Good morning,NightCity.   作:銀翁玉

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明けましておめでとうございます(9日遅れ)
プロットこそあるのですがこう…戦闘シーン以外だと遅筆になってしまいます。

そして毎度毎度の誤字修正ありがとうございます!




診断 確認 決意

嘘でしょ……えぇ……?そこまで再現しなくても……

 

驚きのあまり、声に出してしまう。

いくら自分がやっていたゲームキャラの再現みたいな体と能力とはいえこれはあんまりだと今では思える。

診察をしていたヴィクターもどうしたものかと思いながらもいつも座っている椅子に座って様子を窺っている。

…そう、あれは今から30分くらい前の事だ。

 

 

……

………

…………

……………

 

 

 

「らっしゃい」

 

自分が部屋の中に入った事を気付いたヴィクターが私に声をかける。

その言葉を聞き自分も「お邪魔します」と一言言いそのまま歩きヴィクターに近づいていく。

目の前まで歩き、ヴィクターが今日はどういった要件で?と聞いて来たのでこう返した。

 

「精密検査をお願いしたくて来ました」

「……精密検査なら他のリパーでもやってくれるだろう?」

「大事な依頼が控えているものでして…それでこの街の伝説のリパーである貴方の所に来た次第です」

「成程な。……金はあるのか?俺は他のリパーより少々高いぞ」

「言い値ですら問題はありませんよ。貴方の腕の値段は私では決められないですし」

「言うじゃないか。今回は初めての来店としてサービスしといてやる。ジャッキーも助けて貰った礼ってのもあるがな」

「おや、私の事をご存知でしたか」

「あいつを診察した時にな。その時聞いた特徴とそのままそっくり同じっていうのと臭いが他の連中と違ったという所からそうだと思ったのさ」

 

ヴィクターに自分の存在が知られていて驚くもおどけて返したらジャッキーから聞いたと返ってきた。

……本当、よく喋る人だことで。

まぁ、もう知られているなら問題もあるまい。

『やれやれ』と肩を竦めると同時に張っていた緊張を解す。

ヴィクターがそれを見てフッっと笑うと立ち上がり付いてくるように促してきたので付いていく。

ネットランナーチェアによく似た……というよりリパーの店に置いてあるリクライニングシート+検査台みたいな所まで行くと座るように促された。

 

「大事な依頼と言ったが誰の依頼だ?……あぁ、守秘義務があるだろうから人物だけでもいいぞ」

「ダコタさんからの依頼ですよ。内容はお伝えできませんが」

「ダコタって事はバッドランズか…なら神経系から見ていくぞ」

「お願いします」

「……よし、なら繋いでくれ」

そう言われ左手に接続端子を受け取り左側頭部にあるジャックイン端子に差し込む。

そういえば何気にこれが初めてのジャックインになるのか。…………大丈夫だよね?

今更ながらではあるが少々怖くなってきた。

別の場所への挿入(意味深(いや生身と機械じゃそもそも違う))した感覚はなんというか……USBの端子をPCとかに挿した時と同じ感じだった。

ヴィクターが操作したのか目の前にディスプレイが移動させられていつも見慣れた…いや、少々違うがサイバーウェアの確認画面が映っている。

 

「じゃあスキャンを開始するぞ」

「よろしくおねがいします」

 

そう言いヴィクターがスキャンを開始する。

……そういえば自分の今のサイバーウェア装備を確かめてなかったな。最後に装備している設定のままならとんでも装備ばかりしている民間最高クラスの改造状態の筈だが、この数日でゲーム通りという事は絶対にない。しっかりとした現実なのだと思い知らされたので確認をしておかなければならない。

ええと……あ、今気付いたけど英語が普通に読める。

翻訳機能が働いてない事を考えるとこれは素の状態でも読めるように何時の間にかなっていたようだ。非常に助かる。

 

さて……装備内容は……

 

前頭葉:メカトロニックコア、視野角サポート、大脳辺縁系サポート

視覚系:キロシオプティクスMk.3

循環器:バイオコンダクター、フィードバック回路、予備心臓

免疫系:カタレジスト、痛覚エディター

神経系:ケレズニコフ、シナプス加速器

外皮系:皮下アーマー、不燃性コーティング、光学迷彩

骨格:マイクロローター、神経信号オプティマイザー

手:スマートリンク改

腕:ゴリラアーム

脚:強化足関節

 

基幹システム:ネットウォッチ・ネットドライバーMk.5

ふむ……腕以外は最後に触った時と同じだな。だがスマートリンク"改"?

どういう事だ?確かゲーム時のキャラとしての体はタイガークロウズの皮膚インプリントをしてた筈だが、腕を見た時にそれは消えていたのは覚えている。

もし、それが世界の整合性が合わないという事でスマートリンクになっているのならまだ理解はできる。実際スマート武器使用前提の時はわざわざ切り替えてたし。

だけどこれは"改"と入っている。もしかして改造したのか?世界の整合性の為に?

流石に気になるので少々詳しく確認を行う。

………あー成程……そういう事……はいはいはい……チートでは?

確認を行った事で分かった事はこうだ。

スマート武器"非"使用時スマート武器のジャミングを行う。使用時にジャミングオフ、スマート弾自動標準速度補正がかかる。

レジェンダリースマートリンクとタイガークロウズプリントの相の子じゃないですかーやだー!

いや非常にありがたいけどさ…これ絶対突かれるやつだよね?後が怖いわ。外さないけど。

一応の確認を終えたのでとりあえず視覚系と腕の改造パーツも確認する。

よしよし、キロシの方は弾道解析、弱点検出装置、脅威探知機。腕もアニマルズのナックル、ブラックマーケットのバッテリー、感覚アンプリファイアーが入ってる。

 

確認を完了し、しばらくのんびりしているとヴィクターがスキャンを終えたのか席を立つ。

 

「スキャン完了だ。結論から先に言うぞ。異常は全くない、健康そのものだな」

「それは嬉しいですね。ありがとうございます」

「あぁそれと、忘れてるかは分からないがチップが刺さったままになっているぞ」

「え?チップが?……記憶がないですね」

「一応気になったから確認してみたがチップ自体は動いてないのを確認しているから抜いても問題はない」

「いやはや……重ね重ねありがとうございます」

 

そうやりとりした後端子を抜いてそのままチップスロットを探す。……あった、これだ。

チップを引き抜いて目の前に持ってくる。あれ?何処かで見たような……

そう思いつつチップの表面を確認する。

……

……………<Relic>だこれ!!?

 

そうして冒頭に戻るのだが……うん。先ずは可能性を上げてみよう。

①今自分がそうだと思っている記憶がアラサカが作ったレリックの実験で作成された記憶である。

現状の自分が持っている装備、車両等からみてアラサカのエージェントだった可能性が高い。何を条件にして"魂の救済"プロジェクトに参加したかは分からないが碌でもないのは確かだろう。

②"一巡"した。

某奇妙な冒険ではないが自分だけが世界を一巡した存在として今存在し、その記憶を持っているのはそれを操作していた『プレイヤー』だからこそ上位存在?が意識と記憶を植え付けた。

③一番荒唐無稽だが、これを観測し執筆していると思われる人物がいて、自分はそれに書かれている登場人物である。

誰もが思うあぁだったらいいな。こんな『if』(もしかしたら)だったら等、二次創作やフィクション小説、仮想戦記等今やありふれている一作品の登場人物で、この先の展開も"自身"が選択し行動していると思っていてもそれは書いている人物による者が決めた既定路線だという事。

……可能性としては①が一番ありえるのが困った所だ。

②は正直言ってありえないと思うし③なんてトチ狂ったのだろうかとすら思う。

だがもしもだ。もしも自身がそういう存在、言うなれば観測者だろうか?観測者が書いた事が現実今自身に起こっている現象(転生?憑依?)をテレビで見る映像のようにだせるならすると思う。

ゲーム自体はよかったが話が良くも悪くも日本人受けしなかったというのもあるが、こう……何もなくただ失って終わるというのが受け入れられないからこそ救いを見出したいと思っているのだから。

 

よしきめた。

"神輿"は必ず破壊する。

実際神輿が存在している事で得られるメリットは全くもってないとも言えるのだが、可能性①の確率が一番あり得る以上元の人格の持ち主の記憶痕跡が必ず保存されている筈だ。

そうだった場合まずどうやっても勝ち目はない。未来もない。

記憶が自由に移せるという事は人間とほぼ同じ機構さえ作ってしまえば"本人"を量産できてしまう。しかもそれはスキルオールカンストしたもはやバグ染みた存在だ。もし自身の能力そのままの存在が複数体同時に来られたどうだろうか?最大限譲歩しても詰む。

音もなく走ってるような速度で近づかれて首を回転させられてこの世と別れるなんて悪夢以外なんでもないとすら思う。まぁ、同じ事を出来るからこそ分かる恐怖なのだけども。

 

座っていたランニングチェア?から降りてヴィクターの近くに行く。

もういいのか?と言いたそうな顔でヴィクターが顔を向け自分を見てくるが大丈夫だと頷くとこう言ってきた。

 

「何かは知らないが決意したようだな」

「えぇ。……顔に出てました?」

「うっすらとだがな」

「それはそれは……あぁ、お代は如何程で?」

「いらねぇよ。スキャンだけだしな」

「ありがとうございます。それでは」

 

今回金は要らないという事でヴィクターに礼を言い診療所を出ようと歩いていき柵…いやカーテンと言おう。カーテンに手をかけた時にふと思い振り返り一言言う。

 

「また来ますね」

 

おう、というヴィクターの返事を聞きながら自動扉を開けて外に出る。

さて、確認は終えたし明日のダコタとの邂逅まで休むとしますか。

 

 

 

 

 

 

 






本文中の可能性のお話ですが、私的設定では①と②の相の子です。
閑話に少し書きましたが、アラサカを円満退職していますが、退職時の取引として記憶を譲渡することで無事に退職しています。(その時にレリックinし無難な記憶が上書きされる)
その後、無難な記憶を持った主人公(Not転生者状態)がネットウォッチでバイト、そしてあのネットウォッチドライバーを入手しています。
そしてあのスマートリンク改ですが捏造です
そもそもスマート武器のジャミング自体タイガークロウズの秘蔵品です。(ゲーム中NCPDが何発かジャミングしていますが)
それを現実適用するとなるとどうやってもタイガークロウズと懇意にしていないと無理なんですね。
なので、アラサカ時代とネットウォッチ時代で得た知識と技術で作った独自の改造を施したスマートリンクという事にしました。

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