闘能力を持つ。ウイルスを使役したりできることも大きな特徴である。
 電波ウイルスの攻撃性が人格に大きく反映されるため、主に犯罪者へと転落することが多い。また電波人間と比べて、人命を危険に晒す可能性が高いため、遊撃隊としては採用できない。

 参照.ヨイリーレポートより抜粋
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